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とろけるような豆腐の食感が楽しめる。リピーター続出の、佐嘉平川屋「温泉湯豆腐」

2022/04/22

佐賀県の嬉野温泉と言えば、九州を代表する歴史ある温泉地。「日本三大美肌の湯」のひとつとしても知られています。今回、アッキーが気になったのは、嬉野温泉の旅館で必ず出てくる郷土料理、「温泉湯豆腐」。最近では、家庭でも楽しめるようになっています。
お取り寄せはもちろん、お店も行列ができるほどの人気の「佐嘉平川屋」代表の平川大計氏に、温泉湯豆腐が大ヒットした理由や、地元・佐賀への想いを、取材陣がお聞きしました。

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佐嘉平川屋 代表の平川大計氏

―「温泉湯豆腐」はかなり古くからあるそうですね。

平川 いつからというのは定かではありませんが、かなり昔から嬉野で親しまれていたようです。江戸時代、嬉野は長崎街道の宿場町として栄えていたので、旅人たちが泊まる宿で「温泉湯豆腐」が提供されていました。
もともと、佐賀では良質な大豆が豊富にとれるので、独特の豆腐文化が根づいています。そのひとつが温泉湯豆腐で、嬉野の温泉水で湯豆腐をつくると、豆腐が溶けて白濁し、豆腐がとろとろになるという特徴があります。

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原料の大豆は佐賀産の「フクユタカ」が中心。
たんぱく質が豊富で雑味のない甘さが特徴。

―本当に、ふわっふわ・とろっとろの食感で、初めての味でした。

平川 ありがとうございます。お客様からも「フグの白子みたい」と言われたりして、「そんな高級なものと比べてもらえるんだ」と驚いています(笑)。
メディアでもたくさんとりあげてもらえたおかげで、少しずつ全国で知られるようになってきましたが、まだまだ知らない人も多いと思います。普通の豆腐とは食べ方が違うし、「今まで食べたことない」という方がほとんどなので、おいしさを伝えるまでに時間がかかるのです。でも、一度知ってもらえるとファンになってくれることが多くて、何度もリピート注文してくれる方がたくさんいます。売り上げが確実に毎年右肩上がりになっているのは、そのおかげです。
ドンと流行って途中で落ちるというようなことは一番避けなくてはいけないし、長く継続していくことが重要だと思っています。

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溶けた豆腐はとろけるような食感で、大豆の風味が引き立つ。

―「温泉湯豆腐」は、どうしてお豆腐が溶けるのでしょう?

平川 簡単に言うと、嬉野の温泉は弱アルカリ性で、その作用で豆腐が溶け出します。豆乳は酸で固まる性質があるので、アルカリだと逆に溶けるんだと思います。もちろん、どんなお豆腐でも溶けるわけではなく、お豆腐の作り方によっても、溶けたり溶けなかったり、溶けやすかったり溶けにくかったりしますね。
なので、うちでは温泉湯豆腐専用にお豆腐を作っています。

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とろとろの豆腐に、甘い胡麻だれが絶妙にマッチする。

―豆腐はもちろんですが、添付の胡麻だれがまたおいしいですね。

平川 胡麻だれのレシピは、うちの母親が家でつくっていたものがベースになっています。こっちの人だからすごく甘口なんですが、汁と混ぜるとちょうどいい塩梅になる。関東の人には「湯豆腐はポン酢がいちばん」という先入観があったようですが、食べてみるとファンになってくれる人が多いです。うちの妻も関東の人間ですが、今はすっかり胡麻だれ派です。

―旅館のメニューのひとつだった温泉湯豆腐を、販売し始めたきっかけは?

平川 以前は嬉野でしか食べられないメニューだったので、ここに来ない方にはなかなか知ってもらえる機会がありませんでした。そんなとき、おつきあいのあるスーパーからの依頼で、温泉湯豆腐専用の豆腐、温泉とうふをつくってスーパーで売ることになったのです。
ところが、温泉湯豆腐に必要な「温泉水」をそのまま売ろうとしても、保健所の許可が下りません。温泉水と同じ成分からできた「調理水」にすることで、やっと販売できるようになりました。温泉水は自然のものなので、成分が微妙に変わったりして不安定という問題もありましたが、その点調理水は安心です。
しかし同じ佐賀県内でも嬉野以外の人は、温泉湯豆腐をご存じなかったので、最初は全く売れませんでした。店頭で試食販売などしていると、「白く濁って気持ち悪い」「水まで売りやがって」などさんざんなことを言われたものです。それが、「食べてみたらおいしい」ということで、少しずつ受け入れてもらえるようになってきたのです。

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湯豆腐を楽しんだ後は、豆乳鍋として野菜を入れたり、
豚しゃぶ、雑炊も楽しめる。

―通販を始めたきっかけは?

