フレッシュな果実味と旨味が絶妙なバランスで、洋食との相性もバッチリ 「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」

2023/09/27

このところ、世界中から注目を集めている日本酒。海外で開催されるお酒のコンテストでも、日本酒は高い評価を得ています。そんな中、編集長アッキーが気になったのは、2021年に国内外で開催されたコンテストで最も評価された酒蔵を認定する「世界酒蔵ランキング」第1位に輝き、また世界的に最も権威のあるワインコンペ「International Wine Challenge(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)でも毎年好成績を納めるなど活躍めざましい、青森県の日本酒蔵元・八戸酒造株式会社。取材スタッフが、同社専務取締役の駒井秀介(こまいひでゆき)氏にお話を伺いました。

八戸酒造株式会社専務取締役・駒井秀介氏(左)と、
代表取締役であり第8代目当主の駒井庄三郎氏(中)、杜氏・駒井伸介氏

ー近年、新たなチャレンジを続けていらっしゃいますが、まずは創業の経緯をお聞かせください。

駒井 当蔵の初代駒井庄三郎は、近江国高島郡(現・滋賀県高島市)出身の近江商人なのですが、江戸時代の元文年間に国を出て盛岡の酒蔵に入り、酒造りを学んだ後、安永4年(1775)に麹屋と酒造業を開業しました。再来年で創業250年です。その後、明治21年(1888)に青森県八戸市湊町にあった加藤徳次郎酒造場を譲り受けて移転し、今に至ります。敷地内には主屋と3つの酒蔵、文庫蔵がありますが、いずれも大正年間に建て替えられたもので、火事や戦火に遭うこともなく現在も使い続けています。

大正末期の建立とみられる主屋。伝統的な木造軸組工法で建てられている。
仕込み用の蔵として使われている煉瓦蔵2つのうちの1つ。大正13年(1924)竣工。
主屋とこの蔵を含め、大正年間に建設された6つの建造物が「文化庁登録有形文化財」
「八戸市景観重要建造物」に指定されている。

ー長く続く歴史の中で、一度も焼けたことがないというのは、素晴らしいですね。

駒井 はい、おかげさまで。ただ、弊社は新井田川に面しておりまして、そこを少し下ると、もう太平洋なんです。ですから昔は、大きな地震が起きた際には津波の影響を受けたようです。
東日本大震災では、津波は奇跡的に免れましたが、土蔵が一部、崩れたりはしましたね。それでも、他の岩手、宮城、福島のお蔵さんに比べたら、被害というほどのことはありませんでした。

ー蔵の建物が焼失したり崩れたりということがなかったように、お酒造りに関しても変わらずに受け継がれてきた八戸酒造さんのDNAというものがおありでしょうか?

駒井 代によって少しずつ変わってきている部分はありますけれども、やはり初代が近江商人でしたので、売り手と買い手、世間の3つすべてにとって「よい商売を心がける」という、「三方よし」の精神はしっかり守り続けられているように感じます。

当蔵では7代目、8代目の時代は蔵元と杜氏は分業制で、杜氏蔵人は岩手県花巻市(大迫町)から「南部杜氏」が酒造りに出稼ぎに来ていました。杜氏をはじめ10数名の蔵人たちが、冬場の約半年間ほど当蔵で寝食を共にしながら酒造りをするという、日本酒造りの伝統的なスタイル。酒質は全体的に味のある辛口タイプが特徴的でした。ただ、時代の流れとともに人々の嗜好も少しずつ変化するもの。ですから、代によってお酒の味も少しずつ変わってきています。

ー八戸酒造さんには「陸奥男山」と「陸奥八仙」という2つの銘柄がありますね。

駒井 はい。創業時からのブランドが「陸奥男山」で、「陸奥八仙」は1998年に立ち上げたブランドです。今年でちょうど25年になります。

現在、全国にある「男山」ブランドに先駆けて、明治43年(1910)に駒井庄三郎によって商標登録された「陸奥男山」。
1998年に誕生した銘柄「陸奥八仙」。8人のお酒の仙人の様々な逸話やお酒の楽しみ方が語られている中国の故事
「酔八仙」にちなんで名付けられたそう。

ーというと、それを機に八戸酒造さんの酒造りのスタイルやお酒の味などが大きく変わった、ということでしょうか?

