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白いお酒に繊細な泡が涼やか!やわらかな甘酸っぱさが口の中に広がる、スパークリング清酒のパイオニア「すず音」

2024/06/06

宮城の伝統的な酒造りを続ける蔵元「一ノ蔵」が、女性のためにと開発した発泡タイプの日本酒が「すず音」。今では一般的となったスパークリング日本酒ですが、「すず音」はいわばそのパイオニア的な存在です。今回、アッキーこと坂口明子編集長は、「一ノ蔵」がこの「すず音」に込めた想いに注目。大ヒットロングセラーの秘密に取材陣が迫りました。

株式会社一ノ蔵 代表取締役 鈴木整氏
株式会社一ノ蔵 代表取締役の鈴木整氏

―やさしい白色に繊細な泡が立ちのぼる、なんともおしゃれなお酒ですね。

鈴木 ありがとうございます。シャンパンのように口の中でシュワシュワッと泡が弾けますが、お米由来の清酒、れっきとした日本酒になります。ろ過を行わず白濁したフレッシュなお酒をにごり酒と言うのですが、なかでもこれは薄にごりといってほんのりとした白色が美しく、まろやかで飲みやすいのが特徴です。アルコール度数も5度と低めですから、日本酒ビギナーにも喜んでいただけると思います。

―蔵元は、あの名酒の「一ノ蔵」ですよね!まずは企業としての「一ノ蔵」について教えてください。

鈴木 あの「一ノ蔵」です(笑)。創業は1973年、宮城県内の4つの酒蔵がひとつにまとまって起業しました。当時若干20代、30代の若手醸造家4人が、県内の酒造りと日本酒の未来を憂いて4社企業合同し、業界市場を変えていこうと志をもって船出した、と聞いています。今でいうベンチャーの走りですかね。社長も4人が交替でやって、そのうちのひとりが私の父です。私は4歳でした。

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「一ノ蔵」本社蔵。豊富な地下水と良質の米に恵まれ、
世界農業遺産にも指定されている宮城県大崎市に建つ。

―ということは、鈴木社長は何代目になるのでしょうか?

鈴木 これがややこしくてですね…。もともとわが家は別の場所で酒蔵を営んでいましたので、そこでいうと7代目…かな。「一ノ蔵」でいうと、現在は私を含む子の世代、つまり2世グループの4人で同じ交替制で社長をやっていまして、もはや何代目と言っていいのか(笑)。とにかく、生まれた時から大勢の職人のいる伝統的な酒造りが家業でした。この伝統的な酒造りというのは「一ノ蔵」の企業理念にも引き継がれていて、手づくりの醸造発酵の技術、仕込みをしっかり残しつつ、時代に合った高品質の日本酒を提供したいと考えています。

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地元・宮城の酒造好適米と伝統的な仕込みにこだわった「一ノ蔵」は、
口当たりがよくのど越しもさわやかな銘酒揃い。

―「すず音」誕生はいつ頃になりますか。

鈴木 1998年、今から26年前になります。当時、炭酸系の甘めのお酒はサワーくらいしか一般的ではなくて、日本酒なのにシュワシュワしている…と珍しがられました。

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ナチュラルなグリーンのボトルがおしゃれな「すず音」。
手頃な300mlの飲み切りサイズも嬉しい。

―開発のきっかけは?

鈴木 じつは、80年代、90年代くらいの日本酒の評判が最悪だったんです。その頃、大学生だったり社会人になりたてだったりした方なら覚えがあるかもしれませんが、サークルのコンパや新入社員の歓迎飲み会などで先輩や上司にしこたま飲まされ、苦い思いをして日本酒嫌いになる若者が続出したんです。日本酒はアルコール度数も高いですから、飲み慣れていないと酔いつぶれたり頭痛がしたり…。

―ありました、ありました!安酒だからだと思ってました。

鈴木 今ならアルハラ(アルコールハラスメント)って言われちゃうと思います。でも、たしかに戦後、安価で質の悪い日本酒が増えて、日本中に広まってしまっていたのは事実なんです。一方で質の良い地酒などを飲む日本酒愛好家もいたのですが、いかんせん値段が高い。宴会などでは難しいですよね。日本酒好きのおじさんが若者にも飲ませたくて、若者はどんどん嫌いになる…。そんな状況も、先代たちはなんとかしたかったのではないでしょうか。