平川 父の知り合いの元プロ野球選手が、温泉湯豆腐を大変気に入ってくれまして、「ぜひお歳暮で使いたい」と言われたのです。それならと、1989年から通販で扱うことになりました。
さらに、通販を伸ばすためには店舗が必要だと思い、私が社長になってから2010年に「佐嘉平川屋 嬉野店」を開店しました。
温泉湯豆腐は、そのまま食べてもおいしいし、野菜や肉を入れて鍋にしてもおいしいし、最後にぞうすいにするとさらにおいしい。この食べ方を広めるために、店舗では単なるメニューのひとつとしてではなく、フルコースで提供することにしました。
開店に当たっては、いろんな人から相当反対されましたし、付き合いのあった金融機関からも融資を断られて、苦労しました。しかしお店だけで採算を合わせるということでなく、会社全体のイメージのためにも、ブランディングのためにも、「絶対ここにはこの建物がなきゃいけないんだ」という強い想いで、無理をしてつくりました。
開店当時は、採算ラインの4分の1しか売上が立っていませんでした。地元の人をターゲットにしている商売でないから、認知されるまでにすごく時間がかかったのです。
でもおかげさまで、今では、この店を目的に嬉野に足を運んでもらえるような、そんな位置づけになっていると感じます。

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豆腐もちに豆乳ソフトクリームをのせ、
豆腐白玉を添えた「平川パフェ」。

―認知が広がった理由はなんでしょう。

平川 いろいろなメディアに取り上げてもらいましたし、最近はSNSでいろんな方に紹介していただけることが大きいですね。
俳優の仲里依紗さんが、うちの店で「平川屋パフェ」を食べる動画をYouTubeで流してくれた影響はすごかったです。遠くからもたくさんお客様が来てくれて、パフェ目当てだけですべての席が埋まったのは、初めてのことでしたね。しかもYouTubeはテレビと違って放送期間が長いので、それが2、3日で終わらずにずっと続くんです。お客様が分散するという面でもありがたいですね。
店舗をつくったときには、イートインのスペースは付け足しのようなイメージでしたが、今ではこちらのほうがメインになってしまいました。申し訳ないことに土日祝日は2時間待ちになってしまうことも多くて、僕がいちばんびっくりしています。

―以前は、運輸省(現在の国土交通省)にお勤めだったそうですね。

平川 30歳を目前にした2000年に東京からUターンして、父が社長をしていたこの会社に入りました。実は当時、会社の状態はすごく悪かったんです。主要取引先が倒産し、売り上げの3~4割を失った状態で、それがさらにどんどん悪化していました。
当時いちばんショックだったのは、うちの社員がほかの店の豆腐を買って食べていたことです。「こんな状態じゃだめだな」と思いました。「自分たちがつくった豆腐を食べたい」と思えるようにしていかなきゃならないと強く感じました。そのため、安くてもおいしくない商品は、どんどん失くしていきました。
経営が不調な時に陥りがちな失敗は、「他社に負けないように値段を下げる」というパターンです。値下げ競争に陥ってどんどん安くなるし、薄利多売せざるを得なくなって取引先に依存し、言いなりになっていきます。
「NOと言える状況」にするには、自分たちで売る力をつけるしかありません。
とはいえ、豆腐屋は日々まとまった量の生産がないとまわせないので、卸も無下にはできません。両方をうまくまわしていく戦略が必要でした。

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「佐嘉平川屋 嬉野店」は、
古民家の木材を活用した、温もりのある空間。

―社長に就任されてから、過去にないほどの売り上げとなり、利益も大幅に増えたとか。

平川 社長になったのは2006年ですが、そのときはまだ、売り上げが上がってきたとはいえ資金繰りは苦しい状況でした。ですが、さまざまな問題から逃げ出さずに、ひとつずつ真正面から向き合ってやってきたことが結果につながってきたと思います。
なんとか立て直していこうと色々試行錯誤した結果、早い段階で「通販を伸ばしていくしかない」と思いました。通販は問屋を通さないので、お金が入ってくるのが早いんですね。それに、スーパーだと納品できるところが限られますが、通販なら全国どこにでも送ることができて、全国に顧客をつくることができます。
そのときに重要になってくるのが、やはりブランドの力です。豆腐自体は、日常的にどこにでもある商品ですから。そういう意味で、当初から「ブランディング」の大切さはすごく意識していました。
そういう中で、たまたま2019年にリブランディングをやったのですが、その直後に始まったのが、コロナの流行です。店は打撃を受けましたが、通販は大幅に伸びました。昨年は水害などもありましたが、いろんな方が紹介してくれ、取り上げてくれたおかげで、現在の売り上げは好調です。
役所にいたときは、死ぬほど働いても「税金の無駄遣いするな」などと文句を言われるばかりで、ほめられることってなかったんですよ。それが今は「おいしかった」「作ってくれてありがとう」と日常的に言っていただけるんです。シンプルな言葉だけど、心に響きますし、それがモチベーションにもなっています。
役所をやめるときは、みんなから「何考えてんの?」とさんざん言われたのですが、役所をやめたのが、僕の人生の中でいちばんのファインプレイだと思いますね。
あそこで切り替えてなかったら、今のようにやりたいことをやれる人生になっていなかった。「踏み出す一歩」がいちばん重要だと感じます。

