柿の葉すし本舗たなか_top

奈良の食文化を今に伝える柿の葉すし。手軽に食べられ使い勝手がよいのも魅力です。

2023/06/05

ときどき無性に食べたくなる食べ物ってありますよね。アッキーこと坂口明子編集長にとって柿の葉すしはその中の代表的存在。柿の葉の香りがほんのり感じられ、ネタの味がすし飯と絶妙に馴染んで飽きないおいしさです。創業120年の老舗「柿の葉すし本舗たなか」代表取締役の田中妙子氏に、柿の葉すしの魅力について、取材スタッフがうかがいました。

柿の葉すし本舗たなか 代表取締役 田中妙子氏
株式会社柿の葉すし本舗たなか 代表取締役 田中妙子氏

―「柿の葉すし本舗たなか」は今年で創業120年ですね。

田中 私で5代目になります。明治の末ごろ、初代の田中徳松はこの地で大工の棟梁をしていました。多くの職人を抱え、妻・ヨシは職人の賄いづくりに追われるなかで、「こんなにたくさんの食事をつくるなら」と現在のJR五条駅前の商店街で食堂を営むことになったそうです。五条市は紀伊半島の中央部、奈良県南西部に位置し、古くから大阪、和歌山、奈良、伊勢、熊野へつながる交通の要所。各地から人や物資が行き交う町として栄えていました。この食堂で地元の郷土料理である柿の葉すしを出したのが当社の柿の葉すしの始まりで、食堂をしていたことがはっきりわかっている1903年から今年で120年になります。

柿の葉すし本舗たなか_2
箱の蓋を開けると、柿の葉の香りがして。心躍る一瞬。

―柿の葉すしは奈良の郷土料理なのですね。

田中 現在のような物流網がない時代、海のない奈良県五條・吉野地方では吉野川から紀の川へとつながる航路が発達していました。山から切り出された木材や物資は和歌山へと運搬され、帰りに持ち帰られる魚や海の幸は山里の人々にとって大変貴重な珍品として喜ばれていました。当時は冷蔵庫などなく、魚は塩や酢で〆て保存性を高め、大人数で分け合えるよう薄くすき、すし飯と合わせ、裏山の柿の葉で包み、重石をして味と風味をなじませた柿の葉すしは、この地方伝統の郷土料理であり、お祝い事や夏祭りのときには欠かすことのできないハレの日の御馳走として、200年以上も前から受け継がれる食文化です。

柿の葉すし本舗たなか_3
柿の葉すしはさっとつまめる小腹めしにもぴったり。

―現在のレシピは3代目がつくられたそうですね。

田中 食堂は初代の孫の田中修司(現相談役)が引き継ぎ、私の祖母・孝がつくった柿の葉すしが評判となり、大阪や神戸からもたくさんのお客様が五條まで柿の葉すしを求めてお越しくださったそうです。
そして1979年に昭和天皇、皇后両陛下が奈良にお越しになられたとき、中宮寺のご門跡様より当社の柿の葉すしを献上いただきました。その際、ご門跡様より「真味」と書かれた色紙をいただいた祖父はその言葉に感銘を受け、1つ1つ心を込めたおすしでお客様に食の感動をお届けすることを社是としました。
その後、祖母・孝のレシピは忠実に再現され、今も当社の味として伝えられています。祖母とは夏によく一緒に柿の葉すしをつくり、料理は何でも上手でした。「料理はカッカしてつくったらあかん。そのときの気持ちが表れるから、料理はやわらかな気持ちでつくるとおいしくなる」と祖母が話してくれたことをよく思い出します。

柿の葉すし本舗たなか_4
五條市は全国一の柿の産地。
柿の葉に含まれるタンニンには抗菌・抗酸化作用があると言われ
おすしの保存に適している。

―五條市にもこだわっていらっしゃるとか。

田中 柿の葉すしは当社が独自で開発したものではなく、地元の郷土料理を商売にさせていただいているということで、少しでも五條市に貢献したいという思いがあります。また、自然豊かな五條の風土のもとでご飯を炊くのが一番おいしいと思いますし(笑)、歴史ある江戸の町並みと、柿を代表とする四季折々の特産物に恵まれた五條市の魅力をもっと多くの方に知っていただきたいと考えています。

柿の葉すし本舗たなか_5
ネタのうま味がしみ込んだすし飯と、
柿の葉の香りが絶妙のコンビネーションを醸し出す。

―5代目の社長としての思いは?

