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伝統製法を受け継ぎ、受け継いで約200年。柄杓で注ぐ風味豊かな芋焼酎「甕雫(かめしずく)」

2024/10/25

約200年の歴史を紡いできた老舗酒造が、変わらぬ製法でつくったまろやかな芋焼酎「甕雫(かめしずく)」。繊細な料理の数々を引き立てる風味もさることながら、甕壷から柄杓で注ぐスタイルに、編集長アッキ―こと坂口明子も興味を惹かれます。「酒離れ」が聞こえてくる近年。京屋酒造有限会社 代表取締役の渡邊眞一郎氏は、伝統を守りながら、焼酎のおいしさを伝え続けています。その思いを取材スタッフが伺いました。

京屋酒造有限会社 代表取締役の渡邊眞一郎氏
京屋酒造有限会社 代表取締役の渡邊眞一郎氏

―御社は1834年(天保5年)に創業といわれていますが、沿革をお聞かせください。

渡邊 私が7代目になる京屋酒造は、宮崎県日南市油津に根を張り、麹と酵母を用いた伝統・伝承の甕壷(かめつぼ)仕込みで焼酎をつくってきました。油津という土地は、昭和初期に東洋一のマグロ基地として栄えた港町です。

水産業がとても盛ん。京屋酒造も創業当時は、海産物などの交易業を生業としていたと言い伝えられています。実際に、祖父も父も、水産業など、さまざまな事業を広く行っていました。私が京屋酒造を継ぐまでは母が主体。時代の流れとともに徐々に交易業なども減ってきたため、京屋酒造だけを残して、現在に至ります。

こうした歴史の中で大事にしているのは、おいしい焼酎をお客様にお届けすること。その思いを基本の考えとして、焼酎づくりを続けています。

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宮崎県日南市油津にある京屋酒造。
伝統の甕壷仕込み製法で焼酎をつくり、その豊かな味を次世代に伝えています。

―その中で誕生したのが「甕雫(かめしずく)」です。

渡邊 さまざまな事業から京屋酒造1本でやっていくことに決めた当時、焼酎の製造量もとても少なく、設備も古くなっている。とても厳しい環境でした。焼酎業に絞ったものの「どうしようか」と、いろいろ模索しているときに、地元の小売り業者さんから「付加価値の高い商品をつくろう」というお話をいただいて。そこで「甕雫」という、他ではやっていないタイプの芋焼酎をつくることになりました。

参考になったのは、先代が残していたさまざまな試作品です。いくつも味見したときに、ピンと来たのが地元の「寿」という紅芋を使った商品でした。当時、芋焼酎の原料と言えば黄金千貫(こがねせんがん)というさつまいも。それを宮崎紅という鮮やかな紅色の皮とクリーム色の肉質を持つ「寿」でつくることにしました。また、甕に入れて柄杓で注ぐスタイルにしたのも特長の一つです。

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柄杓から注ぐ「甕雫」。
高級感や上品さの漂いも感じられ、1杯をより丁寧に大事に飲む気持ちが芽生える。

―柄杓を用いた経緯は?

渡邊 一升瓶などからガブガブと注ぐのではなく、お茶のお点前のような和の雰囲気を取り入れたいと考えました。「甕雫」の酒質はとても柔らかい。和の繊細な味や香りを邪魔しない風味にしたこともあり、そのイメージに合うように甕壷と柄杓にしています。

―そのほかにこだわった点を教えてください。

渡邊 「甕雫」に用いるさつまいもは、当初、生産者さんから調達しようと考えていました。でも、あるとき小売店さんから「京屋酒造でさつまいも栽培をしないか」と。そこで農業にも進出しました。でも、農業はド素人。いろいろな肥料などを使いこなすのは、とても難しく、堆肥などを用いてやらざるを得ない状況になりました。

その結果として、有機農法を用いることになったことは、今、思い返しても良かったなと思います。ただ、生産量が決して多くない。そのため「甕雫」シリーズは、100%うちの畑で採れた有機のさつまいもとお米でつくっている限定販売の「有機焼酎 甕雫 玄」もあれば、他の生産者さんから調達したさつまいもを使っている商品もあります。

