本体も蓋も。あれもこれも可能にする鉄鍋「どっちもどっちも」

2023/11/06

アウトドア派のニーズをギュギュっと盛り込んだ、実に多機能で便利な調理器具です。仕掛け人は、祖父の起こしたネジの町工場を、一躍ライフスタイルカンパニーへと変貌させた3代目。インテリア、エクステリア、DIY製品の製造・販売のほか、カフェ、工務店、レンタルスペース業など幅広い事業展開を行う根底には、ものづくり技術へのリスペクトがありました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社友安製作所 代表取締役社長の友安啓則氏に、取材陣が伺いました。

株式会社友安製作所 代表取締役社長の友安啓則氏

―創業から社長ご入社までの御社のあゆみをお聞かせください。

友安 祖父がネジを作る工場として創業しました。その後祖父は針金を曲げる機械を開発し、カーテンフックやSカン、丸カンなど線材加工を行うようになりました。父が継いだ頃の1960~70年代は、畳からフローリングへと日本の住まいが替わり、カーテン需要が高まった時期。鉄製のカーテンフックを作っていた友安製作所にとって、黄金期だったと言えるでしょうね。町工場ながら働き盛りの従業員を30人も抱えていました。

しかし、プラスチック製のカーテンフックが出てきてからは売り上げが激減。私が入社を決めた2004年の従業員はわずか5名で、その平均年齢も60歳くらいだったと思います。

創業者が開発した線材加工機械で金属製のカーテンフックを製造。

―その状況の家業を継ごうと思われたのは?

友安 私は、高校からアメリカに渡り、高校、大学、大学院を卒業。そのままアメリカの商社に就職し、起業をして輸入の仕事もしていました。しかし、父が病に倒れたのを機に帰国。父はほどなく回復し、私が会社に入るのを賛成しませんでした。たたむことを考えるほどの状況でしたから。

だけど、父と一緒に働きたいという気持ちがありました。子どもの頃、父の配達について行った取引先に「跡継ぎだな」とよく言われていた記憶がありました。アメリカで学んだ経営学の知識や起業の経験を生かせるのではないかという希望がありました。子どものころから知っている社員がいる会社をなんとかしたいという強い思いがありました。

つまり、厳しい状況でも、父が反対しても、入社への気持ちが揺るがなかったんですよね。

―入社後どのような取り組みを?

友安 父は私の入社に「自分の給料分15万円を、既存事業に頼ることなく半年以内で稼ぐ」という条件を出しました。そこで、アメリカでの経験を生かして、海外から直接商品を買い付けて、トラックに積み込んで売り歩くことからスタート。中間業者を挟まなければ良い商品を安くできますよね。台湾からカーテンレールを仕入れたのが最初でした。

さらに、小売店を見ていると、同じ製品でもブランド品であれば高値がついていることに気がつきました。そこで、自分でブランドを立ち上げることにしたのです。ブランド名は『Colors』。カタログを作り込み、ホームページを作り、営業をしながらウェブショップも整えました。全部1人で、がむしゃらでしたね。

すべて自分でやっていたので、お客様の声がダイレクトに届いてきました。「こんな商品ないの?」「こんな物が欲しい」という声に応えるうちに商品が増えていき、広くインテリア商材を扱うようになりました。

商品が増えるにつれ、自分だけでは回らなくなり、売り上げも伴ったので人を増やしました。すると、自分でやっていたことを任せることができるので、自分はまた次のことができるようになる。そうやって『Colors』は少しずつ大きくなりました。

カーテンレールの輸入販売からスタート。

―『Colors』に込めた想いは?