田中 母が4代目を引き継ぎ、私は一人娘でしたが、特に会社を継いでほしいと言われていなかったので、大学を卒業した後は自分の好きな道へと進み、建築関係の仕事に就きました。大学・社会人時代を過ごした神戸・京都では柿の葉すしは奈良ほど知られていませんでしたが、奈良出身ということもあり、柿の葉すしをお花見やバーベキューなどに差し入れするうちに、「初めて食べたけれど、おいしい」と喜んでくれることがうれしくて、次第に柿の葉すしが魅力あるものだと再認識し、会社を継ぐと決め五條に帰りました。入社して13年、社長になって8年、柿の葉すし専門店としての暖簾を守り、全国・世界に向けて柿の葉すしの魅力を発信していきたいと考えています。

柿の葉すし本舗たなか_6
柿の葉すしは酒の肴としても適している。
暮らしのいろいろなシーンで愉しめる。

―御社の柿の葉すしのこだわりを教えてください。

田中 まず米ですね。柿の葉すしはたっぷりの酢を使い、重石をするため、モチモチとした食感が感じられる硬質米が適しています。当社では滋賀県近江産の日本晴を使っており、これに秘伝の酢を入れすし飯をつくります。
さばはかつて熊野灘の紀州さばを使っていましたが、現在は日本近海の脂がほどよくのった胴回りの太い真さばを使い、1枚ずつ一定の厚みにすき、すし飯と合わせて柿の葉で包み重石で空気を抜きます。重石をすることで熟成が始まり、塩角が取れ、魚のうま味がしみ込んだすし飯と柿の葉の香りが食欲をそそる、三味一体の柿の葉すしが完成します。

柿の葉すし本舗たなか_7
定番のさばに加え、子どもにも人気の「さけ」、
贈り物にも喜ばれる「たい」とバラエティ豊かに。

―今回、ご紹介いただいたのは「柿の葉すし紙箱 さば、さけ、たい詰め合わせ14個入り」です。

田中 元来、「さば」がルーツである柿の葉すしですが、子どもにも人気の「さけ」、贈り物にも喜ばれる「たい」を詰め合わせた3種のネタが楽しめる商品です。柿の葉すしのご注文が一番多いのは年末年始ですが、お盆などやはり人が集まるときがよく出ます。あとはお中元やお歳暮のギフトや、「母の日」「父の日」「敬老の日」などのお祝いの品として、奈良の地酒や柿・吉野葛を使ったお菓子、三輪素麺との組み合わせセットも人気です。日持ちがし、お箸を使うことなく手軽に、オードブルやおやつにもなる柿の葉すしは、奈良土産としてだけではなく、暮らしのいろいろなシーンに重宝されています。

―通信販売も早くから始められたとか。

田中 通信販売は39年前から始めています。お客様ご自身で地元を離れた家族や親せきに店頭で買った柿の葉すしを送っているというお話を聞き、クール便などない時代に祖父と母で柿の葉すしを全国発送するためのテストに取り組んだそうです。最初は電話で注文を受け、ファックス注文を経て23年前からはオンラインでも注文できるようになりました。
柿の葉すしはできたてよりも一晩寝かせることで味がなじむので、配送途中に熟成されたちょうど食べごろの柿の葉すしが届けられます。
五條という限られた地域の郷土料理が奈良名物として全国の方に知っていただけるようになったのは、柿の葉すしが日持ちのする「送れるおすし」として全国発送できたこともよかったのだと思います。

―今後はどんなことを計画していますか。

田中 コロナ禍で3年間できていなかった「柿の葉すしの手づくり講習会」を再開していきたいと考えています。今でも五條ではお盆が近づくと近隣のスーパーなどで柿の葉すし用の柿の葉やさばが販売されていますが、家庭で柿の葉すしを作る機会は減っており、地元の大切な食文化を受け継ぐためにも講習会は続けていきたいです。
また、今年から観光者に向けて、奈良本店での手作り体験プランなども企画しています。ほかにも、「なつかしくて新しい」をテーマに創業120年の記念企画や、なら本店・五條本店限定で「木桶入りプレミアム柿の葉すし」を販売する予定です。どちらも詳細が決まり次第、当社ホームページでお知らせいたしますので、ぜひチェックしてみてください。
柿の葉すしはシンプルでごまかしの効かない商品です。それだけに素材と製法にこだわった、おいしい柿の葉すしを作り続けることができるよう、全社一丸で取り組んでまいります。「たなか柿の葉すし」をこれからもよろしくお願いいたします。

―本日はありがとうございました。

柿の葉すし紙箱 さば、さけ、たい詰め合わせ14個入り

「柿の葉すし紙箱 さば、さけ、たい詰め合わせ14個入り」
価格:¥2,549(税込)
店名:柿の葉すし本舗たなかオンラインショップ
電話:0120-111-753(9:00~17:00 年中無休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kakinohasushi.co.jp/onlineshop/kakinohasushi/saba-sake-tai/14-ja-3.html
オンラインショップ:https://www.kakinohasushi.co.jp/onlineshop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
田中妙子(株式会社柿の葉すし本舗たなか 代表取締役)

奈良県五條市出身。柿の葉すし店の一人娘として幼少期より家業に慣れ親しむ。高校卒業までを地元で過ごし、大学進学を機に兵庫県西宮市へ。関西学院大学社会学部卒業。大学卒業後は住宅メーカーに就職。在籍期間中にインテリアコーディネーターと二級建築士の資格を取得し家づくりに携わる。2010年五條に戻り柿の葉すし本舗たなかへ入社。約5年間の専務取締役を経て、2015年同社代表取締役に就任。

<文・撮影/今津朋子 画像協力/柿の葉すし本舗たなか>

OFFICIAL SNS

Instagramでハッシュタグ#お取り寄せ手帖を検索。

  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter