やさしい甘さと酸っぱさに心なごむ。和歌山・みなべ町「ぷらむ工房」の梅干し

2025/05/19

今回のテーマは、梅干し。梅干しはごはんの友やお茶うけとして親しまれるだけでなく、料理の味を豊かにする調味料としても大活躍します。名産地和歌山のなかでも、編集長アッキーが注目したのは、みなべ町にあり、その名もユニークな「わたしの家は梅農家 ぷらむ工房」。リピーター続出のはちみつ梅や、おにぎり用の梅干しを製造販売する運営元、株式会社岩本食品の代表取締役社長、岩本智良(としかず)氏に、商品の特徴やおいしい食べ方についてスタッフがお話を伺いました。

株式会社岩本食品 代表取締役社長の岩本智良氏

―和歌山といえば梅が有名ですね。

岩本 南高梅が知られていますが、昔はやぶ梅だけで、梅の実も貧弱なものでした。みなべ町周辺は、海と山に挟まれて平地が少なく米が作れず、年貢が納められないので、丘陵地で梅を作ろうということになったそうです。弊社は創業から約120年、当初は梅づくりの傍ら鍛冶屋をしており、その後、貧しく幼少期から馬を引いて紀州備長炭など特産品を運ぶ仕事をしていた曾祖父、つまり先々々代が、鍛冶屋を継いた後、梅屋で生計を立て始めた頃、ある時「馬を買え~」と夢のお告げを聞き、その商売がうまくいったことで、梅の事業も成り立ってきたのです。

―岩本社長は何代目ですか?

岩本 2017年に4代目社長に就任しました。結婚を機に入社し、千葉や東京で販売を経験した後、和歌山工場でも販売の勉強をしました。親戚は梅干し屋ばかりですから、少し年上の親戚が社長に就任するのを見ながら、自分もいつごろ社長になるか、35、6歳かなと、おおまかに年齢で考えていましたので、目標通り36歳の時に社長を務めることになりました。

和歌山県みなべ町は、町全体が梅畑ともいえるほどの梅の名産地。

―オンラインでの販売はいつから?

岩本 私の入社以前、2000年頃には、ブランドサイトにカート機能を付けた形のものが始まっていました。専務である義母は新しいことに取り組むのが早く、早すぎるほどなのですが(笑)。工場見学・体験もずいぶん前から始めていて、このあたりでは一番古いくらいです。バスツアーを大々的に受け入れたのも1985年からで、早いんです。

―オンラインでも人気の「はちみつ梅」について教えてください。

岩本 「はちみつ梅」は弊社の看板商品で、ここに描かれているのは、じつは梅農家の4人姉妹の一人、私の妻です。妻が幼い頃に絵本作家の方が梅農家のお話を郷土絵本にしたいということで、取材に来られ、貼り絵の絵本を作られたので、絵を商品の看板にさせていただいたのです。

―すてきな作品ですね。

岩本 中身は、どの梅屋さんより甘い梅干しを作ったそうです。開発当時は、減塩が流行り始めた頃で、減塩で食べやすい商品が出回りつつあったのですが、弊社は甘くてもできるだけ自然な味わいでという考えから、体にやさしくて安心安全というものを目指しました。30年以上前のことです。甘くておいしいと喜んでいただき、リピーターも多くて当店の人気ナンバー1です。

社長の妻が幼い頃、梅農家の1年間を描いた絵本が製作された。取材を受けモデルを務めた絵をパッケージに使用。

―パッケージもかわいいだけでなくエコで。

岩本 発売当時は、紙パックを使う店はなかったのですが、弊社は義母の意向で早くからエコを意識し、中袋だけプラスチックですが、外装は紙です。オンラインのほか、和歌山県内の土産品店で販売しています。

外装は紙、中袋だけプラスチック製にしたエコタイプの梅干し。

―おすすめの食べ方は?

岩本 おすすめはとってもたくさんあるんですよ(笑) 一番簡単なのは焼く。焼き梅です。甘い梅のほうが、焼くとおいしいんです。いつだったか焼き梅ダイエットというのがありましたが、加熱するとダイエット成分が出ます。地元でバーベキューをする時は、肉の横で焼いて、梅干しをタレに入れて……。脂が中和されておいしいですよ。

それから、ピザトーストやホットサンドなど、チーズととても合います。甘じょっぱさ、すっぱさがいいんです。食パンにピザソース、チーズ、梅干しの実だけをはさんで焼くと、おいしくてたまりません。弊社が営むイタリアンレストランでも使っていて、ピザやドリア、グラタン、乳製品に合います。クリームチーズに梅干しをトッピングするだけでもいい。梅干しのクエン酸によってカルシウムの吸収もよくなるといわれます。

―「種なしカリッとトロッと おにぎり梅干120g入」はどのような商品ですか?

