LEDライト付きの本格派。缶の中に小さな世界を作る「ミニチュアット」

2023/09/25

約8×14センチの小さな缶に、とある世界を作り込むハンドメイドキット。無心になれる、気持ちが安らぐなど、熱狂的なファンに人気です。販売元は、あのホビー玩具の楽しさを日本に広めた会社。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社やのまん 代表取締役の矢野宙司氏に、取材陣が伺いました。

株式会社やのまん 代表取締役 矢野宙司氏

―創業からの歩みをお聞かせください。

矢野 祖父が1954年に創業しました。雑貨やおもちゃなどを輸出していましたが、ニクソンショックを機に輸入に転換。ヨーロッパなどで作られていたミニカーなどを扱っていたようです。

その後の1973年、祖父は外国映画に登場するジグソーパズルに着目し、輸入をスタート。折しも翌年東京国立博物館でモナリザ展が開かれ、モナリザブームが起きたことで、ドイツから仕入れたモナリザのジグソーパズルが大ヒットしました。しかし、ブームが終わると売れ行きは低迷。

そこで、日本人になじみ深い絵柄のものを自社で製造することにしました。さらには、完成品を飾るという楽しみ方を提案するために、専用フレームを作って販売。作って飾るという一連の文化を啓蒙しながら、ジグソーパズルの楽しさを知ってもらう普及活動も、同時に行っていきました。

ジグソーパズルが普及するにつれ、絵柄や難易度などのバリエーションを広げ、立体や球体、コラボ商品など新しいパズル開発にも挑戦。2024年度で創業70周年になります。

ジグソーパズルを日本に広めた会社が手掛けるホビー「ミニチュアット」。

―社長のご入社は?

矢野 祖父の後を、現会長である父が継ぎました。父は経営の大変さを体感したことから、私に継がせようとは考えていなかった時期もあったようです。私自身も、大学を卒業後は全く別業界の会社に就職し10年間勤務。母が病気になり、父との会話が増える中で、自然と「手伝いたい」という気持ちが芽生え、2013年に入社しました。

入社当時、ジグソーパズルの発売から40年が経っており、マーケットは最盛期に比べ1/4ほど縮小していました。

しかし、ジグソーパズルにはまだポテンシャルがあると感じていた私は、もう一度正面から向き合うことにしました。やのまんが創業からもっていたスピリッツに従って、新しいユーザー層を広げていくことに挑戦しています。

―スピリッツとは?

矢野 うちの基本理念は「楽しさの追求と創造にチャレンジし、人々に喜びと楽しみを提供する」です。例えばジグソーパズルは、数字で計れるようなわかりやすいベネフィットはありませんが、作業に没頭する中で、嫌なことを忘れたり、頭の整理ができたり、気持ちが穏やかになったりという価値があると思うのです。同じ方向性で新しいホビーになる商品の販売も始めました。

―その1つが「ミニチュアット」ですね。

矢野 初めて見たとき、これだ! と思いました。じっくり取り組めて、仕上がりは本格派ながら、必要なものがすべて入っている、誰もが作れるキットです。約8×14センチの缶の中に、小さな世界を作り込むもの。とても緻密な作業を要しますが、パズルユーザーと親和性が高いのではないかと直感しました。

0から自分で考えて作りたいクリエイティブなタイプより、説明書通りに自分で完成させたい! という方に向けた商品です。ですから、誰が作っても、おおよそ同じように仕上がるように工夫しています。

パズル好きにもたまらない商品!?

―具体的にどのような工夫を?

矢野 本当に「誰でも」完成させられるために、取扱説明書をより親切に書き換えたり、手順を変えたり。そのうえで、パーツの合番に間違いがないか、必要な情報が漏れていないか、何度も何度も校正を重ねています。

細かい説明は取扱説明書に、全体の説明は箱の裏面に記載。

―取扱説明書が、商品化までの最大の関所ということですね。

矢野 とも言い切れません。非常に細かい部分まで作り込むのが特徴ですので、パーツが少しでも足りないのは大問題。企画から発売まで10か月くらいかかるでしょうか。

建物から細かな小物まで作れるよう、念入りなチェックを経た材料が入っている。

―楽しみ方を教えてください。

矢野 1人でコツコツ作業される方もいらっしゃいますし、お子さんと一緒にコミュニケーションを取りながら作っていただくのもいいかなと思います。

順序としては、パーツごとに少しずつ進めるといいですね。今日は右の部分、明日は左の部分という具合でもいいですし、小物だけ集中して作る人、外観を担当する人、みたいな感じでも。

取説の後半に紙パーツがあってカットするのですが、最初に全部切ってしまうとどの部分かわからなくなるので、作るごとにカットするのがいいと思います。

あとは、パーツが場所別でなく素材別で袋に入っているので、分担して作られる場合はご注意ください。

カッターナイフ、定規、カッターマット、デザインナイフ、ピンセット、つまようじなどがあると便利。
作業台には新聞紙やシートなどを敷いておくとよい。
紙パーツをカットして木パーツに貼るので、カットはパーツごとに。
LED電球は序盤に接着するので、パーツができるごとに光の入り具合を確認でき、モチベーションが上がる。
ミリ単位の作業も多く、仕上がりに個人差は出るが、愛着もひとしお。
作業が進むごとにコツがわかり、完成度を高めたくなる。

オールインワンタイプで、説明書通りに作れば誰でも作れるものですが、作業自体は結構大変で、出来上がるまでに数時間かかります。

ミニチュアットは完成までの間に小さな達成感を何度も味わえます。いくつもパーツがあり、小物もたくさんあるので、小さな感動がこまめにある感じです。最後、すべてのパーツを組み立ててLEDライトを灯したときの達成感たるや……ぜひ一度体験していただきたいですね。

途中で作業を中断する際も、細かいパーツを缶に入れておけばコンパクトにまとまる上、
パーツがなくなる心配がないあたりも、ジグソーパズルと異なる。

―バリエーションはどのくらいありますか?

矢野 8種類ほど。ドーム型の「ミニチュアットU」というシリーズも8種類あります。女性に好まれる商品だと思っていましたが、お客様には男性や外国人も多く、幅広いニーズを感じています。

―今後の展望をお聞かせください。

矢野 テクノロジーの進化が著しくどんどん便利になっている現代ですが、一方で、アナログやちょっと手のかかるものが注目される気がします。情報過多な世の中で、デジタルデトックスという言葉も出ています。何かに没頭して自分の時間を楽しむとか気持ちを落ち着けるとか、そんな価値のある商品づくりを続けていきたいと思っています。

会社を長く続けていると、いろいろなところに目が行くようになりますが、ユーザーのための商品づくりという原点を、社員全員が忘れることなく、進めていきたいです。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

「ミニチュアット 石畳が続く街」
(内容物:缶ケース、パーツ一式、取扱説明書、接着剤/サイズ:8.4×14.3×2.6cm/電源:ボタン電池LR44×3個・別売)
価格:¥4,180(税込)
社名:株式会社やのまん
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yanoman.co.jp/topic/miniaturet/
オンラインショップ:https://www.yanoman.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
矢野宙司(株式会社やのまん 代表取締役)

1979年東京生まれ。大学卒業後に食品包装資材の専門商社に約10年間勤務。6年間は総務と人事を担当し、残りの4年は経営企画室に所属。2013年5月に株式会社やのまん入社。18年4月より現職。

<文・撮影/植松由紀子 MC/吉田茉代 画像協力/やのまん>

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