
味付けはお好みで!「キャンプカレーの具」が提案する、新しい“料理の分業”
2025/11/11
レトルトは便利だけど、どこか罪悪感が…。そんな気持ちに「そのままでいい」と優しく寄り添ってくれる商品があります。今回、編集長のアッキーが注目したのはレトルトでありながら、家庭の味をつくれる「キャンプカレーの具」と「キャンプソロ鍋の素」です。
70年以上の歴史を持つ老舗、静岡県の石田缶詰がたどり着いたのは、あえてルーや水を「引き算」することで、「最後のひと工夫」という愛情の余白を残す、ユニークなものづくりでした。私たちの食卓に新しい楽しみ方を提案してくれる商品たちについて、石田缶詰株式会社 代表取締役社長の石田雅則氏に取材陣がお話を伺いました。

石田缶詰株式会社 代表取締役社長の石田雅則氏
―はじめに、貴社のこれまでの歩みについてお聞かせください。
石田 私たちのルーツは、祖父が戦後まもない1953年(昭和28年)に始めた「石田農園加工部」です。自営の農園で採れた農産物をジャムなどに加工することから事業が始まりました。今でいう六次産業です。やがて時代のニーズに合わせてフルーツや水産物の缶詰も手掛けるようになりましたが、需要の変化に伴い、現在の主力である業務用レトルトパウチ食品の製造へと事業を転換しました。
今ではもう缶詰は作っていませんが、「石田缶詰」という社名は大切に残しています。缶詰の「缶」に、食を通じてお客様に感動を届けたいという思いを込めて「感詰」という新しい意味を持たせ、事業に取り組んでいます。

創業当時、缶詰に使うみかんを選別している様子。

ホームページには、かつて製造していたスイカの缶詰など、
遊び心あふれるラベルが「ラベルギャラリー」として公開されている。
―社長ご自身は、どのような経緯で家業を継がれたのでしょうか。
石田 私は4人兄弟の末っ子長男で、物心ついた頃から工場が遊び場でした。ですから、ごく自然な流れで「いつかは自分が継ぐんだろうな」と考えていました。
大学を卒業した後、兵庫県にある日本で唯一の「缶詰の大学」、正式には東洋食品工業短期大学という学校があるのですが、そこで2年間、専門知識を学びました。24歳で地元に戻り、父と共に働き始めました。
―社長に就任されてから、自社ブランドの開発を始められたそうですね。そのきっかけは何だったのでしょうか。
石田 社長になってしばらくは、自分らしさが出せずに悶々としていました。このままではいけないと、自社製品の開発に挑戦することに。
その開発にあたり、ふと「料理って、なんだろう?」という問いが浮かびました。例えば、夕食にカップラーメンが出てきたら、手抜き感がありますよね。でも、同じインスタントでも袋麺をちゃんと鍋で茹でて、チャーシューや卵を乗せて出せば立派な料理になる。レトルトカレーも、ただ温めてお皿にかけるだけではなくカレールーを使って鍋で作ればちゃんとした料理になります。
この違いは何かと考え抜いた末に、「鍋を使っているかどうかだ」という結論に至りました。鍋を火にかけ、何かひと手間を加える。その行為こそが、料理をする満足感や愛情の証になるのではないか。ならば、ただ便利なだけの時短商品ではなく、その“最後のひと手間”をお客様に委ねる商品を作れないだろうか。この「引き算の発想」が、私たちのオリジナル商品の原点になっています。
―その「引き算の発想」から生まれた第一弾が「キャンプカレーの具」なのですね。
石田 はい。最初は「ママカレーの具」という名前で、忙しいお母さん向けの商品でした。レトルトカレーの便利さと、ルーから作る満足感の“いいとこ取り”はできないか、と。一番手間のかかる、野菜を切って肉とコトコト煮込む工程は私たちが担い、ご家庭の味の決め手となる「ルーを入れる」最後の仕上げだけをお母さんにお願いする。そんなコンセプトでした。
それが思わぬ形で注目されたのが、コロナ禍のキャンプブームです。ある時、「キャンプで使ったら最高に便利!」という投稿がSNSで話題になり、当時のTwitter(現在のX)で5万件もの「いいね」がついたんです。この反響には私たちも驚き、パッケージをキャンプ仕様に刷新して「キャンプカレーの具」として販売したところ、多くの方に支持していただけるようになりました。

