能登の梅酒がほんのりと香る洋菓子「YUKIZURI」で、北陸を旅するひとときを

2025/08/07

石川県といえば兼六園。そこで見られる「雪吊り」は、金沢の冬の風物詩です。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、その優雅な情景を閉じ込めた美しいお菓子「YUKIZURI」。北陸の豊かな自然と文化を伝える存在として多くの人々を魅了しています。今回は、この銘菓を製造・販売する株式会社レグレットの代表取締役社長である小田與之彦氏に、その誕生から未来への展望について、取材陣がお話を伺いました。

株式会社レグレット 代表取締役社長の小田與之彦氏

―御社の沿革についてお聞かせください。

小田 弊社の母体は、石川県能登を代表する旅館グループである加賀屋です。今から19年前、加賀屋創業100周年を機に、石川県出身のパティシエ・辻口博啓氏とともに、株式会社レグレットを設立しました。

パティシエの辻口博啓氏。洋菓子の世界大会に日本代表として出場し、数々の優勝経験を持つパティシエ、ショコラティエ。
現在はオーナーシェフとして、「モンサンクレール」、「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」など、
数々のブランドを展開するほか、子どもたちの夢をサポートする活動も長く続けている。
石川県七尾市出身。石川県観光大使。

小田 そして「地元の食材を使い、その魅力をしっかりとお伝えしよう」と開業したのがパティスリー「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」です。現在、一部震災の影響で休業している店舗もありますが、石川県内に6店舗、富山県にも1店舗、合わせて7店舗を展開しています。

金沢市にある「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」。

旬の果実や北陸の素材を用いたスイーツを販売している。

オンラインショップはいつから展開されているのですか?

小田 約10年前です。リアル店舗での展開が中心だったなか、時代の流れに対応する形でスタートしました。

今回ご紹介いただく「YUKIZURI」の開発経緯について聞かせてください。

小田 北陸地方では、雪の重みで木が折れてしまうことが多々あります。そこで、木のてっぺんから地面にかけて縄を放射状に張り、雪から木を守る「雪吊り」というものがあるのですが、特に石川県にある兼六園の雪吊りが、この地方の冬の風物詩として有名です。「YUKIZURI」は、その情景を模したお菓子を開発しようという思いから誕生しました。

どのくらいの期間をかけて開発されたのでしょうか?

小田 構想期間を含めると1年半から2年ほどでしょうか。

こだわった点について教えてください。

小田 「YUKIZURI」は、サブレにパイ生地を重ねたお菓子なのですが、まずサブレには能登の「セイアグリー健康卵」と、米どころ北陸の米粉を使用しています。そのサブレに、アーモンドクリームとチョコレートを薄く敷いてパイを接着させています。この多重構造が「YUKIZURI」の奥深い味わいを生み出しており、お召し上がりいただければそのこだわりを感じていただけると思います。

口にすると、サクサクとした食感が楽しめる「YUKIZURI」。

加賀藩主前田家の家紋がヒントになっていると伺いました。

小田 そうですね。前田家の家紋が「加賀花剣梅鉢紋」という梅の花をかたどったもので、辻口氏はそこからインスピレーションを受け、能登産の梅酒をお菓子に取り入れました。地元の酒造さんの梅酒を粉糖と混ぜ合わせ、シュガーロワイヤルと呼ばれる砂糖の衣を作るのですが、これを仕上げの最後に手作業で一本一本丁寧に塗ることで、縄に雪が積もったような表現と、梅酒の香りが香る上品な味わいを生み出しています。大人のお菓子というイメージがあるかもしれませんが、製造過程でアルコールはほとんど飛んでいますので、お子さまでも安心してお召し上がりいただけます。

繊細な風合いは手塗りならではなのですね。

小田 その通りです。機械化も検討しましたが、あえての不均一さ、一本一本の風合いを出すためには手塗りが不可欠でした。実は「YUKIZURI」はほとんどの工程が手作業で作られているお菓子です。

1つ1つ、手作業で作られている。

現在、何種類の「YUKIZURI」を展開されているのでしょうか?

小田 通年商品が7種類、季節商品が6種類、合わせて13種類を展開しています。辻口氏には「北陸の富山、石川、福井の3県を盛り上げていきたい」という強い思いがあり、それぞれの土地の素材を使った「YUKIZURI」を開発していく構想が生まれました。

例えば、福井の新幹線開業のタイミングで開発した「昆布トリュフ」味は、福井の昆布屋さんとコラボレーションした商品で、チーズとトリュフの風味を合わせた甘じょっぱい味わいが特徴です。北陸は酒どころでもありますので、「酒のつまみにも合うもの」という思いも込めました。

サブレにおぼろ昆布、アーモンドクリームを重ねて、
パイにはチーズとトリュフパウダーをまとわせた「YUKIZURI 昆布トリュフ」(¥2,160円/10本入)。

新商品の構想は他にもありますか?

小田 ありがたいことに、ご要望をたくさんいただいています。最近では富山のお花屋さんと、薔薇を使った「YUKIZURI」を開発しました。また、味噌で有名なマルコメさんからは麹を使った甘酒をご提供いただき、それを「YUKIZURI」に落とし込んだ商品も一部店舗で扱っています。

富山県射水市で作られる「食香バラ」を使用した「YUKIZURI ローズ」(¥2,160円/10本入)。

お土産にぴったりですね。

小田 まさに「YUKIZURI」は、石川県の名刺代わりになるような、「石川に行ってきたよ」「石川から来ましたよ」と胸を張ってお渡しいただけるお土産菓子を作ろう、という思いで開発しました。小分けで配りやすいところもそのためです。

今後の構想や展望についてお聞かせください。

小田 これからも、既存製品のクオリティを高めていけたらと思っています。また、いたずらに新しい味の横展開をするのではなく、「YUKIZURI」というスタンダードな商品をしっかり訴求していくことにも注力したいと考えています。最近は物価高騰の波もあり、これまでの販売形態だけではなかなか売り上げを伸ばしていけない状況です。そこで2年ほど前からは、お客様からのご要望に応えて、10本入りに加えて6本入りの商品の販売も始めました。

6本入りの箱は、平たい箱ではなく筒状ですか?

小田 筒状のものも展開していましたが、お土産店様より商品を積み重ねた方が売りやすいというお声などもあり、今は薄いスクエアタイプの箱を計画しているところです。

「YUKIZURI」6本入り(¥1,026)。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。「YUKIZURI」がこれからも多くの方に愛される、北陸を代表する銘菓であり続けることを期待しています。

「YUKIZURI」(10本入り)
価格:¥1,620(税込)
店名:LE MUSEE DE H オンラインショップ
電話:076-255-0111(10:00〜17:00)
定休日:土曜、日曜、祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://yukizuri.com/yukizuri/19/
オンラインショップ:https://yukizuri.com

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

小田與之彦(株式会社レグレット 代表取締役)
1968年、石川県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。丸紅、シェラトン・ワイキキ・リゾートホテルでの勤務を経て、コーネル大学大学院ホテル経営学部に留学。99年加賀屋入社。14年に社長に就任し、22年に退職した。2006年4月に株式会社レグレットを設立。現職のほか、現在は福井県のあわら温泉にある旅館「つるや」の経営や、宿泊施設などをクライアントとした事業をする株式会社リバイタライザーズの代表取締役社長を務める。日本青年会議所会頭などを歴任した。

<文/鹿田吏子 MC/田中香花 画像協力/レグレット>

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