広島県呉市にある株式会社三宅本店は、江戸時代から続く酒蔵。日本酒で有名ですが、今回は「クラフトジン瀬戸内 檸檬」が編集長アッキーの目に留まりました。瀬戸内のレモンが香るジンは、さまざまなコンクールで金賞を受賞するなど、プロにも評価されています。しかし、なぜ酒蔵がジンを開発したのでしょうか。今回は株式会社三宅本店の代表取締役 三宅清嗣氏に取材陣が伺いました。

江戸時代から続く酒蔵が作った、瀬戸内のレモンが香る「クラフトジン瀬戸内 檸檬」
2024/06/18

株式会社三宅本店 代表取締役の三宅清嗣氏
―江戸時代から続く会社だと伺いました。
三宅 弊社は1856年(安政3年)創業です。なぜ創業したのか、はっきりわかっていません。当時は、焼酎とみりんと白酒を造っていたようです。1877年の西南戦争の頃に、九州に売りにいった記録が残っています。
新しいことに取り組む姿勢が、代々続いています。やらずにどうこういわず、まずやってみようという姿勢です。
例えば、昭和10年代(1935年~1944年)に中国にも酒造会社を作りました。当時、かなりのチャレンジだったと思います。
また、第二次世界大戦では、1945年7月にあった呉市への大空襲で酒蔵が全部焼けてしまいました。「この世界の片隅に」という映画の舞台になった場所です。その後、敗戦して中国の会社もなくなりました。
まったくの0になったところから、中国から帰ってきた人を含めて、従業員を養うために、新事業を行いました。林業をはじめたり製氷会社をはじめたり、食品を作ったりしていたようです。
―6代目でいらっしゃいますね。
三宅 先代は父でしたが、継いでほしいとはいわれませんでした。大学生のときに進路を考えて、実家を継がなきゃいけないだろうなと思うようになりました。
大学卒業後は、山梨県のワインメーカーで1年間修行しました。ワインメーカーに就職したのは、酒造りの中でもワインが基礎的だからです。酒造りの基礎を学びながら、ワインの製造、成分や水の分析を行っていました。そして、1982年10月に弊社に入社しました。

光を当てると、美しいグラデーションが浮かび上がるボトル。
―日本酒の酒蔵が、ジンの開発に取り組まれたのは?
三宅 新型コロナウイルス感染症の問題がきっかけです。緊急事態宣言や飲食店での酒類提供の禁止などによって外でお酒が飲めなくなり、そこで強く危機感を持ちました。
それまで弊社は、扱う商品の97%が日本酒でした。外でお酒を飲めない環境になったことで、お家で楽しめるお酒を造ろうと、ジン作りをはじめたのです。日本酒以外にも、柱になる商品を作りたいという狙いもありました。
―ジンの開発は順調に進みましたか?
三宅 いつ緊急事態宣言が解かれるのかわからず、余裕はなかったです。最初は普通のジンを発案していましたが、競合他社と似たジンを作っても面白くないし売れないのでは、という話になりました。
海外には果物を使ったジンがありますが、当時日本にはあまりない印象でした。そんな中、地元の名産品である広島・瀬戸内のレモンを使った方が、広島のメーカーとしての特徴が出せると思いました。
また、レモンとアルコールのみでは、レモンウォッカとの違いが不明瞭です。そこで緑茶をジンの材料の一部に使用したところ、レモンの味のあとにお茶の甘みが感じられるようになりました。
レモンや緑茶を、10g単位でバランスを調整するなど試行錯誤を重ね、構想から半年後に「クラフトジン瀬戸内 檸檬」は完成したのです。
なお、このジンは白く濁ることがあります。濁るのはよくないイメージがありますが、ふんだんに素材を使っていることが原因です。レモンのオイルが水と反応して、品温が下がると白くなります。

デザイン性の高いボトルは部屋のインテリアにもおすすめ。
―ボトルがとてもきれいですね。
三宅 信念で「ボンベイ・サファイア」というきれいな青色のジンに負けないデザインを作ろうと思いました。また、単色は他社にあったので、グラデーションにしました。
緑から黄色へレモンの果実が変化する様子と、島や海そして夕日など瀬戸内の自然をイメージしています。
―さまざまな賞も受賞されたとか。
三宅 「フェミナリーズ世界ワインコンクール 日本産蒸留酒部門」で、2022・2023・2024年と3年連続金賞を受賞しました。世界中からさまざまなジャンルのお酒が、5,000品近く出品される、審査員が女性のみという大きなコンクールです。
金賞をいただいてとても嬉しかったです。ほかにないフレーバーと評価していただきました。
また「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)洋酒部門」も、2022・2023・2024年と3年連続金賞を受賞しました。こちらの方が同ジャンルの出品数が多いので、とても自信になりました。

アルコール度数47℃。そのまま飲むと、レモンの香りとアルコールが強く感じられる。
炭酸水を混ぜると上品なレモンサワーになった。ハチミツを混ぜるのもおすすめ。
―おすすめの飲み方を教えてください。
三宅 炭酸水で割ると、無糖の爽やかなレモンサワーになります。飲むと口がすっきりするので、揚げ物に合うのは言うまでもなく、食中酒としても抜群だと思います。アルコールが47度なので、ジン1対ソーダ4で割るのがおすすめです。
―今後のビジョンを教えてください。
三宅 現在、ウイスキーやチューハイなどあらゆるジャンルのお酒に挑戦しています。日本酒以外の大きな柱を何本も作りたいと考えていますので。勿論、酒蔵のイメージも大切にしながら、ほかのカテゴリーでも知名度を上げていきます。
また、伝統と革新は両輪です。守るものと挑戦していくものとのバランスを保って、前に進んでいきます。
―「クラフトジン瀬戸内 檸檬」とてもおいしかったです。貴重なお話をありがとうございました!

「クラフトジン瀬戸内 檸檬」(700ml)
価格:¥2,420(税込)
店名:千福オンラインショップ
電話:0823-22-3838(10:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sempuku-miyakeya.com/shopdetail/000000000417
オンラインショップ:https://www.sempuku-miyakeya.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
三宅清嗣(株式会社三宅本店 代表取締役)
1959年(昭和34年)広島県生まれ、広島大学経済学部卒業。 山梨県のワインメーカーで修行後、1982年10月三宅本店入社。取締役・常務を経て1997年12月から社長。
<文/林本直 MC/伊藤マヤ 画像協力/三宅本店>