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繊細な和食にもよく合う「甕雫」。
ごま豆腐と合わせてみても、コクが深まりおいしく味わえました。

―味の特長をお聞かせください。

渡邊 芋焼酎というと、さつまいもの香りが強いイメージがあると思います。現に、黄金千貫を原料にすると個性もある力強い焼酎がほとんど。そこで、「甕雫」は紅芋の品種を用い、さつまいも独特の香りを生む皮と実の間も取り除きました。

そうすることで、口あたりが軽やかになります。繊細な和食やフレンチにも合いますし、料理の味を邪魔しない。そういう風味が生まれました。

―おすすめの飲み方は?

渡邊 「甕雫」は、アルコール度数が20度。焼酎の中では低アルコールです。そのままお飲みいただくと、一番風味が感じられると思います。それでもアルコールが強い場合は、度数が16度くらいになるオン・ザ・ロックもおすすめです。

それから温燗。ぜひ試していただきたいです。量にもよりますが、「甕雫」を電子レンジで30秒〜1分ほど温めます。熱燗ほど温めず、人肌程度。個人的には、それが一番好きな飲み方です。

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クセがなく飲みやすいので、冷えたオン・ザ・ロックや人肌くらいに温める温燗など、飲み方もたくさん。
季節や気分などによって変えてみるのもおすすめ。

―どのような方に手に取っていただきたいですか?

渡邊 多くの方に手に取っていただきたいですし、ファンになってほしいという思いがあります。また、さまざまなお料理にも合うので板前さんや女将さんなど、食のプロの皆様にも味わっていただきたい焼酎です。

―実際に飲まれたお客様の声で印象的なエピソードは?

渡邊 印象深いのは、モンゴル出身の力士さん。「甕雫が好き」だと言っていただいて。九州に来たときに、車のトランクに「甕雫」をたくさん乗せて皆さんと飲まれたお話です。モンゴルの国民酒である「馬乳酒」も柄杓で注ぐスタイルなので、お気に召してくださっているのは味だけではなく、そうした背景もあるのかなと思います。「とてもおいしい」とよく飲んでいただきました。

―最後に、今後の展望を教えてください。

渡邊 近年、若者の酒離れが進んでいます。加えて人口の減少。特に国内でのアルコール市場は急速に縮んでいくだろうという見立てがあります。その中で海外にも目を向け、進出もしていますが、同時に国内でも本格焼酎をまだまだ扱ってもらえる市場があるはず。レストランやバー、ホテルなどにもPRをして、焼酎が4〜5種類並んでいるような世界をつくれたらと考えています。

そのためにも、お客様はもちろんなのですが、ソムリエなどお酒のプロの方にも焼酎のおいしさ、良さを改めて知っていただけるように努力しながら開拓していく。それは絶対に必要なことだと思っています。京屋酒造は、日本古来から大事にしている製法で焼酎をつくってきました。それはこれからも変わりません。伝統製法でつくる豊かな味を、ぜひ、楽しんでいただけたらと思います。

―貴重なお話をありがとうございました。

甕雫(1,800ml)

「甕雫」(1,800ml)
価格:¥5,500(税込)
店名:京屋酒造有限会社公式ショッピングサイト
電話:0987-22-2002(8:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.kyo-ya.com/products/detail/16
オンラインショップ:https://shop.kyo-ya.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
渡邊眞一郎(京屋酒造有限会社 代表取締役)

1948年生まれ。1971年慶応義塾大学卒業後は金融機関に就職。1977年に京屋酒造に入社。1993年に代表取締役に就任。有機焼酎等、原料農産物の生産にも携わる。2003年宮崎県酒造組合会長就任。2019年日南商工会議所会頭就任。酒造業界だけなく、地元経済活性化にも注力している。

<文・撮影/青柳舞子 MC/高橋知 画像協力/京屋酒造>

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