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蔵マスター大吟醸部門で金賞を連続受賞の「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」と、表千家の茶事で唯一の公式使用酒「純米大吟醸 松の翆」に注目

2024/05/01

アッキーこと編集長の坂口明子が注目したのは、伏見の清酒です。京都の水とお米で地産地消にこだわって醸造された「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」は、フランスで行われる日本酒コンクールで金賞を2年連続で受賞。さらに「純米大吟醸 松の翆」は千利休を祖とする茶道流派である表千家の茶事で唯一公式のお酒です。このように多種多様な日本酒造りをしている株式会社山本本家の代表取締役社長、山本源兵衞氏に取材陣がお話を伺ってきました。

株式会社山本本家 代表取締役社長 山本源兵衞氏
株式会社山本本家 代表取締役社長 山本源兵衞氏

―「山本源兵衞」というお名前は代々受け継がれていらっしゃるのですね。

山本 源兵衞という名前は跡取りが代々名乗っています。私で11代目になります。

―家業はいつから継ぐことを意識していましたか。

山本 最初から継ぐように意識付けられていたので、幼稚園に通っている頃から意識していました。その後も抵抗はなくてあたりまえのことだと思っていました。

そのころ実家の周辺に全部で4箇所に酒蔵があったのですが、本蔵は実家の横にあったので小さい頃から蔵のなかで遊んだものです。

ただお酒を作っている蔵のなかは酵母菌などがいるため繊細で、人が出入りすると蔵内の酵母菌のバランスが崩れてしまうんです。なので基本、関係者以外の出入りは禁止になっていますから、友達と遊ぶというより、よく1人で遊んでいました。

―家業を継がれる前には百貨店にいらしたそうですね。

山本 家業に入る前に社会勉強をと、2年半くらい髙島屋さんで働かせてもらいました。当時は呉服の担当で、いまの仕事に直接には関係ありませんが、社会勉強として有意義な時間でした。もう少し長く働く予定が、先代が体調を崩したことをきっかけに実家に戻りました。

―山本本家の創業の歴史についてお伺いできますでしょうか。

山本 創業は江戸時代の1677年に京都の伏見で始まりました。伏見は大阪と京都の間に位置していたため当時は宿場町であり、往来はあったものの、江戸に比べると小さな町でした。都への販売は制限されていたため、いいお酒ができても伏見の町でしか流通することがなく、地元向けに商売をしていました。ただ、参勤交代で来た人たちは京都の街に入れなかったため伏見を通る人が多く、そういった方たちが購入することがあったとのことです。また、ここは当時から酒造りに向いているいい水がたくさん出ていたため、伏せる水と書いて伏水(ふしみ)というほど、水のよさが有名でした。

―江戸時代から続く…、歴史がすごいですね。

山本 鳥羽・伏見の戦い(1868年)によっていまの土地が全焼してしまったため、資料が少なく、それ以前のことについてはよくはわからないのです。はっきりとしていることは明治以降のことだけですが、8代目と9代目のときに酒蔵を大きくしたと聞いています。

―8代目と9代目が大きなポイントだったのですね。

山本 その頃までは大きなタンクで日本酒を仕込むことがなく、大量生産はしていませんでした。ただ、1889年に東海道本線が開通し、東京にお酒を早く運べるようになったことで流通の幅が広くなり、生産量を増やすために規模を拡大し、会社として成長したということです。

―醸造会社として大切にしていることはありますか。

山本 大前提として良いものをお客様に届けるということがあります。おいしいお酒というのは好みの問題もありますが、弊社は京都の醸造所ですから、京料理と一緒に飲んでいただくのにおいしいお酒を造っています。香りが華やかだったり、濃厚だったり、芳醇なお酒は、単体で飲むにはいいのですが、繊細で薄味な京料理との相性が良いとはいえません。

料理とお酒がお互いの味を高めていけるような、そんな食中酒を目指して造っています。

―山本本家のお酒の特徴は食中酒、なのですね。

山本 そうです。京都の食文化を担うお酒造りを目指しています。代々造っている食中酒ですが、時代によって特徴は少し変化していっています。

―お酒造りにおいて重要なことを教えてください。

山本 おいしいお酒を作るのに必要なものは、水と米と技です。そのなかでも水は特に重要で、伏見や兵庫県の灘、広島県の東広島など、おいしいお酒を作っている町では酒屋が特定の場所に固まっているのです。それは、酒造りにいい水が採れるところだからです。

―水によって酒蔵の場所が決まるほど重要ということですね。

山本 酒造りに最適な水が出てくることが一番重要です。今は名酒の産地として有名な灘ですが、最初は伊丹と両方に醸造所をもっていた蔵元が、灘で造ったお酒のほうがおいしいと気づいたのです。それぞれの蔵で杜氏やお米を変えて確認し、それでも灘のお酒が間違いなくおいしいとなり、灘で造ることになった経緯があります。

―名水の地、伏見での創業が重要だったのですね。

山本 わが社は代々伏見でお酒を造っていますが、現在伏見にある蔵元21社のうち半分ちかくは、後から移ってきた会社です。人と米は運べますが、水は豊富に必要で運びきれないですから。灘の例のように、水で酒蔵の場所を変えるほど重要です。

―醸造についてのこだわりは?

