お酒として「おいしい」のは当たり前。一歩先を行く、環境に配慮した日本酒「福寿 純米吟醸」「福寿 純米吟醸 山田錦 環和(かんな)」

お酒として「おいしい」のは当たり前。一歩先を行く、環境に配慮した日本酒「福寿 純米吟醸」「福寿 純米吟醸 山田錦 環和(かんな)」

2022/10/18

近年、ワイン業界ではテロワールを重視するだけでなく、SDGsにも取り組むワイナリーが増えてきました。日本はまだまだその動きに乗れていない……と思いきや、日本酒業界にも、環境に配慮し、持続可能な酒造りを実践している醸造元がありました。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、そんなエシカルな醸造元、神戸酒心館。取材陣が、代表取締役社長の安福武之助(やすふくたけのすけ)氏にお話をうかがいました。

株式会社神戸酒心館 代表取締役の安福武之助氏
株式会社神戸酒心館 代表取締役社長の安福武之助氏

―御社は270年もの歴史を持っていらっしゃるとか。創業沿革についてお聞かせください。

安福 江戸中期、徳川吉宗の時代に私の先祖が灘五郷の1つである御影郷に移り住み、宝暦元年(1751年)に酒造りを始めました。以来270余年、手造りにこだわる酒蔵として13代にわたって「福寿」の名を守り続けている酒蔵です。長い歴史の中ではいろいろなことがありましたが、大きなものは2つ。1つは第二次世界大戦で蔵が全焼したこと、もう1つは1995年に起きた阪神淡路大震災で蔵が全壊したことです。しかし、多くの方たちに支えていただいてそのたびに立ち上がり、今日までなお伝統の酒造りを続けさせていただいております。

神戸酒心館の堂々たる長屋門。軒下には「よいお酒ができますように」との願いが込められた杉玉が吊り下げられています。
神戸酒心館の堂々たる長屋門。
軒下には「よいお酒ができますように」との願いが込められた杉玉が吊り下げられています。

―蔵の全壊からの復旧となると、さぞやご苦労があったのではないでしょうか。

安福 当時、私はまだ大学生だったため蔵にはいなかったのですが、弊社の蔵を含め灘五郷一帯のほとんどの木造蔵が全壊しました。当時、社長であった私の伯父と専務を務めていた私の父が経営していたのですが、あたりの無残な光景を前に、ただ茫然とするほかはなかったといいます。ただ、奇跡的にも蔵で働く人たち全員が無事で、伯父と父は「ここで福寿の歴史を終わらせてはならない」と蔵の再建を決断しました。
再建にあたっては、それまでのように酒造りをするだけでなく、お客様に気軽にお越しいただけるような魅力ある場にしようと。そこで、醸造蔵である「福寿蔵」を中心に、お買い物をしていただける「東明(とうみょう)蔵」、お食事を召し上がっていただける「水明(すいめい)蔵」、落語やコンサートを楽しんでいただける「豊明(ほうめい)蔵」の4つの蔵を造り、1997年に「神戸酒心館」として再スタートしました。

―ピンチをチャンスに変えられたのですね。

安福 現在、日本酒産業は厳しい状況にありますが、実は震災の前から右肩下がりでした。そうした中にあって伯父と父は、他の酒蔵とは違った商品やサービスを提供していかなければと考えていたそうです。被災してゼロからのスタートとなりましたが、それまでに次なるビジョンを明確に描けていたのは幸いでした。

こちらが水明蔵、蔵の料亭「さかばやし」。お酒と地元産の旬菜をいただけます。
こちらが水明蔵、蔵の料亭「さかばやし」。お酒と地元産の旬菜をいただけます。
酒蔵を利用した多目的ホール、豊明蔵「酒心館ホール」。各種コンサートをはじめ、展示会や講演会、パーティースペースとしても利用され、地元の方たちに親しまれています。
酒蔵を利用した多目的ホール、豊明蔵「酒心館ホール」。
各種コンサートをはじめ、展示会や講演会、パーティースペースとしても利用され、
地元の方たちに親しまれています。

―安福社長は何代目でいらっしゃいますか?

安福 13代目です。大学卒業後はビール会社に入り、アルコール業界を勉強した後、2003年に30歳でこの蔵に戻りました。先にもお話ししましたが、すでに日本酒産業は厳しい状況でしたから、何とかしなければいけない。そこで私は、国内の営業活動に加えて海外のマーケットに目を向け、輸出をスタートさせました。

―どのような国に輸出されているのですか?

