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震災を乗り越え、故郷・福島の土に咲いた希望のバラ「シュルプリーズ」

2025/10/28

栃木県・那須高原にある、多くのガーデニング愛好家が足を運ぶ人気の「コピスガーデン」。四季折々の美しい庭園にカフェや雑貨店も併設され、訪れる人々に植物を通した「しあわせ時間」を提供しています。今回、編集長のアッキーが注目したのは、この場所から届けられる、特別な物語を持つオリジナルローズ「シュルプリーズ」です。その誕生の裏に隠されたストーリーを、大森プランツ株式会社 代表取締役の佐々木清志郎氏に取材スタッフが伺いました。

大森プランツ株式会社 代表取締役の佐々木清志郎氏

大森プランツ株式会社 代表取締役の佐々木清志郎氏

―まず、会社の歩みについてお聞かせください。

佐々木 もともと私は福島県南相馬市で、農家の長男として生まれました。21歳で就農し、米や野菜を作っていたのですが、当時は国の食糧管理制度で米の価格が決められていて、自分で値段をつけられないことにもどかしさを感じていました。「自分で作ったものの価値は、自分で決めたい」。その思いから、30歳のときに家業を離れ、園芸の世界へ足を踏み入れたのです。
しかし、作った花を市場へ出荷しても、相手が値段を決める仕組みは変わりませんでした。そこで市場を通さない「市場外流通」を実現するために仲間と組織化し、1995年に「大森プランツ」を設立しました。

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那須高原にある「コピスガーデン」。
敷地内には、花々が咲くガーデンだけでなく、芝生広場や苗売り場、カフェなども併設。

―社長ご自身の歩みの中で、大きな転機となった出来事はございますか。

佐々木 やはり2011年の東日本大震災です。私たちの農場は福島県南相馬市にあり、原発との距離は14km。3月11日は出荷の最盛期と重なっていたため、後ろ髪を引かれる思いでしたが、原発の爆発という事態を受け、避難を決意しました。
その時、私は55歳。「新しく事業を始めるには遅く、辞めるには早い」と感じる年齢です。すべてがゼロからの再出発となり、本当に悩みました。そんな時、取引先の農家さんたちの顔が頭に浮かんだのです。「ここでやめたら、みなさんに多大な迷惑がかかってしまう」という責任感が、私を奮い立たせました。「よし、やるか」と。それが、この栃木県・那須の地で再起を図る決意につながった一番の原動力ですね。

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ガーデンに併設されたショップでは、バラや宿根草をはじめ、こだわりの雑貨も取り扱う。

―今回ご紹介いただく「シュルプリーズ」は、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

佐々木 私たちはこれまで、ヨーロッパの著名なバラの日本販売代理店をしてきましたが、「自分のところでオリジナル品種を出す」ことは長年の夢でした。その夢が初めて形になったのが、この「シュルプリーズ」です。
震災後、私たちの故郷である南相馬の農場は、バリケードで封鎖されていました。7年ほど前にようやく警戒区域が解除され、私たちは故郷へ戻りました。そこから5年という歳月をかけ、再び栽培ができるように土壌を整え、ついに完成させたオリジナルローズの第1号が「シュルプリーズ」なのです。「シュルプリーズ」はフランス語で「驚き」を意味する言葉。まさに、復興の象徴ともいえるバラです。

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福島の地で生まれた、オリジナルのバラ「シュルプリーズ」。
大森プランツで作られたバラの第1号。

―「シュルプリーズ」ならではのこだわりや、独自性について教えてください。

佐々木 私が一番気に入っているのは、まるで紙細工か、絹の布のような花びらの質感です。独特の風合いも魅力です。色は真っ白ではなく、少しクリーム色がかった温かみのある白色なので、どんなお庭にも優しく馴染みます。
そして、何よりも「丈夫」であること。年に3〜4回花を咲かせる四季咲きのバラは、体力を消耗しやすく病気にかかりやすいものも多いのですが、この品種は病気に強いのが特長です。ですから、ガーデニングが初めての方でも安心して育てていただけると思います。

―その丈夫さを実現するためには、どのようなご苦労があるのでしょうか。

佐々木 新しい品種を生み出す「育種」という作業は、非常に根気がいります。異なる性質のバラを交配させて種を作り、それを蒔いて育てるのですが、人間と同じで、親と同じ性質のものが生まれるとは限りません。無数の個性の中から、これはというものを選抜。さらに2〜3年育てて性格を見極める必要があります。10個の種から、最終的に残るのは1個あるかないか。実に9割以上を捨ててしまう、厳しい世界です。そうした過程を経て、ようやく一つの品種が誕生するのです。

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絹のような質感が美しい花びら。丈夫で育てやすいのも魅力。

―ご家庭で美しく咲かせるためのコツがあれば、ぜひ教えてください。

佐々木 肥料をしっかりと与えた方が、よりいい表情の花を咲かせてくれます。難しく考える必要はなく、開花の2カ月前くらいを目安に追肥をしてあげるといいでしょう。手をかけた分だけ、美しい花で応えてくれる。そんな植物との対話も、ガーデニングの醍醐味だと思います。私たちは、ただ「見る」だけの園芸から、植物と共に暮らしを豊かにする園芸を提案していきたいと考えているのです。

―今後の展望についてお聞かせください。

佐々木 まずは、南相馬の農場を復活させ、全面的に稼働させることが当面の目標です。故郷には広大な土地がありますから、そこを拠点に、これからも新しい商品の開発を加速させていきたいですね。南相馬の土から、また新しい「驚き(シュルプリーズ)」をお届けできればと思っています。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

バラ大苗 シュルプリーズ【大森プランツオリジナル

「バラ大苗 シュルプリーズ【大森プランツオリジナル】」
店名:CoppiceGARDEN
電話:0287-62-8787(10:00~16:00 ※土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
オンラインショップ:https://www.coppicegarden.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

佐々木清志郎(大森プランツ株式会社 代表取締役)
1956年、福島県南相馬市の農家に生まれる。農業に従事する中で、自ら価格を決定できる仕組みを求め、30歳で園芸の道へ。市場外流通を目指し、1995年に大森プランツ株式会社を設立。ヨーロッパの最新品種を日本に紹介する一方、東日本大震災で被災後、栃木県那須町に拠点を移し「コピスガーデン」を開業。近年は故郷・南相馬の農場を再建し、長年の夢であったオリジナル品種の開発にも力を注いでいる。

<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/大森プランツ>

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