
大佐和老舗ののり茶漬とお茶。のり茶漬の山盛りののりにびっくり!
2025/06/02
初めてこのお茶漬けを試して、溢れんばかりののりの量にびっくりしたアッキーこと坂口明子編集長。この商品を読者にいち早くお知らせしようと意気込んでいます。それが、「大佐和の のり茶漬」です。そして食後にはうま味たっぷりで香り高いお茶もぜひ。東京・湯島の老舗が手がけた商品の開発秘話を、株式会社大佐和老舗取締役副社長の大澤一貴氏にスタッフがうかがいました。

株式会社大佐和老舗 取締役副社長 大澤一貴氏
―御社の歴史をご紹介ください。
大澤 江戸期の嘉永5年(1852年)に創業、今年で173年目になります。大正12年(1923年)、関東大震災で鳥越店舗が火事になり、江戸期の店についての詳しい文献はございません。55年前鳥越(東京都台東区)から現在の湯島(同文京区)に移転してきました。
お茶とのりを扱う店として、規模が拡大したのは、私の祖父で6代目社長の大澤芳夫の力があったと思います。芳夫は店舗を拡充するとともに、お茶業界で知られたアイディアマンで、お湯を注ぐとお茶になる粉末茶や、焼きそばなどにかける「食べるお茶」などを考案しましたが、時代を先取りし過ぎたのか、なかなか受け入れられることはなかったようですね。また、祖父は当時、茶の栽培では後発地域だった鹿児島に赴いて消費者に好まれる茶は何かなど助言をして茶業の発展に貢献したと聞いております。
―現在はどこで販売していますか?
大澤 本店のほか、横浜、吉祥寺、浦和など関東を中心に12店舗を展開しています。そのほか、コロナ禍前までは全国の百貨店の催事でも販売していました。また、電話での注文受付は50年前から、オンライン販売は約10年前から始めています。当社の公式ショップと、大手通販サイト2社で約500品目以上を注文できます。

お茶のテイスティングは一つひとつていねいに行われる。
―ちなみに大澤社長は最初から御社を継ぐつもりだったのでしょうか。
大澤 学生の頃はすでに継ぐつもりでいました。両親からは特に継ぐようにと言われた記憶はありませんが、祖父からは継ぐように言われていたという印象が強いですね。父は外に営業に出ていてあまり本社にはいなかったので、会社にいることが多かった祖父の後ろ姿を見てきたという感があります。たとえば、祖父がお茶のテイスティングをしていたのをずっと見ていて、こうやって匂いを審査するんだとか見て勉強しました。茶葉の匂いを確かめるときは直接、茶葉に鼻を近づけて嗅ぐものですから、口の周りに茶葉がつくんですね。小さいころからそんな姿を見ていました。父からは「できるだけお茶に触りなさい」と言われています。お茶は年によって質が違いますから、触れることでその年のお茶の情報を体感しなさいという意味だと思います。
―今回、紹介くださる「大佐和の のり茶漬」の特徴は?
大澤 それはまず溢れるほどのりをふんだんに使っているということです。お箸で袋から掻き出さないといけないほど入っています。これは昔から変わりません。こういうと語弊がありますが、市販の商品はのり茶漬といっているわりにはそれほどのりは入っていないですね。祖父はお湯を注いだときに真っ黒にならなければいけないと、もう、ご飯が隠れて見えないぐらいののりを入れるのがのり茶漬だと言ってこの商品を作りました。のりの量が多いので機械で入れることはできず、全部手作業で詰めています。のりは千葉県産ののりを使用しています。千葉県産ののりは湯を入れてもふやけ過ぎないのでお茶漬けに適しています。
―この商品はいつごろからあるのですか?
大澤 62年前からあります。日本の高度成長期のさなかの1963年に発売開始しています。当時、ほかの会社からのり茶漬けが販売されていまして、うちもよそに負けないおいしいのり茶漬を作りたいと祖父が工夫を重ねました。発売当初はほぐした乾燥の貝柱も入れていたと聞きます。人気が出てきたころに、あられが浮いている様から『源氏物語』の登場人物に由来する「浮舟」という商品名になりました。当社の商品は日本古典から取ることが多く『枕草子』から「春の曙」という商品もありました。それは現在も玄米茶の「春のひびき」に受け継がれています。途中で、三つ葉を入れるなど多少の変化はありますがほとんど発売当初から変わっていません。

「大佐和の のり茶漬」は人気のあまり、現在、本店限定商品になっていてオンラインでは個数制限がかけられている状態。
現在は本店のみ、製造状況により変更予定。
―お客様の反応は?
大澤 まず、初めて買われた方はのりの量にびっくりして、ついついお友だちに贈ってしまうとか、周囲に配りたいと思ってくださるようです。先日も「すごい量ののりが入ってますね。どこで買えますか」と問い合わせがありました。のりがたくさん入っているので、まずのりの一部でご飯を一膳食べて、それからお茶漬けを食べるという人がいます(笑)。
―お茶漬けでいただくのとは別に食べ方がありますか?
大澤 「のり茶漬」は鮭など別の具材を入れて楽しめるように塩味を薄くしてあるのでいろいろなアレンジができます。焼いたお餅を入れてお雑煮にして食べてもおいしいですね。あと、これはお客様に教えていただいたのですが、茹でたスパゲティにそのまま絡めると、和風味ののりスパゲティができます。切った野菜と混ぜると簡単に野菜サラダができます。ちなみに、私の食べ方を紹介しますと、当店は湯島天神の真向かいにあるのですが、天神様といえば梅にご縁があります。のり茶漬で作ったサラダの上に梅干しをトッピングして梅味のサラダにアレンジしています。

