豊かな香りと深いコク。こだわりの生乳から生まれる「オホーツクおこっぺ有機醗酵バター」

2025/07/10

今回、編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、コクや風味が抜群にいいとされる発酵バターで、さらには有機認定された牛乳を原料にする「オホーツクおこっぺ有機醗酵バター」。製造販売しているノースプレインファーム株式会社 代表取締役社長の大黒宏氏に、取材陣がお話を伺いました。

ノースプレインファーム株式会社 代表取締役社長の大黒宏氏

―大黒社長のご経歴からお聞かせください。

大黒 1956年に北海道の興部(おこっぺ)町に生まれました。高校までを興部で過ごし、江別市にある酪農学園大学で学んだ後に、家業である大黒牧場に入りました。

―大黒牧場の歩みも教えてください。

大黒 私で4代目となります。初代は1898年に徳島から入植して、畑作から始めたと聞いています。畑作だけでは厳しいため酪農を兼業。1955年を前後して北海道で起きた大冷害を機に、酪農専業になったそうです。父の代でした。

1988年に「ノースプレインファーム株式会社」を設立。興部の牛乳を興部の人たちに飲んでほしいという私の想いから、当時、とても難しいといわれていた乳処理業の許可を新規に取得し、牛乳・乳製品の製造・販売までを行う体制を整えました。

興部や旭川での宅配を皮切りに、チーズ、バターの製造許可取得、ソフトミックスやヨーグルト、バターなどの商品開発、それを販売・使用する販売・飲食の姉妹店のオープンと歩みを進めてきました。気がつけば、2023年で創立35周年を迎えることができました。

1988年の設立以来、自然と共生する酪農を推進。

40年近い歩みの中で、私にとって大きな教訓となった商品に「生キャラメル」があります。2000年前後、全国で乳製品の消費量が落ち込み、搾った牛乳を廃棄する「生産調整」が行われました。ノースプレインファームが目指す「地産地消」にも陰りが見え始めていました。大切な牛のミルクを廃棄することに胸を痛め、牛乳の消費拡大と興部産牛乳の知名度アップを目指して、新商品を開発することになりました。ある方から「北海道産の牛乳で作ったキャラメルが食べてみたい。それも、歯にくっつかないキャラメルを」という話をいただきました。キャラメルについて知るにつけ、イギリスの「ファッジ」やフランスの「キャラメルムー」など、世界中にいろいろなキャラメル菓子があり、面白いと思いました。

こうして生まれたのが、生クリームをたっぷり使ったくちどけの良い生キャラメル。2006年に発売すると、瞬く間に人気商品となり、生産体制の急速な拡大を強いられました。しかし、爆発的な人気は数年で落ち着き、販売量は激減。事業を整理し、自分たちで作れる量にとどめることになりました。当時、キャラメルのために弊社で働いてくれた人たちを始め、多くの方々に多大なるご迷惑をかけたと、今でも強く思っています。

生乳の消費拡大と興部の知名度向上に貢献したノースプレインファーム考案の「生キャラメル」。

―酪農や製品づくりへの想いやこだわりをお聞かせください。

大黒 父が酪農を始めたころから、自然と共生する酪農を目指してきました。牛たちは広い放牧地で自由にのびのびと過ごし、積雪の多い冬場も日々の運動と日光浴は欠かしません。自然環境への負荷をできるだけ少なくする取り組みのひとつとして、牛の排泄物を肥料として活用する循環型酪農を行っています。牛たちは、春から秋はこの牧草を、冬場は夏の間に収穫した干し草を、たっぷり食べます。

化学肥料や農薬を使わない牧草を食べている牛の排泄物は、土壌に負担をかけないと、安心も循環。

豊かな自然にはぐくまれる健やかな牛たちが出すミルクの味は、とてもナチュラル。例えば青草を食べる夏のミルクはほんのり青草の香りが感じられ、サラッとした風味があります。干し草を食べる冬場は白っぽくコクと甘味が強くなるなど、牛が生き物であることを感じさせてくれます。

生乳を加工するにあたっては、シンプルな原材料、シンプルだからこそ厳選したものを使用し、手間や時間よりおいしさを優先した製法を採用しています。安心して召し上がっていただきたい、素材のおいしさを際立たせたいと思うからです。

加工に使う材料は、サロマ湖産「つららの塩」や、てん菜糖など北海道産の素材にこだわった。

―オーガニックへの取り組みは?

