
世界文化遺産・清水寺のおひざもと、一子相伝で繋ぐ風味豊かな「七味唐がらし」
2025/06/25
京都では、「七味といえば七味家本舗」といわれるほどの老舗。独特の風味を誇る薬味や調味料には国内外のファンがいます。なかでも、編集長のアッキーが注目したのが屋号にもなっている「七味唐がらし」。清水寺参道で商いを始めてからおおよそ370年。変わらず守る「七味唐がらし」の伝統製法や素材についてお聞きするとともに、味を守るための苦心や工夫についても、株式会社七味家本舗 代表取締役社長の福嶌良典氏に取材陣がお話を伺いました。

株式会社七味家本舗 代表取締役社長の福嶌良典氏

清水寺参道にある本店。
―まずは、創業370年の御社の歴史をお教えください。
福嶌 弊社の創業は明暦年間の1655年と伝わっています。江戸時代、四代将軍家綱公の時代だろうと思われます。現在の清水寺参道の産寧坂角に茶店を開いたのがはじまり。その頃は七味家ではなく、河内屋という屋号を掲げておりました。清水寺境内に音羽の滝と呼ばれる小さな滝があり、滝の水は地下水でかなり冷たく、滝行をして身体が凍えた方に、温めたお湯に唐辛子の粉を浮かべた「からし湯」を出していたそうです。それがとても温まると評判を呼びました。その後、経済的にも文化的にも成熟していくなかで、唐辛子を料理にも用いる時代になりました。弊社でも、唐辛子に山椒などを合わせた「七味唐がらし」をつくり、屋号も七味家とし、明治以降も、時代に沿った薬味や調味料を販売して現在に至っています。



明治、大正、昭和の店舗。
時代とともに店舗や商品ラインナップは変わっているが、
伝統製法は変わらない。
―福嶌社長は「将来は家を継ぐ」と決めていらしたのですか?
福嶌 京都で生まれ育ち、大学は九州でした。大学時代にアルバイトも経験し、卒業後、他社に就職するかどうかと迷っていたときに製造担当者が倒れ、急遽家に戻ることになったのです。七味家本舗に入社してからは、まず製造部門で薬味など原材料を勉強しました。どのように配合すればおいしく、お客様に買っていただけるかと試行錯誤しました。3~4年くらいだったでしょうか。その後、営業に配属され、全国の百貨店さまや京都展などのイベントにも出向いて、七味家本舗の薬味の味わいや香りを知っていただけるよう活動しました。2000年に取締役、2016年に代表取締役社長に就任しました。
―オンラインショップを始められたのはいつ頃でしょう。
福嶌 HPを立ち上げたのが25年前でしたが、当時はなかなかお客様にも見ていただけなくて。15年ほど前に、HPを見直し、最近ではインスタグラムも始めて、オンラインショップにも力を入れるようになりました。
―主力商品は、やはり「七味唐がらし」でしょうか。
福嶌 そうですね。屋号にもなっています「七味唐がらし」です。ただ、七味唐辛子はさまざまな造り手がいらっしゃいますし、弊社以外にも有名店はあります。ですが、それぞれに材料や配合など特徴があり、特に地域性が色濃く出る商品だと思っています。たとえば関東ならば、お出汁自体が濃いめなので、七味も辛めです。長野県などの寒冷地ですと、身体を中から温める原材料が多めに入っています。そして、関西や京都の料理は、どちらかというと薄味で繊細です。素材重視の京料理の味を壊さないよう、あくまでも脇役としての存在を求められます。ですから、「七味唐がらし」も辛さより香りに重点をおいたものになっています。

唐辛子、山椒、黒胡麻、白胡麻、紫蘇、青のり、麻の実、
この七つの薬味が相まってさわやかな風味を醸し出し、
ひとふりするだけで料理をいっそうおいしく引き立てる。
―御社の味を守るために注力されていることはどんなことでしょう?
福嶌 一番は一子相伝の製造方法です。創業以来、七味の材料管理や配合などは、親族など限られた者だけが受け継いでおり、これは今後も守っていくことです。また、山椒、胡麻、紫蘇など素材を厳選することはもちろんですが、それらを季節や気候などの変化に添って微妙に調整し、七味家本舗の味に仕上げています。

