山田平安堂_top

新たな商品開発で漆器の美しさを次代に継ぐ

2022/12/19

お椀や御敷など古くから使われる商品だけでなく和菓子店や世界的ブランドとのコラボ商品、グラスやフォトフレームなど現在のライフスタイルに添った品を生み出す「漆器 山田平安堂」。「漆器の美しい姿を後世にも残したい」と言う4代目代表取締役社長・山田健太氏に、会社の沿革や商品開発について、お話をお聞きしました。

山田平安堂_社長_1
山田平安堂 代表取締役社長の山田健太氏

―まずは、御社の会社沿革をお教えください。

山田 京都の漆器店に勤めていた初代・山田孝之助が、日本橋の東京支店を立ち上げたのですが、数年後に閉店することになりました。そこでその店を買い受け、「山田漆器店」として1919年に開業したのです。

当時の東京には、実用的な漆器はありましたが、京漆器のような雅やかなものが少なかったんです。初代は、その魅力を東京の方にも伝え続けたいと思ったそうです。

その後、「山田平安堂」に社名を変更。3代目である父が、「若い方にも漆器を知ってほしい」「現在のライフスタイルにも合う漆器を」と新しい商品づくりにも取り組み現在に至っています。

山田平安堂_2
山田平安堂_3
戦前の山田平安堂。

―山田様が4代目をお継ぎになったのはいつ頃ですか?

山田 私が26歳のときに、父が急逝しました。私は大学卒業後、別の企業に勤めていて、「いつかは継ぐことになるのだろう」ぐらいにしか考えていませんでした。ですから、父が亡くなったときも、家業を継ぐべきかどうかと迷いました。

ちょうどバブルがはじけた時期で、漆器という伝統の器を売っていくのは難しいタイミングでもありました。けれど、考えてみると、物心ついた頃から、私の生活には常に漆器がありました。漆器に育てられたといってもいいでしょう。そう考えると、先祖が残したこの事業を守り継がなければという気持ちになったのです。

山田平安堂_4
山田平安堂 代官山本店。

―漆器の魅力や使われ方についてお聞かせください。

山田 漆器の魅力はたくさんあります。まずは造形の美しさ、塗りの技術、蒔絵の繊細美。それらすべてが織りなす伝統美があります。

けれど、磁器やガラス器など美しい器や調度はほかにもあり、扱いが難しいと思われがちな漆器は現代人の生活では用いられなくなってきています。それに、どちらかというと漆器は、ハレのイメージがあります。

一般家庭で使うにはハードルが高いと思われているんです。でも、実際は、漆器は扱いやすいもの。それを伝える努力をしてこなかった漆器店がいけないんだと感じました。

なんとかして現代の日々の生活でも使われる器にしなければという想いがあり、商品開発に力を入れ、オンラインショップなどもいち早く始めました。

山田平安堂_5
老舗和菓子店「赤坂青野」の和菓子を詰め込んだお重「一ヶ重 宝尽くし」。

―そんなご努力もあって「一ヶ重 宝尽くし」が人気商品になったのですね。
開発のお話をお聞かせください。

山田 漆器の間口を広げたいと思っていました。そこで、重箱と和菓子とのセットを考えました。創業120年「赤坂青野」さんの赤坂もちや栗饅頭、最中などを一段重に詰合せました。内祝いや手土産などにぴったりだということもあって、人気商品になりました。

漆器付きで贈りすることで付加価値もあるし、和菓子を召し上がった後は、お弁当やお節料理用に使えます。使っているうちに、漆器の魅力を知っていただけるのではと考えたんです。そもそも、この「宝尽くし」という柄の重箱は、50年も続いている人気商品です。

本来は、普遍的な価値のあるものです。ただ重箱そのものが、少し「時代とはずれてきたのか」と思う部分もあって、なんとかこの商品を残すにはと考え、和菓子を詰めることを考えました。和菓子の美味しさも相まって、この一ヶ重は蘇りました。

―お手入れは難しくありませんか?

山田 磁器など他の器と同じように扱っていただければ。お水も洗剤もスポンジも問題ありません。よほどゴシゴシ洗わなければ、漆が剥げてしまうことはありません。
漆器はみなさんが思われるほど難しいものではないんです。

山田平安堂_6
漆職人が1つひとつ手描きする「寿恵広グラス しぶき 金彩/銀彩」。

―新たな商品として、グラスに蒔絵の手法を施した商品も販売されています。

山口 漆の新たな魅力を発信する商品として開発したのが、このグラスです。ドイツのグラスメーカーの上質なクリスタルグラスに、蒔絵を施したものです。

開発当初、ツルツルしたガラスが漆をはじいて上手くつきませんでした。何度かチャレンジしたのですが、技術的に難しかった。そこで、ガラスと相性のいい塗料を開発し、蒔絵の技法を使って手描きで文様を描く手法をとりました。

「Heiando Bar」というバーも経営していますので、そこで使ってみたところ、2年たっても塗料は剥がれず、これならばと販売に踏み切りました。「しぶき」は、精魂込めて職人が描く蒔絵に立体感があって、迫力があります。この技術は特殊ですから、簡単には真似できないものだと自負しています。

―今後の展望をお聞かせください。

山田 漆はすべてのマーケットに対応できる素材です。女性が身に付けるアクセサリー、インテリアにもフィットします。柱や床など建具にも漆を用いることができます。海外にも、それらの商品を提案していきたいですね。

若手の育成も今後の課題だと思っています。漆の技術を学んだのにほかの仕事をしている方、漆に興味のある方を採用することで、新たな技術を磨いていただく場にできればと思います。

―貴重なお話をありがとうございました!

山田平安堂_商品1

「一ヶ重 宝尽くし/背守り(和菓子付)」
価格:¥7,040(税込)
店名:山田平安堂
電話:03-3464-5541
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamada-heiando.jp/fs/heiando/c/takara_wagasi
オンラインショップ:https://www.heiando.com/

山田平安堂_商品2

「寿恵広グラス しぶき 金彩/銀彩」
価格:各¥9,900(税込)
店名:山田平安堂
電話:03-3464-5541
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamada-heiando.jp/fs/heiando/c/suehiroglass-shibuki
オンラインショップ:https://www.heiando.com/
海外向けオンラインショップ:https://www.heiando1919.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
山田健太(株式会社山田平安堂 Heiando Bar 代表取締役社長)
1972年東京生まれ。大学卒業後、大手金融機関を経て、26歳で家業を継ぐ。漆器業界や職人技の継承に尽力しつつ、世界屈指のハイジュエリーブランド「Chopard」や銀食器ブランド「Christofle」とのコラボレーションなど、海外への伝統工芸普及活動も力を入れている。「漆のある空間」をテーマに、六本木にオープンした、Heiando Bar (He&Bar)も人気。学生時代はアメリカンフットボールに打ち込む。現在も大学の助監督として、グラウンドにも足を運んでいる。

<文/中井シノブ MC・撮影/ 橋本小波 画像提供/山田平安堂>

OFFICIAL SNS

Instagramでハッシュタグ#お取り寄せ手帖を検索。

  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter