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野菜を知り尽くし、持ち味の活かし方を知り尽くす 漬物づくり86年の「やまじょう」が伝える近江漬物の魅力

2022/10/21

ワインのお供になりそうな「おいしいもの」を探していたところ、ちょっと気になるものを見つけました。漬物屋さんが作る、チーズの味噌漬けです。
今回、アッキーが見つけたのは、「下田なす漬」で有名な近江の地漬専門店、山上の「味噌漬けチーズ」。味噌のまろやかさが加わったクリームチーズが絶妙な味で、お酒が進みます。
株式会社やまじょうの3代目となる、代表取締役社長の上西宗市氏に、開発のエピソードや商品に込めた思いを、取材陣がお聞きしました。

株式会社やまじょう 代表取締役の上西宗市氏
株式会社やまじょう 代表取締役社長の上西宗市氏

―会社の沿革について教えてください。

上西 もともとは農業をやっていたのですが、1910年に私の祖父である初代が糀と味噌を作り始めたのです。さらに漬物加工を始めたのが1936年ですから、漬物会社としては創業86年ということになります。
最初は京都の漬物屋さんのお仕事をいただいていたのが、小売屋さんに広がっていき、現在は北海道から九州まで、全国の量販店やスーパーに卸をさせていただいています。
さらに、「消費者の方に、自分たちが作ったおいしいものを直接お届けしたい」ということで、2008年に近江漬物の直売店「山上本店」を湖南市にオープンしました。さらに近江八幡市、彦根市、長浜市と店舗を増やしてきています。彦根市の店舗には、山上の商品を試食していただけるバイキングのお店も併設しました。
「手作りで、野菜の持ち味を生かした商品を提供していきたい」という想いは、創業当時から変わっておりません。

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近江の旧家のイメージでつくられた、
湖南市にある山上本店。

―商品へのこだわりは、どういうところでしょうか。

上西 近江伝統野菜を中心に、できるだけ地元で採れた野菜を使っています。野菜の種類ごとに重石の重さと日数を変えてじっくり漬けるのですが、このとき重石を載せすぎず、最小限の重さで日数をかけるのがコツです。こうした手間をかけることによって、野菜の姿や彩りを損なわず、上品な味わいや食感を生み出すことができます。

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伝統を感じさせるパッケージ。
包みを開ける前からワクワクする。

―野菜作りにもこだわって、自社農園で野菜を栽培していらっしゃるそうですね。

上西 10年以上前から、100年以上の歴史がある地元の伝統野菜、下田なすを栽培しています。小ぶりで皮が柔らかく、みずみずしいのが特徴なんですが、人気が出てどんどん需要が大きくなり、既存の生産者様だけでは量が足りなくなったので、自社でも作り始めたというわけです。今では半分近くを自社農園で賄っています。できるだけ自然に近い農法で作り、新鮮なうちに加工しています。収穫期には、私も社員と一緒に早朝から畑に出て、汗を流しているんですよ。

―味噌漬けのブランド「武宗」はどのように生まれたのですか。

上西 彦根には、江戸時代から「養生薬」の名のもとに、近江牛の味噌漬けをお殿様に献上していたという歴史があります。ですからお肉屋さんでも、近江牛の味噌漬けが売られているんです。
弊社では、地域の特産物を使って商品を作りたいという想いがありますし、ぜひ「肉屋にはない漬物屋の味噌漬けを作りたい」ということで研究、試作を重ねました。
2014年に、地域資源活用を対象にした助成金を利用して、「武宗」を立ち上げました。
近江牛は、二度漬け製法でしっかり漬け込んでいるので好評です。ほかにもビワマス、豚肉、魚、チーズというふうに、味噌漬けの種類を増やしてきました。

―使用する味噌にもこだわっていらっしゃるのでしょうね。

上西 元々味噌づくりで始まった会社ですので、自家製の味噌には自信があります。
その自家製の味噌に、滋賀県の創業150年の老舗味噌屋さんの手作りの低塩分味噌をブレンドするなど、食品によって使い分けています。味噌の原料である米、糀、酒もすべて地元産です。

