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絹(シルク)織物の可能性を広げ、世界に伝統の技術で挑む「ステンドグラス ローズ」

2024/04/11

京都北部丹後地方は、古くから絹織物の産地として知られますが、伝統産業である絹織物は、現代の感覚を織り込んで、魅力を増しています。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、ステンドグラスの薔薇をイメージして織られた「ステンドグラス ローズ」です。この織物を販売している江原産業株式会社の代表取締役社長江原英則氏に、取材陣が伺いました。

江原産業株式会社 代表取締役社長 江原英則氏
江原産業株式会社 代表取締役社長の江原英則氏

―江原産業は70年の歴史を持つと伺いました。

江原 はい。私の祖父が1950年に江原紋工所を始めたのが始まりです。紋工とは、紋紙というジャカード織機で図柄を織るために必要な型紙をつくる仕事です。この工程は、今はパソコンで行いますが、基本的な作業は変わっていません。

―社名が、江原産業になったのはいつからですか?

江原 1963年に、産業を生み出すような会社でありたいとの思いで「江原産業」という名前になったと聞いています。
2016年に、私が社長に就任し、2020年には、江原産業のシルクを扱う部門を「クリエイト エバラ」というブランドとして立ち上げました。

―社長になるのに迷いはなかったのでしょうか?

江原 私は小学校6年生の頃には「僕が江原産業を継ぐ」と言っていました。私は次男ですが、兄より向いていると思ったのです。
今でも芸術的なものづくりは、私の性格に合っていると思っています。私にとっては、長所を伸ばせる楽しい仕事です。
大学を卒業後は、そのまま江原産業に入社しました。途中3年程社外に出た経験はありますが、ほぼ今の仕事をしています。

―社長になったときの気持ちはどうでしたか?

江原 社長になったときには「今まで培ったものを活かしていくぞ!」という意気込みで始めました。とは言っても、仕事を始めた最初は先代が育てた職人になかなか話を聞いてもらえませんでした。

―職人さんにわかってもらうのは大変なことだったのですね。

江原 時代は知らないうちに変化しています。職人をはじめ、私たちも変化していかなければならない存在です。最初は作業場の整理整頓から始め、ぶつかりながら必要性を理解してもらいました。コツコツ結果を出していくことで、徐々に今の体制ができたと思っています。

―社長になられて、取り組まれたことは?

江原 弊社が販売する製品は、人の発想や思いが作るものだと思っています。道具が同じでも、思いが違えば違うものができる。だから職人の質が大切です。社長になって、最初の10年は職人を育てていかなければと心に決めていました。当時、職人は高齢化が進んでいる状態。これから会社を盛り立てていくためには、まず若い職人さんを育てようという計画を立てました。

若い人の目に触れるように、ホームページやECサイトをつくり、メディアにも積極的に出ました。その結果、京都府以外からも若い人が集まってくれました。社長になって7年ですが、すでに職人は20代~40代が中心になっています。

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織物は若い職人の手でつくりだされる。

ホームページやECサイトも業者任せにせず、私が納得いくまで指示を出しています。次の世代がやる気になってくれる環境をつくるために私は生まれたと考え、力を尽くしています。

―こだわりは製品に対しても同じでしょうか?

江原 はい。製品についても納得いくまで私が指示を出して作っています。
今回紹介する「ステンドグラス ローズ」も、ステンドグラス調の薔薇の柄でつくってほしいとオーダーしました。織りの技術を集めてつくられています。70年の技術がなければ実現しなかった、わが社ならではの代表作です。

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複雑な織りが美しい「ステンドグラス ローズ」。

色から織り、デザインまですべてにこだわっています。
縦糸は黒で横糸は緑。例えば、同じ薔薇でも透けそうなくらい薄く織っている場所もありますし、厚い部分もあるように様々な厚みで織られています。パッと見ただけではわからないかもしれませんが、細かい陰影が、深い味わいを生み出しています。

―とても素敵なデザインですね。

江原 シーラ・クリフさんというイギリス出身の着物インフルエンサーの方が「ステンドグラス ローズ」を一目見て「素敵!」と声をあげてくれました。彼女は6万人のフォロワーをもっている着物の界隈では有名な方です。とても気に入ってくださって、ジップロックのCMに出演されたときにも「ステンドグラス ローズ」を着用されました。

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着物インフルエンサーのシーラ・クリフさん「ステンドグラス ローズ」のファン。

―「ステンドグラス ローズ」のような作品を生み出せるのはどうしてでしょうか?