友安 日本に帰ってきた2004年ごろ、日本では凄惨な事件がたくさん起きていました。殺伐としているというか、みんなが暮らしを楽しんでいないからじゃないかと思ったんですね。日本の家って、まだ壁は白色で、割と規格化されて一様な間取りが多かった。それでは暮らしは楽しくないよなー、と……。だから凄惨な事件が起こるというのは飛躍した考えではありますが、そんな生活に彩りを加えたいという思いでした。

―それが今も御社のビジョンとなっていますね。

友安 「ADD COLORS TO EVERYONE’S LIFE」を2つの意味にとらえて、「世界中の人々の人生に彩りを。」というビジョンのほか、「世界中の人々の人生の一部にわたしたちの製品・サービスを。」というミッションにもしています。世界中の人々がうちの商品やサービスを、1つでも暮らしに取り入れることで、人生、彩り豊かになるお手伝いができればとの思いです。

DIYワークショップも頻繁に開催。

―インテリアやDIY用品の通販、カフェ運営、工務店事業、メディア、レンタルスペース、まちづくりと、実に幅広い事業展開です。

友安 多角的な展開にも思えますが、実はすべてつながっています。世界中の人にうちの商品やサービスを届けるためにどうしたらいいかと考えたら、いろいろな事業ができ上りました。例えば、オンラインと専門店だけでは届かない層があるだろうが、インテリアショップではハードルが高い……老若男女が気軽に立ち寄れるカフェならどうだろうか、と。壁紙など店のアイテムには値札と二次元コードがついていて、その場でもネットでも買える仕組みになっています。

カフェの内装には自社製品を使用。インテリア・DIYアイテムを実際に見て購入できる。

内装工事は自身でするのがもっともリーズナブルなのでうちではDIYを推していますが、お金を払って職人に頼みたいという一定層に向けて工務店事業も立ち上げました。

自社商品やDIY技術のPRを目的としたメディア事業では、ホームパーティ推進委員会を作りました。私たちの商品に需要が生まれるとき、つまり、家の中をきれいにするタイミングって、人を招くときじゃないですか? 来客をワクワクしながら準備して待つ、ホームパーティを皆で推進しましょうという取り組みです。大小企業合わせて130社くらいが賛同してくれているんですよ。

家に手を入れたいと思うきっかけともなるホームパーティを推進。

レンタルスペース事業では、スペースを持っている人と使いたい人をマッチングさせるサイトを運営しています。スペースを持っている人は我々の通販事業の潜在顧客でもあるわけなので、サービス利用の物件オーナーにはECサイトで使えるクーポンを発行しています。

これらの事業を一種の経済圏のようなものとして、お客様がぐるぐる回って楽しんでいただき、暮らしを彩り豊かにするお手伝いをしたい。これを「Colors Circle」と呼んでいます。

―一連のビジネスは初めから想定されていましたか?

友安 もちろん、アメリカでの経験や学びも生きていると思いますが、もともと両親ともに商売をする家系だったこと、日本に戻ってきて出会った社員やお客様、仕事先など人に恵まれた結果だと思います。

―輸入や小売業中心だった中で自社商品を作るようになったきっかけは?

友安 8年ほど前から、「友安製作所フェスタ」という、お客様に工場や社内を見てもらうオープンファクトリーを行うようになったのですが、多くの皆さんが足を止めて写真を撮られる場所が、父の金属加工機械なんですよね。すでに売り上げは全体の1%程度で、いつたたもうかという状態だったのに。それを見た時、ものづくりが強烈に魅力的に思えて、どうしようもなくものづくり企業にかえりたいと感じたんです。

今また、ものづくりを始めるにあたって、同じように針金を曲げて商品を作るのではなく、デザイナーやマーケッターという、物を売ることに特化したからこそ集まった人材にも加わってもらおうと思いました。クリエイティブな観点で企画した商品を、金属加工の職人が作るというビジネスモデルを立ち上げました。それがアイアン家具ブランド『TEKKI CRAFT』です。

ものづくり企業への回帰を現在の友安製作所らしく実現させた『TEKKI CRAFT』の商品。

―どのようなブランドになったのですか?

友安 鉄を扱う技術を生かし、荒々しさ、曲線の繊細さなど、鉄のいろいろな面を引き出した家具がラインナップしています。古木と組み合わせた温かみを感じるもの、ビンテージ風、北欧調などさまざまなテイストになじむのが鉄の良いところではないでしょうか。

「アイアンフレームラウンドコーヒーテーブルsui」(¥24,827税込)など。

手前みそですが、うちの溶接技術は本当にすばらしいと思っています。溶接は、歪が出たりがたついたりしがちですが、溶接とわからないほどの仕上がりだと自負しています。家具はもちろん、看板もよく売れているんですよ。

風で飛ばされる心配不要の「アイアンスタンドサインボードtate」(¥32,813税込)。

―「どっちもどっちも」誕生の背景は?

