守りつつ、攻める2つの“技”のコラボで生まれた唯一無二の酒器。 SUWADA✕KIRINZAN「器」

守りつつ、攻める2つの“技”のコラボで生まれた唯一無二の酒器。SUWADA✕KIRINZAN「器」

2022/08/17

今回、編集長アッキーこと坂口明子の目に留まったのは、2021年3月、「原点回帰」の言葉を掲げて商品の大幅リニューアルを行った新潟の日本酒蔵元・麒麟山酒造。「守りつつ、攻める」という蔵元の思いを象徴するような酒器もリリースしたというウワサを聞きつけ、麒麟山酒造株式会社 7代目代表取締役社長の齋藤俊太郎氏に取材スタッフが話をうかがいました。

麒麟山酒造株式会社 代表取締役社長の齋藤俊太郎氏
麒麟山酒造株式会社 代表取締役社長の齋藤俊太郎氏

―まずは、蔵の歴史についてお聞かせください。

齋藤 創業は江戸末期の1843年、来年で創業180年を迎えます。弊社の蔵が建つ新潟県阿賀町には、その姿が霊獣の「麒麟」に似ていることから麒麟山という名がついた山があるんですね。麒麟は吉祥をもたらすと言われる大変縁起のいい動物であることから、その名にあやかって「麒麟山酒造」と名乗るようになりました。

米を育てるところから酒造りに取り組む麒麟山酒造。田植えから収穫まで、すべての蔵人が田んぼに立ち、酒米作りに携わっています。
米を育てるところから酒造りに取り組む麒麟山酒造。
田植えから収穫まで、すべての蔵人が田んぼに立ち、酒米作りに携わっています。

―阿賀町というところは、お酒づくりに適した土地なのでしょうか。

齋藤 ここは、麒麟山をはじめ標高1000〜2000mクラスの山に囲まれた盆地です。盆地の特徴として、夏はとくに気温の日較差がとても大きいのですが、それによって良質なお米ができると言われています。さらに、近くを流れる常浪川(とこなみがわ)は超軟水。そのことも、お米の味の大きな要素です。お米の食味検査では毎年、全国的に有名な魚沼産コシヒカリと同様、高い評価を得ているほどです。日本酒づくりに使う酒米も、同じ気候風土の中で育つわけですから当然、品質が高いものができるのです。

常浪川の水が酒米を育て、仕込み水としても使われている。
常浪川の水が酒米を育て、仕込み水としても使われている。

―麒麟山酒造のお酒はすべて、その地元産のお米を100%使って醸されているとか。

齋藤 はい。弊社が酒造りに使っている酒米は100%阿賀町産、蔵の半径10㎞内のエリアでまかなっています。

―100%、地元産米でお酒を造っているのですか! めずらしいですね。

齋藤 先代に「地元産のお米で酒を作りたい」という強い思いがあって、そこに共感してくれた15人の農家さんと「奥阿賀酒米研究会」を発足。そこから、20年以上もの年月がかかりましたが、2018年に、晴れて「地元産米100%の酒造り」が実現しました。おっしゃるとおり、全国でも珍しい取り組みだと思います。

―商品の大幅な見直しをされたとのことですが、なぜなのでしょう。勇気が必要なことのような気がします。

齋藤 弊社はもともと、スッキリとしたいわゆる淡麗辛口のお酒を造っていました。昔は、今ほどいろいろな娯楽があったわけではありません。とくに阿賀野は農業が中心の町で、人々の楽しみといえば仕事を終えて、家でホッとしてお酒を飲むことだったようです。弊社としては、それに応えるお酒、つまり毎日の楽しみとして飽きることなく飲めるお酒、つまり“キレのある辛口”のお酒を造ることを使命と考えていたんですね。
ところが時の流れとともに、日本酒業界では”華やかで味わいのあるお酒”が主流になってきました。弊社もその流れに合わせて、いろいろなお酒を造ったりしたのですが、長年麒麟山を愛してくださっているお客様から見て、そして自分たち自身も麒麟山のお酒のよさというものがわかりづらくなってしまったように感じました。そこで今一度、原点に立ち返ってみようと。

麒麟山酒造の原点であり「顔」でもある、「麒麟山 伝統辛口」。愛称「デンカラ」。
麒麟山酒造の原点であり「顔」でもある、「麒麟山 伝統辛口」(淡麗✕辛口)。愛称「デンカラ」。

―それが、「スッキリした辛口のお酒」なんですね。

齋藤 そうです。ただ、先にもお話ししたとおり、今の潮流とは正反対のお酒です。その方向に舵を切ることは、弊社にとっては大きな挑戦であり、相当な覚悟が必要でした。しかし、弊社のお酒はもともと地域に根づいたお酒です。地元のみなさんに毎日、少しずつでも飲んで、楽しく、くつろいだひとときを過ごしていただきたい。その一心で、迷いを捨て、“スッキリした辛口のお酒造り”に徹することに決めたのです。新ラインナップは、さまざまな角度から、私たちが想う辛口の真髄に迫ったものです。

―新たに酒器を作られたと聞きましたが、ひょっとしてそのタイミングで?

