鮭といえば、誰もが一度は口にしたことがあるといえるほど身近な魚です。塩の効いた味わいが魅力で、切り身をそのまま焼いて食べたり、ほぐして白米に乗せたりと、ご飯にもよく合います。
今回編集長アッキーこと坂口明子がおいしい鮭を探していたときに気になったのが、有限会社新潟たけうちの「本造り鮭」です。鮭本来のうま味を引き出す伝統的な製法や製造の工夫について、代表取締役社長の竹内淳一氏にお話をうかがいました。
2024/04/19
鮭といえば、誰もが一度は口にしたことがあるといえるほど身近な魚です。塩の効いた味わいが魅力で、切り身をそのまま焼いて食べたり、ほぐして白米に乗せたりと、ご飯にもよく合います。
今回編集長アッキーこと坂口明子がおいしい鮭を探していたときに気になったのが、有限会社新潟たけうちの「本造り鮭」です。鮭本来のうま味を引き出す伝統的な製法や製造の工夫について、代表取締役社長の竹内淳一氏にお話をうかがいました。
―会社の成り立ちを教えてください。
竹内 会社組織にしたのは1962年で、初代社長は父です。ただ、最初に事業を始めたのは祖父で、元々はイワシを干した「ほしこ」の商売をしていたと聞いています。新潟県には塩干品を扱う業者が多く、そのうちの一社としてスタートしました。
父が事業を引き継いだ頃は、公衆市場にいくつか店を構え、新巻鮭や筋子を仕入れて販売していたそうです。やがて取扱品目が増加するにつれ、加工してから販売することが増えていき、現在は自社製造品を販売する製造直販のスタイルになっています。
―なぜ加工を始めたのでしょうか。
竹内 競合が多かったことから、「特徴を出していかなければいけない」という考えがあったのだと思います。加工場ができる前は、店舗の裏や自宅で加工していたと聞いています。
―今回ご紹介する「本造り鮭」は水産庁長官賞を受賞されています。受賞の理由をどのようにお考えですか。
竹内 「本造り鮭」の一番の特徴は、風に当てて干していることです。鮭は遡上を始めるとエサを食べなくなり、自分の身をエネルギーにするらしいのですが、その過程で身の中に水分が出てしまうそうです。おいしく食べるには、身に含まれる余計な水分を除いてやらなくてはいけません。
鮭の水分は振り塩をするだけでもある程度は取り除けますが、塩をしてから干すことでよりしっかりと落とすことができ、振り塩だけでは引き出せない鮭本来のおいしさが出ます。新潟県には鮭を干して加工している会社がそれなりにありますが、全国的には多くありません。
―寒風干しの加工を始めた経緯を教えてください。
竹内 初めて作ったのは、父親の右腕として働いていた番頭さんです。当時、新巻鮭を袋に入れて小包で送った際に「水分が出てビチャビチャになってしまう」というクレームが来て、対策を迫られました。そこで水を切るために塩をしてから送ったのですが、今度は「しょっぱすぎる」と。何かよい方法はないかと田舎の方へ足を運んで調べたところ、風に当てて干すとよいと分かり、「そのままだとしょっぱいので干してください」と店頭に見本を飾っていたそうです。そうしたら「見本として干してある鮭がほしい」という声が大きくなり、生産量を増やしていったと聞いています。
新潟は元々鮭の消費量が多く、昔は軒先に吊して乾燥させた鮭を食べる風習がありました。それをイメージしつつ、試行錯誤のうえ冷風干し加工にたどり着いたのではないでしょうか。ただ、昔のように自然の風で干す方法では、どうしても気候に左右されてしまいます。そこで年間を通して製造できるよう、現在は乾燥機を導入しています。
―冷風干しの鮭が誕生したのはいつ頃ですか。
竹内 私が子どもの頃はすでに鮭を干していました。原型としては40年ほど前にできていたと思います。とはいえ、ずっと同じ方法で加工している訳ではありません。「どうすればちょうどいい塩加減になるのだろうか」「どのくらい乾燥させればおいしくなるのだろうか」など、さまざまな工夫を重ねつつ少しずつ変えています。
―試行錯誤されているのですね。ほかにも改善された点があれば教えてください。
竹内 おいしくするために、鮭にはできるだけ均等に塩を回したいと考えています。加工するときに下にした部分は圧がかかるため塩がよく回りますが、上の部分には回りにくいため、手で返してできるだけ塩が均一に回るようにするなど、微調整を繰り返しました。完全に均等にすることは難しいものの、差をなくすための工夫を重ねています。
