今回、編集長アッキーが気になったのは、北三陸から海の幸を届けている岩手のマルコシ商店。創業から50年以上。いくらやうにのリピーターがたくさんいます。株式会社越戸商店2代目社長の越戸優氏に、商品への思いをうかがいました。
地元の魚にとことん一筋! 最高の鮮度と味わい「甘塩いくら」「甘塩うに」貴重な珍味「タコとんび」
2022/05/31
株式会社越戸商店 代表取締役社長 越戸優氏
―地元の魚にこだわった水産加工品が特徴ですね。
越戸 昭和43年に父が地元の魚にこだわった水産物の加工販売業として創業し、2代目として私が社長に就任したのが2008年です。当初は大手メーカーに勝つ力もありませんでしたし、北海道のように土地のブランド力もなかったためとても苦労しました。いろいろな商品を作って国内外の商談に参加しましたが「おいしい!」と食べてはくれるけど、つながらない…。「岩手県下閉伊郡普代村」といっても、知名度が低いんです。“北海道”と記載のある商品は説明なしに売れますが、私たちの商品は、時間をかけて説明をする必要があります。そこまでじっくり話を聞いてくれる人は、なかなかいなかったんですよ。
―成功のカギを握る要素は何だったのでしょうか?
越戸 越戸商店は普代村で生まれ、普代村に育てられた会社です。私自身も普代村の人間ですから、中学や高校の先輩をはじめたくさんの人脈があります。もちろん、地元の漁師さんにも知り合いが多くいます。地域に根差した会社であることが、ブランドづくりのアプローチになる。だったら、地元の漁師から仕入れた旬の魚をどこよりも新鮮な状態のまま商品化することに注力しようと考えました。ちょうど東日本大震災の復興事業「ふるさと割」があって、「販売価格の3割引きで買えるなら、食べてみようかな」というお客さまが増えたんです。そこから徐々に、越戸商店の信頼や知名度につながっていきました。
―地元の海を知り尽くしているからこそできるブランディングですね!
越戸 市場には私も行きますし、会長である父も行きます。自分の目で確かめたものを仕入るからこそ、工場の現場を知っているからこそ、どの商品がどんな加工法に向いているか見極められるわけです。地元の太田名部漁港では、四季を通じて、いろいろな種類の魚がとれます。波にもまれた魚は脂乗りが強く、身が引き締まっているのが特徴です。ただ、季節の魚でも本当においしい状態というのは漁師さんにしか分からないものです。地元に根付いた企業という強みを生かし、先輩・後輩に“いま1番おいしい魚”を教えてもらったり商品づくりのアドバイスをもらったりということも大切にしています。
―「甘塩いくら」の粒の大きさと美しさに感動しました!
越戸 三陸産のいくらは、粒が大きいのが特徴です。一般的に流通しているのは「しょう油いくら」が多いのですが、「塩いくら」は鮮度が良いからこそ作れる商品。水揚げされた当日に加工まで行っているからできる製法で、機械は使わずに手作業で丁寧に仕上げています。塩いくらを評価してくださるお客さまが増え、越戸商店の主力商品にもなりました。
寒流と暖流の交わる三陸の荒海で水揚げされ、
塩のみで味付け。
いくらごはん、パスタ……とレシピも広がります。
―「甘塩うに」も苦みがなく、しっかりとしたうま味が感じられます。
越戸 うにの旬は6月から7月ですが、シーズン中でも月数回の早朝にしか取ることができません。そのため、季節の商品として販売する生うには、かなりの数量限定です。より多くのお客さまに届けたいという思いで開発したのが、「甘塩うに」です。ミョウバンは一切使わず、塩だけで調味しています。
塩だけで旨味をじっくり引き出し、濃厚で深い味わいに。
クリーミーでパスタの具材にもぴったり。
―越戸社長が社長に就任された2年後に東日本大震災がありましたが、会社への影響は大きかったのではないでしょうか。
越戸 2008年というと、リーマン・ショックがあった年。商品の売れ行きも陰りが見えて、300トンもあるイクラ製品の在庫をさばくために損を覚悟で販売していました。そこから少しずつ状況が良くなり始めたところに、東日本大震災…。冷蔵庫や冷凍庫が流され、大槌工場が受けた津波の被害は甚大なものでした。でも、その年の10月には何とか稼働しないと会社の存続も危うくなるため、大槌工場の機能を普代村の本社工場に移転させたんです。
―震災の影響で生産量が減った中で生まれたのが、「タコとんび」だそうですね。鶏肉のような食感とレモンの香りに食欲がそそられます!