齋藤 そうです。新潟県三条市には、ニッパー型つめ切りの製造で世界にその名を馳せる「諏訪田製作所」さんがあります。すでに高い評価を得ているにもかかわらず、つねに前を向いて、いろいろな挑戦を繰り返していらっしゃるんですね。そうした挑戦の1つとして、弊社とのコラボレーションという形で、ダマスカス鋼という非常に硬い素材を使った酒器をつくってみよう、ということになったのです。ダマスカス鋼というのは2種類以上の鋼材を何層にも重ね、鍛え上げた素材なので、非常に硬くて丈夫。切れ味がいいということで、日本刀にも使われています。ただ、硬いだけに丸みを帯びた形に成型するのはとてもむずかしく、熟練の技術が必要なのだそうです。諏訪田さんは、あえてそこに挑戦しようと。伝統技術を守り、活かしながら、新しいことに挑戦し続ける。そんな諏訪田さんの考え方、姿勢に共感し、意気投合して、麒麟山モデルとして世界初のダマスカス鋼を使ったぐい呑、「SUWADA✕KIRINZAN『器』」を商品化することになったのです。

SUWADA✕KIRINZAN「器」。容量:約75ml、サイズ:直径約65mm ✕高さ35mm 重さ40g。※1点1点手作りのため、サイズ、重量には若干の誤差があります。
SUWADA✕KIRINZAN「器」。
容量:約75ml、サイズ:直径約65mm ✕高さ35mm 重さ40g。
※1点1点手作りのため、サイズ、重量には若干の誤差があります。
裏には「SUWADA KIRINZAN」の刻印が入っています。
裏には「SUWADA KIRINZAN」の刻印が入っています。

―2つの伝統技術と飽くなきチャレンジ精神から生まれた器、ですね。このぐい呑にはどんな特徴があるのですか?

齋藤 ダマスカス鋼は、熱伝導率の低いステンレス系の素材なので、冷たいお酒は冷たく、そして熱くしたお酒は冷めにくいので燗酒にもぴったり。つまり、今日はこの温度帯で飲みたいという温度でお酒を味わうことができます。そして、金属独特の匂いがまったくしないので、お酒の味を邪魔しません。抗菌効果があるので器を衛生的に保つことができますし、硬いので傷がつきにくいという利点もあります。

―器の表面は、モアレ状の模様が独特の雰囲気を持っていますね。

齋藤 ダマスカス鋼は鋼材を何層も重ねたものなので、成形する際にその層が模様となって浮かび上がってくるんです。この器は1つ1つ手づくりですから、器によって模様の出方が違う。したがって、世の中に2つとない、唯一無二の器だということが何より大きな特徴です。

表面の模様は、幾層にも折り重なった素材であるダマスカス鋼を成形することで自然に生まれたもの。美しい!
表面の模様は、幾層にも折り重なった素材であるダマスカス鋼を成形することで自然に生まれたもの。美しい!

―なんてスペシャルな器なのでしょう! 特別なときに特別なお酒を、これでいただきたいですね。

齋藤 いえ、ぜひ、普段遣いしていただきたいのです。この、SUWADAさんとコラボレーションしたぐい呑そのものはスペシャルなものですが、だからこそ普段から、“毎日の暮らしを彩るもの”としてお使いいただけたらうれしいです。

麒麟山のお酒は熱燗、それも高めの温度がおすすめ。「デンカラ」は55℃、こちらの「麒麟山 やわらか」は45℃がいいそう。新潟・村上の名産「鮭の酒びたし」と。
麒麟山のお酒は冷酒でも人気ですが、熱燗、それも高めの温度がおすすめ。
「デンカラ」は55℃、こちらの「麒麟山 やわらか」(まろやか✕淡麗)は45℃がいいそう。
新潟・村上の名産「鮭の酒びたし」と。

―なるほど。丈夫とのことですから長く、愛用できますね。それでは最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか?

齋藤 ここしばらく、日本酒は他のアルコール飲料に押され、苦戦しています。日本酒という、日本古来の飲みものが日本人から遠い存在になってしまっているのは、われわれ酒蔵として悔しいところがあります。なんとか、日本人と日本酒の間の溝を埋めていきたい。日本酒を飲む人の数が少なくなれば、高級志向に、あるいは少し特別な日に飲むお酒を造ったほうがいいのかもしれません。ただ、そうなればそうなるほど、溝は深く大きくなるような気がするんです。弊社としてはやはり、毎日の暮らしの中に受け入れていただけるような、当たり前のお酒を、質の高いものとしてお客様に提供していきたい。今、いちばん厳しい領域での挑戦となりますが、諏訪田さんのように、伝統的な技術を後世に残すためにも、意欲的に新しいことにチャレンジし続ける人たちの存在を励みにして、精進し続けたいと思っています。

―「SUWADA✕KIRINZAN『器』」は、諏訪田製作所と麒麟山酒造の思いの、まさに結晶ですね。熱いお話、ありがとうございました!

SUWADA✕KIRINZAN『器』

「SUWADA✕KIRINZAN『器』」
価格:¥15,000(税込)
店名:麒麟山酒造
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kirinzan.official.ec/items/45557373
オンラインショップ:https://kirinzan.official.ec

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
齋藤俊太郎(麒麟山酒造株式会社 代表取締役社長)

1967年、新潟県阿賀町生まれ。大学卒業後、広告会社勤務を経て、30歳で麒麟山酒造株式会社に入社し、2006年に代表に就任。2009年に新潟県酒造組合青年部(新星会)会長に就任。2015年、にいがた酒の陣実行委員長に就任、日本酒業界で精力的に活動を続けている。

<文・撮影/鈴木裕子 画像協力/麒麟山酒造>

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