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優しく繊細な詩の世界を箔押し印刷の美しさで表現した文具シリーズ「ROKKAKU×みすゞうた」

2023/11/09

金箔、銀箔などの箔を紙に転写する加工技術「箔押し」と、幻の童謡詩人と呼ばれた金子みすゞの世界観が出会いました。京都の老舗から箔押しの技術を受け継ぎ後世へとつなぐのは、日本ならではのコミュニケーションツールの歴史を紡いできた会社でした。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったフタバ株式会社 代表取締役の市川隆史氏に、取材陣が伺いました。

フタバ株式会社 代表取締役の市川隆史氏
フタバ株式会社 代表取締役の市川隆史氏

―「年賀状はフタバ」がキャッチコピー。創業からの歩みをお聞かせください。

市川 1972年に事務用ゴム印製造を始めました。同時に活字を利用して活版印刷を行ったり、年末になると年賀状を印刷したりもしていました。当時の年賀状印刷は、差出人まで活字で印刷するオールインワンの商品で、1個1個活字を拾うのに時間もかかり、仕事はあっても多くを請け負えないものでした。

あるとき、お客様である街の文具店さんから、差出人のところはフタバさんで作ってもらった住所印を押せばよいので、本文と絵柄のデザイン部分だけ刷ってほしいと言われました。思いがけない発想で、確かにそうだと気が付いたんですね。当時の印刷ロットは100枚単位で、ある程度の枚数がないと高額になりますが、何人かで分け合えばお安く上がりますよね。そんなきっかけをいただいて、半既製品のような年賀状を袋詰めして販売したのが年賀状事業の本格的なスタートになりました。

はじめは赤と黒2色のシンプルな絵柄でしたが、デザインが生命線であるとして、デザインに注力。デザインのバリエーションを増やし、袋詰めも3枚や5枚も選べるようにしました。すると、これまでにない商品、あるものから好みのデザインを選べる手軽さも喜ばれて、全国展開する大手の流通業者さんが拡販してくださいました。

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年賀状デザインに定評のあるフタバに「箔押し」技術が登場。

―社長のご入社は?

市川 私は全く違う業界にいたのですが、一度、東京新宿にある百貨店の1階で、フタバの年賀状臨時販売を手伝ったことがあります。12月も下旬の約10日間、ワゴン1台での販売でしたが、飛ぶように売れたんですよね。売れるというのはやはり商売として面白い。もっと価値を高めればさらに広まるんじゃないかと、可能性を感じてこの会社に飛び込みました。

―年賀状に商材としての魅力を感じて転職を?

市川 1985年の入社ですが、当時はちょうど団塊の世代が40代の働き盛り。年賀状を大切にする世代ですから、これからもっと伸びると感じました。名入れ印刷サービスを開始し、生産工程管理システムを構築・刷新、印刷委託会社のセンター化、ネットワーク化などを重ね、生産性の向上に努めてきました。年賀はがきが一番流通していたのは1998~2003年ごろですから、ちょうどその流れとともに当社の成長もあったかと思います。

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年賀市場とともに成長。

―逆に年賀状の増大に貢献された面もあるのでは?

市川 プロ野球12球団とJリーグ16チームのマスコットキャラクターを年賀状デザインに採用するなど年賀状に付加価値をという想いは強くありました。戌年に、年賀状としては初めて、ビーグル犬をモデルにしたアメリカの人気キャラクターを使ったのもフタバです。

当時は今ほどの販売力がなく、双葉ゴム印株式会社という社名でしたから、版元であるアメリカの会社に許可を取るのは本当に苦労しました。とにかく熱意を伝え、支給されるキャラクターに合わせてデザインを起こしてというやり取りを繰り返し、最終的な許可が下りたのは12月に入ってからでした。それから突貫印刷して店頭に並べましたが、爆発的に売れましたね。

それからも、いろいろなキャラクターや新しい作家さんのデザインなども取り入れた年賀状を作っています。フタバの強みはデザイン性とそのバリエーション。年間3,000柄もの種類をラインナップしているんですよ。

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デザインにこだわり多くのバリエーションを展開する年賀状。

―ご入社から年賀状とともに歩まれてきた市川社長にとっての年賀状とは?

市川 年賀状そのものの歴史は非常に古く、起源は平安時代ともいわれています。ただ、実際に今のような形になったのは明治に入り、郵便システムが整ってからですね。いわゆる手紙ではなく、官製はがきが登場して手軽さも手伝って広まりました。

戦争で一時は途絶え、郵便システムそのものも滞りましたが、終戦後、安否確認のような形で年賀状が使われたようです。せっかくお正月にやり取りするものだから、くじをつけたらもっと盛り上がるんじゃないか?と、一民間人である林さんという人の提案で、現在の「お年玉つき年賀はがき」ができたと聞いています。

そういう歴史がある年賀状。1年の始まりに、感謝の気持ちや今年の意気込みなどを伝える、とても意味のあるものではないでしょうか。ただ用件を伝えるものではなく、想いをちょっと乗せるもの。相手の顔を思い浮かべながら一言添えるこの文化を、私はとてもいい習慣だと思っています。

年賀状デザインを作る側の立場で言えば、幼児から年配の方まで全世代が使われるものなので、いろいろな世代の方が、それぞれに自分らしい年賀状を選べることを大切にしています。デザインのバリエーションを広げることはもちろん、儀礼的で終わることなく、送る人が、送られる人への気持ちを一言添えられる、半製品を目指したデザインを心がけています。

―そのデザインに、「箔押し」という武器が加わったのですね。

市川 京都で100年以上続く紙製品の会社さんから声をかけていただいて、「ROKKAKU」ブランドを譲り受けました。箔押しの技術が年賀状という媒体なら継承されるのではないかと期待していただいたようです。私としても、フタバの考える年賀状の世界観は、ROKKAKUの雅が加わることでさらに広がるのではないかと感じました。