友安 塗装機やレーザー加工機も入れるなど、本格的にものづくりを再開したら、他社さんの技術や製品づくりにも猛烈に興味がわいてきました。それまではメーカーさんが作られた商品を、ただ仕入れて売る立場だったのが、商品企画や、技術の生かし方を考えるところから関わりたくなったんですね。

そうした中で、地元を同じくする藤田金属株式会社さんの、金物製造の卓越した技術に、友安の強みを乗せた商品を作れないかと考えました。

私を含めうちの社員はキャンパーが多くて、既存のものでは使いづらさを感じることがあったので、「こうだったらいいな」を盛り込んだ鍋を作ることにしたのです。

キャンプギアとして開発スタート。

―具体的には?

友安 フライパンだと持ち手がかさばるとか、鍋もフライパンもあれもこれもと調理道具が増えがちとか、アウトドア専門グッズでは収納場所に困るとか。

「どっちもどっちも」は、焼く、炒める、蒸す、煮るといろいろな調理ができる両手鍋タイプ。蓋も同じように使えるので、1セットあれば2つの料理に対応できます。鉄製なので、熱伝導性や耐久性にすぐれ、使い込むほどに調理しやすくなります。特筆すべきは、ハードテンパー加工。鉄製フライパンは、最初にから焼きしたり油ならしをしたりという手間があるのですが、藤田金属さんのは「ハードテンパー加工」という独自の加工が施されているので使い始めの手入れが不要なのです。

―「友安らしさ」はどう盛り込まれましたか?

友安 色味、蓋のロゴ、意匠、フォルム、小さく入れたメモリなど、細かくリクエストして、はじめはちょっと無理かな? というものもありましたが、藤田金属さんの技術力をもって応えていただけました。

もっともこだわったのは、蓋に入れた刻印。

鍋も蓋も。アウトドアでもキッチンでも。デザインもファンクションも。ガスもIHも直火もオーブンも。煮るも焼くも蒸すも炊くも炒めるも。藤田金属も友安製作所も。いろいろな意味での「どっちもどっちも」。ネーミングや売り方といったブランディングも、友安らしさではないでしょうか。

藤田金属の技術と友安製作所のブランディング&販売力がコラボ。

―今後の展開は?

友安 本社のある大阪府八尾市には、ものづくり企業がたくさんあります。その多くは、技術は素晴らしいが販売力が弱い。うちは長く「売る」ことに特化してきたので、その強みを生かした商品開発をもっと続けていきたいと思っています。

先ほど少し触れた「友安製作所フェスタ」は1社で行っていますが、近隣各社が集まって、拠点施設「みせるばやお」やプロジェクト「FactorISM(ファクトリズム)」を立ち上げ、まちづくり事業も行っています。ものづくりの街、クリエイティブな地域として八尾を盛り上げ、 世界に発信していきたい。これまで培ってきたノウハウを生かした地域ブランディングやまちづくりに貢献したいと思っています。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

「どっちもどっちも」
価格:¥6,820(税込)
店名:DIY・インテリア・エクステリア専門店 友安製作所
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.styledart-store.com/outdoor/docchimodocchimo.html
オンラインショップ:https://www.styledart-store.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
友安啓則(株式会社友安製作所 代表取締役社長)

高校からアメリカ留学、City University of Seattleにて経営学修士 M.B.A.を取得。
大学在学中から商社で働き、友人と起業。2004年に帰国、父親が営む線材加工製造業の会社へ入社し、インテリアの輸入商材を販売する新事業やオンラインストアを立ち上げる。2016年代表取締役社長に就任。東京、大阪、博多にて、インテリア、DIY、カフェの融合をコンセプトにした「Cafe」も運営。

<取材・文/植松由紀子 画像協力/友安製作所>

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