マナーと洒落感を共存させた 新しいブラックフォーマル

2023/12/20

「黒」を着ていれば大丈夫…と、購入を後回しにしてきたブラックフォーマル。そろそろ、きちんとしたものを揃えてみませんか? 今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、アパレルブランド「kaene」のブラックフォーマル。インターネット販売がメインで、チェックしてみると、マナーをわきまえつつ、さりげなく洒落たデザインのものが手の届く範囲で揃っています。今回は、その運営元である「株式会社侶丹(ロダン)」代表取締役社長の日永和孝氏にお話を伺いました。

株式会社侶丹 代表取締役社長の日永和孝氏

―御社の沿革を伺えますでしょうか?

日永 1975年に祖父が創業し、私で3代目です。祖父はもともと熊本で洋服の卸問屋を営んでいたのですが、時代を読み、福岡に進出しました。福岡では、父を含め5人ぐらいのメンバーでオリジナルのアパレルブランドをスタートさせ、1991年に父が代表に就任しました。

―どんなブランドだったのでしょうか?

日永 ちりめん素材を使ったシルバー層向けのブランドです。好評をいただき、十数年やってきましたが、徐々に売り上げは減少傾向となりました。そんな中、2008年に私が、2009年に妹が入社し、若い方に向けたフォーマル系のアパレルブランド「kaene」を立ち上げました。

2008年に立ち上げた「kaene」、初期のラインナップより。

―そして、2021年に会社を引き継がれたのですね。

日永 当時、先代が資金繰りをはじめとする経営全般、私が現場を担当していたのですが、普段は仲が良くても、仕事となると衝突することがたびたびあって。それなら、早めに会社を任せて欲しいと伝え、コロナも明けきれない2021年、社長に就任しました。

―シルバー層向けから若い方向けへはいつ移行したのですか?

日永 実は「kaene」をスタートさせたタイミングで、シルバー向けの商品はスッパリと止めました。これは先代の英断だったと思います。「シルバー向けのラインはもう勝算がないからやめる。次を思い切ってやれ」という感じです。

―社長就任後、力を入れたことは?

日永 社長に就任する1、2期前からいろいろ動いて形にしてきたのですが、コロナが流行し出して、結婚式がほぼ中止になりました。「kaene」の服は、結婚式を意識していたので売り上げは一気にダウン。単月で9割ダウンという時もありました。僕らだけであればまだしも、お取引させていただいている縫製工場さんにも全く仕事が出せない状態で、これはまずいと思いました。

そこで急遽、カジュアルラインを作り、SNSでライブ配信を行いました。すると友人やインフルエンサーさんたちの協力もあり、初日で800万円ほどの売り上げを達成。その後、約1週間で売り上げは1200万円に上り、縫製工場さんになんとかお仕事をお願いすることができるようになりました。

コロナ期に開発したカジュアルラインはSNSで人気に。

ただライブ配信も、やればやるだけ伸びるというものではありません。徐々に売り上げは伸び止まりしましたが、それでもその年は、7割ダウンまでで抑えることができました。きっと何もしないままだったら9割ダウンの状況もあったかと思います。そしてその頃、ブラックフォーマルを始めました。

―なぜ、このタイミングで?

日永 以前から挑戦したかったこともありますし、コロナ期、確かに葬式の開催も少なくなりましたが、大事な方が亡くなったらやはり葬式を、という方も多くいらっしゃいました。そこで需要に応えることができるのではないかと進めたところ、ドレスよりも反応があり、売り上げが少しずつ伸びていきました。

―ブラックフォーマルはどちらで縫製しているのですか?

日永 熊本の弊社工場と、同じく熊本の三角にある契約工場の2箇所です。ドレスやブラックフォーマルは、縫製に高い技術が要るため、弊社が契約している工場さんの中でも、限られたところになります。

弊社が大切にしていることのひとつが、日本の縫製職人の技を伝え、縫製技術が洋服の美しさ、高級感に寄与をすることを世間にもっと知っていただくことです。近年は、おしゃれで安ければ海外製の服でもいいという人も増えており、それはそれで否定しませんが、日本の高い技術力が職人の高齢化や後継者不足で失われつつある今、私たちはそれらを守り、伝えていかねばと考えています。

信頼のおける縫製工場で「kaene」のアイテムは生まれている。

―タグの表に「メイド・イン・ジャパン」、裏には日本地図と、熊本の工場で作られているという表示があり、素敵だなと思いました。また「シフォン合わせロングワンピース」を試着させていただきましたが、ラインが本当に美しいですね。

日永 ブラックフォーマルは、立体的にパターンを引き、体のラインが綺麗に見えるように作っています。「綺麗に」というのは、亡くなった方へのリスペクト、きちんとした思いを伝えるためのものです。