―それが「すず音」につながるんですね。

鈴木 日本酒造組合の当時のアンケート調査で、日本酒のイメージは「アルコール度数が高い」「苦い」「オヤジしか飲まない」など残念な評価がたくさんあったそうです。そういう悪口(笑)だけを拾って、全部真逆になるよう開発したのが、「すず音」です。「度数が低い」「甘い」「飲み慣れない若者にも飲みやすい」といった方向性で、特にその頃、女性の社会進出が叫ばれていましたから、20代から30代の働く女性をメインターゲットに絞りました。味の設計からネーミング、ボトルデザインまですべて、女性チームが女性ならではの感性で手がけています。

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ボトルの「いちのくら」の文字も、やわらかなひらがなのデザインを採用。

―改めて、「すず音」の特徴を詳しく教えてください。

鈴木 「すず音」というかわいいネーミングは、グラスに注ぐとチリンチリン…と鈴の音を奏でながら泡が立ちのぼるようなイメージから来ています。きめ細かく繊細な泡は、瓶内二次発酵によって生まれる自然の炭酸ガスによるもの。お米由来のやさしい甘みのなかに、さわやかで心地良い甘酸っぱさがふんわりと広がります。香りはマスカットみたいに華やかでフルーティですが、糖分はいっさい含まれていません。シャンパンでもなく、ビールでもなく、日本酒でもない、全く新しいスパークリング清酒として、普段あまりお酒を飲まない人でもおいしく飲める、と喜ばれています。

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華奢なボトルは女性の手でも注ぎやすく、甘くて飲みやすいと女子会などで大活躍。

―開発のご苦労などをお聞かせください。

鈴木 当初「すず音」は、瓶詰めしてからの品質管理が非常に難しい商品でした。先ほど申し上げたように、瓶内発酵によって瓶の中で発酵を続けているので、炭酸ガスを閉じ込める高度な技術が必要なのです。耐圧ガラスの瓶を使い、輸送時などにガスが抜けたり液体が飛び出したりしないよう特別な仕様のキャップでフタをするなど、プロトタイプ(試作品)から製品化するまで容器の改良だけで1年半もかかっています。他に類似品がないため試行錯誤の連続でした。いざ出荷が始まっても、初期はトラブル続きです。当時はスパークリング清酒という言葉もありませんから、雑誌に掲載していただいても、発砲清酒、と泡の字を鉄砲の砲に間違えられた、なんてこともあったそうです。

―それだけ新しいジャンルを開拓された、ということですね!

鈴木 見た目にもおしゃれで珍しいお酒ということで、テレビや雑誌で紹介されることは多かったようです。その間にも改良に改良を重ね、10年くらいかけてやっとご注文に追いつくような安定した管理体制がととのうようになりました。その頃、お寿司屋さんで置いているお酒といえば大体ビールか日本酒か、という時代だったと思うのですが、「だったらお茶を飲むわ」と言っていた女性に試しに「すず音」を提案してみたら非常にウケた、なんてこともありました。東京の行列店として話題の美登利寿司さんで扱っていただいて、人気に火がついたとも聞いています。本格日本酒への入り口として、ちょうどよかったのでしょうね。

―売り上げも右肩上がりでしたか?

鈴木 多い時で年間100万本売り上げた大ヒット商品となり、製造が追いつかず出荷できない場合もあったくらいです。慌てて拡充して設備をととのえて、安定供給できるようになった矢先、2011年に東日本大震災が起こりました。

―被害は大きかったのでしょうか。

鈴木 3月に被災したあと、設備修繕がととのって出荷数が戻ったのはその年の12月です。
被災当初は日本全体が自粛ムードで、お酒を飲んでいる場合じゃないと言われて落ち込んでしまいました。ところが、岩手のメーカーさんがYouTubeで「自粛を自粛しよう、東北の経済を回そう」と呼びかけてくれたおかげで、事態は一変。「東北のおいしいものを買って被災地を応援しよう」というムードが高まり、日本どころか世界中から注文が殺到したのです。

―応援の声が届いたんですね。

鈴木 はい。本当にありがたかったです。さらに明けて2012年3月、第35回日本アカデミー賞の授賞式で、乾杯の酒に「すず音」が使われたのです!例年はシャンパンで乾杯するらしいのですが、これも被災地応援の一環で、マスコミなどにも話題にしていただきました。このことをきっかけに、女性タレントさんが気に入ってブログに取り上げてくださるなどして、一気に知名度がアップしたように思います。

―華やかな場にふさわしいお酒…どんなお料理に合わせるのがおすすめですか?