駒井 変わったというより、男山とは別の流れが生まれた、というところでしょうか。「陸奥八仙」を立ち上げたのは、現在、弊社の代表で私の父親である8代目蔵元の駒井庄三郎です。ちょうどその頃、私は東京の大学に通っていて、この新たな銘柄を1人でも多くの人に知っていただこうと、「陸奥八仙」を抱えて都内を駆けずり回っていました。

ーその頃から蔵元の後継者になることを意識していたのですか?

駒井 私は長男なので、漠然と「自分が蔵を継ぐんだろうな」とは思っていましたただ、「陸奥八仙」を売り込みに回っている中でも若者の日本酒離れや焼酎ブームなど、日本酒業界の衰退を肌で感じていたので、明るい未来が見えていたわけではありません。しかも、私はもともとお酒にさほど強くはなく、学生時代はカシスリキュールやサワーなどを飲んでいたんです(笑)。正直なところ、当時弊社のお酒は今の味わいとは別物で、冷酒では美味しいと感じられない味のどっしりした酒質で、私の好みではありませんでした。

20歳の頃、とある居酒屋で全国各地の日本酒を試す機会があり、その中に山形の「十四代」の本丸角新を読んだ時の衝撃は、今でも忘れられません。フレッシュフルーティーでジューシーな甘みがありながら、後口はすーっとしてキレもいい。しかも、コスパがいい。「日本酒って、こんなに美味しいんだ!」と、私は日本酒を飲んで初めて感動し、「自分が蔵に戻ったらこんな味わいのお酒を造り、同世代に美味しい日本酒を飲ませて、日本酒の輪を広げたい」と思うようになりました。

蔵に戻ったのは2002年。「陸奥八仙」の酒質、ラベル、流通形態まで一新し、翌2003年に新たな「陸奥八仙」4種「ピンクラベル」「赤ラベル」「黒ラベル」「緑ラベル」が誕生しました。今回ご紹介させていただく「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」は、そのリニューアル第1号のお酒の1つなのです。

ピンクのラベルと「八仙」の字が目を引く「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」720ml。
ほかに1,800ml(¥3,520/税込)もあります。

ー記念すべき、駒井専務が最初に手掛けたお酒ですね。こちらは、どのようなお酒なのでしょう?

駒井 ふわっとした華やかな香りと、フレッシュフルーティーな味わいが特徴です。甘みがありながら飲み口がすっきりしているので、お客様からは「飲んでいて飽きない」とご好評いただいています。

ーまさに、専務が理想とするお酒ですね。

駒井 実は、発売当初の味からは変わってきているんです。当時は、とにかく「陸奥八仙」のことを皆さんに知っていただきたい、記憶に残るようなお酒にしたいという思いから、インパクト重視で、香りも甘さも現在のものより強い、いわゆる芳醇なお酒でした。でも、そういうお酒というのはどうしても、飲んでいるうちに飽きてしまいがちです。
私としては、やはり「陸奥八仙」は食中酒として楽しんでいただきたい。そこで、香りも味も華やかさを残しながら、食事の邪魔をしないすっきりとした飲み口のお酒に変えてきたというわけなのです。

日本酒は、温度の変化が楽しめる世界でも珍しいお酒です。「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」も、最初は冷たく冷やした状態で飲んでいたくとフレッシュ感が際立ちます。桃や洋梨など、フルーツとの相性がとてもいいんですよ。その後、お酒の温度はゆっくり上がり、香りや味が落ち着いてまろやかになります。メインのお料理を召し上がる頃になったら、少し燗をつけても面白いと思います。甘さよりもドライ感が出てきますので、お肉にも合うんじゃないでしょうか。

