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有田みかんのおいしさを余すことなく味わう「お試しみかんセット」

2025/06/26

今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、みかんの中でも和歌山県産有田みかんだけを使い、そのおいしさを最大限に生かすべく作られた加工品の数々。出荷組合として発足した団体が6次産業化した背景や意義を、株式会社早和果樹園 代表取締役社長の秋竹俊伸氏に、取材陣が伺いました。

株式会社早和果樹園 代表取締役社長の秋竹俊伸氏

株式会社早和果樹園 代表取締役社長の秋竹俊伸氏

秋竹社長の経歴からお聞かせください。

秋竹 有田みかん農家「秋竹農園」に、第3子の長男として生まれました。子どもの頃は、みかん農家はみんな長男が継ぐものという風潮でしたが、みかんの価格が著しく下落し、家業を継がず就職する世代も出てきました。幸い、うちは父がある程度の規模を保ってくれていたので、私は高校卒業後、静岡県にある農林水産省の果樹園芸試験場(現・農研機構 果樹茶業研究部門 カンキツ研究興津拠点)で2年間を過ごした後の1995年、家業に就農しました。

就農後約10年は、みかんづくりに没頭。専業として、家業を守らないといけませんから。その傍らで、1979年にできた「早和共撰組合」の仕事を少しずつ手伝うようになりました。「早和共撰組合」は、いわばみかんの共同出荷組合。みかんづくりは戸別に行いながら、それらを集める倉庫や運ぶトラックを共同で借りて出荷する組合を、父の代で7軒のみかん農家が立ち上げたのです。

2000年に法人化した現・株式会社早和果樹園の総務部長、専務を経て現職に就いたのが2017年です。

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「早和共撰組合」として発足。

早和果樹園の歩みは?

秋竹 2000年に有限会社早和果樹園を設立し、5年後に株式会社早和果樹園へと組織変更。初代社長は、メンバーの投票により父が就任することになりました。組合を法人化したのは、7軒中4軒の後継者が、同時期に戻ってきたことがきっかけです。私を含めた4人は気心の知れた近所の同世代で、有田みかんへの想いを同じくしていたように思います。

加工品の製造販売を始めたのは2004年。当時私はまだみかんづくりを専業にしていましたから、父たちが何かやっているな、という感覚でした(笑)。2001~2003年、みかんの価格が下落した上、2003年の異常気象で、果皮に傷が入って出荷できないみかんが山積みになったのです。過熟で非常に甘いのに出荷できないみかんを、なんとか廃棄から守りたいと、加工を思い立ったそうです。

第1号は、現在売上No.1であるストレートジュース「飲むみかん」の上級品「味こいしぼり(現)」でした。ところが、ジュースはできても、農家なので売り方がわかりません。みかんの出荷先である市場に聞いてみるも、加工品のことはそちらもわからない……。役所に頼ったり、和歌山のアンテナショップに置いてもらったりと、手探りでできることを地道に重ねたそうです。そうするうちに、土産物屋さんでの販売に手ごたえを感じ、試飲販売をするようになりました。私も、当時はまだ専業農家でしたが、土日は販売に駆り出されていました。

―秋竹社長の主業務が、秋竹農園から早和果樹園へと変わられた経緯は?

秋竹 加工事業が軌道に乗り始めたころ、当時の社長(現会長)から我々4人の後継者に「ぼちぼち会社にフルタイムで入ってくれへんか」という話がきました。すでに母たちも加工事業に駆り出されており、残る我々4人がそれぞれの自園地を1人で管理している状況で、加工事業のみならず、そちらの管理も限界を迎えていました。とはいえ、声がかかったタイミングは高値が予想される年回り。「もう1年頑張ろう」と、各々シーズンを越えて、翌年からフルタイムで早和果樹園に関わることとなりました。

4人はそれぞれ配属の希望を聞いてもらい、私は総務部長として長靴作業からデスクワークへと転身。元の園地はどうなったかといえば、会社に集められる園地をそれぞれ出し合って、会社で共同管理する方針になりました。とはいえ、父や祖父が頑張っている農園もあり、財産となる園地をすべて会社に出すのをためらう家もありましたので、あくまで任意で園地を集める格好となりました。

ちなみに我が家は、労働力のほとんどが会社所属になりましたので、ほとんどの園地を会社に預けました。だってもう、1人でするのは大変でしたから……。みんなそれぞれに葛藤があったでしょうね(笑)。

―代表的な加工品をひと通り楽しめるのが「お試しみかんセット」ですね。

秋竹 もっとも売れているジュース「飲むみかん」、その果汁を極限までたっぷり使ったゼリー「濃厚みかんジュレ」、まるでジュースを飲んでいるかのように柔らかい「もっちり有田みかんゼリー」、そして独特の食感が特徴的な「おふくろスムージー(みかん)」の4種類がセットになっています。

―それぞれの特徴や製法上のこだわりをお聞かせください。

秋竹 「飲むみかん」は、3種類あるジュースの中でもスタンダードなタイプで、全商品の中で一番売れています。最も特徴的なのはジュースの搾り方。うちはまず、1個1個手作業で皮をむきます。そうすることで、皮の苦みや、リモネンという精油成分の香りが気にならなくなります。そして、薄皮ごと搾る「チョッパー・パルパー方式」を採用。繊維をすりつぶし漉しながら搾ることで、みかんを食べているかのような味わいになります。ほんのりとろみがあるのも特徴です。

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濃縮還元では味わえない新鮮なみかんの風味を楽しめるストレート果汁。

