自然を想像しながら味わいたい!巣蜜が丸ごと入った蜂蜜

2025/02/20

パンやパンケーキに回しかけたり、和食の隠し味に使ったり、何かと活躍の場が広い蜂蜜。近年では海外産のものも多く見受けられますが、だからこそ「国産」の蜂蜜に価値を見出し、求める方も増えています。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、「巣蜜入り蜂蜜」。千葉県の豊かな自然の中で養蜂を行う「はちみつ工房」のもので、なんと蜂の巣が丸ごと、蜂蜜の中に浸かった珍しい一品です。誕生の経緯について、株式会社蜂蜜工房 代表取締役社長の井嶋幸裕氏に取材陣が話を伺いました。

株式会社蜂蜜工房 代表取締役社長の井嶋幸裕氏

―井嶋社長は、全く異なる分野から蜂蜜に関わることになられたとか。

井嶋 そうですね。会社員の頃から何か自分で事業を立ち上げたいと思っておりました。蜂蜜の業界を選んだのは、妻の祖父が養蜂業を営んでおり、その存在を知ったからです。非常にニッチな業界だとは思いましたが、調味料や健康食品、化粧品など幅広く活用されているところにも可能性を感じました。

どのようなところから始められたのですか。

井嶋 商売は初めてでしたので、本当に何から初めてよいか分からず。とりあえず自分で仕入れた蜂蜜を瓶に詰め、小売店様に置いていただいて、売れたらOK、売れなかったら残念、そんなところからのスタートでした。

―当時からネットショップも持っていらしたのですか?

井嶋 それが、私はそういった部分がすごく苦手でして…。ネットショップでうまくいっている会社様は、影響力のある方にご協力していただくことが得意だったり、ブランディングやPRがとても上手だったりしますよね。一方私は、自分が通販を利用する機会も少なく、消費者の気持ちも掴みにくかったため、まずは店舗を持とうと考えました。蜂蜜の販売、蜂蜜の採取体験ができるお店です。

現在、千葉県君津市に構える「はちみつ工房」。店舗は創業以来3代目。

施設内では工場の見学ツアーも行っている。

そこからオリジナルの商品開発も始められたのですね。

井嶋 そうですね。弊社の看板商品でもある蜂の巣が入った蜂蜜などが誕生します。きっかけとなったのは、養蜂を始めたことです。「養蜂を辞めるので一式を買い取ってもらえないか」という話が飛び込み、これはチャンスだと買い取って、大規模に生産をスタートさせたのです。
以前から生産には興味を持っていたのですが、蜂は空中を飛んでいくものなので、事業ができる場所が限られるなど様々な問題がありました。しかし蜂を置く場所なども含めて自社のものにすることができました。

2017年より念願の養蜂・製造もスタートさせて事業を拡大。

現在は千葉県内10ヵ所で養蜂を手がけていらっしゃるとのこと。

井嶋 1ヵ所に巣箱が50箱、1箱に2万〜3万匹の蜂がいます。始めた当初は事業を引き継いだものの、ほぼ独学でしたので苦労しました。最終的に自分で責任が取れないと話にならないので、店舗の方は信頼できるスタッフに任せて、私はほぼ生産に従事していましたね。様々なところに話を聞かせていただきながら養蜂の技術を身につけていきました。

商品開発はどのように行なっているのですか?

井嶋 巣入りの蜂蜜が生まれたくらいの頃は商品数も多くなかったのでほぼ私が発信して商品化するという感じだったのですが、今は若い社員のみんながいろいろと商品を考えてくれています。もちろん経営的な面から自分の考えを伝える部分もあるのですが、みんなでやっている、という感じです。

それでは商品についても聞かせてください。まずは「巣蜜入り蜂蜜」について。

井嶋 これは蜂蜜の中に蜂の巣、いわゆる巣蜜(コムハニー)が丸々入っている商品で、自社で蜂蜜の生産をスタートさせたからこそ生まれた商品です。蜂蜜は日本全国で作られていますが、巣蜜を作っているところは実はほとんどありません。なぜならとても手がかかるからです。蜂の巣ごと取ってしまうと生産量が下がりますし、蜂蜜は長期間保存ができますが、蜂の巣は保存するのがとても難しいのです。また蜂の巣は蝋でできているためとても柔らかく、輸送するのも大変。例えると桃みたいな感じで、押したりすると傷んでしまいます。こちらは蜂蜜に浸けることで蜂蜜が緩衝材の役割を果たしてくれ、長期保管がしやすくなっています。

蜂蜜の中に、大きな巣蜜。子どもたちも喜びそうなビジュアル。

140gの「巣蜜入り蜂蜜」1つに、どのくらいの巣が入っているのですか?

