今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのはお米やお餅を保存できる「ネルパック」。無酸素状態にしてお米やお餅を保存できるため、鮮度と風味が長続きすると評判の逸品です。30~40年ほど愛されているロングセラー商品の開発秘話を株式会社一色本店 代表取締役の一色恒平氏に取材陣が伺いました。

お米もお餅も無酸素保存でおいしさを守る「ネルパック」
2024/07/18

果実のかけ袋など農業を助ける
様々なグッズを開発・製造している株式会社一色本店。
現在も多くの製品が生み出されている。
―沿革を教えてください。
一色 1924年(大正13年)に祖父が創業しました。当時は梨やぶどうなど、果実にかけるかけ袋の製造販売が主な事業。ただ、果実のかけ袋は使う時期が限られているため、販売期間も限定的でした。そこで、それ以外にも製品を扱うようになり、商品が増えて現在に至ります。ロングセラーとなっている「ネルパック」もそのひとつです。


「ネルパック」シリーズは様々なサイズがそろうお米以外にお餅用も。
―「ネルパック」誕生のきっかけは?
一色 柑橘があったからこそできた商品です。みかん農園などでは、たくさんみかんが採れるので、市場に出せないB級品などが出てきます。それらの活用法としてはジュースなどがありますが、ジュースを絞って冷凍にするわけです。その保存方法として、ドラム缶の中に大きなビニールのような袋を入れて、ジュースを入れる。そして密閉して保存します。
その袋が酸素や雑菌を通さない。それを偶然使ったお米の農家さんが、「虫なども出ず、しっかり保存できる」と言ってくれました。
そこで保有米を保存できるように30kgほどのサイズを作って販売したところ、新潟県でとても売れたことがきっかけになります。当社のある愛媛県ではあまり知られていませんが、新潟県、宮城県。東北の方では知られている商品です。それが30~40年ほど前になります。
―サイズ展開は?
一色 個人用で2kg、5kg。それから大きいサイズでは10kg、15kg、30kgもあります。10kg以上は農家さん向けです。お好みや用途によって使っていただけるようにしています。


ハイバリア袋の他に脱酸素剤「エージレス」などがセットされた「ネルパック」。
お米と一緒に「エージレス」を入れて使用します。
検知剤がピンク色だと無酸素状態。
―特徴は?
一色 密閉度が高く、無酸素状態にできることです。ハイバリア袋の中に酸素を吸着する「エージレス」を一緒にいれることで、化学的に酸素を結合し無酸素にします。似たものとしては真空パックがありますが、これは空気を掃除機などで物理的に抜くような形です。見た目は空気が抜けたように見えますが、酸素は残っています。
「ネルパック」の場合は「エージレス」を使うことによって無酸素になり、袋内の酸素はほぼなくなります。このように無酸素状態にすることでお米の酸化を防ぎ、風味・おいしさを保つことが可能です。また、無酸素であるため、お米に発生するコクゾウムシやカビの発生を防ぐ効果もあります。酸化による味の劣化もなくなり、おいしさの保存にこだわりを持って開発した製品です。
―お米は無酸素保存しても大丈夫なのですか?
一色 元々、お米は籾殻に入っています。この籾殻は酸素を通しません。そのためお米そのものは無酸素でも問題ないのです。ですから白米でも籾でも玄米でも無酸素保存はできます。
新潟県などでは、籾のまま保存される方もいらっしゃるほど。食べるときに脱穀をしたほうがおいしいともいいます。そのあたりは手間と労力を考え、籾、玄米、白米と、お好きな状態で保存いただければと思います。

ハイバリア袋は破損がなければ繰り返し使えるが、
「エージレス」は「ネルパック」交換時や酸素の減少が不十分な場合に交換する。
―「ネルパック」は繰り返し使えますか?
一色 ハイバリア袋自体は損傷がない限り何度も使えます。ただ、「エージレス」という脱酸素材は1年ほどで替えていただかないと効果がなくなっていきます。酸素の減少が不十分な場合には交換が必要。「エージレス」のみも販売しているので、追加購入をして使用されている方も多いです。

