子どもの足の健康に関心の高い保護者から、高い支持を得る上靴があると聞きつけました。それは、商人としてのポリシーよりも、子どもの足を守りたいという正義感が勝ったからこそ完成した商品でした。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社新日本教育シューズ 代表取締役の黄瀬 修氏に、取材陣が伺いました。
1日で一番長く履く子どもの足を守る上靴「パワーシューズ白クレープソール(アメ底)」
2023/04/21
株式会社新日本教育シューズ 代表取締役 黄瀬 修氏
―創業からの歩みをお聞かせください。
黄瀬 上履きや体育館シューズに特化したメーカーとして父が創業しました。途中、靴の良し悪しが体育の成績に影響することを避けるため、シューズ類が自由購入ではなく教材として統一化され、学校の指定を受けて販売を続けてきました。
私も父の後を継いでしばらくは同じように商売を行なっていました。学校の上履きといえばだれもが想像する、バレエシューズや三角ゴムのシューズを、当たり前のように作って販売。商いの視点ではそれで正解だったのかもしれませんが……。
―転機が訪れたのですね。
黄瀬 大手スポーツメーカーが出した、子どもの足に関するデータに目が留まりました。子どもたちの、なんと72.3%が内反小趾だというのです。外反母趾はよく聞きますよね、ハイヒールなどをよく履く影響で、足の親指部分がくの字になってしまう症状。内反小趾は、小指が内側に曲がってしまうのを指します。
大手メーカーのデータなので疑う余地はなかったのですが、えー、本当に? という思いが強く、実際の園や学校に行ってみることにしました。すると、4人中3人くらいの足の小指が、本当に曲がっていたのです。衝撃でした。
なぜかを追求すると、従来の上履きにその原因があるように思えてきたのです。子どもの足はつま先に向かって扇状に広がっているのにもかかわらず、実際には、つま先部が細い上履きが非常に多い。また、靴の中で激しく動く足を1本のゴムバンドだけでは止められず、子どもたちは動いてしまう足をつま先でコントロールすることになる。「すぐに大きくなるから」という理由でしばらく大きめサイズを履くことも多い。突き詰めるほどに、上履きそのものを根本から変えなくてはという気持ちが生まれました。
本来まっすぐであるべき足の小指が曲がってしまう子が72%もいるとか。
―そして0から開発された教育パワーシューズ。ロジックを教えてください。
黄瀬 まずは足先の幅ですよね。指先が靴の中で自由に動かせる十分なゆとりがありながら、かかとを守り、甲をしっかり固定ができることが大切。そこで、人間工学に基づいた足型を独自で作り、甲の部分は、伸び縮みしない太いマジックベルトで甲の高さに関係なくしっかりと固定できるようにしました。かかと部分は安定するよう、大型のヒールガードを採用しました。
園児が自分でしっかり締められる太いマジックベルトで足を固定。
かかと安定する大型ヒールガード、取り外しの容易な中敷きはかかと部に衝撃吸収スポンジがついていて、
着地時の衝撃を緩和。
こうして見事、一般的なものに比べて2倍ほど高価な上履きができ上ってしまったのです(笑)。2003年当時、世は安くて良い物を求められる時代。商人として迷いがないわけではありませんでした。
―発売の決め手は?
黄瀬 本当に子どもの足の健康を考えて作った「機能」を買ってもらおう、それを求めている保護者はきっといる! と信じて踏み切りました。
―販売戦略は?
黄瀬 上履きへの考え方から変える必要があると思っていたので、啓もう活動に力を入れましたよ。付き合いのなかった学校や幼稚園にも営業に行き、全国を飛び回りました。そうする中で、「子どもたちが1日のなかで一番長く履くのは上履きです」というコピーが生まれました。
上履きは数百円、外靴は高価なブランド品。足の指が曲がってしまっている子、上履きを引きずるように歩く子、少しの段差で転ぶ子……子どもの靴事情を目の当たりにするにつけ、正義感がどんどん大きくなり、営業トークにもますます熱が入るようになりました。
―手ごたえを感じるようになったのは?
