「鳥取県といえば?」と問われると、「砂丘」「ゲゲゲの鬼太郎」と共に、「美味しいお魚が水揚げされる場所」と答える人も多いのでは?今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、鳥取県米子市で、美味しい魚を糖質OFFに仕上げ、全国に発送している株式会社ダイマツ。それを独自の製法で実現しているとのことで、詳しいお話を取締役の松江一志氏に伺いました。
美味しくて糖質OFF!氷温(R)熟成が生んだ奇跡の味
2023/12/11
株式会社ダイマツ 取締役の松江一志氏
―まずは御社のご紹介をお願いいたします。
松江 弊社は創業1958年。曾祖父母が戦時中大阪で空襲に遭い、疎開のため米子に移り住み、米子・境漁港で水揚げされた鮮魚の行商から商売を始めました。現在は、鳥取県米子市から日本全国へ干物や煮付けなどに加工した魚をお届けしています。父が社長、祖父が会長、私は取締役を務めています。
創業の頃は、新参者として地元の方からの信用を得るため、魚を持って八百屋さんなどに出向いて、まずは店先の掃除をさせていただき、対価として魚をお買い求めいただくところから始めたと聞いています。当時は冷凍庫も舗装された道路も無い時代であったため、漁師さんが命がけで獲ってきた魚(命)を無駄にしたくない想いで日持ちのする干物加工を始めました。
干物は現在も販売。
一番良い時期に獲れた魚の旨みを凝縮させた逸品。
―それが現在は、全国に魚を届ける企業になられたのですね。
松江 そうですね。加工・販売に加え、20年ほど前からは通信販売も始めました。当時の水産加工業界は、地元の量販店様、近隣での販売が一般的でしたが、ある時、社長が東京の百貨店様で店頭販売をさせていただく機会に恵まれ、お客様が何度も美味しかったと足を運んでいただいたことが全国にお魚を届けるきっかけとなりました。
弊社は氷温(R)熟成という技術で食べものづくりをしています、通常の製法より手間や時間がかかるため単価が若干高くなりますが、一度お店でお買い求めいただいた方がリピートしてくださり、さらにお友達にもおすすめしていただいて、非常にご好評いただきました。その時、多少値段は張っても、美味しいものはお買い求めいただけるのだと確信したそうです。そして鳥取県から全国へ販売することができれば、非常にチャンスが広がるのではと通信販売を始めました。多大な苦労があったようでしたが、チャレンジして良かったと思います。
―氷温(R)熟成についても詳しく伺えますでしょうか。
松江 水が凍る温度は摂氏0度。しかし野菜や肉、魚が0度で凍るかというとそうではなく、それらにはマイナス3度や4度といった氷結点があることがわかりました。元々、山根昭美さんという農学博士が、鳥取県の特産品である20世紀梨を、マイナスの温度帯で冷凍保管するために研究をしていたところ、機械の故障で温度の調整に失敗し、-4℃に近い温度帯で一晩寝かせてしまったそうです。しかしそれを食べてみると、みずみずしくなっており、通常保管のものより美味しかったと。それを技術化したのが氷温(R)熟成です。現在、氷温(R)熟成は、境港の「公益社団法人 氷温(R)協会」というところが管理をしているのですが、世界で初めて水産加工品に転用したのが弊社になります。
会長も子供の頃より、干物は“寒の時期”(1月下旬~2月上旬)に作ったものが特段美味しいということを先人の知恵から知っていました、これを年間通して作れたらと考えていたようです。そして山根博士の講演会に参加して確信を得て、魚の製造に取り入れさせていただきました。
一年中でもっとも寒い時期に水揚げされた魚は、
古くから「美味しい」とされてきたという。
―氷温(R)熟成の効果として、美味しさアップ、安心安全、鮮度保持、健康に良いという4つが挙げられるようですが、詳しくお伺いできますでしょうか?
松江 まず「美味しさアップ」ですが、人は寒い所にいると、体内で温めようとする機能が働きますよね。素材にも同じことが言え、自分自身が凍らないように、氷結点を上げようと不凍液を体内で分泌します。それが旨味成分となり、美味しくいただけるようになります。
続いて「安心安全」ですが、氷温(R)熟成は保存料を使用せずとも日持ちする効果があることから、「安心安全」とさせていただいています。
「鮮度保持」については、一般的に水産加工品を製造する際、まず原料を冷凍で仕入れ、常温の温度帯まで上げて加工や調理、味付けを行います。しかし氷温(R)熟成では素材をマイナスの温度帯のままで調理加工を行います。つまり、鮮度が保持されたままである、ということです。
「健康に良い」というところは、繰り返しになりますが、不要な添加物を使わずにこの技術を取り入れることができる、という点です。
―どんな魚も、氷温(R)熟成すれば美味しくなるのでしょうか?
