小学校で6年間使用したランドセルには、たくさんの思い出が詰まっています。だからこそ、卒業後にどう保管するか悩む親御さんも多いでしょう。今回、編集長アッキーが気になったのは、株式会社伊藤鞄製作所のランドセルリメイク事業「Again」の「ミニ財布」と「ペンケース」です。同社の代表取締役 伊藤勝典氏にランドセルリメイクを始めたきっかけや商品の詳細などについて取材陣が伺いました。
思い出のランドセルをリメイク!鞄職人が一つひとつ作り上げるオリジナル小物
2024/04/24
株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役 伊藤勝典氏
―家業を継ぐと決めたきっかけは?
伊藤 私が18歳の時に事故で怪我をして入院したのですが、父や母が仕事をストップして毎日のように看護に来てくれました。その当時、弊社は家庭内工業で作業をしていましたから、仕事の中身ややり方など、とても大変だと子どもながらに感じていました。そのような状況の中でも私のために作業を止めて来てくれたので、「どうにかして恩返しがしたい」とその時に強く思ったのがきっかけです。
家業を継ぐ前に一度は社会勉強をしようと考えていたため他社に就職して、19歳になって弊社に入社しました。
―鞄職人としての原動力は何ですか?
伊藤 鞄職人はすごい技術をたくさん持っています。私自身もその技術を間近で見て覚えることが楽しかったです。職人の技は奥深くて、技術を5年、10年かけて習得した後でも製作中に「こんなこともあったのか」という気づきがどんどん出てきます。私は職人として40年働いていますが、いまだに新たな気づきがあります。
そのような素晴らしい技術を広めていくのが、私の使命だとも考えていました。世界に誇れる「メイドインジャパン」というもの、日本の職人だからこそできる細やかな仕事を皆様に理解していただきたいという思いで20年間頑張ってきました。
多種多様な鞄を製作している会社だからこそ、鞄を作る職人の技術も磨かれる。
―リメイク事業と修理事業を始めた経緯を教えてください。
伊藤 私の父である会長が知り合いの方に鞄の修理を頼まれました。とても大変な修理だったためどの会社からも断られたそうで、最終的に弊社が修理を行うことになりました。会長が鞄を修理してお渡しした際に、その方が心の底から本当に喜んでくださっていると感じました。
職人はいくら良いものを作ってもお客様から直接感謝の言葉をいただける機会がほとんどありません。テーブルとミシンに向かってずっと鞄を作っているので、その点は非常に寂しいと思っていました。あの時に目の前で本当に喜んでいただけたことで、この経験が私たち職人の抱えている悩みを一つ解決できるのではないかと実感しました。
―OEM中心から現在の業態に切り替えた理由は?
伊藤 それまでは会社を拡大することばかり考えていましたが、先にお話しした一件があってから、会社を大きくすることが社員の本当の喜びにつながっているのかという疑問が湧いてきました。その結果、お客様に対して窓口を開いて対面で修理・リメイクのご依頼を受ける方が職人のやる気につながると考えるようになり、10年程前に舵を切りました。
当時の事業内容の比率はOEMが7割でオリジナルブランドが3割程度でしたが、OEMを半分に減らして修理・リメイク事業を始めました。
オリジナルバッグが並ぶショールーム。
事前連絡すれば、リメイクの受付もこちらで可能。
―ランドセルリメイク「Again」で人気のトップ3は?
伊藤 「ミニ財布」「ペンケース」「キーホルダー」です。小さなランドセルにそのままリメイクするご依頼よりも、自分で使えるような小物にリメイクするご依頼の方が増えています。Againでは19種類の中からお好きなものをお選びいただけます。
ランドセルを日常でよく使う小物に作り替えることで、より愛着のある一品になる。
―ランドセルのリメイクで心がけていることとは?
伊藤 お客様のご要望を積極的に取り入れています。ランドセルの模様やマーク、プレートの鋲、刺繍など、お客様にとってはその一つひとつが思い出かもしれません。こちらができるアレンジをご提案していき、お客様一人一人と向き合いながら製作しています。
同じ商品であってもカスタマイズ性が感じられたり、ランドセルをリメイクしたことが分かる仕様になっていたり、ただのリメイクで完結しないように心がけています。
ランドセルのお気に入り部分をアクセントに使用することで、
よりオリジナル感が増す。
―ランドセルのリメイクを依頼される方の特徴を教えてください。
伊藤 お客様にはランドセルの思い出を残しておきたいという共通点があります。ランドセルとしてとっておきたいという方もいらっしゃいますが、保管状態によってはひびが割れてしまって捨てることになる場合も多いようです。そのような中で、せっかくであれば使えるものに再生して最後のお別れをしたいと弊社にお持ちいただく方が多い印象です。
使い古したランドセルの新たなスタート。
6文字以内なら無料で好きな刻印も入れられる。
―心に残るエピソードはありますか?
伊藤 Againを始めたばかりの頃のエピソードですが、「祖父と祖母に買ってもらったランドセルで我が子が6年間通った小学校を無事に卒業できた」とお母様がいらっしゃいました。そのランドセルを「ミニ財布」などにリメイクして、祖父と祖母に感謝の気持ちとともにプレゼントしたいというご依頼でした。弊社の商品がそのような大切な役割を担えることに、とても感動したことを覚えています。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
伊藤 弊社の強みは、生産から企画販売、アフターフォローのすべてを一貫して行えることです。一つひとつの商品に責任を持ってお客様へ届けることを続けてまいりましたので、弊社の商品を通じてその想いを感じていただきたいと思っています。
また、自分の思い出の品を再び作り替えてくれる、修理してくれる場所として弊社を認識していただき、「何かあったら、伊藤鞄に任せよう」と思ってくださったら嬉しいです。
あとは、会長の時代から弊社が大切にしている「人に対する思いやり」を娘の代にも受け継いでもらって、社員が幸せでいられる会社にしてほしいと思っています。今後もみんなの会社という意識で支え合いながら、お客様によりよい商品・サービスを提供していきたいと考えています。
―貴重なお話をありがとうございました。
「ミニ財布」(8.5cm×11cm×1.5cm)
価格:¥8,800(税込)
店名:株式会社伊藤鞄製作所
電話:03-3620-0088(9:30~17:30 日曜・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ito-kaban.jp/goods-introduction.html#f
オンラインショップ:https://www.ito-kaban.jp/
「ペンケース」(19cm×5cm×4cm)
価格:¥5,280(税込)
店名:株式会社伊藤鞄製作所
電話:03-3620-0088(9:30~17:30 日曜・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ito-kaban.jp/goods-introduction.html#j
オンラインショップ:https://www.ito-kaban.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
伊藤勝典(株式会社伊藤鞄製作所 代表取締役)
1963年東京都出身。株式会社伊藤鞄製作所へ入社して職人の技術を磨きながら、1995年に販売業務に特化したグループ会社「REGALO(レガロ)」を設立。企画・製造・販売・アフターフォローを1社で一貫して行う流れを確立し、業界内の改革を進める。
<文/ウツギナオコ MC/白水斗馬 画像協力/伊藤鞄製作所>