黄瀬 発売の翌年くらいからでしょうか。喜びの声を聞くようになりました。それまでの、学校を通じた直販による殿様商売とでもいうべき姿勢を心から反省しました。初めて直接聞くお客様の声が本当にうれしくて。
ネット通販も比較的早い段階から始めていて、メールや口コミに「やっと見つけました」「ようやく出会えました」というご意見が目立ちました。やはり、これを求めていた保護者の方は確実にいた、子どもの足の健康だけを考えてここまでやってきてよかったと、しみじみ感じました。
―商品ラインナップについて教えてください。
黄瀬 2003年「教育パワーシューズ」基本の5色からスタート。真っ白と、白をベースにポイントカラーとして赤、青、緑、黄を用いたものです。2010年にはピンクとライトブルーを追加。そもそも上靴の概念を塗り替えた商品ですから、色も固定概念にとらわれる必要がないのでは? との発想で、2021年にはベースを紺色にした「いろこ」も発売。「クレープソール」は2009年から販売しています。お陰様で教育パワーシューズは2023年に20周年を迎えることが出来ました。
白ベースの上靴は全7色。
さらに進化した「いろこ」。
―クレープソール誕生のきっかけは?
黄瀬 ある小学校の先生にヒントをもらって作った商品です。違いはソールで、体育館を傷つけにくく、粘りがあって運動に適したものになっています。「多くの中高生向け体育館シューズにはクレープソールが採用されているのに、小学生用がないのはなぜ?」との声を受けて、それならばと作ってみました。
その先生以外にニーズがあるのかもわかりませんでしたが、思い切って作ってみて良かったと思えるほど、今では好評をいただいています。
体育館での運動に適したクレープソール。
―サイズ展開についてお聞かせください。
黄瀬 多くの上履きは21cmくらいまでは1.0cm刻みでしかないのですが、教育パワーシューズは14.0から29.0cmまで(クレープソールは~28.0cm)、0.5cm刻みで有ります。ハーフサイズを作ることによって生じる在庫の問題や、「子どもの足はすぐに大きくなる」などの意見があり迷いましたが、足の健康を考ると「いや、必要だ!!」と思い切りました。
子どもの足は1年で約1cm大きくなると言われていますから、半年に1度ペースで見直していただければよいのではないでしょうか。なんといっても、1日のうちで一番長く履く靴ですから……。
29.0cmまであるのは、医療や介護の現場、リハビリにもニーズがあると考えたから。実際に、病院や高齢者施設などからの注文も多いんですよ。
―通販で購入する場合のサイズの選び方を教えてください。
黄瀬 教育パワーシューズのおすすめのサイズは、実際の足の長さプラス0.5cmです。うちのWebサイトに正しい測定方法を記載していますから、ぜひご参考ください。
―足の健康への想いをお聞かせください。
黄瀬 大きすぎる上履きでは、思い切り走ったり床を蹴ったりできないばかりか、上履きを引きずるようにしか歩けなかったり、フラットなところで突然転んだりもします。
さらに子どもはよほどの痛みがない限り、サイズが合わないことや足にフィットしていないことに気がつかないので、子どもから言ってくることはありません。保護者が最適なものを選んで履かせてあげることが大事なのではないでしょうか。これからも上履きの常識にとらわれることなく、本当に足の健康を守れるような靴の製造と販売を続けていきます。
―子の健やかな成長や運動機能向上を願う保護者にとって、ウィークデーに子どもが最も長く履く上靴について、改めて考えるチャンスとなり得る素晴らしいお話を、ありがとうございました!
「パワーシューズ白クレープソール(アメ底)」
価格:¥2,310(税込)
店名:教育パワーシューズ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
http://www.power-shoes.com/shop/shopdetail.html?brandcode=001000000019
オンラインショップ:http://www.power-shoes.com/
Instagram:https://www.instagram.com/powershoes_/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
黄瀬 修(株式会社新日本教育シューズ 代表取締役)
1952年滋賀県生まれ。1975年入社。営業・企画を担当し、1994年代表取締役就任。2003年教育パワーシューズ開発。
<文・撮影/植松由紀子 MC/和田英利 画像協力/新日本教育シューズ>