松江 そうですね。概念的には劣化を抑え、原料自体が旨みを生み出すと考えられています。
今は様々なところで認知されており、コンビニエンスストア様でお弁当に氷温(R)熟成を使った魚を入れてくださっているところもあるのですよ。
また原料について、弊社では外国産のものも取り入れており、「外国産って本当にいいの?」と尋ねられることもあります。そんな時にお答えしているのが、例えばサバはノルウェー産を使用していますが、ノルウェーは、サバのメジャーな原産国です。私どもは、そのノルウェー産のサバでも、脂質が25%以上あるサバを厳選し、輸入しています。ノルウェー自体が輸出産業として力を入れ最新設備を駆使し非常に鮮度も良い状態で仕入れることができます。そのおかげで、年間二千万食をお届けしている塩鯖は鯖と食塩しか使用しておりませんが評判をいただいております。
―では今回ご紹介いただいている糖質OFFシリーズについてもお話を伺います。こちらの開発のきっかけも伺えますか?
松江 もともとは父(社長)が祖父母の健康を気遣い、日々の食事で出来ることがないかと思ったことが開発のきっかけになりました。弊社のお魚を買っていただいているお客様からも年を経るにつれてカロリーや脂質の制限を考え始めているという話や、持病があって食べられないものがあるという話、そういう状態だが弊社の美味しい商品を何とか食べられるようにできないかという話があちこちから聞こえてきて、開発を行いました。
ただ糖質OFFと聞くと味が薄いのではないか、と心配されがちです。そこで、作るからにはこれまでの商品と同じ、またはそれ以上のレベルのものを作らなければと考え、基本的な工程はそのままに、温度帯や素材の組み合わせを何十回、何百回と繰り返しながら試作し、販売できるまでに至りました。
ふわふわの魚の身に、しっかりとタレが絡み、白ごはんが進む!
―糖質OFFシリーズはいつ頃誕生したのですか?
松江 2017年です。ちょうど、「メタボ」といった言葉がよく聞かれるようになり、世の中の健康意識が高まった頃で、ブームの先駆け的な商品になったのではと思います。
―ラインナップはどのようにして決まったのですか?
松江 これまでご好評いただいてきた従来品からピックアップさせていただきました。現在は「糖質OFFかれい醤油煮」「糖質OFF骨取さば味噌煮」「糖質OFF骨取赤魚の煮つけ」「糖質OFF真いかと大根の煮つけ」「糖質OFF骨取さばみぞれ煮」の5種類ですが、今後も同じような糖質OFFの新商品開発に取り組んでいけたらと思っています。
冷凍パックをそのまま湯煎で5~7分と、調理法も簡単!
―どのような方に求められていますか?
松江 販売当初はご高齢の方や、食事に制限がある方、ご家族に贈り物をされる方などをターゲットにしていたのですが、健康意識が変わってきた今、美味しいものをヘルシーに食べたい、という方々にまで、大きく広がってきました。
冷凍状態で届くので、そのままストックしておけば、
いつでも美味しい魚が味わえる。
―今後の展望についても聞かせてください。
松江 若者が魚離れしているという話も聞きますが、やはり日本食の中で魚は、文化的にも欠かせないものだと思います。今後はもっと若年層の方にもお買い求めいただけるような新商品、新しい味付けを私たちが展開していけたらと考えています。現在は主に国内需要をターゲットとしていますが、海外に向けても展開を考えていくかもしれません。
弊社の企業理念は、「健康によい食品を創る、ダイマツ。感動づくり、喜びづくり」です。貴重な水産資源を使って事業をさせていただいている身として、まずは資源を大切にし、お客様の命を大切に育む、健康によい食べものを創る、という意識でおります。その思いを私も引き続き大切にしながら、これからも美味しい魚をお手元にお届けできたらと思います。
―こちらの糖質OFFシリーズ、湯煎にかけるだけで、本当にふっくら、美味しい魚を味わうことができました。忙しい、若い世代の方にも重宝されそうですね。お話をありがとうございました!
「ふっくら焼きしっとり煮 糖質OFF 5種詰合せ」
価格:¥2,160(税込)
店名:山陰・米子 松乃江
電話:フリーダイヤル0120-6666-45(9:00~17:30)
定休日:日曜・祝日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.matsunoe-sanin.jp/view/item/000000000195?category_page_id=casserole
オンラインショップ:https://www.matsunoe-sanin.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
松江一志(株式会社ダイマツ 取締役)
1997年神奈川県生まれ。大学卒業後、2019年に入社。2021年に同社取締役へ就任。現在は管理部に所属、並行して海外輸出の営業活動にも注力。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/木村沙織 画像協力/ダイマツ>