山本 醸造に関しては、とくに独自の作り方をしていることはありません。技術が浸透してきているため、どの酒蔵も同じようにしています。酵母菌が暑さ寒さに影響を受けるため、絶えず同じような働きをしてもらえるように気温にあわせて毎日調整をしています。

―手間をかけるのが大事なのですね。

山本 技術が発展したことで機械が気温などをチェックできるようになりましたが、完全に機械任せで調整することはできません。例えば子どもが2人いたとしたら、同じ方法で2人を育てられるかというとそんなことはない、それぞれの性格に合わせて適した接し方がある。お酒造りもそれと同じで、毎回手間をかけてあげることが大切なのです。

―「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」はフランスで行われる蔵マスターの大吟醸部門で連続して金賞を受賞されています。

山本 世界で認められたということは、非常に励みになりました。お酒の品評会では単体で評価をされるため、香りが華やかなものや味が濃いものが選ばれる傾向にあり、うちのような食中酒は賞を取りにくいのです。そういうなか、受賞できたことが非常に光栄です。

―どのような点が評価されたのでしょうか。

山本 「祝」という京都独自のお米をつかっていますが、その米の特徴がうまくいかせたことが評価されたと考えています。
「祝」はきめこまやかでふくらみのある味わいのある酒造りには適した種類ですが、一度生産をやめてしまっていました。それを地産地消のお酒を推奨していきたいという思いから、30年ほど前に復活させて使っているのです。

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お酒単体でも米の甘みとフルーティな味わいを楽しめるお酒です。

―「祝」は醸造専用のお米ですか?

山本 お米は醸造用と食用で異なります。コロナで日本酒が売れなくなったときに「祝」が余ってしまい、試しにみんなで食べてみましたが、おいしくありませんでした(笑)。「祝」だけでなく、日本酒の原料として有名な「山田錦」もお酒にあったお米になっていて、デンプンが多いため食用としてはおいしくないお米です。

―「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」のおすすめの飲み方は?

山本 「祝」は冷酒がおすすめです。少し味が濃いため合わせる料理としては、魚料理であればサバの味噌漬けなど味がしっかりついているものがおすすめです。

―続いて「純米大吟醸 松の翆」について教えてください。

山本 1981年11月に表千家而妙斎千宗左家元の襲名披露晩餐会の場に合わせて作ったお酒です。お茶事でいただく懐石料理では、季節感が重要で夏は冷、冬は燗でお酒を出します。そのため本来、冷で飲むのがいい純米大吟醸ですが、お茶事用として冷でも燗で飲んでもおいしいお酒として造らせていただきました。

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口に含んだときに味のふくらみがあり、
食事にあうようなスッキリとした味わいです。

―日本酒の楽しむためのアドバイスをお願いします。

山本 味の違いを楽しみたいなら、同じランクで産地が違うお酒を選ぶのがおすすめです。たとえば、純米大吟醸で産地の違う種類を飲み比べてみる、です。実際に飲んでみると京都と新潟では味わいが大きく異なります。また、そのままか、料理と合わるかによっても違いがあるので、いろいろな飲み方で違いを楽しむのがいいと思います。

―今回ご紹介したお酒はどのような方に手に取ってもらいたいですか?

山本 「純米大吟醸 松の翆」は京料理など素材やだしをいかした和食にぴったりのお酒です。一方で「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」は和食に限らず、いろいろな料理に合わせてみたいと思っている方におすすめしたいです。

またどちらのお酒も、まだおいしい日本酒に出合っていないという方に、ぜひ飲んでいただきたいです。日本酒が苦手という多くの方は、学生時代に飲み放題などで飲んでおいしくないと思ったきりではないでしょうか。今の時代、おいしい日本酒がたくさんあります。日本酒であれば最高級と言われているものでも2~3万円ほどで、1本100万円のものがあるワインに比べると手が出しやすいと思います。

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―最後に今後のビジョンについてお聞かせください。

山本 一番は、日本酒のおいしさにもっと気づいていただきたいです。

おいしいお酒は世の中にたくさんあります。また、日本酒は日本文化とともに歩んでいくものですから、その一翼を担っていると思いながら、今後もほかの産地に負けないようなおいしい日本酒造りに励んでいきたいです。

―日本酒造りにかける素晴らしい思いを伺えました。本日はありがとうございました。

「純米大吟醸 松の翆」(1.8L/720ml/180ml)
価格:1800ml ¥4,730(税込)/720ml ¥2,365(税込)/180ml ¥682(税込)
店名:山本本家蔵元直売店
電話:075-622-3110(11:00~18:00 ※月曜日定休)
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamamotohonke-shop.jp/view/item/000000000022
オンラインショップ:https://www.yamamotohonke-shop.jp/

「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」(720ml/300ml)

「神聖 京都府産祝 純米大吟醸」(720ml/300ml)
価格:720ml ¥3,520(税込)/300ml ¥1,540(税込)
店名:山本本家蔵元直売店
電話:075-622-3110(11:00~18:00 ※月曜日定休)
インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamamotohonke-shop.jp/view/item/000000000017
オンラインショップ:https://www.yamamotohonke-shop.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
山本源兵衞(株式会社山本本家 代表取締役社長)

1951年京都府生まれ。株式会社高島屋に入社、3年間修業期間を経て、1976年に山本本家に入社。1990年に代表取締役社長に就任。以来、本業では表千家の茶道に代表される京の文化、特に食文化に関わりの中で、日本酒と料理のハーモニーを考え,より良い食中酒を目指している。また、酒造組合活動では、酒造りに最適な伏見の地下水の保全や、「祝」や「京の輝き」という京都独自の酒米の普及にも務めてきました。

<文・撮影/masa1018 MC/伊藤マヤ 画像協力/山本本家>

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