
柚子の爽やかな香りと辛味が口の中で弾ける!“粒”が決め手、大分・日田の芳醇「粒柚子胡椒」
2025/06/26
名産品の調味料のなかでも、20年ほど前に全国的に知られて人気に火がつき、今やすっかり食卓の必需品となった九州産の柚子胡椒。豊富な種類のなかから、今回アッキーこと坂口編集長が注目したのは、柚子の香りと辛味がはじける“粒”タイプの「粒柚子胡椒」。そのおいしさの秘密、開発の経緯等について、大分・日田で製造する有限会社川津食品 代表取締役社長の川津峰之氏に、取材スタッフがお話を伺いました。

有限会社川津食品 代表取締役社長の川津峰之氏
―日田でお生まれになって、ずっと大分で?
川津 私は実は幼少の頃より剣道をしていて、特待で大分の強豪校、大学も茨城の強豪大学に進んで、高校から地元日田市を離れました。卒業後も家業を継ぐとは思ってなくて、スーパーのバイヤーになりたくて、東京で採用試験も通ったのですが、長男ですから、家に戻らないといけないかなという気持ちもあって、結局戻って地元の役所に勤めることになりました。
―公務員ですか?
川津 公務員として西日本最大のキャンプ場である、当時の椿ヶ鼻ハイランドパークで5年間、支配人も務めました。26歳の頃です。
―そこからなぜご実家に帰ろうと?
川津 5年経った頃に、テレビや新聞で柚子胡椒が紹介されたり、料理研究家の方が話されたりするようになったんです。うちは、先代である祖父が家内工業で柚子胡椒を作っていたので、「これは来るぞ!」と直感的に思いました。今ほど柚子胡椒がメジャーでない時は、九州の山間部だけで細々と作っているものと思われていたのですが、私はその時、柚子胡椒を、わさびやからしに次ぐ調味料に育てたいという思いが燃えたぎってきたのです(笑)。それで、支配人を辞めて、家に戻ろうと考えたわけです。

柚子胡椒は九州の山間部で採れた柚子を使って手作りされてきた。
―家業はおじいさまがされていた?
川津 祖父母と母が。私は何もしていませんでしたが、コミュニケーション力には自信がありましたし、商談会に出かけてもなんとかなるだろうと思っていました。でも、作り方も知らないわけですから、商品の特徴も話せず、何もできなかった。その苦い経験が23年前のことです。
―そこからどのように?
川津 「これはやらなつまらん!」と、朝4時半に起きて、配達、製造、集荷、管理などを休みなくこなしました。そうこうするうち、会社にしたいと思うようになり、2004年10月に、有限会社川津食品を設立、昨年、20周年の節目を迎えることができました。会社を立ち上げて3年目には、地元だけでなく全国に広げる気持ちで東京に進出し、展示会や商談で一気に火がつきました。高級スーパーや大手の食品メーカーがすぐに反応し注文してくださったんです。大手の調味料メーカーがさっそく似た調味料を作りCMで広げてくれたので、競合というより多くの人に柚子胡椒という名前が知られるようになりました。

当初は家内工業で柚子胡椒を生産。
川津氏は家業に入り、先代のもと技術を学んだという。
―売れて製造体制は変わりましたか?
川津 最初の10年で売上は10倍以上、産地やお取引も広げてきたので、古い設備を改良し続けましたが限界に達し、2019年に小学校跡の建物を改装し、移転リニューアルしました。ロの字型の建物で人と物の交差がなく、品質管理が徹底した工場になり、取引先基準に合致した製造体制が確立できました。
―材料や製法は変わらないのですか?
川津 基本のレシピはできるだけ変えないようにしています。調合が特殊で大事なんですよ。実ったばかりの青い柚子はフレッシュで鼻に抜ける香り、10月中旬になると黄色くなって、12月になると完熟して真っ黄色。1、2週間で皮の香りが変わるので、その見極めも重要です。

青い柚子はフレッシュで鼻に抜けるさわやかな香りが特徴。

柚子はどんどん大きくなり、10月中旬になると黄色、12月には完熟。
―材料の柚子も作っておられるのですか?
川津 使用量が多くてとても作れないです。九州全域から集めていて、一番の産地は熊本です。黄色い柚子は芳醇な香りが広がるので、鼻に抜けるキリッとした青柚子とブレンドする。これがうちの技術で、他社では真似できないものです。かなり手間がかかっている。だからこそ高価格(笑)。でも、某ポテトチップスや某からあげなど、いろいろなものにうちの柚子胡椒が入っています。大手だとトン単位のご注文ですが、量が増えてもうちの香りと味は変わりません。うちは高いけれど安いところの柚子を買ったら、うちと同じくらいの香りを出すには2倍の量を入れないといけないですよって担当の方にはよく話しています。
―今回ご紹介するのは「粒柚子胡椒」ですね。
川津 これは私が開発しました。当時、うちの商品はペーストの柚子胡椒がメインで、ペースト状にして香りや旨みをすべて引き出すスタイルでした。会社を立ち上げて3年目の頃、近所のおばちゃんたちが、ちょっと粗めのほうがおいしいねと話しているのを聞いて、私はずっと柚子胡椒はペーストだと思っていたけれども、やってみようと思ったんです。粗摺り(あらずり)するのは誰でもできるので、うちは均一な粒カットにしようと、高価な機械も買いました。閃いたらすぐにやりたいし、機械の補助申請も間に合わないくらいのスピード、半年くらいで商品化しました。