鈴木 先ほどのお寿司もそうですが、やはりベースが日本酒ですので和食なら何でも合います。でも、じつはこのボトル、日本酒でありながらクリスマスのテーブルに置いても合う華やかさ、というコンセプトが込められているんです。ですから、意外と洋食にもイケると思います。

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口当たりが滑らかでやわらかいので、和洋どちらの料理にもさりげなく合う。

―社長ご自身の個人的なお気に入りのペアリングはありますか?

鈴木 私の個人的なおすすめは、チーズ…フレッシュなモッツアレラやカッテージチーズなどです。「すず音」は、働く女性が自分へのご褒美としてもほどよく手が届きやすいお酒です。お仕事帰りにスーパーで買える手軽なチーズをつまみに、仕事終わりのビール感覚で楽しんでください。日本酒を飲み始めるきっかけとしてもぴったりだと思います。

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モッツアレラチーズとミニトマトのお手軽カプレーゼをつまみに、疲れを癒やす一杯を。

―もちろん男性でも、ですよね。

鈴木 はい。特に女性と一緒に酒を酌み交わしたい男性に、おすすめしています。「この酒ならヨメがつき合ってくれるんだよ~」と酒屋で「すず音」を選んでくださる男性に、遭遇したこともあります!

―日本酒ですがおちょこで飲む感じではないですね。

鈴木 シャンパンを飲む、口の小さな細長いタイプのフルートグラスが最適です。香りが逃げにくく、炭酸も抜けにくいので、軽快感のあるさわやかな甘さを引き立たせてくれるんです。同じシャンパングラスでも平たくて口の広いカクテルグラスだと、炭酸が抜けやすいため甘すぎと感じてしまうかもしれません。

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口径が狭く、細長いシャンパングラスに注いで、泡が発生するさまも楽しみたい。

―上手な注ぎ方はありますか?

鈴木 これはボトルの裏にも明記しているマストの注ぎ方なのですが、まずは10度くらいに冷やしてください。普通の冷蔵庫の温度くらいがベストです。冷えたらゆっくりと2、3回上下逆さにし、沈殿している薄にごりの成分を混ぜ合わせてから、グラスに注ぎます。激しく振ったり、温度が高かったりすると吹き出してしまうことがあるので、いきなりキャップを外さず、少し緩めて様子を見てください。吹き出しそうなら一度締め直し、15秒ほどおいて中身が落ち着いてから開けると安心です。

―ありがとうございます!では最後に、今後の展望をお聞かせください。

鈴木 残念ながら国内での日本酒全体の出荷数は減り続けてしまっています。ですが、若い方、特に若い女性には「すず音」などをきっかけにどんどんお試しいただいて、注目が高まっている状況です。伝統的な酒造りの技を続けていきながらも、新しい方たちを取り込んで裾野を広げていくこと、これが不可欠だと感じています。それはもちろん、海外も含みます。

―「すず音」も海外に輸出していらっしゃるのですか?

鈴木 「すず音」はとても繊細なお酒なので、この薄にごりの状態で海外まで運ぶのが難しいんです。そこで、「すず音プレミアム」として、濁りのないクリアタイプの「すず音Wabi(わび)」やドライタイプの「すず音GALA(がら)」をイギリスなどに販売して好評を得ています。海外での日本酒への注目度はとても高いですから、もっともっと広めていけたら。そのためにできることをやっていきたいですね。

―日本酒へのハードルをぐぐっと下げてくれた、「一ノ蔵」のやさしさがたくさん詰め込まれている「すず音」。ヒットの理由がよくわかるインタビューとなりました。本日はありがとうございました!

「一ノ蔵 発砲清酒 すず音」(300ml アルコール分 5度)

「一ノ蔵 発砲清酒 すず音」(300ml アルコール分5度)
価格:¥880(税込)※クール便発送
店名:一ノ蔵【公式】オンラインショップ
電話:022-341-2125(9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:ichinokura.co.jp/pickup-product/suzune
オンラインショップ:https://ec.ichinokura.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
鈴木 整(ひとし)(株式会社 一ノ蔵 代表取締役社長)

1969年、宮城県塩竈市の蔵元に生まれ、幼い頃から父の「一ノ蔵」起業に尽力する姿を見て育つ。関東の大学在学中にアルバイトとして働いていたイベント会社にそのまま就職し、10年後、結婚と同時に「一ノ蔵」に入社。実家近くの神社の神輿を担ぐのが何より楽しい、というほどの祭り好きで、「日本酒を楽しむ会」など社主催イベントの盛り上げ役でもある。

<文・撮影/亀田由美子 MC/伊藤マヤ 画像協力/一ノ蔵>

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