七味家本舗の「七味唐がらし」は、15代目となる現在の店主まで、
一子相伝で守り続けた秘伝のレシピで作られている。
―原材料についてもお教えください。
福嶌 契約農家さんからの調達を基本とし、厳しい品質基準をクリアした素材のみを使用しています。品質が保てない年には販売制限や一時的に販売を止めるなど、あくまで高品質であることを優先します。山椒は収穫までの年数が長いため、安定的に仕入れるのは難しい。それは今後の課題でもあります。

「さわやかな風味」と「上品な辛さ」こそが七味家の味の要。
その風味と辛さを表現するために必要なのが唐辛子の品質なのだ。
―その他の商品についてもお教えください。
福嶌 「七味唐がらし」とともに主力といえるのが「山椒之粉」です。こちらも国内産の最高品質の山椒を使用してつくる香りが際立つ一品です。山椒は種類があり、香りもマイルドなものから鋭角なものまでさまざま。1年に一度しか採れないので、気候変動や自然災害で収穫が減り、思うような山椒が仕入れられないときは、販売を控えることもあります。お客様からの風味への信頼を守ることが何より大切だからです。

山椒は良質のものだけを使うため、香り高い製品に仕上げることができる。
―「一味唐がらし」も主要商品のひとつでしょうか。
福嶌 そうですね。こちらも国内産の唐辛子を使用し、契約農家との連携や自社畑でも生産しています。風味を楽しんでいただくために、開封後は冷蔵保存をおすすめしています。食事前に冷蔵庫から出して常温に戻していただくと、よりおいしく召し上がっていただけます。
―今回ご紹介いただけるのは、この3種のセットですね。
福嶌 人気商品3種類を薬味缶とともに詰め合わせたものです。これまでは薬味を入れる容器はプラスチック製を用いていたのですが、時代のニーズや食品保存の観点から缶容器に変えることにしました。デザイナーさんとも相談して、店舗のある清水周辺の建物や京都文化を感じていただけるようなイラストを採用しています。3種セットはパッケージ箱も上品で、お土産や贈り物にも適しています。



一子相伝の味を保つ看板商品「七味唐がらし」、
七味家本舗の香りの命ともいえる「山椒之粉」、
あくまでも京都らしい上品な辛さの「一味唐がらし」の3種。
―これら薬味のおすすめの味わい方をお教えください。
福嶌 京都では、七味をお味噌汁やお漬物にかけていただきます。和食だけでなくイタリアンなど洋食にも合います。たとえばオリーブオイルとともにパスタに絡めていただくと、和風ペペロンチーノのような味わいになります。どんなお料理にもひとかけしていただくと、アクセントになって風味があがります。

七味をパスタに合わせると和風ペペロンチーノのような味わいに。
―今後の展望をお聞かせください。
福嶌 京都だけでなく、今後はインターネットを通じて他府県への販路も広めていきたいと考えています。すでに、フィレンツェやシンガポールの食品販売店などにも置かせていただいております。今後も伝統を守りながら、国内外の多様なお客様のニーズにお応えできる新商品やサービスを展開していきます。
―貴重なお話ありがとうございました。

「薬味缶3種セット」
価格:¥3,564(税込)
店名:七味家本舗オンラインショップ
電話:0120-540-738(10時~17時)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.shop.shichimiya.co.jp/SHOP/SET-0546.html
オンラインショップ:https://www.shop.shichimiya.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
福嶌良典(株式会社七味家本舗 代表取締役社長)
1972(昭和47)年京都市生まれ。1993(平成5)年に大学卒業後、株式会社七味家本舗に入社。製造、営業の現場を経験後、2000(平成12)年に取締役、2016(平成28)年に取締役社長に就任。地域活動にも注力している。
<文/中井シノブ MC/田中香花 画像協力/七味家本舗>