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2022年秋開店予定の店舗前の武雄温泉の楼門は、
東京駅も手掛けた佐賀県出身の辰野金吾氏の設計。

―店舗の外観もお店のHPも、スタイリッシュで素敵です。

平川 ありがとうございます。今年の秋には、西九州新幹線の開通に合わせてもう一店舗、武雄に和モダンなお店を開く予定です。これでまた弊社の見られ方が変わってくるのではないかと期待しています。
武雄は古くからある温泉地なので、保守的になっている部分もあります。新しい店が、地域の活性化につながればと思っています。

―地元愛が強いんですね。

平川 実は、最初からそうだったわけではないのです。もちろん、弊社が他店との差別化をするうえで軸になったのは、何よりも「地域性」ですから、そういう意味で地元に恩返しをしなければという想いはありましたが、正直、5年くらい前まではビジネスの視点で地元を見ていました。
でも不思議なものですね、僕もいい年齢になったせいか、「地元のためにちゃんとやらなきゃ」という気持ちがだんだん強くなってきたのです。まるで「好きだ好きだ」と言い続けていたら、本当に好きになっちゃった、という(笑)。今は「自分たちだけでなく皆さんのためにも頑張ろう」という部分が、少なからずありますね。

―3代目の社長。大切にしていることはなんでしょう。

平川 当たり前だけど、ちゃんとおいしいものをつくるということですね。
業績が悪くなってくると、目の前の資金繰りにばかり目が行って、いいものをまともにつくることから離れていってしまいます。
時代に合ったやり方も大切ですが、自分たちの思いのこもったものをきちんとつくって、最後まできちんと売るということも引き続きやっていかないと、生き残っていけないと思います。

―今後のビジョンをお聞かせください。

平川 豆腐屋って、労働環境は悪いし、給料も低い、社会的地位も低いというイメージがありますよね。「パティシエになりたい」という人は多いけれど、「豆腐屋になりたい」という人はいない。僕自身、実家が豆腐屋であることを恥ずかしく思ったこともありました。そういう環境を変えていかなくちゃいけない。社員が誇りをもって働けるような環境にしたいです。
豆腐屋によっては、スタッフが高齢化して、若い人たちが少ないという話も聞きます。目先の利益を追うだけでなく、業界を魅力的にしていかないと、若い人が入って来なくて、豆腐屋を続けていくことが難しくなっていきます。
業界を魅力的にする手段のひとつとして、それぞれの豆腐屋のブランド力の強化があると思います。それによって安売り競争から抜け出して、経営状態がよくなり、社員の待遇改善にも繋がるはず。そのためには、それなりの投資も必要です。そのひとつが、武雄に完成する新しい店舗です。
まずは「温泉湯豆腐」を全国みんなが知っているレベルまでもっていきたい。温泉湯豆腐は年配の人に好まれると思われがちだけど、実際には若い人も男の人も好きになってくれます。「豆腐は嫌いだけど、温泉湯豆腐は好き」という人も多いんです。ぜひ、一度食べてみてほしいですね。
また、単なる地域の名産品ではなく、地域の文化にまで昇華させたいという想いもあります。「銭湯に行ったら牛乳を飲む」というのがひとつの文化としてありますが、牛乳の代わりに豆乳を飲む「湯上り豆乳」という文化も浸透させたいです。温泉に入ったあとは、「豆乳を飲み、温泉湯豆腐を食べて、豆乳パフェで締める」という流れが一般的になったら理想ですね。
地方の名産品といっても、実は原料は地元のものでないという場合も多いですよね。でも佐賀は農産物が豊かで質の高い大豆も豊富に採れるので、地元産の原料で豆腐をつくることができて、恵まれていると思います。将来的にはスコッチウイスキーのように、地域に紐づきながらも世界的に認知されるような商品にしていきたい。佐賀を「豆腐の聖地」にするのが目標です。

―いろいろと夢が膨らみますね。今日は素晴らしいお話をありがとうございました!

温泉湯豆腐_商品

「温泉湯豆腐3丁入り(胡麻だれ付き)」
▶価格 ¥3,240(税込、送料込)
▶店名 佐嘉平川屋
▶電話 0120-35-4112(9:00~17:00)
▶定休日 日曜(インターネットでのご注文は24時間365日受付)
▶商品URL https://www.saga-hirakawaya.jp/products/detail/24
▶オンラインショップ https://www.saga-hirakawaya.jp/

<Guest’s profile>
平川大計(有限会社平川食品工業 代表取締役)

1971年生まれ。佐賀県の豆腐屋、佐嘉平川屋の3代目。九州大学卒業後、旧運輸省に入省、港湾・航空行政に携わった後、起業するため2000年に退職。腰掛けのつもりで実家の豆腐屋に入社したが、実質債務超過で倒産寸前であったため立直しに奔走。嬉野温泉名物の温泉湯豆腐の普及を進め、通販を拡大することで立直しに成功。佐賀の豆腐文化を全国に広めるとともに、次世代の豆腐屋の形を作るべく活動中。一般財団法人全国豆腐連合会理事。

<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/中田紗也夏 画像協力/平川食品工業>

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