安福 世界15カ国以上に輸出していますが、いちばん大きなマーケットはアメリカです。ほかに、中国や韓国、香港、そしてイギリス、ドイツ。実際に現地に出向き、地元の方々に弊社のお酒を飲んでいただいて嗜好を調査するということを続けています。
今でこそ、世界中に日本食レストランはたくさんあって、日本酒も飲まれていますが、2003年当時は多くの外国の方たちは日本酒を飲んだ経験が乏しく、中国の白酒(ばいちゅう)というアルコール度数の高いお酒と混同されている方も少なくありませんでした。しかし、何度も足を運び、展示会などにも積極的に出展して日本酒を知っていただくと「白ワインのようにおいしい」と言っていただいて、とてもうれしかったことを昨日のことのように憶えています。

―酒造りについて、大切にされているのはどのようなことでしょう。

安福 日本酒の原料は米と水。私たちは六甲山の北側で育った酒米の山田錦と六甲山の伏流水である「宮水」を使い、さらに冬に六甲山から吹き下ろす「六甲おろし」で蒸した米を冷ますというように、六甲山の恵みを受けて酒造りをしています。灘の酒の品質が高いのは、まさにこれらのおかげです。これらの原材料が調達できなければ、この先、10年後も20年後もおいしいお酒を造っていくことができません。ところが近年、世界的に大きな環境変化が起こっている中、私たちにとって大切な質の高い米の安定的な供給がむずかしくなるのではないかと感じています。ですから、「環境負荷をかけずにおいしい日本酒を造る」ということを理念として掲げています。
10年ほど前から設備や機器を省エネタイプや最先端のものに移行し、エネルギー使用量を12%減少させることに成功。それだけでなく、生産性も3倍になりました。

六甲山は兵庫県南東部に位置する山塊で、緑があふれ、瀬戸内海国立公園の区域に指定されています。花崗岩が主体で、そこへ山に降った雨が長い年月をかけて浸透、濾過された水はミネラル分が豊富。とくに西宮市から湧き出る水は「宮水」と呼ばれ灘五郷の酒造りには欠かせない名水です。
六甲山は兵庫県南東部に位置する山塊で、緑があふれ、瀬戸内海国立公園の区域に指定されています。
花崗岩が主体で、そこへ山に降った雨が長い年月をかけて浸透、濾過された水はミネラル分が豊富。
とくに西宮市から湧き出る水は「宮水」と呼ばれ灘五郷の酒造りには欠かせない名水です。

―代表銘柄「福寿」についてお聞かせください。今回、ご紹介いただいた「福寿 純米吟醸」はどのようなお酒なのですか?

安福 「福寿」という銘柄は、七福神のひと柱である「福禄寿」に由来し、飲んでいただく方々に財運・長寿がもたらされますようにとの願いを込めて命名されたお酒です。ありがたいことに、発売以来ずっとみなさまにかわいがっていただいていますが、2008年に大きくリニューアルをしました。もっともこだわったのは、味わいです。日本酒は香りが大きなポイントですが、さらに、口に含んだときの味わいが大切です。そこで注目したのが酸度。ワインは非常に酸度が高いのですが、日本酒はおおむね低く、そのぶんアミノ酸がとても多いんですね。うまみがあるのですが、ワインのようなキレが少し足りません。海外のお客様のお声を頂戴する中で、日本酒にも、白ワインのようなフルーティさが求められていること受け、リニューアルを機に、香りがよくフルーティですがすがしくてキレのよいお酒を目指しました。
それにともなって、瓶の色も変更しました。日本酒というと茶色や緑色の瓶が多いのですが、リニューアルした福寿には淡い色の瓶のほうが、よりイメージに合うのではないかと考え、ブルーボトルを採用したのです。

福寿 純米吟醸 720ml 」。2017年International WINE Challenge トロフィー(最高金賞)受賞、2019年International WINE Challenge 金賞受賞。ノーベル賞公式行事で振る舞われる、世界で愛されるブルーボトルです。こちらは化粧箱入り。
「福寿 純米吟醸 720ml 」。
2017年International WINE Challenge トロフィー(最高金賞)受賞、
2019年International WINE Challenge 金賞受賞。
ノーベル賞公式行事で振る舞われる、世界で愛されるブルーボトルです。こちらは化粧箱入り。

―こちらは、ノーベル賞公式行事で提供されているそうですね。

安福 はい。2008年にノーベル賞公式行事の提供酒に選ばれて以来、おかげさまで何度もお使いいただいています。おかげさまで国内外の日本酒品評会でも数々の賞を受賞していますが、それは私たちが、お酒と料理との取り合わせを重視して商品設計をしてきましたので、とくに海外の方たちにはそこを高く評価していただいているのだと思います。

フレッシュタイプのチーズがよく合います。安福社長おすすめのペアリングは、マスカルポーネ。クリーミーなチーズがお酒に溶けてまろやかな味わい、至福至福。
フレッシュタイプのチーズがよく合います。安福社長おすすめのペアリングは、マスカルポーネ。
クリーミーなチーズがお酒に溶けてまろやかな味わい、至福至福。

―もう1品、「福寿 純米吟醸 山田錦 環和(かんな)」は、どのようなお酒なのですか?