現代の食生活は減塩志向が高まっていますが、鮭は塩を入れないとうま味が出ません。ただ、製造している側がちょうどいいと思う塩加減が、お客様からするとしょっぱく感じるという傾向もあります。おいしさと塩加減を両立するために、常に調整を加えながら生産しています。
―鮭の産地にもこだわっているそうですね。
竹内 数年前からは北海道の枝幸(えさし)産の鮭を使っています。新潟は鮭の消費量が多いことから、以前はいろいろな産地から新巻鮭が集まってきていたため、その中から品質の高いものを選んでいました。ただ、少しずつ新巻鮭の生産量が減り、現在は待っているだけではよいものが手に入りません。そこで信頼できる産地と提携し、品質が確かなものを作ってもらう方向に舵を切っています。枝幸産の鮭を選んだのは、当社の製品に一番合うと考えたからです。
―お客様からの反響でうれしかったものを教えてください。
竹内 やはり「おいしかった」と言われるのが一番うれしいです。「家族が喜んで食べてくれました」「ギフトで贈りました」という声をいただくと、うれしいのと同時にしっかり作らなければいけないと思います。
―おすすめの食べ方はありますか。
竹内 解凍して焼いて食べていただくのが一番おすすめです。あとは鍋に入れたり、汁物に入れたり、ご飯と一緒に炊いて炊き込みご飯にしたりなど、お好みで楽しんでいただけます。
また、味は少し落ちますが、レンジであたためて調理することもできます。鮭だけをレンジに入れると少しパサパサしてしまうので、キャベツやタマネギなどの水分の多い野菜と一緒に調理してください。
―「本造り鮭」のほかにはどういった製品があるのでしょうか。
竹内 鮭にもいろいろな種類があり、お客様の好みも千差万別です。たとえば「本造り鮭」の原材料は天然の秋鮭で脂が薄く、塩を入れないと味が出ません。そのため味はしょっぱいのですが、「すごくおいしかった」という声がある一方で、「イメージと違う」という声もあります。今はやわらかく甘塩に仕上げた養殖の鮭が増えているため、そういった鮭をイメージする方にとっては「違う」と感じられるのかもしれません。その一方で、昔ながらの味わいを求める方には好まれています。
脂がのった鮭が好きな方には、養殖のトラウトサーモンを使った「本造ります」がおすすめです。焼くとジューシーで脂のうま味が楽しめます。
また、7年ほど前に佐渡で銀鮭の養殖を始めたのですが、この鮭は甘塩にしないとおいしくないことが分かり、甘塩仕立てで販売しています。さらに紅鮭もラインナップに加えました。新潟ではあまり紅鮭を食べませんが、関東地方では人気があります。
―鮭にもさまざまな種類があるのですね。
竹内 どんな製品も、「よい素材を使い、手間と時間をかけて冷たい風で干して素材のおいしさを引き出す」というコンセプトは変わりません。そのうえで、どの素材が喜ばれるのか、どの程度の塩加減が適しているのかを考え、お客様の好みに合った鮭を提供できるようにしていきたいと考えています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「本造り鮭」(10切)
価格:¥4,320(税込)
店名:本造り鮭の新潟たけうち
電話:0120-370-599/025-226-3705(10:00~17:30 日曜・祝日定休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.niigatatakeuchi.jp/SHOP/ki-233.html#1
オンラインショップ:https://www.niigatatakeuchi.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
竹内淳一(有限会社新潟たけうち 代表取締役社長)
1966年新潟県生まれ。筑波大学卒業後、大洋漁業株式会社(現・マルハニチロ株式会社)に入社し、7年の修業期間を経て、1997年に有限会社新潟たけうちへ入社。2014年に代表取締役社長に就任。
<文/坂見亜文子 MC/山口優花 画像協力/新潟たけうち>