秋竹 上位商品として、同じ製法で、糖度11~12程度の有田みかんを搾った「味まろしぼり」、糖度12度以上の濃いみかんでできた「味こいしぼり」があります。「飲むみかん」も、11月後半以降に収穫される完熟の有田みかんのみを使いますから、十分に甘いです。すっきりキレがよく、ほんのり甘みがただよう飲みやすさがあります。国産みかんのストレートジュース、他にはあまりないのではないでしょうか。濃縮還元とは違う、有田みかんの風味や香りを感じられるジュースだと自負しています。

「濃厚ジュレ」は、有田みかんの濃厚な味わいを楽しめるよう、水を一切加えず、極限まで果汁率を高めています。いろいろと試した結果、果汁は91%。洋酒、PH調整、ビタミンCといった余計なものを加えず、寒天とこんにゃく粉だけで固めています。

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極限まで果汁率を上げた濃厚なみかんゼリー。シャーベットにしても美味。

秋竹 反対に、果汁を抑えることで比較的安価で食べやすいものをと作ったのが「もっちり有田みかんゼリー」です。フルフルしながらも、みかん特有のもっちりさもある食感を目指し、有田みかんの風味も十分に感じられるよう、果汁は50%。みかんらしさと柔らかい食感をお楽しみいただけます。

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食べるみかんジュースとでもいえる「みかん感」たっぷりのフルフルゼリー。

秋竹 そして、最近できた商品が「おふくろスムージー」。スパウトパウチ(容器)をよく目にするようになったので、手軽に手に取ってもらえるような、けれど早和果樹園らしさのある商品をと考案しました。先述したように、搾汁の方法が特徴的なので、実は搾汁残渣率が高く、約40%あるのです。このうち5~10%程度を占める薄皮を加えて、飲むタイプのゼリー飲料にしてみたところ、食感がとても良くなりました。すべて一緒に潰しているのではなく、一度薄皮、果汁、果肉に分けて、それぞれを加工した後、バランス良く混ぜるという手間のかかる工程を踏んでいます。食物繊維たっぷり、冷蔵でも、冷凍でも、半解凍でもそれぞれに楽しんでいただけると思います。

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独特の食感と高い栄養価。
おふくろ(母)と果肉が詰まった袋(薄皮)をかけたネーミング。

商品展開のポイントをお聞かせください。

秋竹 現在、サイズ違い等も含めると40種類程度あるでしょうか。会長の想いを引き継いで、すべて自社ブランドの商品開発にこだわっています。その要はもちろん、有田みかんのおいしさを最大限に生かすこと、フードロスを減らすこと、そしてみかんの収穫期以外も「有田みかん」の名で流通できることです。みかんは12月ごろ出荷したら終わりなので、認知度的にダメージが大きいのですが、加工品を年中流通させることによって「有田みかん」の名をアピールできます。

早和果樹園には、生産部と加工部があり、生産部では生で食べていただく用のみかんを作っています。加工部で使うのは、市場では安値になってしまう傷みかん。商品の流通量が増えてきて、うちの生産部で出る傷みかんだけでは賄いきれなくなってきましたが、その分、他の共同出荷場からの傷みかんも引き受けるようになりました。

試飲、試食販売からのスタートでお客様と直接意見交換する場がたくさんありますから、流通担当者のフィルターを通すことなく、お客様目線を大事にできているのではないでしょうか。土産物店で販売する中で他の商品に触れるチャンスも多く、ヒントをもらうこともあります。

―今後の展望をお聞かせください。

秋竹 今は投資の時期ととらえています。認知を増やすことを目的に、BtoBに力を入れていろいろな店舗に商品を置いてもらうことを進めつつ、2025年の3月には直営店をオープンしました。有田みかんをはじめ、和歌山の柑橘を使ったスイーツを提供するカフェ&ショップ。ジュースやパフェにみかんパンなど、様々な「みかん」商品をお楽しみいただける施設です。これまでネットを中心に展開してきた加工品を、リアルに体感いただける場所として、ネットとリアルの融合がうまくいけばいいなと思っています。

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旬の柑橘類(9月~翌4月)や各種スイーツ、加工品の購入ができる直営店「果汁と果実」。

秋竹 国産みかんは、実はどんどん減っています。1995年は137万8,000tだった収穫量が、2024年は55万9,600tに。その中で和歌山、中でも有田は日本の13〜14%ほどと、集積しています。そんなみかんの大産地として、みかん生産の規模拡大と価値向上を通じた産地貢献を使命に感じています。思いがけず6次産業を手掛けることになりましたが、産地が守られる産業を作るべく、今後も取り組んでいきたいと思っています。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

お試しみかんセット

「お試しみかんセット」
(飲むみかん 180ml×2、果樹園の濃厚みかんジュレ 120g×2、おふくろスムージー(みかん) 170g×2、もっちり有田みかんゼリー 4個入×1)
価格:¥3,980(税込)
店名:紀州有田みかん-早和果樹園【公式通販サイト】
電話:0120-043-052(平日 9:00〜18:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://sowakajuen.com/c/mikan-gift/items_023-001
オンラインショップ:https://sowakajuen.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

秋竹俊伸(株式会社早和果樹園 代表取締役社長)
1975年和歌山県生まれ。高校卒業後、農水省果樹試験場を経て実家のみかん農家に就農。2000年、所属する組合の法人化に伴い同社に創業メンバーとして参画。2009年、加工事業の成長に伴い農業現場からデスクワークに。総務部長、専務を経て2017年代表取締役社長に就任。2022年同志社大学MBA取得。「みかんの価値を上げる」を指針とし、加工を通じて有田みかん産業の持続発展を目指す。有田市地域農業士。

<文/植松由紀子 MC/田中香花 画像協力/早和果樹園>

 

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