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土佐の食文化が育んだ香り豊かな辛口純米酒、「二割の麹が八割の味を決めるby浅野徹」

2024/04/05

国内有数の酒どころ高知県に、四季折々の食材にマッチした日本酒をつくり続ける醸造元があります。そのノウハウを盛り込んだ画期的な純米酒を2019年に発売。ユニークな商品名はコストパフォーマンスを追求した証しであり、全米日本酒歓評会などでも金賞を獲得した逸品です。
今回、編集長のアッキ―こと坂口明子が注目したのは、江戸幕府の創成期から続く超老舗の酒蔵。司牡丹酒造株式会社の代表取締役社長 竹村昭彦氏に商品の誕生秘話や高知の文化にまつわるお話をうかがいました。

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司牡丹酒造株式会社 代表取締役社長の竹村昭彦氏

―子供時代から家業を継ぐ意識はありましたか?

竹村 酒蔵は保育園への通り道で中に入ると遊べるところがあり、怒られながらも樽でかくれんぼをしたりしていました。家がお酒をつくっているのは分かっていましたが、子供の頃はまだ継ぐ意識はなく、むしろ成長するにしたがって都会に出たい気持ちのほうが強くなっていました。

―大学進学で東京に出られましたね。

竹村 都会への憧れが強かったので上京して学習院大学に進学したのですが、いきなり手痛い歓迎が待っていました。いよいよ都会生活が始まるとワクワクしながら寮に入ると、コンパで当時流行っていた「一気飲み」の洗礼を受けてしまったんです。
しかも飲んだのが安物の日本酒だったので、酒蔵の息子なのにあろうことか日本酒嫌いになってしまいました。

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魅惑的なラベル。

―就職先も東京に?

竹村 はい、日本酒が嫌いになったこともあって、まったく異業種の会社に就職しました。クリスマスツリーなどのファッション雑貨やバレンタインのチョコレートといった食品を販売する会社です。酒類とは無関係な業界で全国に出張もしながら5年間働いたのち、高知に戻ることになりました。

―「高知に帰って家業を継ごう」と思われたきっかけを教えてください。

竹村 在京中は普通に売っている日本酒をおいしいと思わなかったのですが、あるとき吟醸酒を飲んでいい日本酒もあると知ったのが1つ。また洋物ばかり扱っていた会社が手ぬぐいの店をオープンしたことで、和の良さにも気づいたという2つが大きなきっかけとなりました。

そして東京にいる間にどれだけ高知県が「食」に恵まれた土地かを知らされました。今でこそ東京でもおいしいカツオが食べられますが、当時の鮮度は非常に悪かったですからね。何といっても新鮮な食に合うお酒づくり、これに魅力を感じたということです。

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独創的で大胆なネーミングにしばらく目を奪われます。

―貴社はずいぶん古い歴史をお持ちですね。

竹村 はい、弊社の起源は徳川家康が征夷大将軍になった1603年まで遡ります。関ヶ原の勲功によって山内一豊が土佐に入ってきたのですが、山内家の筆頭家老、深尾和泉守重良という方のお抱え酒屋が私たちの先祖です。

時代を経ていくつかの酒蔵が興り、そのうち1つがテレビの朝ドラにも取り上げられたのですが、大正時代にそれらが合併して約100年前に株式会社になりました。それが「司牡丹」の始まりです。

―社名の由来は?

竹村 司牡丹という名前が付いたのは株式会社になって2年目、佐川町出身の宮内大臣も務めた田中光顕伯爵に、私の曾祖父・竹村源十郎がお願いして付けていただいた名前です。牡丹は百の花の王であり、その牡丹を司(つかさど)るという意味で、英訳すると「キングオブキングス」になります。

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見た目だけで辛口を想像させる、純度の高いクリア色。

―歴史ある家業を継ぐにあたっての覚悟は?

竹村 大してプレッシャーは感じませんでした。というのも日本酒業界はずっと右肩下がりですし、伝統も何も関係なくバタバタ潰れていましたから逆に開き直っていましたね。ただひたすら「何とかするしかない」と前に向かう気持ちだけでした。

―今回の商品のユニークなネーミングはどんなプロセスで生まれたのですか?

竹村 酒づくりに使用する米のうち、麹(こうじ)に使う米は全体の2割なのですが、その麹に良い米を使えば、残りの8割の米は多少コストを下げてもおいしいお酒ができるという意味からきています。

浅野徹は高知県出身で東京農大の醸造学部を卒業した弊社の杜氏です。初めての社員杜氏ですが、彼が発言した言葉を私がそのまま商品名にしました。短い名前だと他社が使っている可能性があるのに対し、長い名前なら商標など誰も取っていないと思い、そのまま商品名にしたというわけです。

―全米日本酒歓評会で金賞、酒コンペティション2023でシルバー賞を獲得したご感想は?

