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伝統と進化の融合、 鶴屋吉信✕IRODORI。変わらないのは「ヨキモノヲツクル」の心。

2022/04/28

京菓匠鶴屋吉信は、京都の西陣に本店を構える京都の老舗和菓子店。近年、新感覚の和菓子を生み出していると注目を集めています。そこにはどのような思いがあるのか、編集長アッキーに代わって取材陣が、鶴屋吉信7代目社長・稲田慎一郎氏にお話をうかがいました。

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株式会社鶴屋吉信代表取締役・稲田慎一郎氏。

―創業は1803年。219年もの間、京菓子を作り続けていらっしゃるんですね。

稲田 初代鶴屋伊兵衛は福井県小浜出身です。小浜は鯖街道の始点ということもあって京都とは深い関わりがあり、職を求めて京都に上る人も多かったようです。伊兵衛もそのひとり。京都の菓子店で修行を積み、今の店がある場所よりも少し北に店を構えました。現在の場所に店を構えたのは、戦後のことです。
219年という歴史を考えれば、私も素直に「すごいなあ」と思います。ただ、京都にはもっと長く続けていらっしゃるお店がたくさんありますから、弊店なんてまだまだです。

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鶴屋吉信本店は京都・西陣に。

―御所や宮中にお菓子を献上していたと伺っています。

稲田 それは弊店にかぎりません。京都の上菓子屋仲間がしのぎを削ることによって京菓子職人の技が磨かれ、京都の雅な世界を表した「京菓子」というものが発展してきたのだと思います。

―鶴屋吉信といえば「柚餅(ゆうもち)」「京観世(きょうかんぜ)」が有名です。

稲田 柚餅は、今から150年あまり前に三代目鶴屋伊兵衛が、京観世は100年あまり前に四代目稲田儀三郎が考案しました。それを現在も作り続け、みなさんに食べていただけるというのは、本当にありがたいことです。いずれも当時とほぼ変わらないレシピで、一つ一つ職人が心を込めて作っています。材料に関しても、妥協はしません。

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「柚餅」は求肥(りゅうひ)と呼ばれるお餅。
ひとくち味わえば、阿波和三盆のやさしい甘み、
四国産の青柚子・黄柚子の甘くさわやかな香りが広がります。
紅茶との相性も○。
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小豆本来の素朴な味と香り、やさしい甘み、
口に入れるとほろりと餡がほぐれる「京観世」。
お抹茶はもちろん、コーヒーにもよく合います。

―妥協はしない。どんな点にこだわっていらっしゃるのでしょう。

稲田 代々受け継がれている家訓に「ヨキモノヲツクル為ニ材料、手間ヒマヲ惜シマヌ事」という一条がありますが、まさにこの一点にこだわっています。たとえば、弊店の多くのお菓子の材料である小豆。丹波や北海道、岡山など国産の小豆を使っていますが、同じ産地でも天候などによって毎年出来が異なります。ですから、毎年必ず現地の小豆畑に赴いて選び、それを実際に炊いて、これならお客様にお出しできると納得できたものだけを使います。砂糖も、製糖会社さんにはザラメの大きさを細かく指定します。その上で、どのお菓子も手間と時間をかけてお作りしています。

―それでこそ、伝統が守られるのですね。

稲田 はい。ただ、私は、伝統は「守る」ものではなく「大切にする」ものだと考えています。物事は、頑なに守っているだけでは後退するだけです。お菓子というのは、みなさんに召し上がって、よろこんでいただいてこそのもの。世の中はつねに動いていて、人々の好みも変化しますから、それにお応えできるお菓子を作っていかなければなりません。鶴屋吉信の原点である柚餅、京観世を大切にして作り続けながら、その時、その時のお客様が求められているのはどのようなお菓子だろうかと考え、新たな試みを続ける……という日々です。