冷蔵庫でキリリと冷やした「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」に、
このところ話題の「桃ディル+マスカルポーネチーズ」を合わせてみました。
お酒のフレッシュ感が桃の味を引き立てるのと同時に旨味がマスカルポーネのミルキー感とマッチ。
すべての味が1つにまとまるという、見事なマリアージュ。
お酒をデカンタに移して常温よりやや冷たい状態にしてみたら、チーズほど重くないマヨネーズ味との相性が○。
バーニャ・カウダにも合いそう。
ほんの少し燗をつけて人肌くらいまで温度を上げ、鴨ロースのラズベリーソースがけと一緒に。
お酒と鴨肉の旨味が溶け合って美味、それでいて脂がすっきりキレて、後味がとてもいい。

ー温度帯によって、違う魅力が引き出される。日本酒というのは非常にポテンシャルの高いお酒なのですね。

駒井 そうなのです。ですから、みなさんにはもっともっと日本酒の魅力を知っていただきたいですし、我々もさらに日本酒の新たな魅力を発見し、引き出していきたいと思っています。

ー最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

駒井 日本酒は米が原料ですが、米は自然のものなので、その年によってどうしても出来が違い、それがお酒に反映されてしまいます。そうした中でもやはり、安定した酒質を作っていきたい。いつ飲んでいただいても「これが陸奥八仙だ」と感じていただけるように、ブレずに当蔵の理想とする酒を造り続けていくつもりです。
さらに、より多くの方に日本酒を好きになっていただきたいので、そのための「日本酒への入口」になるような、新ジャンルのお酒を造っていきたいですね。現在、低アルコールのスパークリングや地元青森のフルーツを使った果実酒、そして日本酒造りの技術を応用したビールテイストのお酒も造っています。
近年、日本酒が世界の注目を集め始めていますが、海外の方にとって日本酒は和食に合わせるものであって、普段の食卓にはまだまだ上がりません。同様に、すっかり洋食化している日本の食卓に日本酒が置かれることは少ないのが現状です。
そうした中、まずは「美味しい」と感じられるお酒を飲んでいただいて、それをきっかけにして日本酒の世界に足を踏み入れていただけたら。そのように考えて、今後もチャレンジを続けていこうと思います。

日本酒造りの技術を応用して米・米麹・ホップを使ったビールテイストのお酒。米もホップも青森県産。
2タイプあり、こちらはほど良い甘みと苦みが楽しめる「8000 BREWING HAZY IPA」。
もう1つのタイプは、桃とリンゴを使ったフルーティな「8000 BREWING JUISY IPA」。
青森県産洋梨「ゼネラルレクラーク」種を100%使った果実酒「AOMORI JUICY LAB-洋ナシ-」
(弘前市の「JAアオレン」との共同開発)。アルコール度数3%のスパークリングタイプのお酒。
他に、青森県産の桃やリンゴを使った「モモ」「リンゴ」もあります。
アルコール度数7%の低アルコール微発泡清酒「prototype 2023」。
きめ細かい泡立ちと柔らかい口当たりで、甘すぎずすっきりとした味わい。

ー日本酒の新たな魅力をご紹介いただけること、楽しみにしております。貴重なお話を、ありがとうございました。

「陸奥八仙 ピンクラベル 吟醸 火入」 720ml
価格:¥1,980(税込)
店名:八戸酒造株式会社
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://mutsu8000.com/product/陸奥八仙-ピンクラベル-吟醸(火入)/
オンラインショップ:https://mutsu8000.shop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
駒井秀介(八戸酒造株式会社 専務取締役)

1978年八戸市生まれ。八戸高校卒。大学在学時から東京都内での「八仙」売り込み活動を展開。2002年八戸酒造株式会社入社、蔵へ戻り八仙リブランドを手掛ける。08年専務取締役就任、現在に至る。青森県酒造組合広報委員長。

<取材・文・撮影/鈴木裕子 画像協力/八戸酒造>

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