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能登の魚介の風味が凝縮した一杯。コク旨「いしりらーめん」と伝統魚醤「いしり」

2025/10/23

2024年元旦、能登半島を襲った未曾有の災害。豊かな海のすぐそばに社を構えるカネイシも、甚大な被害を受けました。津波の恐怖、そして4カ月にも及ぶ断水は、ものづくりを生業とする人々から仕事を奪い、事業継続の危機へと追い込みました。しかし、彼らには守り抜きたい味がありました。それは能登の漁師たちが育んできた伝統の魚醤「いしり」です。今回、編集長のアッキーが注目したのは、伝統の味を未来へ繋ぐために生まれた一杯、「いしりらーめん」。その物語の裏側にある熱い思いを、有限会社カネイシの代表取締役社長、新谷伸一氏に取材スタッフがお話を伺いました。

有限会社カネイシ 代表取締役社長の新谷伸一氏

有限会社カネイシ 代表取締役社長の新谷伸一氏

―まず、会社の成り立ちについてお聞かせください。

新谷 私の知る限りでは、祖父が戦前からこの能登・小木港で、魚の仲卸や干物などの加工品を作って販売することを生業としていました。その後、1979年に父が事業を法人化し、「有限会社カネイシ」を設立したのが会社の始まりです。イカの仲卸業と、干物や魚醤「いしり」といった海産物の加工・販売を手がけてきました。私は2代目の代表になります。会社の目の前がすぐ港という場所で、まさに海の恵みと共に歩んできた歴史です。

―社長は、一度故郷を離れられたご経験があるそうですね。

新谷 大学卒業後、5年間ほど東海地方の業務用食品卸の会社で営業として勤務しました。正直に言うと、当時は家業を継ぐことに迷いがありましたが、長男だったことや父からの言葉もあり、能登へ戻ることを決意しました。前職での経験は私にとって大きな財産になっています。多くのメーカーさんが商品開発にかける努力を間近で見てきましたし、何よりお客様と直接向き合う中で培われた「お客様の視点」で物事を考える姿勢が、今のものづくりに活きていると感じています。

―今回ご紹介いただく「いしりらーめん」は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

新谷 弊社の看板商品に、伝統的なイカの魚醤「いしり」があります。これを紹介すると、お客様から決まって「これはどうやって使えばいいの?」と質問されるのです。私たちはメーカーなので、商品を並べれば売れると考えていたのですが、それではお客様に本当の魅力が伝わらないのだと気づかされました。そんなある日、ふと自社のオンラインショップの購入者リストを見てみると、ラーメン店を経営する方からの購入が意外と多いことに気がつきました。「なるほど、スープの隠し味に使ってくれているのか。それなら、うちでラーメンを作れば、もっと『いしり』のおいしさを分かりやすく伝えられるんじゃないか」。このひらめきが、すべての始まりでした。

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お客様の声から生まれた、カネイシオリジナルの「魚醤いしりらーめん」。
旨み成分がぎゅっと濃縮された「いしり」を使ったスープは、あっさりしつつもコクや旨味が濃厚。

―開発におけるこだわりを教えてください。

新谷 開発するからには、中途半端なものは作れません。そこで、北陸で絶大な人気を誇るラーメンチェーン「8番らーめん」を運営する株式会社ハチバンさんに監修をお願いし、コラボレーションが実現しました。麺は、「8番らーめん」の代詞ともいえる、食べ応え抜群の「特製ちぢれ太麺」をそのまま使用しています。一玉120gと、一般的なお土産ラーメンよりボリュームがあるのも特徴です。私自身がこってり系は少し苦手な世代になってきたこともあり(笑)、スープは魚介の風味を活かした、あっさりしながらも深いコクと旨みを感じられる味わいを目指しました。もちろん、その味の核となっているのが、1年近くかけてじっくり熟成させた自家製の「いしり」です。

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こだわりの縮れ麺に、「いしり」の風味を活かしたあっさりながらも深いコクと旨味が感じられるスープがよく絡む。

―味の決め手となる「いしり」とは、どのような調味料なのでしょうか。

新谷 「いしり」は、秋田の「しょっつる」、香川の「いかなご醤油」と並ぶ、日本三大魚醤のひとつです。原料は、イカの内臓と塩のみ。これをタンクに仕込み、発酵させながら約1年もの時間をかけてじっくりと熟成させます。まさに、能登の風土と時間が生み出す伝統調味料ですね。私が子供の頃、自宅のすぐ隣の小屋でこれを作っていたのですが、発酵が進むと独特の強い香りがするんです。ここで生まれ育った私は慣れていましたが、遊びに来た友達が思わず鼻をつまんでしまうほどでした。それくらい、力強い本物の発酵食品の証ともいえます。ひとさじ加えるだけで、どんな料理にも驚くほど深いコクと旨みを与えてくれる「魔法の隠し味」です。

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イカの内臓と塩のみを原料に、約1年かけて熟成させる奥能登伝統の魚醤「いしり」。
さまざまの料理の隠し味として便利に使える、万能調味料。

―「いしりらーめん」のおすすめの食べ方を教えていただけますか。

新谷 まずはシンプルに、能登の海の香りをストレートに味わっていただきたいですね。そのうえで、私の一押しは、イカと野菜をさっと炒めてトッピングする「漁師風アレンジ」です。いしりの風味とイカの相性は抜群です。最近では、購入してくださった方々がSNSで創意工夫あふれるトッピングを投稿してくれることも多く、私たち作り手側が「そんな食べ方があったか!」と逆に教えられることも少なくありません。「今度の週末、何を乗せてみようか?」なんて、ご家族の会話が弾むきっかけになれたら、こんなに嬉しいことはありません。

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道の駅 桜峠 監修の、いしりに漬けて揚げたイカのトッピング(左)。
株式会社ハチバン 監修の、豚しゃぶと夏野菜の冷やしらーめん(右)。
スープと麺のシンプルなセットだからこそ、アレンジの幅は無限大。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

新谷 2024年に起こった震災では、4カ月にも及ぶ断水を経験しました。その際、当たり前にあった水がどれほどありがたいものだったか、そして商品を作れることがどれほどの喜びであるかを痛感しました。自社の再建はもちろんですが、今はこの地域全体が元気を取り戻すことに少しでも貢献したいという思いが強いです。実は、地元の能登町商工会の会長も務めておりまして。町の事業者さんたちと共に、これからも能登を盛り上げていきたいと考えています。私たちがこのラーメンを、この魚醤を心を込めて作ること。それは、カネイシの、そして能登全体の未来を応援することに繋がると信じています。お客様のニーズに耳を傾けながら、これからも新しい商品開発に挑戦し続けていきたいです。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

魚醤いしりらーめん(3食・化粧箱入り)

「魚醤いしりらーめん(3食・化粧箱入り)」
価格:¥1,296(税込)
店名:カネイシ公式オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.kaneishi.com/products/230001
オンラインショップ:https://shop.kaneishi.com/

能登のイカ魚醤「いしり」(150ミリリットル)

「能登のイカ魚醤「いしり」(150ミリリットル)」
価格:¥540(税込)
店名:カネイシ公式オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.kaneishi.com/products/110001
オンラインショップ:https://shop.kaneishi.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

新谷伸一(有限会社カネイシ 代表取締役社長)
1969年石川県生まれ。1992年に東海地方の食品問屋で5年間勤務した後、1997年に実家の家業である有限会社カネイシに入社、先代である父親の逝去に伴い2007年より代表取締役に就任。現在に至る。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/カネイシ>

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