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木桶に仕込み2年以上熟成させた、濃厚なコクと独特の風味。八丁村の人と風土に育まれた「八丁味噌」。

2022/05/19

大豆のうま味がぎゅっと詰まった濃厚な味と香りがしみじみおいしいと、編集長アッキーも以前から関心を寄せる「八丁味噌」。名の由来ともなった旧八丁村で、伝統の技を守りまさしく本物の八丁味噌を製造している合資会社八丁味噌(屋号:カクキュー)の代表、19代目 早川久右衛門氏にお話を伺いました。

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合資会社八丁味噌 代表社員の早川久右衛門氏

―創業は江戸初期とのことですが、味噌造りはさらに昔、戦国時代にさかのぼるとは驚きです。

早川 わが早川家の先祖である早川新六郎勝久は、今川義元の家臣だった人で、永禄3年(1560年)の桶狭間の戦いに破れた後、命からがらお寺に逃げ込み、そこで味噌造りを学んだといわれています。その後、子孫が現在の愛知県岡崎市八帖町、かつての八丁村に移り、正保2年(1645)に商売を始めました。

―「久右衛門」というお名前もその頃から?

早川 勝久が名前を久右衛門と改め、19代目の私まで代々名前を継いでいます。「久」の字を四角で囲んで商標のようにしていたので、「カクキュー」の屋号で呼ばれるようになりました。

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木桶や石積みなど伝統の製法が受け継がれている。
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カクキューには帳簿などさまざまな歴史資料が残る。

―お名前とともに伝統も継いでおられます。

早川 伝統の製法と登録文化財を含む建造物を大切に受け継いでいます。大豆と塩を木桶に仕込み、江戸時代から続く円錐状の石積みをほぼ当時のまま、10年以上の経験を持つ職人が行なっています。かつては戦の兵糧にもなった保存性の高い硬仕込みの味噌を作るには、しっかり石を積まなければいけないんです。木桶については、味噌や醤油の蔵で使うところは今や1%ほどになりましたが、木桶には代々の微生物がいて、そのおかげでうちの味ができるのですから桶も大事にしています。そして、八丁村(現・八帖町)の気候風土の中で、ゆっくり2年以上、天然醸造で熟成させることでようやく八丁味噌ができあがります。

―19代目となられてからのご苦労はどんなことですか?

早川 何が難しいかというと、八丁味噌はできあがるまでに最低2年はかかるということなんです。数年後の販売量を予測しながら仕込むわけですが、先のことはわかりませんので、経営者として計画するのにとても苦労します。そして近年は、八丁味噌という名が一人歩きしていることも苦労の1つです。八丁村の、矢作川や早川、乙川などに囲まれた湿った環境でも保存の利く今の造り方を祖先が苦労して編み出しました。江戸時代からの変わらない製法で、この地で八丁味噌を造り続けているのはうちともう1軒しかありません。ですが、愛知で造られた豆味噌ならなんでも八丁味噌と呼ぶような動きは、伝統の味噌が貶められたような気持ちになることもあります。

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旧八丁村の気候風土の中で作られる八丁味噌。
木桶が並ぶ蔵も貴重な建造物。
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八丁味噌の原料は大豆と塩のみ。

―味噌づくりにおいてのこだわりは?

早川 私は学生時代に腎臓の病気をし、治すには血液をきれいにしないといけないというところから出発しましたから、添加物をやめるとか有機を目指すとか、食べ物から体をきれいにしようということにこだわったことが、今に生かされているように思います。