井嶋 30から40gほどでしょうか。それくらいの巣ができるまでにはひと月ほどかかります。意外と早い、と思われるかもしれませんが、蜂が巣を作るシーズンは1年の内でも4、5月くらいから7、8月くらいまでがギリギリ。長くて3、4か月しかありません。蜂は花の蜜を集めて蜂蜜や蜂の巣を作っていくのですが、そのシーズン内に少し余分に巣を作ってもらい、採取したものがこちらです。ただいくつか大変なところがあり、蜜蜂の巣は作り立てのものしかおいしく味わうことができません。巣を作らせてから半年も経つと茶色になり、しかも固く、匂いも独特です。また、蜂の巣は蜂蜜の貯蔵庫でもある一方、蜂の子どもの育成器でもあります。蜂の巣は1か月かけて作りますが、子どもを育て始めてしまうともう使えません。

あとこれもマニアックな話になってしまうのですが、蜂の巣は巣箱の板に作らせます。その元となる巣礎(すそ)と呼ばれる蝋板があるのですが、ここにもこだわりが必要でして、一般的に巣礎は食べるようにできてないので、体に良くないものまで含まれる可能性があります。食用にするためには無駄巣と言って、巣を原材料にしたものしか巣礎に使えず、それにもまたコストがかかるのです。

一つ一つの工程に手間と時間をかけて、商品に仕上げている。

―そんなに手間がかかるものでも、作られている理由は?

井嶋 蜂蜜の面白さを伝えたいからですね。瓶の中に蜂の巣が入っていることで、蜂蜜はこういうものからできているのだ、と知っていただいたり、蜂蜜の先にある生産者の姿も感じていただけるのではないかと思っています。

―とても素敵な思いですね。

井嶋 そのためお安く提供するのがなかなか難しいのですが、できるだけお客様の手に取りやすいものを作り、蜂蜜の世界を楽しんでいただきたいと考えています。

140gの商品の中に、30〜40gの巣蜜が入っている。

おすすめの味わい方はありますか?

井嶋 ヨーグルトにかけていただくととてもおいしいです。巣蜜は冷やすとパリパリした食感も楽しんでいただけます。アイスクリームにも合います。

蜂蜜を回しかけ、巣蜜をトッピング。蜂蜜は軽やかな甘さ、巣蜜はまるでキャラメルのような弾力が楽しめる。

もう1点、御社の製品で「クラフトミード」という商品も気になりました。

井嶋 ミードとは、世界最古のお酒と呼ばれており、ワインや日本酒よりも歴史のある飲み物です。というのも、作り方が非常にシンプルで、蜂蜜と水を混ぜ合わせてひと月ほど発酵させれば完成します。日本ではまだこれからのお酒ですが、クレオパトラも愛飲していたという記述もあり、ヨーロッパ方面では昔から愛されています。

「はちみつ工房」の商品の中でも注目を集めている「クラフトミード」。

―どんな味がするのですか?

井嶋 弊社のクラフトミードは蜂蜜の甘さが残る調整で製造しており、飲むと爽やかな甘みを感じていただけます。食中酒というよりは、梅酒のように食前酒で楽しむのがおすすめです。弊社としては、「何これ?」と、話題になるような商品にしたいというのがまず1つ、また蜂蜜という身近な食品からお酒ができるという面白さ、歴史的背景も感じていただけたら嬉しいです。皆さまの人生に少しでも彩りを添えられたらと思っています。

―おすすめの味わい方は?

井嶋 アルコール度数は5%ほどで、ストレートでも飲めるように調整していますのでそのままでもよいですし、氷を入れて少しキリッとさせてもよいですね。

ホームパーティの乾杯に。ゲストをあっと驚かせてみたい。

今後の展望について聞かせてください。

井嶋 蜂蜜の生産から商品開発、製造、販売まで、一貫して行えるのが弊社の強みです。今後も弊社ならではの商品をお客様にどんどん届けたいと思っています。苦手だったインターネットでの販売も、今では若いスタッフがしっかり頑張ってくれておりまして、オンライン上の売り上げは昨年比で2倍に伸びました。我が社もいよいよ、通販に気合いを入れ始めたというところで、さらに幅広いお客様に喜んでいただけたらと思っています。

―蜂蜜の中にプカリと浸かった巣蜜、その美しい自然の造形にもうっとりしました。贈り物にすると、とても喜んでもらえそうです。今回はお話をありがとうございました!

「巣蜜入り蜂蜜」(140g)
価格:¥1,680(税込)
店名:はちみつ工房
電話:0439-32-1083(9:30〜17:00)
定休日:不定休、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.hachimitsu-koubou.com/products/sumitsuki-honey-140g
オンラインショップ:https://shop.hachimitsu-koubou.com

「クラフトミード」(330ml)
価格:¥880(税込)
店名:はちみつ工房
電話:0439-32-1083(9:30〜17:00)
定休日:不定休、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.hachimitsu-koubou.com/products/craft-meed-330ml
オンラインショップ:https://shop.hachimitsu-koubou.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

井嶋幸裕(株式会社蜂蜜工房 代表取締役社長)
千葉県白井市出身。千葉工業大学卒業後、日本電気株式会社に就職。3年間営業職として勤務したのち、株式会社蜂蜜工房を立ち上げる。「日本で一番 蜂蜜が楽しめる会社へ」というコンセプトで、養蜂、製造、販売事業を展開。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/田中香花 画像協力/蜂蜜工房>

羽田甚商店

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