お米の量が多い場合、複数パックに分けて保存しておくのがおすすめ。
「ネルパック」を開封すると無酸素状態が解かれるため、
鮮度や風味も落ちやすくなってしまう。
―おすすめの保存法は?
一色 冷暗所もしくは冷蔵庫で、使う分をパックしておくことがおすすめです。暗所がいいというのは、太陽の光が当たってしまうと、様々な要因からお米が傷むことがあります。できれば暗所で、涼しいところがいいです。また、パックをあけてしまうと無酸素状態が解かれるので、鮮度が落ちてしまいます。例えば10kgのお米を保存したい場合、少しずつ使うのであれば2kgを5袋にするほうがいい。お米を新鮮に保てます。
―お客様の声は?
一色 気に入って使っていただいている方が多いです。一度使うとリピーターになってくださる。ハイバリア袋は長く使えますから、2回目以降は「エージレス」だけの注文も多いです。


お餅用の「ネルパック」。
市販品などは個包装から出して入れる。使い方はお米と同様。
―「おもちかびないセット」も無酸素保存の商品です。
一色 ハイバリア袋は「ネルパック」と共通ですし、無酸素保存の商品ということは同じです。でも中に入れる脱酸素剤が少し違う。お米の場合は、水分が15%ぐらいと、水分率が低いのです。でもおもちは高水分。そのため水分が多くても無酸素にできるような「エージレス」に調整しないとトラブルが起きてしまう。そのため、脱酸素剤の成分を替えて商品化しました。
―使い方は?
一色 つきたての場合は、粗熱を少し取ってから入れてもらい、脱酸素剤などを入れて封をするだけです。お餅は柔らかいままでも、少し硬くても問題ありません。お正月などに余ってしまったお餅を保管するのにもおすすめです。市販品の場合は個包装から出して使います。
―「おもちかびないセット」の誕生はいつ頃ですか?
一色 これも20年前くらいに誕生したロングセラーです。「おもちかびないセット」もお餅の保存に困った農家さんの声で商品化につながりました。
このように当社の製品は農家さんからの声で作ったものも多い。ですが、後継者問題などで農家さんも少なくなっている現実があります。今まで通りの市場が継続するというのが難しい時代。「ネルパック」も本来はお米用ですが、この「おもちかびないセット」のようにほかの商品展開をしていくことを考えています。
例えば、古文書保存。ユーザーさんの声がきっかけとなって誕生しました。そんなふうに農家さん専用だった商品を違う形で一般の家庭用にスライドしていく。それは続けていきたいことです。


「ひよけくらら」は自分で長さを替えられるのが特徴。
元々は園芸用の商品だが、運転時やスポーツ時などのアームカバーとしても活躍しそう。
―今後の展望は?
一色 強化したいのは園芸。当社の製品で柑橘用の手袋があります。柑橘はトゲがあり、対策のために手袋を使うのですが、収穫専用の手袋を販売していました。これを園芸で活用すると、バラなど、トゲのある植物の剪定などに使えます。
それから「ひよけくらら」という商品。日よけをするために手・腕に着けられるものです。この商品は左右の手の長さが違うため、自分で好きな長さに切ることができるタイプ。
元々、これもトゲ対策と日焼け対策のための商品でした。農家さんの声から誕生しましたが、日常使いに広がっています。特に女性の方。運転するとき、ランニングするときなどにもいいですし、長さも替えられるのでぜひ使っていただきたいなと思います。ハサミで切るため、ほつれ加工もしてありますから、ひとつあると便利。紫外線の強くなる時期には活躍すると思います。
こうした商品のように、当社の製品はいろいろな方がいろいろな使い方をしてくださる。そのわくわくを広げられるようなチャンネルを、いつでもつなげられるようにしておくことは大事ですし、続けていきたいと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。

「ネルパック おこめ保存 5kg用(簡単Wチャックタイプ)3セット/箱」(専用Wチャック袋5Kg3枚、センサー付きエージレス3個、専用スライダー(チャック止め)1個)
サイズ:270×480mm
価格:¥1,397(税込)
店名:ナジャ工房
電話:089-922-4141(8:30-12:00/13:00-17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nadjakoubou.com/products/detail/1039
オンラインショップ:https://nadjakoubou.com/

「ネルパック おもちかびないセット 3セット/箱」(お餅約2kg)
サイズ:215×310mm
価格:¥1,056(税込)
店名:ナジャ工房
電話:089-922-4141(8:30-12:00/13:00-17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nadjakoubou.com/products/detail/519
オンラインショップ:https://nadjakoubou.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
一色恒平(株式会社一色本店 代表取締役)
1954年愛媛県生まれ石油製品就社に入社後3年間勤務、1983年に入社2007年に代表取締役に就任。農業用品の開発に注力をしている。
<文・撮影/青柳舞子 MC/三好彩子 画像協力/一色本店>