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ロゴとともに「ROKKAKU」ブランドを継承。

―「ROKKAKU」ブランドを簡単にご説明ください。

市川 職人の箔押し技術をオリジナルデザインに落とし込んだペーパーアイテムのブランドです。ポチ袋やレターセット、栞などに代表されます。

ブランドの譲渡を受けまずは年賀状に落とし込んでみたところ、やはり箔押しの高級感や、京都で100年以上続いてきた技術のすばらしさに感銘を受けました。年賀状に使う技術の1つではなく、「ROKKAKU」ブランドとして商品を開発し、育てていこうと、フタバなりにコンセプトを固めました。彩、貴、和、継、匠、箔という6つのコンセプトと、箔押し技術、素材、デザインという3つのこだわりです。

箔押しを全面的に使うというより、ワンポイントとして効果的に使って、商品に奥行きを出すイメージです。

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印刷物に彩やイメージの広がりを添える箔押し技術。

―「みすゞうた」シリーズ誕生のきっかけは?

市川 東京で開かれる国際見本市・展示会に、フタバとしてでなく「ROKKAKU」として出展した際に、繊維商社である田村駒さんから声がかかりました。詩人 金子みすゞさんの世界観をオリジナルデザインに落とし込み、「みすゞうた」ブランドとして服飾雑貨などに展開する会社です。

箔押し技術で、デザイン性を際立たせ詩の世界に広がりを持たせることを目的にコラボレーションすることとなりました。先方が起こすデザインに対し、どう箔押しを盛り込むかをフタバのデザインチームのほうで提案をおこないました。

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箔押しを控えめに効果的に使うことで作品のイメージが際立つ。

―デザインチームはどのようなスタンスで取り組まれましたか?

市川 金子みすゞという詩人は、若くして亡くなり一時作品は散逸。「幻の童謡詩人」とされましたが、1980年代に再発見、近年再び評価を受けています。大正時代において多様性を認め、自然の風景をやさしく表現する作品を知れば知るほど、その魅力に引き込まれています。

箔にもいろいろな種類があるので、どこにどのように合わせたらよいか、見た目だけでなく手触りも大切にしながら、かなりの熱意をもって取り組んでいます。

「ROKKAKU」こだわりの1つでもある素材選びも重要だと考えていて、手触りや温かみなど素材の持つ力に、デザインと箔押し技術が組み合わさって完成しています。

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ノートはA5サイズ192ページ。
無線綴じで開きが良く、高級感のある仕上がり。

―現在の商品展開は?

市川 作品は「私と小鳥と鈴と」「大漁」「金平糖の夢」「星とたんぽぽ」「郵便局の椿」の5作品、アイテムはポストカード、しおり、ポチ袋、マスキングテープ、ノートの5アイテムです。

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5作品5アイテムで展開。
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それぞれに詩の記載があり理解が深まる。

―2023年春の発売開始からお客様の反応はいかがですか?

市川 こだわった店づくりをされている文具店や雑貨店などに置いていただいていますが、評判は上々です。日常的に使うものではありませんし、必需品でもありませんが、この世界観を好む一定層に確実に受け入れられています。

自分用はもちろん、贈り物として使っていただくことも多いようです。あの人に使ってほしいとノートをプレゼントしたり、少し気持ちを伝えたくてカードに一言添えたり、感謝の気持ちとともにお金を入れたり。これはまさに、年賀状と同じなんですよね。相手を思って想いを乗せるアイテムであるというところが。

年賀状も、このシリーズも、人が人へ気持ちを伝えるお手伝いができていると思うと感慨深いです。

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お金を入れるだけの物ではなく、心を伝えるアイテムとして。

―今後の展開は?

市川 年賀状事業一筋でやってきましたが、そうはいかない時代になってきました。しかし、長く年賀状を通じて皆さまの想いを届けるお手伝いをしてきたからこそ、「ROKKAKU」との出会いがあったのだと思っています。

2022年に創業50周年を迎えたのを機に、NEXT50プロジェクトを立ち上げました。社員とともにフタバの理念を再定義し共有するものです。「想いを彩り、心をつないでいく。」をミッションに、目指す未来は「笑顔あふれ、心あたたまる世の中へ」。これからの50年、ビジョンに向かってフタバはどんな会社でどのようなものを提供していくのか、社員全員で確認しました。

年賀状事業も「ROKKAKU」ブランドも、数やボリュームという指標でなく発展させていきたいですね。心を繋ぐお手伝いができる商品づくりとでもいいましょうか。「みすゞうた」とのコラボレーションはそれを実現した大きな喜びになりました。今後も、自社開発もコラボレーションも挑戦しながら新しい世界を生み出していきたいと思います。

―素晴らしいお話をありがとうございました!

ROKKAKU×みすゞうた

「ROKKAKU×みすゞうた」
価格:¥275~(税込)
店名:フタバオンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/futabaonlineshop/c/0000000187/
オンラインショップ:https://www.rakuten.ne.jp/gold/futabaonlineshop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
市川隆史(フタバ株式会社 代表取締役)

1955年岐阜市生まれ。大手自動車メーカー勤務を経て、1985年にフタバ株式会社入社。当時スタートしたばかりの年賀状事業の拡販に奮闘。2013年よりポチ袋の企画販売事業へ参入。2020年に代表取締役就任。 2021年に京都で100年以上の歴史があるサクライカードより箔押しペーパーアイテムブランド「ROKKAKU」を承継。 「想いを彩り、心をつないでいく。」という理念に基づき、事業展開を行なっている。

<取材・文/植松由紀子 画像協力/フタバ>

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