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どんなお酒にも合う、「味噌漬チーズ」。

―「味噌漬チーズ」はどのように開発されたのでしょう。

上西 様々な素材の味噌漬けを試していく中で、同じ発酵食品であるチーズを漬けたらよりおいしいものができるのではないかと考えたのです。
いろんなチーズを試したのですが、クリームチーズが1番良く合っておいしかったんですね。
どんなものでも、原料がおいしくなかったらおいしい漬物はできませんが、チーズに関しては、そのまま食べるよりも味噌漬にしたほうがよりおいしくなって、甘さが加わるのです。お酒のつまみにぴったりで、とくにワインに合います。
チーズの味噌漬けは、とくに若い人や女性などに好評で、今では小売店舗で2番目の売り上げになるほどの人気商品です。本店では、やはり茄子とか大根とか正統派の漬物を求めるお客さんが多いのですが、観光地に近いところは、珍しいものを求めるお客さんが多いせいか、長浜ではダントツトップの売り上げが「味噌漬チーズ」なんですよ。「味噌漬カマンベール」も、とても人気があります。

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甘辛い濃厚な味が後を引く、和風キムチ「赤重ね」。

―「赤重ね」は色がきれいですし、甘辛い濃厚な味ですね。

上西 幾層にも重ねた白菜に昆布、大根を挟んで、和風キムチに仕上げたものです。
実は白菜漬けもキムチも、やまじょうでは70年作っていなかったものなんです。でも漬物では白菜の人気は高いので、やまじょうでも作ろうということになりました。
最初に「白菜大葉重ね」ができて、それならキムチもやってみようということで開発が始まったのです。
最初口に入れたときには、普通のキムチより甘めに感じられるかもしれませんが、そのあとだんだんと辛味が出てきます。それがクセになるということで、大変好評です。
もっと最初から辛いほうがいいんじゃないかと思って、そういうのを試食で作ったこともあるんですが、やっぱり今の商品のほうが人気があります。
お取り寄せでは、赤重ねが1番人気なんですよ。「友達にあげたいので」と、10個、20個と注文される方もいます。

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大葉の爽やかな香りがアクセントの「白菜大葉重ね」。

―「白菜大葉重ね」は大葉の風味が爽やかですね。

上西 大葉の色の鮮やかさと、爽やかな風味が人気で、大根、ニンジンなど様々な野菜の食感を楽しんでいただけます。
「赤重ね」の方には大葉は入れていません。大葉のせっかくの色も風味も、キムチで消されてしまうからです。
「白菜大葉重ね」の大葉も、最初は、一段だけだったんです。すると「上の方を食べる人には大葉が入るが、下の方を食べた人には大葉が入らない」という意見がありました。開発から4年後に、よりおいしく食べていただくためにもう一段入れることにしました。
1度できたものも、それで完成じゃなく、「もっとおいしくならないか、きれいにならないか、安くならないか」と常に考えて、進化させる努力をしています。そういう意味では、商品は常に未完成だと思っています。

―コロナ禍の影響はありましたか。

上西 14年前から、直売店を1店舗、また1店舗と増やしてきて、目標に「あと1店舗」という状態でコロナ禍になりました。店舗展開が計画の途中で止まっているところです。
また観光地の彦根や長浜では、やっぱり売り上げが一気に落ちました。
でも本店は、観光ではなく地元のお客様相手なので、売り上げは逆に伸びたんです。さらに「巣ごもり需要」が増えて、量販店さんへの卸のほうは好調でしたし、オンラインショップの注文も一気に増えました。
オンラインショップは、10年前に始めたころはなかなか売れなかったのですが、コロナのときには助けられました。ひとつの売り方に集中していなくてよかった、効率だけを考えたらいかんなとつくづく思いましたね。

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20種類以上の漬物を、近江米のごはんとともに
バイキング形式でいただける「山上茶寮」。

―山上彦根金亀城町店の「山上茶寮」では、色々なお漬物が食べられるそうですね。

上西 20種類以上の漬物を、近江米のご飯とともに召し上がっていただけます。ぜひいろいろな漬物を試食していただき、おいしさを知っていただきたいという気持ちで、5年前に始めました。
もともと、この場所はあまり活用できていなくて、バスで来たお客様の休憩所になっていたんです。
あまりにももったいないということで、それじゃあ試食をしてもらう場所をつくろうと。
食べていただき、おいしかったら買い求めてもらえるし、発売前の新製品をお客さんに味を見てもらって、評価を聞くこともできます。そこで好評だったら本格的に作る、ということも実際にあります。
たとえばメロンの漬物なんかは山上茶寮に出したら人気があったんですが、なかなか安定した量が入らないので、実際には販売が難しいのです。そんな、珍しい漬物を楽しんでもらえるのも山上茶寮の魅力です。