「濃煎茶 大老、風印(100g)」。深蒸し茶独特の甘みとうま味、高い香りが特徴。
ー御社はのりとともにおいしいお茶でも有名です。今回ご紹介くださる「濃煎茶 大老 風印」の特徴は?
大澤 この商品も50年の歴史を持っています。今はよく知られるようになりましたが、お茶には深蒸し茶という種類があります。通常の茶葉よりも深く蒸してるので茶葉が柔らかければ柔らかいほど崩れやすいのです。問屋さんが最初に持ってきたのが当店で、そのとき祖父は最初、「こんな粉みたいな茶はだめだ」と言っていたのですが、深く蒸したお茶は甘味がありおいしいので販売に踏み切りました。
最初は「安い粉茶を煎茶と偽って売っているのでは」などのクレームがあったそうですが、今は関東地方では深蒸し茶が主流になっています。普通のお茶は1~2煎で終わるところ、3~4煎も飲めるので経済的ですというような宣伝のしかたをしたとも聞きました。また、深蒸し茶に適した急須を常滑焼の窯元といっしょに作り、細かい茶葉でも淹れられるような細かい目のステンレス製の茶こしも作りました。
―製法のこだわりは?
大澤 味と香りにこだわっています。茶葉は静岡の掛川産と鹿児島の知覧産をブレンドしています。掛川のお茶は品評会で何度も受賞したことがある生産農家さんのブランド茶を配合しています。茶葉は製造の最後に保存性を高め、風味を引き出すために「火入れ」をします。これでお茶屋さんごとの個性が出るのですが、当社では扱う茶葉の素材が良いので、茶葉本来の味を活かすために極端な火入れをしていません。極端な例でいえば、青臭いと感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、私はこれこそがお茶が持っている本来の甘さとうま味だとお伝えしています。
―それをお客様が支持してくださるのですね。
大澤 何年もの間、「濃煎茶 大老 風印」を飲んでくださっているお客様がたくさんいらっしゃるので、同じ品質を保たなくてはいけません。同じ茶畑でも毎年気候がちがいますから、茶葉の質は変わります。そこで、茶葉の合組というブレンドと先ほども述べた火入れという2つの加工技術が品質を左右します。茶葉の厚さなどの形状を見て加工し、毎年変わらない品質を保ちます。

茶畑のお茶の葉。5月から新茶の季節が始まる。
―繊細な技術力なのですね。5月からは新茶が出回ります。
大澤 2月の立春から数えて八十八夜目が新茶の最盛期となります。農家さんがわが子を育てるように育ててくださったお茶を、ていねいに加工していかないと申し訳ないですし、お客様にも安定して供給するために頑張っています。自慢するようですが、新茶の時期によそ様の同じ価格帯のお茶を飲み比べると、うちのお茶は甘いお茶の香りがして本当においしいと感じます。

緑茶は急須を使ってじっくり茶葉のうま味を抽出するとおいしくいただける。
―お茶のおいしい淹れ方を教えていただけますか。
大澤 まず、急須に茶葉を入れておきます。好みもありますが1人分3gぐらいで。うちの茶葉は濃く抽出されるので3gぐらいが適量です。次に飲む分量のお湯を急須に入れますが、1人分なら1杯、2人分なら2杯のお湯を、湯呑やマグカップに入れて計ってから急須に入れると適量のお湯が分かりますし、器を温めることにもなるのでおいしいお茶を淹れることができます。お湯の温度は普通のお茶だと80℃ぐらい。良質のお茶ほど低い温度で淹れるとおいしいです。急須に蓋をして60秒ほどじっくり蒸らしてから、湯呑やマグカップに注ぎ切って飲んでください。
―ありがとうございます。今後の御社の構想などをお聞かせください。
大澤 2025年3月からは海外からも注文できるようになりました。お茶、特に抹茶、オーガニックのお茶、粉茶は海外で人気なので海外でも販売していきたいです。またのりを加工したうどんとかジェラートなども現在開発しております。今後も茶と海苔の素材を生かして、挑戦してまいります。
―本日はのりとお茶についてより深い勉強させていただきました。ありがとうございました。

「大佐和の のり茶漬(5袋入)」
価格:¥540(税込)*2025年6月1日より¥648(税込)に価格改定予定
店名:大佐和老舗オンラインショップ
電話:03-3839-6882(9:00~17:00 土日祝日除く)
休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop-oosawa.com/shopdetail/000000000072/ct26/page1/order/
オンラインショップ:https://www.shop-oosawa.com/

「濃煎茶 大老 風印(100g)」
価格:¥1,620(税込)
店名:大佐和老舗オンラインショップ
電話:03-3839-6882(9:00~17:00 土日祝日除く)
休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.shop-oosawa.com/shopdetail/000000000012/ct11/order/
オンラインショップ:https://www.shop-oosawa.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
大澤一貴(株式会社大佐和老舗 取締役副社長)
1985年東京都生まれ。江戸時代から続くお茶屋「大佐和老舗」の8代目として生を受ける。学業修了後、茶業の道に入る。京都丸久小山園での修行の後、大佐和老舗に入り、7代目大澤克己のもとで茶業を学ぶ。2020年大佐和老舗の命を受け「MYE blend tea atelier」を立ち上げ、東京を代表する茶商となるべく研鑽を積む。
<文/今津朋子 MC/田中香花 画像協力/大佐和老舗>