江原 わが社は創業が古いので、ほぼすべてのジャカード織りの織機が揃っています。祖父からの積み重ねです。だから伝統を守りながらも変化していけるだけの技術や織機があります。お客様には、歩くたびに表情が変わる織物や表と裏で違う色をした製品など、他にはない素敵な商品があると評判をいただいています。柄だけでなく、わが社の製品は軽くて着心地が良いことでも好評です。

―どんな方に着てほしいですか?

江原 ファッションを楽しみたいすべての人に楽しんでほしいです。性別や年齢は関係ありません。着物というと特別なところで着るものという印象があるかもしれませんが、着物もファッションのひとつ。日本だけでなく海外の方にも楽しんでいただきたいです。

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年代を問わずに着こなせるのも魅力。

―海外の方で着物が好きな方は多いですね。

江原 海外の方は先入観が少ないので、ファッションのひとつとして着物を楽しむのが上手です。日本の方にも、ちょっと、おしゃれをしようと思ったときの選択肢の一つとして考えていただければと思っています。着物を着てカフェにいくというのも素敵だと思い、ショールームにはカフェを併設しました。

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カフェを併設したショールーム、クリエイトエバラ。

―ショールームの話を詳しく教えてください。

江原 先ほどもお話ししましたが、2020年にシルクブランドであるクリエイトエバラを立ち上げました。その後、そのコンセプトを形にした場所として2023年10月に京都府宮津市にカフェを併設したショールームをオープンさせました。そこにはカフェに来た人に、気軽にエバラのシルク製品を見て欲しいという思いがあります。

―写真を拝見しましたが、素敵な場所ですね。

江原 店内には織機を置き、2024年4月からは織りの体験もできるようになっています。店の近辺には、日本三景の天橋立や元伊勢といわれる籠神社(このじんじゃ)もあります。
ファッションに興味のある方たちが、ショールームを目的に来たついでに周囲の観光もして帰っていただければうれしいです。ゆくゆくは地域の産業や観光の核となるような施設にしたいです。

―なにか目指している形態があるのですか?

江原 イタリアにクチネリという高級カシミアのブランドがあります。クチネリは、イタリアの小さなソロメオ村にあり創業当時、村の人口はわずか500人でした。それが、クチネリが劇場や図書館、哲学の庭などを整備して、職人学校も開校。村にはアーティストとして高給を取っている職人たちが住み、産業の核となっています。
いまでは、ソロメオ村はワイナリーや果樹園、サッカー場まである観光の拠点です。

私も、丹後でクチネリのようなムーブメントをおこしたいと考えています。そして、その利益を職人の育成に向けたいです。

―素敵ですね。今後の展望をお聞かせください。

江原 「シルクと言えばエバラ」と世界で言われるようなシルクブランドを作っていきたいです。シルクブランドであるクリエイトエバラでは、シルクの着物だけでなくTシャツや枕カバー、ストールやパジャマなど、新しいシルクライフを提案する、ありとあらゆるシルク製品を扱っています。シルクのTシャツは、いままで編んだものは、世の中で販売されていたかもしれませんが、織物を使ったシルクTシャツはわが社が初めてではないかと言われています。

すでに、フランスやイギリス、カタール、インドなどへ、シルク生地やシルク製品が展開する計画が進んでいます。
海外で認められたブランドは、日本にも受け入れられやすくなります。そのためにも、世界的なシルクブランドとして発展させていきたいです。

―素敵なお話をありがとうございました。

「ステンドグラス ローズ」

「ステンドグラス ローズ」
参照元:https://create-ebara.jp/products/%E5%95%86%E5%93%81-3
価格:¥264,000(税込)
店名:create ebara:着物・シルク製品の公式通販ストア
電話:0772-45-1278 平日 10:00~17:00(日祝休み)
商品URL:https://create-ebara.jp/products/%E5%95%86%E5%93%81-3
オンラインショップ:https://create-ebara.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
江原英則(江原産業株式会社 代表取締役社長)

1972年1月1日生まれ。大阪学院大学を卒業後、江原産業に入社。2016年に代表取締役社長に就任。2020年 シルクブランド「create ebara」を設立。着物のシルクジャカードの技術で、洋装やインテリアなど、日本ブランドを世界へ発信している。

<文/桜会ふみ子 MC/白水斗真 画像協力/江原産業>

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