安福 国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)をテーマに、循環型農業で生産した山田錦を100%使用したお酒です。先にもお話ししたように、私たちにとっては生産者さんに品質の高いお米を作っていただくことがとても重要です。しかし、農業の現場は高齢化が著しく、後継者がいないケースが少なくありません。また、地球温暖化をはじめとする気候変動への対策も考えていかないといけない。そこで、神戸市やコニカミノルタ株式会社、兵庫六甲農業協同組合などと連携して、ドローンを用いて農作業の省力化と品質向上をはかり、さらに神戸市の下水道から回収した再生リン肥料である「こうべハーベスト」を使って生産した山田錦を使っています。

SDGsを目指す「純米吟醸山田錦-KANNA- 720ml」。 ふくよかで甘く芳ばしい香り、厚みのある味わいです。
「日本酒の香りとうまみの両方が楽しめる」という口の広めなワイングラスとの相性もばっちりでした。カツサンドやビーフストロガノフ、ペッパーステーキなど意外なペアリングが楽しめます!
SDGsを目指す「純米吟醸山田錦-KANNA- 720ml」。
ふくよかで甘く芳ばしい香り、厚みのある味わいです。シャルドネグラスで飲むのがおすすめですが、
「日本酒の香りとうまみの両方が楽しめる」という口の広めなワイングラスとの相性もばっちりでした。
カツサンドやビーフストロガノフ、ペッパーステーキなど意外なペアリングが楽しめます!

―まさに「環境に負荷をかけない酒造り」ですね。最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

安福 先だって私たちは、2030年に向けた「グリーン・イニシアチブ」を策定しました。目指しているのは大きく3つ、「脱酸素社会」と「循環型経済社会」、そして「自然共生社会」の実現です。「環和」のように、下水を処理してリン肥料を作ったり、サステナブルな素材を活用することで循環型経済を実現したい。また、自然共生社会の実現のために、売り上げの一部を六甲山の環境保全活動に寄付をしています。さらに、脱酸素社会に関しては、この10月に世界で初めて、日本酒を造る工程において「カーボンゼロ」(二酸化炭素排出量が実質ゼロ)の「福寿 純米酒 エコゼロ」を発売します。

―カーボンゼロ! そんなことができるのですか。

安福 それだけではありません。「福寿 純米酒 エコゼロ」はカーボンゼロの達成に加え、醸造日数を短くしてエネルギー使用量を軽減したり、ラベルを廃した「エコロジー」ボトルを使用するなどして、さらなる環境負荷軽減を目指しています。
日本酒の造り手として、おいしい味のお酒を造るのは当然のこと。おいしいお酒を造り続けるためにはやはり、環境への配慮は必須です。環境にやさしいということは、すなわち人にもやさしい。私たちは日本中の、そして海外の方たちにも安心して「おいしい」と味わっていただけるお酒造りに励んでまいりたいと思っています。

神戸酒心館では、現在の在庫がなくなる来春頃から日本酒の全製品で、製造工程で使用するボイラーの燃料と使用する電力をカーボンゼロに置き換えるとのこと。それに先駆けて、10月20日に「福寿純米酒エコゼロ720ml」を発売。
神戸酒心館では、現在の在庫がなくなる来春頃から日本酒の全製品で、
製造工程で使用するボイラーの燃料と使用する電力をカーボンゼロに置き換えるとのこと。
それに先駆けて、10月20日に「福寿 純米酒 エコゼロ 720ml」を発売。

―日本酒のことだけでなく、環境に関するお話もとても勉強になりました。ありがとうございました!

「福寿 純米吟醸」720ml

「福寿 純米吟醸」(720ml)
価格:¥1,752(税込)
店名:神戸酒心館
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shushinkan.net/?pid=15828808
オンラインショップ:https://shushinkan.net

「純米吟醸 山田錦 環和-KANNA-」720ml

「純米吟醸 山田錦 環和-KANNA-」(720ml)
価格:¥2,200(税込)
店名:神戸酒心館
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shushinkan.net/?pid=160920970
オンラインショップ:https://shushinkan.net

「福寿 純米酒 エコゼロ」(720ml)
価格:¥1,650(税込)
店名:神戸酒心館
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shushinkan.net/?pid=170582361
オンラインショップ:https://shushinkan.net

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
安福武之助(やすふくたけのすけ)(株式会社神戸酒心館 代表取締役社長)

1973年生まれ。甲南大学経済学部、ノートルダム大学、ニューヨーク州立大学バッファロー校で学ぶ。1997年アサヒビール株式会社入社、東京工場総務部、酒類第二部ワイングループ主任を経て2003年に株式会社神戸酒心館入社、2011年代表取締役社長就任。13代目蔵元として、「安福武之助」を襲名。2019年「エコプロアワード財務大臣賞」を酒類業界で初めて受賞。

<文・撮影/鈴木裕子 MC/鯨井綾乃 画像協力/神戸酒心館>

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