―伝統の味を守りながら、時代の変化に対応する難しさはありますか。

上西 同じものを作っていればずっと売れるというわけではありません。
たとえば昔に比べて今の人は、歯が弱いのか、硬いものを食べないんですね。以前は人気商品というと、しば漬けやすぐきなどでしたが、今は年間通して売り上げトップの商品は、「昆布大根」です。硬すぎず、食感がいいのでポリポリと食べていただけます。
時代に合わせて、売れるものは変わっていきます。
変えていくということは絶対に必要だし、そのためにチャレンジしていこうと思っています。しかしそのなかで、トータルの品質、ブランド力が落ちないようにしなくてはいけない。「進化させる方向への変化」が大切だと思っています。何よりも、食べていただいて安心なもの、安全なものというのは絶対条件で、変えられない部分だと思っています。

―社長が考える「いい漬物」とは。

上西 やっぱり、野菜の持ち味を生かした、おいしい漬物。そして時代に合った漬物ですね。
それを提供し続けるために大切なのは、経営者として「商品から目を離さない」ということです。
作っているものの味の確認。お客様に食べていただきたい味を選ぶこと。それだけはもう、人に任せてはダメだと思っています。
開発担当の社員が、毎週2回、新製品や改良した商品を持ってくるんです。それに対して私の方からいろいろ注文を出すと、それをもとにまた改良してくれて。社員と一緒に試食しながら、「もう少しこうやったらいいんじゃないかな」と指示を出し、満足のいく商品ができるまで粘っています。

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塩加減、押し加減、漬け込み時間などにこだわって、
おいしい漬物ができあがる。

―今後のビジョンについて教えてください。

上西 魚を味噌漬けにして、お客様に焼いて食べていただくという商品を提供できるようになりましたが、「焼く」という手間が必要ですし、お客様によって焼き方も違います。なんとか、焼き立てのような状態で、手間をかけずそのまま食べていただけるおいしいものができないかと考えて、「味噌漬 焼鮭」ができあがりました。
じゃあ、肉でもできないかということで、試行錯誤しているのですが、最近完成したのが、ローストビーフの味噌漬け。これが絶品なんです。
プロの肉屋さんにつくってもらったローストビーフを、漬物屋が味噌漬けにしたという商品です。
肉屋さんに食べてもらっても、「これはうちのよりおいしいね」と言われます。それくらいのものができました。今後販売していきますので、楽しみにしていてください。
お客様に「おいしいね」と言ってもらえるのがいちばんのやりがいです。
しかしおいしいものだけつくれば商売がうまくいくというわけではありません。いくらおいしいものでも、売る場所が違ったり、売り場と価格設定が合わないと、売れません。
今後も、ひとりでも多くの方に「おいしいね」と言ってもらえるように精進していきたいと思っています。

―ローストビーフの味噌漬け、ぜひいただいてみたいです!本日は貴重なお話をありがとうございました。

赤重ね

「赤重ね」
価格:¥780(税込)
店名:山上
電話:0120-35-9486(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://yamajou.raku-uru.jp/item-detail/1065760
オンラインショップ:https://yamajou.raku-uru.jp/

味噌漬チーズ

「味噌漬チーズ」
価格:¥580(税込)
店名:山上
電話:0120-35-9486(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://yamajou.raku-uru.jp/item-detail/1065805
オンラインショップ:https://yamajou.raku-uru.jp/

味噌漬カマンベール

「味噌漬カマンベール」
価格:¥1,080(税込)
店名:山上
電話:0120-35-9486(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://yamajou.raku-uru.jp/item-detail/1065809
オンラインショップ:https://yamajou.raku-uru.jp/

紅白重ね漬とチーズの味噌漬セット

「紅白重ね漬とチーズの味噌漬セット」
価格:¥3,090(税込)
店名:山上
電話:0120-35-9486(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://yamajou.raku-uru.jp/item-detail/1065794
オンラインショップ:https://yamajou.raku-uru.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
上西宗市(株式会社やまじょう 代表取締役社長)

1954年滋賀県生まれ。東京農業大学卒業後、1977年に株式会社やまじょうに入社。1991年に同社代表取締役社長に就任。漬物業界の発展また地元湖南市の活動にも尽力している。滋賀県漬物協同組合 理事長。全国漬物協同組合連合会 理事。湖南市観光協会 会長等を歴任。

<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/橋本小波 画像協力/やまじょう>

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