―挑戦なくして継続はなし、ということでしょうか。

稲田 実は4代目は、プリンやスイートポテト、シュークリームなどのレシピを書き残しています。当時、お菓子も「洋」のものが入ってきて、みなさんによろこばれていました。それはどんな味で、どのような作り方をするのだろうと探求していたのでしょうね。われわれも4代目を見習って、従来のお菓子の素材を使いながら新たな試みを続けているのです。

―昨年2月にリリースされた「果の彩(かのあや)」も、その一つですか? とても華やかで、一見したところ、ようかんとは思えません。

稲田 果の彩は、ようかんをタブレットのように薄く作り、その上にドライフルーツやナッツをあしらったもの。ようかんのなめらかな口当たりと、フルーツやナッツの持つ優しい甘みや鮮やかな色、香りのコンビネーションは、思っていた以上のものとなりました。

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「果の彩」は、うすべに・しょこら・だいだいの3種。

―2015年には、新ブランド「IRODORI」を立ち上げられましたね。どのような意図がおありだったのでしょう。

稲田 日頃から和菓子に親しんでくださっているのは、60代以降の方々です。その世代の方は、弊店のお菓子をおもに直営店、もしくは百貨店でお求めになられるんですね。でも、若い世代の方たちは今、百貨店にはなかなか行かれないでしょう? そこで若い世代の方たちにも親しんでいただけるようなお菓子を作って、京都駅八条口にIRODORIブランド限定品をご提供するショップ、「IRODORI」をオープンしました。

―「IROMONAKA(いろもなか)」「琥珀糖(こはくとう)」「有平糖(ありへいとう)」……どれも、まさに彩りがかわいくて、思わず手に取ってしまいそうです。見た目も、いい意味で和菓子っぽくないですね。

稲田 そう言っていただけると、うれしいです。かわいい、と思って手に取ってみたら、実は和菓子だった、というふうになったらいいなあと思って作りましたから。

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「IROMONAKA」は食べやすい一口タイプ。
丹波大納言小豆の中でもとくに上質な
馬路大納言あずきのみで作った「小倉」「こしあん」と、
芳醇な抹茶の香りと奥深い味わいが楽しめる「抹茶」の3種。
最中だねは5色。IRODORI店頭ほか、
オンラインショップでは限定パッケージ版をお取り寄せ可能。
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最中だねに自分で餡をはさんでいただくので、
まさにつくりたてのおいしさ。
最中だねは、違う色を合わせても素敵。

―いずれも稲田社長のアイデアと伺いました。

稲田 IROMONAKAは、フレンチに食事に行った際、最後のデザートに小さなマカロンがたくさん出て来たのです。「かわいいな、これ、うちの最中でもできるぞ!」と思って。琥珀糖は、色鉛筆や絵の具のセットのイメージ。私、もともとステーショナリー好きで、文具店売り場を見つけると、入っては色鉛筆や絵の具のセットを見ています。琥珀糖はどちらかというとパステルのイメージ、有平糖は色鉛筆のイメージかな。

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伝統的な和菓子「琥珀糖」をスティックタイプに。
JR京都駅八条口の「IRODORI」と
「鶴屋吉信虎ノ門ヒルズ店」、
「鶴屋吉信 渋谷ヒカリエ ShinQs 東横のれん街店」の
3店で販売。
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上質な砂糖を煮詰めて作る飴「有平糖」も伝統的なお菓子。
カラフルな柄は、
それぞれ京都の名所のイメージを表現しています。
JR京都駅八条口の「IRODORI」と
「鶴屋吉信虎ノ門ヒルズ店」のみで販売。

―斬新ですね。こうした、従来のお菓子とはイメージがガラリと変わったものを作ることに対して、躊躇することはありませんでしたか?