「粒」から豊かな味と香りが弾けるのが、他の商品との違い。
一度味わうとやめられない。
―力を入れられたのですね。
川津 初めて試作した時から3年で粒柚子胡椒がペーストの売上を越してしまいました。粒を口の中に入れると、柚子の皮と唐辛子の存在感がある。粒は嚙んだ時に香りと辛味が弾けるんですね。粒は1mmだとつぶれて、ペーストに近い状態になるから2mmカット。はっきりと粒感が残るのが2mmです。粒柚子胡椒という名前で商標も取っていて、このネーミングを使うのは、うちとうちが許可した取引先だけです。
―どんなお料理といただくのがおすすめですか?
川津 味噌汁とか鍋とかもいいし、麺類もいい。焼肉につけてもいいし。今は餃子にも柚子胡椒がついていますよね。あとは、お刺身。鯛やヒラメはわさびやもみじおろしですが、ぶりやかんぱちのように脂がのっているものは、ぜったいに柚子胡椒が合います。豚汁、団子汁も最高ですね。変わったものだとクリームシチュー。ご自身の器に小さじ半分ほどを落として混ぜるだけで、本当においしくなりますよ。あとはパスタ。ペペロンチーノに柚子胡椒を仕上げにぽんと入れてもおいしいし、クリームパスタも大人の味になる。味が締まります。

餃子や汁物がいっそうおいしくなる。
クリームシチューなど乳製品とも想像以上に好相性。
―オンラインでの販売はいつ頃から?
川津 通販は昔から少しはやっていたのですが、力を入れていなかったんです。でも川津家謹製 柚子胡椒というものを、ブランドとして掲げてどんどん発信するようになると注目度が上がって、テレビや雑誌にも相当出させていただきましたし、そこからまた広がって…。
―限定品があるのですよね?
川津 期間限定の最高級柚子胡椒、「約束の柚子こしょう『柚子殿(ゆずどん)』」。少し贅沢なお値段ですが、とてもおいしい。年に2回だけ横浜で販売会をする時も全部予約になってしまいます。ポン酢も1,500円しますが、ほかとは香りが全然違います。
―「柚子殿(ゆずどん)」というのは?
川津 柚子殿というのは、初代の思いを継ぐものの称号ということで、私は3代目。初代が祖父で、中継ぎで頑張った母が2代目です。祖父が亡くなる前に、病床の祖父に「じいちゃんから教えられた技術で最高級のものを作ってみようか、これは売れるぜ」って私が言ったんです。祖父は喋ることはできなかったけど、ニコッと笑って「何を言ってるんだ」って顔をしていました。私は祖父に教えられたものと、それをヒントにもっと香るんじゃないかと工夫したものを合わせて、急いで作りました。ようやく出来上がってお客様に最初に渡したのが、祖父の会葬御礼になってしまったのですが。その年に500個販売して、今は年間7,000個を予約販売しています。LINE公式アカウントでご登録いただいた方へ予約開始のお知らせと製造動画を配信すると、一気に予約で埋まるんですよ。夏と冬です。ポン酢も同じで、2か月に1度予約開始のお知らせをしています。

限定販売の「約束の柚子こしょう『柚子殿(ゆずどん)』」。

柚子殿謹製 柚子ぽん酢も2か月に1度の限定販売。
―中身はどのように違うのですか?
川津 私だけが手がけるもので、まず原料の選定。数千樽の原料の中から、柚子の皮など、その中で一番いい香り、いい時期、いい産地の樽を選ぶんです。そこからいくつかの皮をブレンドしますし、樽の上のほう、下のほうでも香りが違っていて、嗅ぎ分けは私しかできない。本当に最高の原料だけを使うのですが、いわゆる規格はなく、私の感覚で作る。その時、年によって異なりますし、夏は爽やかに冬は芳醇にと、それも変えてます。

限定品は、川津氏だけが製法を知る。
受け継いだ技術と繊細な感覚で、最高級の柚子胡椒に。

川津氏の今は亡き祖父、
初代「柚子殿」の川津英美(ひでよし)氏。
―今後の展望をお聞かせください。
川津 気持ちは会社を立ち上げた時と変わりません。私は、九州の山間部で作っている柚子胡椒を、わさびやからしに次ぐ、九州を代表するような調味料に育てたいんです。人気が出たといっても、日本人の半分が知っているかといえば、まだまだで伸び代はあります。皆様の食卓に送って、食のちょっとした幸せをお届けしたいですし、柚子の香りで皆様の心を豊かにする、そういう役割を担えればと思います。柚子胡椒を全国に広めるために私は生まれてきたと思っていますから、最後までやりとげます。
―熱い思いが伝わってきます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

「粒柚子胡椒 青 60g」
価格:¥648(税込)
店名:川津食品
電話:0973-53-2501(9:00~17:00 土日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://yuzu-kosyo.shop-pro.jp/?pid=14145985
オンラインショップ:http://yuzu-kosyo.shop-pro.jp

「約束の柚子こしょう『柚子殿』」
価格:¥1,620(税込)
店名:川津食品
電話:0973-53-2501(9:00~17:00 土日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://yuzu-kosyo.shop-pro.jp/?pid=49206922
オンラインショップ:http://yuzu-kosyo.shop-pro.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
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川津峰之(有限会社川津食品 代表取締役社長)
1973年大分県日田郡前津江村(現在の日田市前津江町)に生まれる。大学卒業後公務員を経て実家に戻り、3代目として祖父から継いだ家業(農産物加工)を法人化。柚子胡椒に特化し、2004年、有限会社川津食品設立。秘伝の製法で作る「約束の粒こしょう」ほか全国から注目を集めている。
<文/大喜多明子 MC/田中香花 画像協力/川津食品>