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発酵が引き出す旨味!金沢の伝統食「かぶら寿し」と国産ぶりを使った「鰤 塩糀炙り」

2024/01/24

海の幸、山の幸にも恵まれておいしいものがたくさんある城下町・金沢。今回、編集長のアッキーが気になったのは金沢の伝統食品である「かぶら寿し」を中心に発酵食品や漬物、常備菜などを製造・販売している株式会社四十萬谷本舗(しじまやほんぽ)。専務取締役の四十万谷正和氏に、取材陣が伺いました。

株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷正和氏
株式会社四十萬谷本舗 専務取締役の四十万谷正和氏

―御社の沿革について教えてください。

四十万谷 創業は1875年(明治8年)です。私どもの屋号の由来でもあるのですが、弊社の創業者は金沢の近郊にあった四十万(しじま)村の農家でした。現在私どもがいる泉野の土地に移って商売を始めたと聞いています。創業当時は幅広く商売をしていて、例えば木材、油、味噌、醤油、魚などを扱う商社のようでした。

その後、醤油や味噌を醸造するようになり、太平洋戦争の折に陸軍から食糧となるたくあんを作るように命令が下りまして、漬物を作るようになりました。そこから、4代目である私の祖父の頃に弊社のメイン商品である「金城漬」という秘伝の味噌漬けや「かぶら寿し」を作り始めてだんだんと漬物屋になっていき、今はいろいろな海産物と発酵を組み合わせた商品からジェラートや甘酒、プリンなどのスイーツまでラインナップを広げて、漬物屋から発酵関連のおいしいものをお届けするお店へと変化してきています。

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野菜の味噌漬け「金城漬」や石川の食材を使った「しじまやジェラート」など、
多彩な商品が店頭に並ぶ。

―大学卒業後は他社に就職したそうですが、家業を継ぐきっかけとなったことはありますか?

四十万谷 大学卒業後はハウス食品に入社して11年ほどお世話になりました。ハウス食品時代には「食の力ってすごいな、いいな」と感じることがよくありました。例えば、食の仕事を通して生まれや育ち、宗教、年齢も違う海外メンバーと心がつながったり、自分が落ち込んでいる時に先輩が振る舞ってくれた料理で元気をもらえたり。そんな中、振り返ってみると自分の家業も同じことをやっているなと気づいたんです。

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弥生本店をはじめ、金沢駅構内や百貨店など、
金沢市内に5店舗の直営店が点在。

家業は継ぐ人がいなければ途絶えてしまいますし、私がやった方がいいのかなと考えるようになりました。大きなきっかけは十数年前に他界した祖父の言葉ですかね。病と闘う中、意識がもうろうとするような状態の中で「商売人は根性だ!負けてたまるか」と叫んだそうなんです。直接聞いたわけではないのですが、その話を聞いた時に「先人たちもそれほどの強い想いで商売を続けてきたのかもしれない」と感じて胸が熱くなりました。そのバトンを自分も受け継げるならと思い家業を継ぐことにしました。

―かぶら寿しは石川県で永く愛されている伝統食品なんですね!

四十万谷 かぶら寿しは非常に贅沢な食べ物で、地元ではお正月や祝いの席で食べられていました。そのため、今でも年末年始の食卓やおせち料理とともに召し上がるという方が多く、年末の贈り物としても重宝されています。作るのに手間がかかる食べ物なので、昔の人はお正月に美味しい状態で食べるために、ぶりを塩漬けしたり、漬け床のこうじを仕込んだり、忙しい中でやっていたそうです。

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より厳選した素材を使い、匠の技で仕上げた
特別なかぶら寿し「匠 かぶら寿し」もおすすめ。

そもそも、かぶら寿しは恵まれた土地でないと生まれない食べ物だと感じています。糀を米と混ぜて甘くした漬け床で漬け込むので、お米がふんだんになければ作れません。昔は白米自体が贅沢品でしたから、糀に加工して漬け床にも使うなんてなかなかできませんよね。かぶら寿しは豊富な米と山の恵、海の恵がある土地でなければ生まれなかった郷土料理だと思っています。自然もそうですけど、そんな豊かな土地を作ってきた先人たちにも感謝しています。

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石川の冬、かぶら寿しはみんなで囲むハレの日に食べられる郷土の味。

―御社では4代目から「かぶら寿し」を販売するようになったそうですが、レシピは当時のままですか?

四十万谷 いいえ、レシピはかなり変わっています。当社が「かぶら寿し」を販売し始めたのは1965年なので60年ほど経っています。発売当時は今のものよりも塩分が強かったようですが、現在では、時代に合わせてほぼすべての商品の塩分を減らしています。あとは、発酵具合も違います。

昔はかなりしっかり発酵してちゃんと発酵の香りもするような、私たちの間ではそのような状態を「なれている」というのですが、乳酸菌が増えたなれた状態が好まれていました。それがだんだんと発酵の浅めなマイルドな味わいが好まれるようになってきたんです。発酵食品は発酵の具合で味わいが変わってくるため、今では少し甘くてマイルドな状態の時に出荷するようにしています。