稲田 周囲はどう思ったかわかりませんが、私自身は全然(笑)。私は、変えてはいけないものなど一つもないと思っているんです。先にも言いましたが、とくにお菓子は今の時代、そしてこれからの時代の方たちにどうよろこんでいただけるか、が大切です。そのためには「変わる」ことも必要だと思うんです。ただ、伝統は大切にします。IRODORIのお菓子はいずれも、伝統的な和菓子と同じ素材を使っています。色合いや香りを変えただけなんですよ。

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IROMONAKAの最中だね。天然の素材を使い日本の伝統色を表現。
右から「薄紅(うすべに)」「金糸雀(カナリア)」
「勿忘草(わすれなぐさ)」「胡粉(ごふん)」「丁字(ちょうじ)」。

―伝統と進化の融合、ですね。

稲田 はい。2020年6月には、まさにそのことをコンセプトにした新しい店舗「鶴屋吉信 虎ノ門ヒルズ店」をオープンしました。鶴屋吉信にIRODORIを併設し、伝統的な和菓子と新しい感覚の和菓子の両方を選んでいただけます。鶴屋吉信のお菓子とともにIRODORIを手に取っていただけたら、逆にIRODORIをきっかけに伝統的な和菓子を知っていただけたら。いずれも新しい発見があって、きっと楽しんでいただけると思います。また、和菓子の世界自体もぐっと広がるのでは、とも期待しています。 

―虎ノ門ヒルズ店限定のショッピングバッグも素敵です!

稲田 ニューヨークを拠点として活躍するスウェーデン出身のアーティスト、マッツ・グスタフソン氏に描いていただいた鶴の絵があしらわれています。彼の描いたスワンの絵に私は一目惚れしてしまい、新店舗オープンにあたってぜひと、直接ご本人のアトリエを訪ねてお願いしたのです。日本画のようでいて日本画でないような、でも、洋画でもなく……素敵でしょう?

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「鶴屋吉信虎ノ門ヒルズ店」の象徴である、
マッツ・グスタフソン氏による二羽の鶴をあしらったショッピングバッグ。
こちらは虎ノ門ヒルズ店限定。

―お話をうかがって和菓子のイメージが変わったといいますか、無限に広がっていくようで、わくわくしてきました。今後も、どんな和菓子の世界を見せていただけるのか、楽しみです。ありがとうございました。

IROMONAKA_商品1

「京観世」
▶価格 ¥1,512(税込)
▶店名 鶴屋吉信
▶電話 075-441-0105(代)
(元日~1月2日、水曜日を除く9:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://shop.tsuruyayoshinobu.jp/collections/kyokanze
▶オンラインショップ https://shop.tsuruyayoshinobu.jp

IROMONAKA_商品2

「柚餅」
▶価格 ¥540(税込)
▶店名 鶴屋吉信
▶電話 075-441-0105(代)
(元日~1月2日、水曜日を除く9:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://shop.tsuruyayoshinobu.jp/collections/yuumochi
▶オンラインショップ https://shop.tsuruyayoshinobu.jp

IROMONAKA_商品3

「果の彩」
▶価格 ¥1,620(税込)
▶店名 鶴屋吉信
▶電話 075-441-0105(代)
(元日~1月2日、水曜日を除く9:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://shop.tsuruyayoshinobu.jp/collections/kanoaya
▶オンラインショップ https://shop.tsuruyayoshinobu.jp

IROMONAKA_商品4

「IROMONAKA(オンラインショップ限定パッケージ)」
▶価格 ¥2,700(税込)
▶店名 鶴屋吉信
▶電話 075-441-0105(代)
(元日~1月2日、水曜日を除く9:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品URL https://shop.tsuruyayoshinobu.jp/collections/iromonaka
▶オンラインショップ https://shop.tsuruyayoshinobu.jp

<Guest’s profile>
稲田慎一郎(株式会社鶴屋吉信 代表取締役社長)

昭和36年(1961年)東京都生まれ。昭和60年(1985年)に甲南大学 経営学部を卒業後、同年4月に西武百貨店に入社。5年後の平成2年(1990年)に鶴屋吉信に入社し、営業企画室長、東京支店長等を経て平成12年(2000年)に代表取締役社長に就任。

<文/鈴木裕子 MC/吉田茉代 画像協力/鶴屋吉信>

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