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「面倒」が、「感動」に! 洗濯バサミから着想を得た爪切り

2022/12/19

新潟県の中央部に位置し、燕市とともに「ものづくり」の地として知られる三条市。株式会社諏訪田製作所は、この地で約1世紀にわたり刃物の製造を行っています。また同社の「つめ切り」と言えば、今やその切れ味と佇まいの美しさで、世界からも愛される逸品。今回は、代表取締役の小林知行氏に、ものづくりに対する思いを伺いました。

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株式会社諏訪田製作所 代表取締役の小林知行氏

―三条市は、なぜ刃物の産地となったのでしょうか?

小林 世界ではドイツやイタリア、フランス、日本国内ではここ燕三条地域ほか、岐阜県の関市、大阪の堺など、刃物の産地は各地にあります。日本ではその昔、国中で刀が作られており、新潟も上杉謙信の領地だったことから、戦国時代より刀作りが始まりました。

また新潟は米作が盛んで、鎌や鍬といった土農具、家で使う包丁や鍋なども作られており、それらもこの辺りが刃物産地となった下地のひとつのようですね。そしてこの産業が、今も生き残っている。それには新潟県民の辛抱強い性質、何事もやり抜く性質が関係しているのかもしれません。

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「工場見学に来られた海外の方が、『周りの田んぼがすごい!』と、
たくさん写真を撮影して帰られました(笑)」と小林社長。

―刃物産地の企業の中でも、御社は今、「つめ切り」をメインに製造していらっしゃいます。そのきっかけについて教えてください。

小林 もともと弊社では、針金や金属などの固いものを切断する「喰切(くいきり)」を製造していたのですが、徐々に、機械で作られた製品や、海外のペンチ・ニッパーに押されてしまいました。

その時、先先代が、「喰切の形を小さくして爪切りを作ろう」と決めたのだと。1945年頃の話です。

―機能性と美しさの両方が備わった「つめ切り」は、いつ頃から作られるようになったのですか?

小林 私が社長になってからでしょうか。「美」というより「切れ味」、「機能性」について深く考えるようになり、余計なものを削ぎ落としていこうと。

以前から製造していたものも、そこまで装飾的ではなかったのですが、「もっと持ちやすく」、「もっと切れやすく」と追求するうち、今のようなデザインになりました。ありがたいことにグッドデザイン賞も受賞したのですよ。

―ものづくりをする中で、大切にしていらっしゃることは?

小林 ちゃんとしたものづくりをしよう、ということです。中途半端なものづくりでは、達成感が感じられません。私は頑張った先に、成果や報酬があると考えています。

合わせて、職人としての向上心と責任感も常に備えておきたいですね。行動は心から出てくるものだと思いますから。

―昔から、職人さんの仕事をそばで見ていらしたのですね。

小林 そうですね。学校卒業後、私は他社で営業の仕事をしていたのですが、家の仕事は子供の頃から手伝っていました。

長男として、将来的に会社を継ぐ時ことにも反発はなかったですね。父が65歳で、私が34歳、比較的若い年齢での社長交代でした。良いものを作れば売れて当然、という時代から、そうではない時代への転換期でもありましたので、就任後は、何か新しいことをしていかなければと考えていました。

―そんな御社の「つめ切り」製造について教えてください。

小林 爪切りの製造には、約50もの工程があります。うちに入社した職人は、1人前と言われるようになるまで5年から10年くらいかかります。その訳は、1工程を習得するまでに、最低でも1カ月はかかるからです。

スムーズに進めたとしても、50工程ありますから、最短で50カ月。なので、1日に作れる数も限られています。「早く商品を購入したいです」など、お声をいただくこともあるのですが、すべて職人の手作業であるため、こればかりは仕方がないのです。

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現在、工場では50名ほどの職人が製造を行っている。

―そうして作られている御社の「つめ切り」、今回ご紹介する「つめ切りプチ」について教えてください。

小林 「小さい爪切りを作ってみたい」と、色々試作をしていたある日、洗濯バサミが転がっていて、「こういう爪切りがあったらどうか?」と思いついたのです(笑)。

ただ、洗濯バサミはつまむと開くものですが、爪切りは、つまむと閉じて、爪を切れなければならない、そこで、バネや刃先、それぞれにいろんな試作を重ねて、ようやく完成させることができました。