SNSで注目を浴びた「キャンプカレーの具」。
ビーフ、ポーク、チキンの3種類の具材から選べる。
―具材や製法のこだわりについて教えてください。
石田 こだわっているのは、まず野菜です。玉ねぎ、じゃがいも、にんじんは、すべて国産のものを使っています。それらを自社工場で大きくカットし、牛肉と一緒にチキンブイヨンでじっくり煮込んでいます。
ですから、この袋の中身は単なる具材ではなく、野菜やお肉の旨みが溶け込んだ「スープ(出汁)」そのものなのです。レトルトカレーは便利ですが、どうしても具材が全部カレーの味になってしまう。でも、家庭で作るカレーは、野菜やお肉それぞれの味がしますよね。この商品は、後からルーを入れるので、その“家庭のカレー”の味わいが再現できるのです。どのメーカーのカレールーを加えても味がしっかりまとまるように、スープの水分量を調整するのには一番苦労しました。
―カレー以外にも、おすすめの食べ方はありますか?
石田 旨みたっぷりのスープなので、さまざまな料理のベースになります。デミグラスソースや赤ワインを加えれば本格的なビーフシチューになりますし、冬場には特におすすめです。ホワイトシチューの素を入れれば、チキンクリームシチューにもなります。本当に万能です。お客様から「思っていたより具がごろごろ大きくてびっくりした!」という驚きの声もよくいただきます。

ホワイトシチューの素を入れたり、パスタを入れたりと、アレンジレシピも豊富。
―続いて、「キャンプソロ鍋の素」についてお聞かせください。
石田 これは「引き算の発想」をさらに一歩進めた商品です。「キャンプカレーの具」では「ルー」を引きましたが、今度は鍋つゆから「水」を引きました。キャンプでは少しでも荷物を軽くしたいですよね。家庭やキャンプ場など、どこにでもある水をあらかじめ抜いて濃縮タイプにすることで、キャンパーの負担を軽くしたいという思いから開発が始まりました。

水を「引く」発想で荷物も気分も軽く。
味はピリ辛白湯、スパイシートマト、コク旨ごま味噌、さっぱり醤油の4種。
―パッケージに秘密があると伺いました。
石田 この商品の最大のこだわりが、パウチ自体が計量カップに早変わりする特殊なパッケージです。実はこの袋、開発に丸1年かかっています。袋の中央部にある切れ込みに沿って手でまっすぐ切るだけで、簡単に計量カップに。目盛りに合わせて水を入れるだけで、誰でも簡単にぴったりの濃さのスープが作れます。
濃縮タイプにしたことで、パッケージに使うプラスチックの量を30%削減できましたし、輸送コストも半分になりました。環境にも優しく、キャンパーにも優しい。そんな工夫が詰まっています。
―人気の「スパイシートマト」は、どんな味が楽しめますか?
石田 トマトの爽やかな酸味をベースに、香辛料を効かせた、後を引くピリ辛な味わいです。夏場にもさっぱりと召し上がれます。おすすめの具材は豚バラや白菜、きのこなど。鍋として楽しんだ後の締めは、ご飯とチーズを入れてリゾットにするのが最高です。もちろん、茹でたパスタに絡めるだけでも、手軽に本格的なトマトパスタが楽しめます。

計量カップになる特殊パッケージで、誰でもぴったりの濃さに調節が可能。
締めのリゾットやパスタなど、最後まで楽しめる。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
石田 私たちの大きな夢は、スーパーの棚に「引き算商品」という新しいジャンルを作ることです。私たちの商品を真似する会社が出てきたら、それは一つの食文化として認められた証拠だと考えています。
むやみに会社の規模を大きくするつもりはありません。今いる社員たちが誇りを持って、楽しく働けることが一番大切です。これからも「目の付けどころが石田缶詰らしいね」と面白がってもらえるような、ユニークな挑戦を続けていきたいです。その挑戦は、すでに宇宙にまで広がっています。サガミホールディングスさんと共同開発した食品がJAXAの「宇宙日本食」認証を受け、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士の方々に届けられています。「食に感動を詰める」という思いを胸に、皆さんの食卓に新しい楽しさをお届けしていきます。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!

「キャンプカレーの具【ビーフ】」
価格:¥465(税込)
HP:https://www.ishida-can.com/

「キャンプソロ鍋の素【スパイシートマト】」
価格:¥324(税込)
HP:https://www.ishida-can.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
石田雅則(石田缶詰株式会社 代表取締役社長)
1962年静岡県生まれ。1987年入社し、専務取締役を経て、2004年6月に同社代表取締役に就任。2021年1月よりサガミHDとの共同開発で宇宙日本食の製造も手掛け、ISSに供給をしている。
<文/お取り寄せ手帖編集部 MC/田中香花 画像協力/石田缶詰>




