越戸 タコとんびはタコの口の部分のことをいいますが、昔からこの辺りではなじみのある珍味です。震災後は船や網などの資材が流されてなかなか漁を再開できない漁師さんも多かったのですが、早い段階で再開できたのがタコつぼ漁。タコの足で加工品を作っても他社商品を追いかけるだけで、競争しても負けてしまいます。だったら、タコの口で勝負してみようと考えました。地元では安く手に入るもので一般的にはあまり価値がないと認識されていますが、タコ1匹あたり1個しか取れない貴重な部位でもありますから。
歯ごたえ・旨味、タコの部位では1番。
噛めば噛むほど旨味が口の中に広がり、
お酒のおつまみにぴったりです。
味付けされているので、調理は不要。
袋を開けたら、スモークの薫りがふわりと広がります。
―他にオススメの商品はありますか?
越戸 日本人は春夏秋冬、季節のものを食べたいものですよね。タコやいくら、かにが人気ですが、マツタケなど季節ごとに登場する山の幸もオススメです。
―最後に、越戸商店の今後の展望を教えてください。
越戸 娘が結婚して帰郷することになり、越戸商店の3代目となります。私は、会社員であれば定年退職している年齢。私のやり方だけではなく、自分たちなりに新たな道を切り開いていってほしいので、アドバイスしながら徐々に去りたいと思っています(笑)。
―伝統と技術を引き継ぎながら、どんな新しいアイデアが誕生するのかも楽しみですね。貴重なお話をありがとうございました!
「北三陸直送 極上甘塩いくら 最高級3特」(200g)
▶価格 ¥4,900(税込)
▶店名 マルコシ商店
▶電話 0194-32-3188(9:00~17:00土日祝を除く)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://www.marukoshi-iwate.com/?pid=82140347
▶オンラインショップ https://www.marukoshi-iwate.com/
「北三陸 タコとんびバル 炙り×レモン風味」(230g)
▶価格 ¥1,500(税込)
▶店名 マルコシ商店
▶電話 0194-32-3188(9:00~17:00土日祝を除く)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://www.marukoshi-iwate.com/?pid=129157097
▶オンラインショップ https://www.marukoshi-iwate.com/
「北三陸直送 甘塩うに」(60g)
▶価格 ¥2,052(税込)
▶店名 マルコシ商店
▶電話 0194-32-3188(9:00~17:00土日祝を除く)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://www.marukoshi-iwate.com/?pid=82140748
▶オンラインショップ https://www.marukoshi-iwate.com/
<Guest’s profile>
越戸優氏(株式会社越戸商店 代表取締役社長)
1957年岩手県の普代村に生まれる。大学を卒業し東京・築地の会社に就職したが、父親の会社を継ぐために1981年に帰郷。2008年に代表取締役社長に就任し、小さな村から全国、そして世界を目指し、産地にこだわり、漁民との連携を大切に、越戸ブランドを発信している。2017年に海外輸出を目的に設立した(株)三陸コーポレーションの立ち上げにも参加。国内外情報をいち早く収集し、三陸の荒波で育った新鮮な魚介類を提供し続けている。
<取材/垣内栄 MC/橋本小波 画像協力/越戸商店>