加賀百万石として栄えた石川県金沢市では、家族が集う祭りの日などに、伝統的に柿の葉寿司や笹寿司といった押し寿司を作って食べてきたと言います。そんな伝統の味に、最近人気の魚・のどぐろを合わせた押し寿司を製造・販売しているのが株式会社みやこやです。今回、編集長・アッキーが気になった加賀伝統の押し寿司について、編集部が株式会社みやこやの代表取締役 寺西正彰氏にお話を伺いました。
金沢伝統の押し寿司とのどぐろの至福の組み合わせ「氷室のどぐろ柿の葉寿司」とSNS映えもすると評判の「加賀味箱 笹寿司」
2024/04/05
株式会社みやこや 代表取締役の寺西正彰氏
―寿司業界に入られたきっかけを教えてください。
寺西 家が寿司店を営んでいたため、この世界に入りました。実家の寿司店は私で三代目です。自然と継ぐものだと思い、大学を出てから東京に修行に出ました。
―修業はどちらでされたんでしょうか。
寺西 銀座の寛八です。寛八というのは僕らの頃は有名なだけではなく、修業が厳しいことでも知られていました。
時間に対しても厳しかったですし、仕事に対する心構えなど、さまざまなことを学びました。つらいこともありましたが、辞めるということは一切、考えませんでした。先輩から次の仕事を任せてもらえるように努力をすることに夢中で、一つ一つ仕事を覚えていくことに魅力を感じていたのでしょう。
―今回ご紹介する「氷室のどぐろ柿の葉寿司」について教えてください。
寺西 もともと柿の葉寿司というのは石川県の加賀地方で伝統的に食べられてきた押し寿司です。その名の通り柿の葉で包んでいますが、今でも祭りのときなどに食べる風習が残っています。
ネタとしてはサバや鮭、茄子などの季節の野菜をよく使います。当社でもそのような一般的な柿の葉寿司を置いていますが、近年、のどぐろが全国的に有名になったこともあり、地元の名産でもあるのどぐろを使ってみようということで商品化したのが「氷室のどぐろ柿の葉寿司」です。
―のどぐろが有名になった経緯を教えてください。
寺西 金沢では昔から食べてきた魚ですが、テニスの錦織圭選手がインタビューの中で、日本に帰ったらのどぐろを食べたいと言ったことから、のどぐろの人気が高まったという説があります。いずれにしても、脂ののったとてもおいしい高級魚として、最近は人気となっています。
通常は焼いたり煮たりすることが多い魚であるため、押し寿司にはどうかとは思いましたが、おいしい魚ですし、試してみる価値があると考えました。
ほどよい柿の葉の香りがする「氷室のどぐろ柿の葉寿司」。
―商品開発にはどのくらいの時間がかかったのでしょうか。
寺西 時間についてはさほどかかってはいません。当社は金澤玉寿司という寿司店から始まり、70年以上、寿司に携わってきた歴史があります。魚を締める技術については持っておりますので、その点は問題ありませんでした。
―では問題なく商品化されたのでしょうか。
寺西 ただ、のどぐろは非常に脂が強い魚なので、酢の入れ方や、塩加減については、従業員と共に試行錯誤しました。
また、商品化するにあたりたいへんだったのは、全ての商品を均一の大きさと味にするという点でした。命ある自然の生き物ですから、全部同じ大きさとはいきませんし、脂の乗り方も全て違います。季節によっても、暑いとき、寒いときでは、若干ですが塩加減などを変えなくてはいけません。もともと寿司店としての技術はあったものの、多くの方に販売するという点では難しさがありました。
―商品の認知度を高めるための工夫はされたのでしょうか。
寺西 のどぐろを使った柿の葉寿司というのは、まだまだあまりないので、いろんな方に食べていただいて、いろんな評価もいただいて、少しずつ認知度を上げていきました。あとは地道に、販売時に真ん中に置くなどの工夫もしました。
―この商品はどのような人たちに食べていただきたいとお考えですか?