大黒 2013年に有機飼料(牧草)、2014年に有機畜産物(牛から搾ったミルク)と有機加工食品(牛乳やヨーグルトなど)と、3つの有機JAS認証を取得しています。後に飼料が畜産物に統合されたため、現在は2つです。

牛が食べるエサに農薬や化学肥料を使っていないというのが一番ベースにあって、それを食べる牛にも、薬の使い方や病気への対応など、アニマルウェルフェア(動物がその生活している環境にうまく対応している態様)の要素もあります。

ノースプレインファームでは、牛のエサづくりから製品生産までを一貫して、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を使わず、環境への負荷をできる限り減らした方法で行っています。実はこれは、有機の取得に向けて切り替えたというよりは、私たちが創業以来取り組んできた、安全でおいしいミルクをつくるための、農薬や化学肥料に頼らない放牧主体の酪農が、有機JAS認証として認められたにすぎません。輸入穀物を大量に与えるのが主流になっている中、牧草で育てる酪農は少なくなっていると感じています。

季節によって味わいの違いを楽しめる「おこっぺ有機牛乳」。
低温殺菌&ノンホモジナイズ製法(牛乳の脂肪球を機械で均一化=ホモジナイズしていない)で、
搾りたてのミルクに近く、コクがありながら後味すっきり。
「苦手だった牛乳もこれなら飲める」「これまで飲んできた牛乳の概念を覆すおいしさ」「草の香りがする」などの声多数。
取り扱いはECサイトや直営店のほか、全国オーガニックスーパーや北海道のアンテナショップなど。

有機生乳が徐々に増えてきて、発酵バターの原料として確保できるようになってきました。

―それが「オホーツクおこっぺ有機醗酵バター」ですね。製法にも特徴があるとか?

大黒 伝統的な「チャーン製法」を守っています。バターチャーンというドラム缶のような機械を使い、職人の熟練した技術や経験に基づく勘を駆使して、手間暇をかけて作っています。

バターって、牧場などで体験をされたことがあるかもしれませんが、瓶に生クリームを入れて振るとできます。確かにできるのですが、やはり、水分やなめらかさ、コシ、発酵度合いなどの調整が難しく、仕上がりが随分変わってしまうのです。

1970年ごろ、大手乳業メーカーが、北海道の工場でおいしいバターを作るため、全国から技術者を集めて渾身のバターを作りました。微発酵のチャーンバターです。時は流れ、その工場に移転の話が持ち上がったときに、お願いをして弊社で引き継がせていただくことにしたのです。興部で酪農をする身として、加工する技術がここにあるのなら、それは地域を豊かにする財産だと感じたからです。

紆余曲折ありましたが、現在は原料となる生乳には自社の有機生乳のみを使用。こちらも、夏はカロテンを含む青草をたっぷり食べているので黄色いバターができるなど、季節によって色や風味が変わります。

フレッシュなミルクの香りと軽やかでクリーミーな舌触りが特長。パンにたっぷり塗ってもくどくなく、バターを生かした焼き菓子にも◎。
原料となる生クリームを乳酸菌醗酵させることによって風味豊かで爽やかな味わいになるとか。

―今後の展望をお聞かせください。

大黒 興部周辺は、北海道の中でも観光客の少なさでワースト5に入ってしまうような町なのです。もっと人が来てくれるような仕掛けを作りたいと、ずっと考えています。

1991年にオープンした直営店「ミルクホール」は、放牧している牛を眺めながら牛乳を飲んでもらいたいという想いで建てました。現在、自社商品はもちろん、北海道のワインやグルメを取り揃えています。併設のカフェスペースには、ハンバーグをメインにチーズやバターを使用した料理や、ソフトクリームやパフェといったスイーツもラインナップ。ハンバーグは、うちで育った牛肉を使えるよう、準備を進めています。

興部の魅力は、なんといっても雄大な自然が近くにあるところではないでしょうか。酪農を主軸に、林業や漁業も盛んです。ホタテ、サケ、マス、毛蟹といった海の幸がとてもおいしい町。ぜひ足を運んで、この空気を楽しんでいただきたいです。

海も山も近い興部の町。「ミルクホール」ではのんびり過ごす牛たちを眺めながら、豊かな北海道グルメを堪能できる。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

「オホーツクおこっぺ有機醗酵バター」(有塩)
価格:¥1,890(税込)
店名:ノースプレインファーム オンラインショップ
電話:0158-88-2000(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://northplainfarm.co.jp/SHOP/1055.html
オンラインショップ:https://northplainfarm.co.jp/shopping.shtml

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

大黒宏(ノースプレインファーム株式会社 代表取締役社長)
1956年、会社の前身となる大黒牧場の4代目として誕生。地域で生産された牛乳を地域の人々へという理想のもと、1988年に乳処理業の免許を取得し「ノースプレインファーム株式会社」を設立。

<文/植松由紀子 MC/藤井ちあき 画像協力/ノースプレインファーム>

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