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まさに、洗濯バサミ!まさかのアイデアソースに驚き。
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パッケージもスタイリッシュ。今や世界中からオーダーが殺到。

―「面倒」から「感動」へ。の、キャッチフレーズが秀逸です。

小林 ダジャレ好きな社員が考えてくれました(笑)。このつめ切りを使うと、爪がサクッと切れて、しかも断面が滑らかに仕上がるので、感動しますよ。

お刺身は、よく切れる包丁で切ると断面が美味しいですよね。この爪切りも同じように、爪を美しく断ち切ってくれるので、爪切りの後のやすりがけも不要です。

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鋭い刃先が、つめをスパッと、美しくカットしてくれる。

―切れ味が鈍ってきた場合は、メンテナンスもお願いできるとか。

小林 そうですね。ただ今は1ヶ月くらいお待たせすることもあります。なぜなら、使い方は十人十色。刃が曲がったり、折れたり、かけたり。同じ状態で帰ってくるものがほとんどないからです。「これは爪を切らずに、硬いものを切ったな」というのもすぐにわかりますよ(笑)。

―今後の展望についても聞かせてください。

小林 機械化の波に飲み込まれ、世界各地の工場が、手仕事を手放しつつある今だからこそ、弊社は歩みを止めてはいけないと考えています。

グスタフ・マーラーというドイツの音楽家が、「燃え尽きた火を大事にするのではなく、火を絶やさないことを大事にしよう」という言葉を残したのですが、その言葉のように、私たちはこの技術に薪をくべ続け、火を絶やさず、世代に伝えていかなければならないと思っています。

それからもう1つ、声を上げることも大切です。僕は料理をするのですが、美味しいものができて、「よし」と思っても、そこでは何も起こりません。

どうするかというと、「ご飯できたよー!」と、誰かに美味しい料理を作ったことを伝えます。そうすると人が集まって、今度は食卓でも「美味しい?」とか「塩が足りない」とかいうコミュニケーションが生まれます。

ものづくりも同じように、作ったら伝える、意見を聞く。今後は、そうしたアクションがもっと必要になるのではないかと考えています。

―最後に、御社のおしゃれな社員食堂には驚きました!

小林 ありとうございます。私たちのような職人仕事はかつて、「見て覚えるもの」だったり、職場も夏暑くて冬寒い、過酷な環境でした。

しかし今は、そんな中で仕事なんて続けられませんよね。食事についても、以前はそれぞれが適当に取っていましたが、思い切って社員食堂を作り、丁寧に作られた食事を、皆に食べてもらうことにしました。

またここは一般の方にも開放していて、有料ですが利用していただくこともできます。それから食事のついでに、私たちの仕事も見学していただければと思って、見学ができる工場も作ったのですよ。

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諏訪田製作所内の社員食堂は、小林社長が考えた「新しいこと」のひとつ。

―「小学生が工場見学にやってくると、いろんな面白い質問を投げかけてきます。そうしたコミュニケーションも、私の楽しみのひとつです」と、小林社長。今回は、お話をありがとうございました!

諏訪田製作所1_商品

「つめ切りプチ」
価格:¥6,490(税込)
店名:株式会社 諏訪田製作所
電話:0256-45-6111(9:00〜18:00)
定休日:土、日、祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://suwadaonline.shop-pro.jp/?pid=167791062
オンラインショップ:https://suwadaonline.shop-pro.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
小林知行(株式会社諏訪田製作所 代表取締役)
1963年生まれ、新潟県三条市出身。1987年明治大学商学部卒業後、地元商社に勤務。1997年に父の跡を継ぎ代表取締役就任。工場環境の改善、オープンファクトリーの実施など、経営者として多岐にわたり取り組む。新商品の開発や、国内外の展示会への出展なども積極的に取り組んでいる。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/柴田阿実 画像協力/諏訪田製作所>

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