「kaene」で人気のブラックフォーマルより、「シフォン合わせロングワンピース」。

―「シフォンフリルジャケット」についてもポイントを聞かせてください。

日永 お客様の声を聞くと、フォーマルな場ではよりカチッと感を出したい、という方が多い印象があり、「シフォン合わせロングワンピース」に合わせて作りました。ワンピースと一緒で、さりげないフリルのあしらいがポイントです。

必ずワンピースと揃いで、フォーマルの場だけで、ではなく、1ジャケットとして自由に着用していただいても良いのでは、と思っています。

フォーマルな装いに、さりげないフリルのアクセントを。

ちなみにフォーマルブラックの色、業界では略してFBKと言いますが、これは一般的なBK、黒とは異なります。FBKは、ブラックフォーマル用に開発された黒、漆黒寄りの黒です。時々ショップのスタッフさんが黒のアイテムを勧めるのに「フォーマルでも使えますよ」と言う場合があるようですが、一般的な黒のアイテムは色が浅く、葬儀場などでFBKの中に入るとちょっと目立ってしまい、恥ずかしい思いをされるかもしれません。これは知っておいていただくといいかな、と思います。

―ほかに、お客様の反応はいかがですか?

日永 これまで、ブラックフォーマルと言えば高価で、デザインも保守的なものが多いと思っていたけれど、「kaene」のものはおしゃれで、質も良い上に価格も納得できる、という声をよく聞きます。メーカーさんからも、よくその値段で出せるねと言われますが、直販というスタイルで叶えています。

―今後のビジョンについても伺えますでしょうか?

日永 まず、売り上げを4億円から10億円へ。今よりさらにブランド力を上げて、たくさんの方に手にしていただき、それを社員にもきちんと分配できる会社に成長させることを目指しています。また現在、新宿ルミネや福岡にも店舗を構えていますが、改めてオンラインショップにも力を入れていきたいですね。ドレスやブラックフォーマルは購入を失敗したくないと思うので、正直、オンラインだと不安だと思います。そこをたとえばAI技術などでわかりやすくし、届くとサイズがピッタリ、というシステムを作れたらと考えています。

それから経営者的にはNGかもしれませんが、目の前の課題を1つ1つクリアした時に、また新しい景色が見えてくるだろう、というのが私の経営スタイルです。実際に新宿ルミネへの出店も、まずはポップアップで一生懸命やって結果を出したところ、ありがたいことに声をかけていただきました。これからも、目の前のことに全力で向き合い、その後にどういう景色が見えるのか、どういう時代を迎えるのか、それを楽しみに走り続けたいと思います。

―マナーをわきまえつつも、おしゃれさのあるものを身につけていたい、という女性の心をしっかりと掴んだブラックフォーマル。これから社会に出る若い方にはもちろん、あらためて自分らしい1着を、と考える30代、40代の方にも嬉しい存在だと思いました。お話、ありがとうございました!

「シフォン合わせロングワンピース」
価格:¥26,400(税込)
店名:kaene・Yawn公式オンラインストア
電話:問い合わせはLINE(https://lin.ee/3J4vDyc)にて。(9:00〜17:30)
定休日:土曜・日曜・祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kaene.jp/products/100647?_pos=1&_sid=123f16800&_ss=r
オンラインショップ:https://kaene.jp/pages/kaene

「シフォンフリルジャケット」
価格:¥19,800(税込)
店名:kaene・Yawn公式オンラインストア
電話:問い合わせはLINE(https://lin.ee/3J4vDyc)にて。(9:00〜17:30)
定休日:土曜・日曜・祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kaene.jp/collections/kaene-all-item/products/005312
オンラインショップ:https://kaene.jp/pages/kaene

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
日永和孝(株式会社侶丹 代表取締役)

1980年福岡生まれ。九州産業大学芸術学部プロダクトデザイン科卒業後1年間渡米。渡米先で出会ったベトナム料理のフォーか、当時サンディエゴで流行っていたタピオカミルクティーで独立することを考え、リサーチも兼ねてバックパッカーになり世界を歩き回る。
帰国後、某飲食店の中間管理職と中目黒にあったカフェ・バーにて、飲食業のノウハウを学ぶ。父が経営する会社が倒産の危機に陥り、志半ばでやむを得なく入社。復活のためにも「kaene」を立ち上げるが、トータルで4期連続赤字を経験。あと数か月で資金ショート(倒産)というところから、撒いてきた種が実りだし、10期連続黒字に転換の復活を果たす。2021年に同社代表取締役に就任。

<文/鹿田吏子 MC/木村彩織 画像協力/侶丹>

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