―八丁味噌の原料は大豆と塩。シンプルだからこそ原料の質が味に表れそうですね。

早川 北海道、三河、有機、矢作など数種類の大豆を使っていますが、仕込んでみないと味はわかりません。熟成に2年以上かかりますから、できあがってから味を見て、この大豆で造る八丁味噌はおいしいと初めてわかるんです。地大豆の矢作大豆は、収穫できた時に仕込みを行いますが、3年以上熟成させた方がこの大豆の良さが引き出されると分かり、現在は5年以上熟成させて風味を引き出した商品を「ヴィンテージタイプ」として販売しています。この矢作大豆は創業当時に使っていたといわれ、絶滅寸前だったのを、種子を保管する機関から特別に取り寄せてプランターで育てて、なんとか復活させたものなんです。「北海道産大豆使用 八丁味噌(HB-H1)」は、北海道産大豆トヨマサリの中でもとくに厳選したものを使っていますし、昨年は希少な有機国産大豆を使った八丁味噌も作りました。

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地大豆の「矢作」を復活させて5年以上熟成させた
「矢作大豆使用 八丁味噌 ヴィンテージタイプ」。
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「北海道産大豆使用 八丁味噌(HB-H1)」は、
大豆の粒が残った粒状タイプ。

―お味噌汁はもちろん、煮味噌も独特の深みがあっておいしいですね。サイトでレシピも紹介されているので、いろいろ試したくなります。おすすめの食べ方を教えてください。

早川 初めての方は他の味噌と合わせて味噌汁にしていただくのもいいと思います。私としては「生」もおいしくて、お刺身に小豆1つ分くらいの八丁味噌をのせて、そのままでもいいし、オリーブオイルをちょっとたらせば、トロのような味にも思えます。

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八丁味噌は、ウドなど季節の香りとも調和。
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粒状タイプの八丁味噌は、
すり状タイプよりも風味が良い。
使う直前にすり鉢ですると使いやすい。

―八丁味噌のパウダーも便利ですね。アイスクリームにかけるとキャラメルのようなおいしさでした。

早川 これは「八丁味噌はおいしいけれど硬くて使いにくい」という声から生まれた商品です。昔は当たり前のようにすり鉢ですって使われていたのですが、いまはそんなご家庭も減りました。そこで、何か良い商品をと考えたときに頭にあったのはインスタントコーヒーです。味噌でもフリーズドライ製法でコーヒーのようなものが作れるときいて、すぐに試し、できあがったのが「八丁味噌のパウダー」です。これはふりかけることもできるので、ピザやトーストにもぜひかけてみてください。クリームシチューやカレーにかけても、驚くほどコクが増します。

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八丁味噌のパウダー。
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アイスクリームにかけてもおいしい。
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個包装で使いやすい
八丁味噌のパウダー
(2g×10袋入り)。

―今後の展望を教えてください。

早川 うちの場合は文化的側面を有していて、ビジネスのベースに文化があります。伝統製法や建造物、古文書などを守っていくのにはお金もかかりますが、だからこそビジネスに力を入れつつも、利益優先ではなく、文化を大事にしていきたいと思います。

―味噌蔵や史料館もお訪ねしたいです。貴重なお話をありがとうございました。

八丁味噌_商品1

「北海道産大豆使用 八丁味噌 化粧箱」(HB-H1)
価格:¥1,900(税込)
会社名:カクキュー八丁味噌 オンラインショップ
電話:0120-238-319(受付時間9時~17時30分 年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:https://www.kakukyu.jp/shopping/item.asp?id=10661
オンラインショップ:https://www.kakukyu.jp/shopping/

八丁味噌_商品2

「八丁味噌のパウダー200g」
価格:¥1,650(税込)
会社名:カクキュー八丁味噌 オンラインショップ
電話:0120-238-319(受付時間9時~17時30分 年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:https://www.kakukyu.jp/shopping/cat.asp?cat=2378
オンラインショップ:https://www.kakukyu.jp/shopping/

<Guest’s profile>
早川久右衛門氏(合資会社八丁味噌 代表社員)

1950年愛知県岡崎市生まれ。日本大学卒業後、1975年カクキューに入社し、1993年代表社員に就任。2006年「久右衛門」を襲名(19代目)。2019年より岡崎商工会議所副会頭を務める。

<文・撮影/大喜多明子 MC/隅倉さくら 画像協力/八丁味噌>

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