自然豊かな霧島で生まれた 新しい味「創作 生かるかん」

2023/11/06

鹿児島県の北部に位置する霧島市は、各地に温泉が点在し、また神話のふるさととしても知られる場所です。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、そんな霧島市の国分地区で、明治時代より菓子作りを続けている「有限会社徳重製菓とらや」。その始まりは、創業者の妻が、西郷隆盛氏に菓子を振る舞ったところ、非常に好評を得たからだとか。そこから約140年。今や鹿児島を代表する製菓企業のひとつとなった同社の人気商品について、代表取締役社長の徳重克彦氏に伺いました。

有限会社徳重製菓とらや 代表取締役社長の徳重克彦氏

―御社の設立は1884年。社長は5代目でいらっしゃるのですね。

徳重 そうですね。私が32歳の時に父が亡くなり、会社を継ぎました。実は、うちは5人兄弟で、私は一番下。それなのになぜ跡を継いだのかと言いますと、父がかつて私たちに、「将来は医者か跡継ぎのどっちかだぞ」と話していたところ、兄たちはみんな医者になりまして、私には選択肢がありませんでした(笑)。

―先代からはどんなバトンを受け取られたのですか?

徳重 社会に貢献しなさい、地域のためにできることをしなさい、ということです。地域が発展すればするほど我々も発展し、我々が発展すればするほど地域も発展すると。なので、私は商工会や商工会議所、観光協会にも積極的に関わってきました。今もそれは変わりません。

―観光にも関わっていらっしゃるのですね。

徳重 霧島市観光協会の会長を10数年務めさせていただいています。霧島は自然が非常に豊かで、温泉も豊富な観光の町です。そうした霧島に、たくさんの方々に来ていただく運動や宣伝などを行っています。

徳重社長が観光協会会長を務める、自然豊かな霧島の風景。

―社内で新しく試みたことはございますか?

徳重 様々なことに取り組んできたのですが、中でも大きな出来事は、約10年前、弊社の旗艦店がもらい火で火事になってしまった時のことです。さすがに途方に暮れましたが、気持ちを切り替え、場所を変えて「霧や櫻や」という新しい店を作りました。さらにそのタイミングで様々な新商品も作り、それらが今、非常に好評を得ております。

2015年に霧島市国分にオープンした徳重製菓の旗艦店「霧や櫻や」。
こちらも霧島市の観光名所のひとつに。

―今回ご紹介いただく「創作生かるかん」、「丸十[生]サブレ」ですね。ではまず、「創作生かるかん」について伺いたいのですが、そもそも「かるかん」とはどのようなお菓子なのでしょうか?

徳重 かるかんは、鹿児島では非常にポピュラーな郷土菓子で、自然薯と砂糖、米粉から作ります。一番古いところでは、1690年代、島津の殿様が誕生日で召し上がったという文献が残っています。その後、職人さんを明石から連れてきて、以降、かるかんが地元のお菓子として根付きました。鹿児島の自然薯が非常に良質であり、さらに “蒸し文化”もあったことから、それらを合わせた「かるかん」が発展したのでしょう。

―かるかんは鹿児島でいただいたことがあります。軽いけれどもちっとした食感も楽しめ、とても新鮮に感じました。しかし今回の商品には「生」という文字が入っています。こちらは一般的なかるかんとどう違うのでしょうか?

徳重 通常のかるかんは、自然薯と砂糖を混ぜた生地にあんこを入れて蒸すのですが、あんこの水分が飛んでしまうことがあるのです。そこで私どもは、生地だけを先に蒸し、そこに出来立てのあんを入れることにしました。それを、「生かるかん」と名付けたのです。

ふんわりとしたビジュアルですが、いただくともっちり。不思議な食感!

―ということは、普通のかるかんよりも、あんの美味しさをダイレクトに楽しめるということでしょうか?

徳重 その通りです。さらに一般的なかるかんは丸い形をしているのですが、生かるかんは形も変えて、新しさを出そうと考えました。皆でどんな形がいいのだろうと議論をしまして、最終的に、折りたたんだかるかんにあんを挟むというスタイルになりました。

―八つ橋のような形が斬新ですね!

徳重 おかげさまで、「霧や櫻や」の看板商品となりました。味も、みかんのあん、桜の葉入りのあん、そして小豆あんの3種類あります。形も色も変わった新しいかるかんが誕生しました。

―味がこちらの3種類となったのはなぜですか?

徳重 地元の方の舌に合う味、そしてかるかんに合う味をいろいろ検討した結果、まずは地元で良い「こみかん」ができておりましたので、それをあんこに合わせてみまして、「橘かん」ができました。そして霧島には、桜並木があるものですから、「櫻かん」も作ろうと。こしあんは定番で、「霧かん」という名前に。それで3種類。これらを店の新しい柱にしようと売り出したところ、定着したということです。

手前から、「櫻かん」、「霧かん」、「橘かん」。

―完成までには1年ほどかかったとのことで、どんなところにご苦労があったのでしょうか?

