今回、編集長アッキーが気になったのは、夏にぴったりな、い草のスリッパです。商品を製造・販売している株式会社ラッキー産業 代表取締役社長の金川恵介氏に商品の魅力について取材陣がお話を伺いました。

株式会社ラッキー産業 代表取締役社長の金川恵介氏

―会社の成り立ちからお聞かせいただけますでしょうか？

金川　ラッキー産業は父親が立ち上げた会社です。父の叔父がスリッパの会社を始め、そこで働いていたのですが、その会社が倒産してしまい、「自分で始めるしかない」と父が起業しました。徳島で創業して以来、40年以上、国産の高品質なスリッパを作り続けてきました。

い草は蒸れにくく、消臭作用もある。

―金川社長ご自身は、すぐに家業に入られたのですか？

金川　大学を出てから東京のインテリア関係の会社に3年ほど就職しました。カーテンやカーペットなど、家の中の空間に関わるものを扱っていました。営業として専門店や家具屋さんを回る仕事をし、そのあと徳島に戻って家業に入りました。カーテンやカーペットの業界で見てきた柄や素材の知識は、スリッパにも応用できています。スリッパは小さいですが、そこに使う柄や素材選びには共通点があります。また、営業として学んだ人と人との関係構築の仕方も役立っています。

―社長に就任されたのはいつですか？

金川　2009年で30代後半のときでした。父から「若いうちに社長になっておいた方がいい」と言われて就任しました。これまでとは肩書だけ変わったような感じでしたが、やはり社長という立場に責任がかかってきますから、それまで以上に真剣に取り組む気持ちが強くなりました。

―スリッパの販売ルートについて教えてください。

金川　基本的には問屋さんを介して百貨店や専門店、量販店に置いていただいています。最近は流れも変わってきて、直接お店との取引も増えてきました。コロナ禍がきっかけでネット販売も始めました。緊急事態宣言で実店舗が閉まってしまった時も、ネット販売ではお客様からの注文が途切れませんでした。スリッパは家の中で使うものですから、家にいる時間が増えたコロナ禍の時期に需要が高まりました。ネット販売のほうはおかげで今も売上は伸び続けています。

―御社の強みを教えてください。

金川　スリッパの値段は安くはないですが、毎シーズン、新しい商品、新しい柄を出しています。実はスリッパ業界は8割以上が海外生産です。国内で製造しているところは少なく、さらに自社でオリジナル企画をして「これがうちの商品です」と出しているところはほとんどありません。多くは大手からのOEM生産が中心です。地元の徳島で製造し、オリジナル商品を販売している点が我々の強みです。

―今回ご紹介する「い草スリッパ」の特徴を教えてください。

金川　い草は吸湿、消臭効果があり、素足でも気持ちよく履けるので、とくに春夏におすすめです。デザインやカラーも豊富にそろえています。洋室にも和室にも合うデザインを意識して作っています。生地は展示会に行ったり、スワッチ（小さい見本帳）をもらって選んでいます。ただ、小さい見本と実際の商品では印象が変わることがあるので、気になった生地は必ずサンプルを作ります。サイズ違いも全部作って確認するので、かなりの量になりますが、豊富なデザインが好評です。

甲裏は肌触りの良いパイル生地を使用。

―商品企画はどのように進めるのですか？

金川　私が中心に考えますが、家内や専務である弟、弟の奥さん、会長である父、母と家族みんなで考えます。私は営業と企画を担当し、弟は工場管理や商品の配送を担当しています。当社の場合、家族経営の難しさよりも良い面の方が多いと感じています。一人で抱え込まず相談できるのは大きいです。

底面もお手入れしやすい。

―お客様からの反応はいかがですか？

金川　「履きやすい」「どこで買えますか」といった問い合わせが多いです。弊社のスリッパはゆったり履けるように少し大きめに作っていますから、それも好評の理由かもしれません。先日は広島の方から電話があって、「母がスリッパを気に入っていて、亡くなった時に棺の中にそのスリッパを入れた」というお話をうかがいました。「日本でものづくりをしているところは少ないから、やめずに頑張ってください」と応援の言葉もいただき、感激しました。

―最後に読者へのメッセージをお願いします。

金川　皆さんに喜んでいただけるスリッパをこれからも作り続けていきたいです。スリッパも今は日本人向けだけでなく、海外向けに32cmや34cmといった大きいサイズも作っています。何事も経験ですから、やり方を考えれば新しい可能性が見えてくると思います。前向きな気持ちで頑張っていきたいです。

―貴重なお話をありがとうございました。

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞

金川恵介（株式会社ラッキー産業 代表取締役社長）
1972年徳島県生まれ。大学卒業後、東京でインテリア関連の営業を3年経験し1997年に帰郷し、株式会社ラッキー産業（家業）に入社。2009年に同社代表取締役社長に就任。

＜文／垣内栄　MC／藤井ちあき　画像協力／ラッキー産業＞