―「かぶら寿し」のために柿のように甘いかぶを作りたいと自社農園を始めたそうですね。

四十万谷 自社農園を開園したのは現代表の父です。「かぶら寿し」のかぶは契約農家さんに栽培していただいているのですが、「もっと品質の良いかぶを作ってほしい」とお願いするにしても、自分たちがかぶづくりについて知らない状態では良いやりとりができないという思いが父にはあったようで、ならば自分たちでも土づくりからやってみようと自社農園を始めたと聞いています。あと、当時は食料自給率や耕作放棄地の問題に少しでもできることはないかという思いもあったようです。

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「かぶら寿し」専用の「百万石青首かぶら」は甘くみずみずしいのが特徴。

―石川県では地域によってかぶら寿しに使用する魚が違うそうですね。

四十万谷 地域や場所によっては鮭やさばを挟んだりするようです。昔はその時に獲れた魚を使っていたという話を聞きますね。弊社の「かぶら寿し」には日本近海の天然ぶりを使用しています。ぶりに塩を揉み込んで低い温度で熟成させると臭みも抜けて、まるで生ハムのような深い味わいになるんですよ。

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脂の乗った天然ぶりを使用してじっくりと熟成させる。

―石黒種麹店の糀を使用されているそうですが、他の糀との違いを教えてください。

四十万谷 種麹店は糀を販売するだけでなく、カビの胞子である麹菌を培養して販売しているお店です。石黒種麹店さんは現在、北陸で唯一の種麹屋さんだと聞いています。手作業による「こうじ蓋製法」で作るとても質の良い、力の強い糀を供給してくださっています。

麹菌が生成する酵素には、お米のデンプンを糖に分解したり魚や肉などのタンパク質をアミノ酸という旨味の素に分解したりする作用があります。石黒種麹店の糀は酵素の力がとても強いため、他の糀と比べて素材の旨味を引き出す力が強いといえます。

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こうじ蓋製法で作られたパワフルな糀の生きた酵素が素材をおいしくする。

―その糀を使って、仕上げは御社の職人さんがされているのですね。

四十万谷 そうです。「かぶら寿し」を漬ける時は、糀と蒸した米を混ぜて一定温度で保温して、酵素の力で甘酒のように甘くします。商品によってはここで少し味を整えたりしながら漬け床を作っていきます。「かぶら寿し」は1人の職人が全てを担当するわけではなく、各工程を分担して作っています。

農家さんが野菜を作り、漁師さんがぶりを獲り、石黒種麹店さんが麹を作り、それらを仕入れさせていただいて弊社の職人たちが各工程で手を加えて仕上げていくので、まるでバトンリレーのようにたくさんの人たちの協力があってこそ作れる食べ物だと思っています。

―続いて、「鰤 塩糀炙り」についても教えてください。こだわりの製法などはありますか?

四十万谷 この商品にも石黒種麹店の糀を使っています。糀の酵素がちゃんと生きていて、ぶりの旨味をぐっと引き出してくれます。ぶりを塩糀に漬けて旨味を引き出した後に表面だけ炙るのですが、表面は香ばしく、中はお刺身のように新鮮な状態にするため、その火の通り具合をコントロールするのに苦労したと聞いています。

あと、こだわりは冷凍方法ですね。普通に冷凍すると解凍した時にドリップといって旨味が出てしまうのですが、開発当時から特殊冷凍のプロトン凍結を採用しています。解凍した後もドリップが出ずに新鮮な状態で食べられるところがポイントです。「鰤 塩糀炙り」は一年中楽しんでいただける商品になっています。

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外は香ばしく、中は新鮮な刺身のようなおいしさに仕上がっている。

―最後に、今後の展望についても教えてください。

四十万谷 「かぶら寿し」は金沢とのつながりや人とのつながりを思い出したり、金沢のお正月や冬を感じていただけたりする商品だと思っています。そのように金沢との繋がりや季節を楽しんでいただけるような商品やサービスを今後も作っていきたいですね。

また、若い世代の方には発酵の面白さやおいしさを知るきっかけを提供して楽しんでいただきたいですし、海外の方も発酵食品は国に関わらず好きな方は好きなので、そのような方々にも広げていきたいと考えています。あとは、すでに日本酒屋さんにおつまみとして置いていただいていますが、和食屋さんにフェア的に使っていただくとか、たくさんの方に弊社の商品を知っていただき味わっていただく機会を増やしていきたいです。

―素材の旨さを引き出す糀の力と多くの人の協力があってこそ、あのおいしい「かぶら寿し」ができるのですね!発酵食品も日常に取り入れたいと思います。ありがとうございました。

金城かぶら寿し 袋入り

「金城かぶら寿し 袋入り」(約2枚)
価格:¥2,160(税込)
店名:四十萬谷本舗オンラインショップ
電話:0120-41-4173(9:00~17:00 日曜・年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kabura.jp/products/detail/154
オンラインショップ:https://www.kabura.jp

鰤 塩糀炙り

「鰤 塩糀炙り」(150g)
価格:¥1,998(税込)
店名:四十萬谷本舗オンラインショップ
電話:0120-41-4173(9:00~17:00 日曜・年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kabura.jp/products/detail/170
オンラインショップ:https://www.kabura.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
四十万谷正和(株式会社四十萬谷本舗 専務取締役)

1983年生まれ。大学卒業後、ハウス食品グループ本社株式会社にて採用、労務、人事企画、グローバル人事等を経験。2017年に後継者として家業である株式会社四十萬谷本舗に入社。2019年より現職(専務取締役)。

<文/ウツギナオコ MC/橋本小波 画像協力/四十萬谷本舗>

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