徳重 かるかんを折り曲げる作業です。なかなか綺麗に折り曲がらないものですから試行錯誤しまして、生地を柔らかくした上で曲げてみたところ成功しました。

―機械で曲げているのですか?

徳重 いえいえ、手作業で行っています。

―そうなのですね! 一つ一つ折り曲げ、あんを入れていただいているとは驚きました。あと、こちらの生かるかんは、使用するお水にもこだわっているのですね。

徳重 霧島には良質の水源があります。「創作 生かるかん」には、霧島の関平鉱泉の水を使っています。

―そのようなところにも美味しさの秘密があるのですね。「創作 生かるかん」は、様々な賞も受賞をされているようですね。

徳重 そうですね。2015年には「かごしま特産品コンクール」で県知事賞、「全国推進観光土産審査会」で厚生労働大臣賞、そして2021年には、「霧島ガストロノミーコレクション」にて最高賞の7ツ星を獲得しました。知事賞、観光土産審査会での受賞は、ちょうど新店をオープンしたときでしたので起爆剤にもなり、会社としても助かりましたし、おかげで広く認知していただけるようになりました。

包装紙にも記載。幅広い世代の方へのお土産に最適です。

―次に生サブレについて、発想のきっかけについて伺えますでしょうか?

徳重 「丸十[生]サブレ」は、10年前に少し時間ができた時に、私が全国のお菓子屋を巡り、色々なところを見て研究した末に生まれた商品です。クッキーとチョコレートはやはり人気があるな、ということで作りました。クッキーといえば硬いイメージがありますが、それを柔らかい生地にしたところ大人気になりました。名称には、鹿児島・島津家の家紋にインスピレーションをいただきまして、「丸」と「十」を取り入れました。

左より、「チョコレート」、「ホワイトチョコレート」、「霧島茶チョコレート」。

―生地とチョコレートの割合が本当にちょうど良く、バターが香る柔らかい生地も新感覚でした!

徳重 弊社では、「クッキーとカステラの中間」と表現しています。チョコレートに霧島茶を加えるなど、地元の方が喜んでいただけるような味を揃えました。

日本茶にもコーヒーにも合うお菓子。写真は「霧島茶チョコレート」。

―お土産にもぴったりですね。

徳重 ありがとうございます。地元の方にも喜んでいただきつつ、お土産としても親しんでもらえるようなお菓子を作っていこうと、新商品では生菓子の「生かるかん」と日持ちのする「生サブレ」を作りました。「生かるかん」は賞味期限が約10日、「生サブレ」は、賞味期限が2ヵ月です。他、弊社には、アップルパイやチーズケーキもありますので、ぜひHPをご覧いただきたいですね。

―お買い物をされている方の反応はいかがでしょうか?

徳重 通販サイトのほうですと同じ方にたびたび購入していただいていたり、空港や駅にも「リピーターです」という方がいらっしゃって、いずれにしても弊社のお菓子を美味しく楽しんでいただいていると知り、嬉しい限りです。

―それでは最後に、今後の展望について聞かせてください。

徳重 弊社は空港や中央駅に出店しているのですが、コロナ禍では飛行機に乗る人、新幹線に乗る人が3割に。つまり売り上げも3割になりました。その非常に厳しいときに、「これじゃいかん」と、ホテル様をはじめ、たくさんのところに営業をさせていただきました。すると、コロナが落ち着いて観光客が増えた今、売上はコロナ前よりも良い状況が続いています。今後は、改めて地元の人たちに喜んでもらえるようなものを作っていきたいと考えています。さらに製造の拡張なども行って、県外での展開も視野に入れていきたいですね。

―「鹿児島、そして霧島はとても良いところです。ぜひ遊びにいらしてください」と、徳重社長。豊かな自然を眺めながら「生かるかん」や「生サブレ」をいただくと、さらに美味しく感じそうですね。この度はお話をありがとうございました。

「創作生かるかん」 (お詰め合わせ10個入)
価格:¥1,790(税込)
店名:霧や櫻や 薩摩菓子処とらや 公式菓子通販ショップ
電話:0995-73-5511(9:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kiriyasakuraya.com/products/detail/62
オンラインショップ:https://www.kiriyasakuraya.com

「丸十[生]サブレ」(お詰め合わせ12枚入)
価格:¥1,350(税込)
店名:霧や櫻や 薩摩菓子処とらや 公式菓子通販ショップ
電話:0995-73-5511(9:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kiriyasakuraya.com/products/detail/19
オンラインショップ:https://www.kiriyasakuraya.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
徳重克彦(有限会社徳重製菓とらや 代表取締役社長)

1966年1月生まれ。大学を卒業後、関西の外食チェーン、証券会社勤務などを経て、1998年に同社代表取締役社長に就任。2009年に霧島市観光協会会長に就任し、霧島市の観光活動も行っている。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/橋本小波 画像協力/徳重製菓とらや>

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