岐阜県関市は日本屈指の刃物の生産地であり、関市で作られた刃物は国内外で高い評価を受けています。今回、編集長アッキーが注目したのは、人気のダマスカス模様が入った高級包丁「兼常作 水面風シリーズ 和牛刀210mm 木鞘付(KC-822)」と普段使いに便利な「兼常作 モリブデン鋼DSR-1K6 赤合板丸柄 三徳165mm(KC-360)」です。製造・販売元である株式会社北正の代表取締役 田上仁氏に関市の包丁の魅力や商品の特徴など、いろいろと伺いました。

海外からも熱視線!刃物のまちの職人が丹精込めて手作りした和牛刀&三徳包丁
2024/06/28

株式会社北正 代表取締役の田上仁氏
―御社の沿革についてお聞かせください。
田上 弊社は1948年に創業し、岐阜県関市の刃物を全国へ広げるために卸売業をスタートさせました。その後、オリジナル商品の開発に努めて業績が拡大したため、1964年に株式会社北正を設立しました。時代とともに流通が増大し、1968年には東京営業所、1971年には新潟県三条市に新潟営業所を設立しました。2005年から海外市場にも参入しました。良質な刃物を企画・製造し、日本国内はもちろん世界各国で販売しています。


「刃物のまち」と称される関市では、包丁だけでなく多彩な刃物が生産されている。
―関市の職人さんの技術や刃物作りの特徴とは?
田上 関市には日本刀を作っていた歴史があります。私は刀鍛冶が日本刀を作る工程で派生した刃物の一つが包丁だと思っています。そのように考えると、関市の職人は日本刀から包丁へと受け継がれた800年にもおよぶ刃物作りの技術を継承しています。

鎌倉時代に刀鍛冶が移り住み、刃物作りの文化が開花。
その技術や精神が今も受け継がれている。
田上 刀作りは昔から分業で行われます。鞘を作るのは鞘師、柄を作るのは柄巻師(つかまきし)といったように、別々の人が作る工程があるのですが、関市の刃物作りも同様です。いろいろな会社が各工程を分業して一つの商品が出来上がります。
―仕事をする上で誇りに思っていることは何ですか?
田上 日本国内でも岐阜県関市といえば「刃物のまち」として有名です。海外でも刃物を扱う専門会社の方なら、メイドインジャパンであり、加えて関市の職人によって作られた刃物であれば高品質だと分かります。そのような世界に誇れる商品を扱っていることは私にとっても誇りです。
―海外の刃物との違いを教えてください。
田上 刃物は簡単に作ろうと思えば作れるため、生産された国などによって品質がまったく異なります。関市の職人が作った刃物は他と比べて高精度です。関市の職人は仕事に対する意識がとても高く、手間ひまかけて蓄積してきた技術が刃物作りの各工程に活かされています。さらに、日本の素材メーカーの商品も優秀であり、素材と作り手の質の高さが世界に誇れる優れた刃物を生み出しています。
―「兼常作 水面風シリーズ 和牛刀210mm 木鞘付(KC-822)」の特徴を教えてください。
田上 こちらの商品は、そよ風によって水面にできた細やかな波模様を連想させる63層のダマスカス模様が入った包丁です。切れ味の良し悪しが決まる芯材には、切れ味が鋭く刃持ちの良い最高品質の日本製ステンレス刃物鋼を採用しています。また、専用の木鞘は日本刀の鞘にも施されている赤目石仕上げで、艶やかに磨き上げた六角柄は高級感があります。



美しいダマスカス模様が入った包丁は特に海外で人気。
鞘や柄など、細部まで洗練されている。
―この刃物が評価されている点は?
田上 ダマスカス模様は鋼材の層が増えれば増えるほどきれいに浮かび上がります。そして、細やかな模様を多く入れるには鋼材の層を増やさなければならず、価格も高額になります。ダマスカス模様を浮かび上がらせるためには知識や技術が必要であり、ダマスカス模様の刃物を量産化したのはおそらく日本が最初です。このような美しい刃物が作れる日本の技術を海外の方が評価してくださっているのだと思います。
―どんな方がよく購入されますか?
田上 この包丁の魅力は豊かな美しさであり、持った時に喜びや充実感が高いと思います。この包丁は見た目がとても映えるため、オープンキッチンのようにお客様に料理の場を見せながら調理するような方に向いています。特に海外の方に人気で、インバウンド効果によって東京や京都、大阪のような観光地の刃物屋さんでは需要が高いと聞いています。
―「兼常作 モリブデン鋼DSR-1K6 赤合板丸柄 三徳165mm(KC-360)」の特徴は?
田上 こちらは「日本のご家庭で使っていただきたい包丁」として作りました。見た目はオーソドックスですが、機能性重視の日本人のお客様に喜んでいただけるように刃の部分を工夫しました。一般的な刃物作りの工程に1工程増やすことで、最初に使う時から切れ味の良い状態に仕上げています。


包丁の刃は切れ味が良く、ハンドル材は丈夫で耐水性にも優れている。
軽さも使いやすさのポイント。
―自分に合う包丁を見つけるにはどうしたらよいですか?
田上 包丁を販売するプロに聞くのが一番です。高い包丁が良いと思っている方が多いですが、高い包丁であっても自分のニーズを満たすとは限りません。良い包丁とは自分の使い方に合った包丁です。購入する前にプロに聞いたりインターネットで調べたりして、包丁について学んだ方がよいと思います。
―最後に、今後の展望を教えてください。
田上 職人の手作業による刃物作りは高品質の製品が作れます。しかし一方で、職人の高齢化や継承者不足、人手に代わる高度な機械化コストなどの問題により、供給体制に苦戦を強いられている現状があります。関市の伝統である刃物産業が持続できるよう、弊社としても職人と協議しながら打開策を考えていきたいと思っています。
世界各国での和食ブームによって日本製の包丁が評価を受けて高価格帯の需要が旺盛です。逆に日本国内で使用される家庭用の包丁は海外製の低価格帯商品が多くなっています。刃物のまち・関市に所在する業者として、日本の方に日本の包丁を使っていただくことを弊社のミッションと考えています。高価格帯からリーズナブルな商品まで多彩なラインナップを揃え、さまざまなお客様に選んでいただける商品をお届けしたいと考えています。
―貴重なお話をありがとうございました!

「兼常作 水面風シリーズ 和牛刀210mm 木鞘付(KC-822)」(全長348mm、刃長210mm、刃厚2.3mm、重さ約140g)
価格:¥50,600(税込)
店名:カネツネセレクト
電話:0575-24-1211(9:00~17:00 土日祝祭日、お盆、年末年始を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kanetsune.jp/view/item/000000000458
オンラインショップ:https://www.kanetsune.jp/

「兼常作 モリブデン鋼DSR-1K6 赤合板丸柄 三徳165mm(KC-360)」(全長290mm、刃長165mm、刃厚1.5mm、重さ約115g)
価格:¥5,940(税込)
店名:カネツネセレクト
電話:0575-24-1211(9:00~17:00 土日祝祭日、お盆、年末年始を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kanetsune.jp/view/item/000000000569
オンラインショップ:https://www.kanetsune.jp/
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<Guest’s profile>
田上仁(株式会社北正 代表取締役)
1967年石川県生まれ。大学卒業後にトステム(現リクシル)に入社し、8年間営業職を勤める。株式会社北正に転職し、2019年に同社代表取締役に就任。刃物の街・関市で作られる自社ブランド商品を海外に広めるべく奮闘中。
<文/ウツギナオコ MC/矢口優衣 画像協力/北正>