岩本 もともと「おにぎり梅干」という商品を2014年に発売しました。これは同年にみなべ町で、「梅干しでおにぎり条例」が制定され、弊社では粒を細かくし種を抜いて、おにぎりに入れやすいサイズ、形状、味の商品を開発しました。数年たって、南高梅のカリカリ梅を加えて作ったのがこの商品です。南高梅は完熟しやすく、やわらかくてジューシー。梅干には適しているのですが、カリカリとした梅には合っていない。でも、とろとろとカリカリ、ダブル食感を作れないだろうかと試作を重ねて、おにぎりに合うサイズ、形、味に仕上げたのです。

「種なしカリッとトロッと おにぎり梅干120g入」。思わず手に取りたくなるパッケージ。

品名のとおり、カリカリ、とろとろ、2つの食感が楽しめる。おにぎりが豪華な味わいに。

―おにぎり以外にどんな食べ方を?

岩本 お茶漬けやごはんのトッピング、とくにしらす丼のトッピングにすると最高においしいです。

―こちらもパッケージがかわいいですね。

岩本 地元のデザイナーさんに作ってもらいました。デザイナーさんとは、カタログ、パッケージ作りをともに歩んできたので、弊社のことを理解し、商品に合った、これいいなと思うデザインを作ってくださいます。方向性を考えているのは、弊社の女性陣ですね。

―商品の種類はどのくらいですか?

岩本 量の違いまで合わせると500種類を超えます。種類だけを数えると100くらい。アイデアは、ふだんの食生活からお客さまのニーズがあるものを考えていくところから生まれます。対面販売も多いので、お客さまの声を直接お聞きすることもできますし。お客さまからは、おたくの梅干ししか食べられないとよく言っていただきます。浮気は絶対しないと言ってくださるとうれしいですね。

―大切にされていることは?

岩本 王道を行くということ。味を大切にし嘘をつかないこと。正直な商売をしたいと思います。あとは楽しく仕事をすること。自分たちがワクワクしていないと、お客さまに伝わってしまいます。常に楽しいことを考えながら、喜ばれる商品を作っていきたいですね。

体にやさしく安心安全を心がけて作る。「梅干しはこれでないと」というファンも多い。

―今後の展望は?

岩本 町全体、山全体が梅畑という町ですが、梅の産業も少子高齢化で梅農家は後継者不足に悩んでいます。このままでは耕作放棄地が増え、生産も減ります。でも、梅で成り立っている町ですから、梅産業を継続的に発展させていかなければいけない。より安心安全に、時代のニーズにマッチした商品を作って盛り上げたいですし、海外も視野に入れた商品づくりをしていく可能性を探求しながら製造したいんです。

また大きな夢があって、一般には日本にあるものを海外に出していきますが、私は、海外のその土地に合うものを梅で作ってみたい。世界のどこかで、大量でなくていいので、ヒットするような。海外でもふつうに梅が食べられるようになることを願っています。

―熱意が伝わってきます。貴重なお話をありがとうございました。

「わたしの家は梅農家 はちみつ梅 エコパック」(250g入)
価格:¥1,250(税込)
店名:わたしの家は梅農家 ぷらむ工房
電話:0120-39-2406 (9:00~17:00 土日・祝日・お盆休み・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://www.plumkoubou.co.jp/fs/plum/0820
オンラインショップURL:
https://www.plumkoubou.co.jp

「種なしカリッとトロッと おにぎり梅干」(120g入)
価格:¥1,080(税込)
店名:わたしの家は梅農家 ぷらむ工房
電話:0120-39-2406 (9:00~17:00 土日・祝日・お盆休み・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:
https://www.plumkoubou.co.jp/fs/plum/4223
オンラインショップURL:
https://www.plumkoubou.co.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

岩本智良(株式会社岩本食品 代表取締役社長)
1981年和歌山県那智勝浦町生まれ。結婚を機に2004年に株式会社岩本食品入社後、千葉店、東京店の店長を経て、みなべ町の本社に戻り、2017年に4代目となる代表取締役社長就任、現在に至る。梅産業継続発展のため、新たな自社商品開発や、さまざまな地域活動にも積極的に取り組んでいる。

<文/大喜多明子 MC/田中香花 画像協力/岩本食品>

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