寺西 旅行でいらした方に楽しんでいただきたいというのはもちろんあるのですが、やはり地元の方に受け入れていただきたいというのが一番にあります。地元の祭り寿司をベースにしていますので、地元の方に愛されてこそです。
年齢で言うと、伝統的な料理が基本となっているので、おそらくご高齢の方のほうが親しんでいただきやすいでしょう。ただ、のどぐろは脂がのっていて若い方にも好まれやすいので、幅広い方に親しんでいただけると思います。
―おすすめの食べ方はありますでしょうか。
寺西 先ほども申した通りお祭りのお寿司なので、おいしい酒を飲んでワイワイとやりながら食べていただくのが良いです。もちろん、お茶と一緒にのんびりと召し上がっていただくのもおすすめです。2~3日程度は日持ちするので、ゆっくり食べていただければと思います。基本的には作って翌日がおいしいと思いますが、時間が経つと柿の葉の香りが強くなるので、その変わっていく感じを楽しんで、一番のお好みを見つけていただくのも良いかもしれません。
石川県の日本酒と合わせて楽しみたい。
―「加賀味箱 笹寿司」の商品開発のきっかけやエピソードを教えてください。
寺西 笹寿司もまた石川県で伝統的に食べられてきたものですが、「加賀味箱 笹寿司」については若い方にも手に取っていただきたいというのが、開発時からのコンセプトにありました。
味だけではなく見た目にもこだわりました。金沢というと金箔が有名ですが、「加賀味箱 笹寿司」にも金箔を使って、華やかさを加えています。名前にも加賀と付け、地元・金沢をアピールしています。発売以来、若い方にも良く手に取っていただいている人気商品です。
―開発は社員の方とされたのでしょうか。
寺西 もちろん、みんなで考えましたが、とくに若い従業員の声をよく聞いて「やっぱりこうしたほうがいい」などと言われながら開発しました。若い感性を取り入れたかったからですが、若い方にいいと思ってもらえたら成功です。
―ネタには何を使用しているのでしょうか。
寺西 ネタも若い方からの人気のものを使っています。鮭、のどぐろ、エビです。握り寿司の人気のネタを3つ揃えました。
「加賀味箱 笹寿司」は、えび、鮭、のどぐろの3個セットで、贈り物にもおすすめ。
―通常では、笹寿司にはどのような魚を使うことが多いのでしょうか。
寺西 やはりサバを使うことが多く、当社でも販売をしています。サバはお好きな方はとてもお好きですが、苦手だという方も多くいらっしゃいます。通常、笹寿司を販売する際には最低でも1個はサバが入っているのですが、「加賀味箱 笹寿司」についてはあえてサバをはずして、若い方に人気のネタだけを揃えました。
―鮭とエビも色がきれいで、SNS映えもしそうです。
寺西 そこまでは考えていませんでしたが、そういう楽しみ方もしていただけたらうれしいです。見た目にもこだわっていますので、いろんな楽しみ方をしていただきながら、最近はお寿司というと回転ずしのイメージが強いかと思いますが、こういう食文化にも触れていただけたらうれしいです。
金箔が華やかさを加えハレの日の食事にも最適です。
―今後のビジョンや展望について教えてください。
寺西 できることであれば、もっと幅広い方に味わっていただきたい。ただそれには、配送技術などについて考えなければいけません。このように締めたお寿司でも、賞味期限はだいたい2~3日程度です。本当は、海外の方にも食べていただきたいし、国内でも北海道から沖縄まで全国の方に気軽に食べていただきたいという希望があります。ただ、生の食品ですので、このままの味を届けようと思うと、流通の問題で遠方となるとなかなか難しいです。もし、新しい技術が出てきて可能になるのであれば取り入れつつ、多くの方に味わっていただけたらと考えています。
柿の葉や笹に包まれているので手に取りやすく、
ホームパーティーのときなどにお取り寄せするのも良い。
―お祭りで食べられてきたという伝統の柿の葉寿司と笹寿司ですが、見た目も美しく思わず箸が進みます。すてきなお話ありがとうございました。
「氷室のどぐろ柿の葉寿司」(5個入)
価格:¥1,350(税込)
店名:みやこやオンラインショップ
電話:076-241-6588(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/kanazawa-tamazushi/r01201/
オンラインショップ:https://kanazawa-tamazushi.com/miyakoya/
「加賀味箱 笹寿司(かがみばこ ささすし)」(のどぐろ1個・金箔鮭1個・金箔えび1個)
価格:¥864(税込)
店名:みやこやオンラインショップ
電話:076-241-6588(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/kanazawa-tamazushi/r02101/
オンラインショップ:https://kanazawa-tamazushi.com/miyakoya/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
寺西正彰(株式会社みやこや 代表取締役
)
玉寿司三代目として、銀座「勘八」で修業すると共に包丁道三長流の儀式を学び、大師範北陸支部長として伝統を受け継ぐ。その間に回転寿司部門の株式会社エムザック、柿の葉寿司・弁当製造部門の株式会社みやこや3社の代表取締役に就任。現在、石川県鮨組合理事長、専門調理師として業界の発展、若手の育成に努める。
<文・撮影/平野智美 MC/矢口優衣 画像協力/みやこや
>