
硬い野菜のささがきもあっという間に完成!「ジュジュ蜂の巣(しりしり器)」
2025/05/23
今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、にんじんしりしりにピッタリな形状に、手軽にカットできるスライサー。樹脂製の調理器具に人気が集まる中、木製ならではのメリットが多数あるとか。株式会社小柳産業 代表取締役の小柳明氏に、取材陣がお話を伺いました。

株式会社小柳産業 代表取締役の小柳明氏
―創業からの歩みをお聞かせいただけますか?
小柳 1926年に、曾祖父が「小柳木工製作所」として創業。木工所で修業した後に、独立という形で小さな工場(こうば)を開きました。創業当初はなかなか苦労をしたようで、当時日本政府が行っていた移民政策でブラジルに行くことも視野に入れるほどだったと聞いています。その後の日本の景気上昇に伴って商品も売れ始め、なんとか日本に留まることができたそうです。
創業以来、自然素材の木製品を主体にしたキッチン用品の製造販売一筋。鰹節削り器とところてん突きは、創業当時から作り続けている商品です。2代目を継いだ祖父が法人化し、長く代表を務めた後に父へバトンタッチ。4代目として私が継いだのが2018年です。

1926年創業、1969年法人設立、木工のキッチン用品を製造販売する小柳産業。
―小柳社長のご入社は?
小柳 学生の頃は、家業に関して継ぐとか継がないとか、あまり具体的にイメージしていませんでした。新潟県三条市に生まれ育ち、高校を卒業後は広い世界を見てみたくて東京の専門学校へ。ビジネスの基礎を学び、100円ショップの企業に就職しました。店長を任されるまでになりましたが、実家からそろそろ帰って来いというプレッシャーがかかるようになり、体を壊したこともあって退職しました。しかし、家業に入る前に、一度は好きなことを仕事にしたいという思いがあり、スポーツ系フットウェアの会社に転職。多くの学びがあり、結果として、そこでの経験が今とても役に立っていると感じます。
2001年に小柳産業へ入社し、商品の包装や配達といった下働きからスタートしました。「跡取り」というのは、古参社員からすれば好ましい存在ではありませんよね。長く働いているのに、いわゆるぽっと出の息子が上の立場になるのは面白くないでしょう。自分としても、ベテラン職人には技術の点で劣る自覚があったので、知識や技術を身につける努力をしながら、コミュニケーションを図ることに苦心しました。
2018年、40歳で社長に就任。先代である父は、祖父が長く社長職に就いていたので、逆に、若い感性で商品を売る必要性を感じていて、早くに交代したんじゃないかと思います。会長職に就いた今も、生き生きと仕事をしています。
―「ジュジュ蜂の巣(しりしり器)」についてお聞かせください。
小柳 最初の発売から、かれこれ40~50年経つ商品だと思います。以前は、大根をささがきにする商品でした。大根ににんじんを合わせたなますを作るときに使うもので、千切りより少し厚めになるので、関西方面で順調に売れていました。
ところが、2012年ごろから、急に、クレームが入るようになったのです。「にんじんがうまくできない」と。ほぼ大根専用の商品なのに、にんじんのクレーム。時には「パパイヤができない」という話もあって、驚くばかりでした。当時は流通の特性上、自社商品がどこで販売されているのかわからず、ネットで情報を取ることもできない時代。わけのわからないままクレームを受ける日々が続きました。
ある時、直接電話をしてきた方がいらっしゃったので、聞いたところ、沖縄料理に使っているとの話。初めて「にんじんしりしり」なる料理を知りました。全国的に、ゴーヤチャンプルーなどの沖縄料理が注目されていたんですね。新聞やテレビの取材も入るようになり、商品をにんじん用にリニューアルすることにしました。
大根は水分が多いので柔らかく、刃に引っ掛かりやすいのですが、にんじんは硬くて空滑りしてしまっていたのです。そこで、にんじんがきちんと引っかかるように1年ほどかけて整えました。

クレームをきっかけに、にんじんしりしりに最適な大きさにスライスできるものに改良。
―こだわりのポイントは?
小柳 木製品に金属を付けた調理道具は、実は今や珍しくなってしまいました。メーカーの数も、全国に5社もないと思います。カラフルで大量生産ができる樹脂製のものは、食洗機が使える利点もあります。けれど、木製の道具は、使えば使うほど、私は「きれいに年を取っていく」という言い方をするのですが、どんどん形を変えるんです。ちょっと力が加わる部分はちゃんと削れていくので、手になじむようになるし、色も変わり、味わい深くなるので愛着もわいてくるのではないでしょうか。握って痛くなく、熱くも冷たくもない、人間の手の感覚に近い素材である木材に、地元、三条市の特産品である刃物を組み合わせた製品です。

ピーラーを斜めに構えてにんじんを滑らせる。あまり力を入れずとも、あっという間にスライスできる。
木製品は、圧倒的に女性の支持がありますが、実は、外国人にも人気があります。木製品に日本らしさを感じるのでしょうね。海外からの見学者は多いですし、海外向けECサイトを持っている方からの引き合いも多いです。現在、18ヵ国に出荷し、約2割は海外での売上で、将来的には5割まで引き上げたいと考えています。
―今後の展開はいかに?
小柳 商品開発の観点では、料理との相性を大切にしていきたいと思っています。道具は便利なものでなければなりませんが、便利さに関しては上を見ても下を見てもキリがないです。最も便利な道具ではなく、食べたい料理を作るのに最適な道具を目指したいのです。商品開発にしても販売方法にしても。
いつもそのことを考えているので、外食のときも、旅行をしても買い物のときも、野菜の種類や切り方、色の組み合わせなどに、つい目が行ってしまいます。調理道具の特性上、お客様の7割以上は女性。デザインやネーミングの点でも女性に喜ばれることを意識しています。白髪ねぎができるピーラーを「ネギーる」と名付けたのは、中学生の頃の私です(笑)。
オリジナル商品を自社で作っているので、全国各地に出張する機会があり、常にアンテナを張って商品作りに生かし、それを全国各地で販売できるよう、これからも頑張っていきます。
―素晴らしいお話をありがとうございました!

「ジュジュ蜂の巣(しりしり器)」
(約27.2×8.3×1.6cm)
価格:¥1,335(税込)
店名:小柳産業オンラインshop
電話:0256-32-1574(8:30~17:30 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://oyanagi.buyshop.jp/items/22401349
オンラインショップ:https://oyanagi.buyshop.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小柳明(株式会社小柳産業 代表取締役)
1976年新潟県生まれ。専門学校卒業後、東京の100円ショップに就職し、店長を任される。体調を崩したのがきっかけで趣味でもあったスポーツウェア会社に転職。ここで、経営や商品開発、営業のノウハウを学ぶ。4年の修業期間を経て2001年に小柳産業へ入社。2018年に同社代表取締役社長に就任。地元の青年団体の会長も経験し、地域発展や天然素材活用などの活動にも注力している。
<文/植松由紀子 MC/藤井ちあき 画像協力/小柳産業>