竹村 どちらも金賞を狙っていたのに、シルバーのほうはあと1つでゴールドだったので悔しいです。しかし、現在は甘いお酒が流行っていてそのほうが品評会にも有利な流れの中で、辛口の当商品が選ばれたことに価値があると思っています。

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商品を問わず日本酒品評会で数多くの受賞歴を誇る。

―おすすめの飲み方とお料理は?

竹村 寒い日でしたらぬる澗にしてもいいのですが、私の好みでいうと、あまり冷やし過ぎず15℃ぐらいの温度でワイングラス状の容器で飲むのがおすすめです。香りを立たせる酵母を使っていますから、空気に触れるとバナナやメロンのような香りがフワーッと出てきます。若い人にも「こんな日本酒もあるんだ」と魅力を感じていただけると思います。

合わせるおつまみは「生ハムメロン」がいいでしょう。辛口ながらフルーティーさを兼ね備えた日本酒なので、ハムの塩辛さとメロンの甘さに調和して両者を引き立ててくれます。
どちらかといえば、お酒だけ飲みたい人ではなく、食事をおいしくするために飲む日本酒です。お酒が甘いと満たされて料理がおいしく感じませんから、少し物足りないと何かつまみたくするために、味を辛口にしています。

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甘い食材に合わせると、もう一段別の魅力を発揮します。

―ホームページの言葉「旬の食と旬の酒が人生を健康で楽しく豊かにする」はどなたのものですか?

竹村 私です。高知県は84%が森林で、しかも降雨量も晴天の日も極めて多いため、山の幸がとても豊富になります。さらに森林面積が多く雨が多いということは、川が急流になり清流になりますから、川の幸も豊富になるわけです。そのため川の漁だけで生計を立てる人もいるくらいです。
高知県は太平洋に向かって両腕を広げたような形ですから、当然海の幸も大変豊富です。

山・川・海の幸で春夏秋冬、旬の食材が手に入る。中心の高知市から車で30分も行けば、鮮度抜群のものが容易に食べられる、そんな地元高知を知っているからこそ出てきた言葉です。

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もちろん魚介類との相性は折り紙付き。

日本酒にも旬があります。基本的にはお酒は10月から3月の冬場につくって、そのあとはそれを売っていくのが慣例です。一方で料理には初秋に食す「ハモとマツタケの土瓶蒸し」がありますが、夏が旬のハモの名残りとマツタケの旬の走りが重なった絶妙な組み合わせのもの。そこに秋の「ひやおろし」があれば言うことなしです。

本当においしいものはわずかに重なった時期にしか食べられないという一期一会の食文化が、日本にはずっと息づいていたわけです。四季の料理を引き立て、旬のものをおいしくいただくために日本酒を活用して人生を豊かにする。これが私たちのお酒づくりの目的でもあるのです。

―今後のご展望をお聞かせください。

竹村 2024年1月22日に法人登記されましたが、「土佐伝統お座敷文化を守る会」というNPO法人を立ち上げました。高知県は高い山地にはばまれ地理的に不便だからこそ独特の食・酒文化や風習があります。その代表例として昔から残っているのが、お酒を飲める人も飲めない人も老若男女が同じ場に集う「お座敷文化」です。

こちらの方言で「なかま」にするという言葉があり、たとえば「おもちゃを兄弟で『なかま』にする」と、シェアする意味で使うのですが、そうした分かち合いの精神からきた文化といえます。

土佐の食と酒と人と宴を磨き上げ再結合させることで、日本だけでなく世界中から観光客に集まってもらえるようになると考えNPO法人を立ち上げました。これを1つのきっかけに高知県がもっと盛り上がっていくとうれしいです。

―本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

「二割の麹が八割の味を決めるby浅野徹」(720ml)

「二割の麹が八割の味を決めるby浅野徹」(720ml)
価格:¥1,480(税込)
店名:司牡丹株式会社 公式WEBサイト
電話:0889-22-1211(8:30~17:20 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tsukasabotan.co.jp/standard/koji.html
オンラインショップ:https://www.tsukasabotan.co.jp/index.html

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
竹村昭彦(司牡丹酒造株式会社 代表取締役社長)

1962年高知県高岡郡佐川町に生まれる。学習院大学経済学部経営学科を卒業後、東京のファッション雑貨&食品の会社に入社し5年間営業を勤めた後、1990年に高知に戻り、司牡丹酒造株式会社に入社。1999年、同社代表取締役社長に就任し、現在に至る。2015年より高知県酒造組合理事長に就任し、現在に至る。

<文・撮影/田中省二 MC/伊藤マヤ 画像協力/司牡丹酒造>

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