稀少な郷土の味!新潟・長岡発、幻の餅米を復活使用した「笹だんご」と醤油味の「長岡赤飯」

稀少な郷土の味! 新潟・長岡発、幻の餅米を復活使用した「笹だんご」と醤油味の「長岡赤飯」

2023/01/13

その土地の暮らしや風景を想像させてくれるのが郷土の味。今回編集長アッキーが気になったのは、新潟・長岡で幻となっていた餅米をよみがらせ作った笹だんごと、全国的にも長岡だけといわれる醤油味の赤飯。

それらをはじめ、地元のおいしさと魅力を伝える創業120年の老舗、株式会社江口だんご 代表取締役社長の江口太郎氏に、地元愛あふれる店づくりや商品づくりについてうかがいました。

株式会社江口だんご 代表取締役社長の江口太郎氏
株式会社江口だんご 代表取締役社長の江口太郎氏

―創業は明治、茶屋が始まりだそうですね。

江口 信濃川に中州があって、明治の初めに中州をまたぐ東西2本の橋ができたんです。その中州に初代江口駒吉が茶屋を出し、行き交う人々にだんごやおはぎでもてなしたのが始まりです。

創業は1902年。洪水による移転や戦争を経て、3代目である父、江口賢司が、全国の菓子修行から戻り、本格的に菓子店として営業を始めました。

―どのようなお菓子を?

江口 だんごや大福を作っていました。新潟はやはり米が良いですから、米を主原料にして、新潟の背景を入れながらお菓子を作ろうと考えていました。そして、大衆の味であるだんごをギフトにと、父は五色だんごを作り、店頭販売のみなのですが、看板商品になっています。

江口社長の父、賢司会長が社長時代に開発した「五色だんご」。店頭販売のみ。
江口社長の父、賢司会長が社長時代に開発した「五色だんご」。店頭販売のみ。

―江口社長はいつ頃から後継ぎになろうと?

江口 親子で仕事をするのは良い面も悪い面もありますし、家業を継ぐかどうかあまり考えていなかったんです。父から家業を継げと言われたこともなかったですね。

ただ、子どもの頃に、学校でうちのだんごが配られる機会があって、初めて食べた同級生たちが「こんなおいしいだんごを毎日食べられるなんて羨ましい!」と言ってくれて、うちはみんなに喜ばれるものを作っているんだと、その時気づいたのを覚えています。

―そして、大人になって修行に?

江口 東京・赤坂や大分・別府でお菓子の勉強をし、1992年に家業に入りました。修行中には、家業での夢も生まれていました。

別府の修業先のご主人が湯布院に食事に連れて行ってくださり、そこが古民家を生かしたすばらしいお店だったんです。将来、このような店舗を作って長く続く商いをしたいと考え、早速父に「別府に来てみないか」と連絡しました。

―お父様は何と?

江口 父とそのお店に行き、こういう店がしたいと言うと父も興味を持ちました。二人でお店のご主人に話をきいてみると、古民家はなんと新潟から移築したものでした。雪国新潟の古民家だから梁が太く、けやき材で日本有数のすばらしい建物だとおっしゃって、だから九州の山奥まで持ってきたのだと。

新潟では古民家がどんどん解体されていましたから、父と私はとても驚きました。新潟の地元にいる自分たちが、地元の方々に価値を知って伝え、新潟の古民家を残していくことが大事だと父も私も気づいて、それを自分たちの店でやっていこうと、古民家再生店舗を作るという同じ夢を持つことになりました。

―親子で同じ夢というのは強みですね。

江口 私が修行から帰るまで、父は古民家を探し、良いと思った建材を倉庫に保存しておいてくれました。修行から戻ってすぐに、2人で計画をまとめました。古民家店舗の周りの田んぼで収穫された米を使用して豊かなものづくりをし、お客様に共感していただく。父と同じ考えでよかったと思います。

また、夢を形にするためには、一流の店やサービスを見て、自分たちは今どんなレベルなのか、広く世間を見たほうがいいと父は言ってくれました。

長岡市宮本町にある本店。
「古民家を復活させて江口だんごのおもてなしの場を作る」という、親子二代の夢を実現、江戸時代の家老職の屋敷や茅葺屋根の古民家を再生させた。
長岡市宮本町にある本店。
「古民家を復活させて江口だんごのおもてなしの場を作る」という、親子二代の夢を実現、
江戸時代の家老職の屋敷や茅葺屋根の古民家を再生させた。

―オープンまでは順調でしたか?

江口 初めは賛成する人はいませんでしたね。長岡市の人口は28万ほどで、予定地は山の中ですし、観光で来る人も少ない。しかもうちはその日作ったものをその日売り切るスタイルで、客単価も高くなく、マーケットも小さいんです。古民家店舗の前例もないし、売上は上がらないだろうと周りは反対のみでした。理解されず、建てるまでは苦労でしたね。

でも、自分たちができる精一杯のことをして、売店、工場、甘味喫茶を作り、2005年に永年の夢がかなって、オープンすることができました。

―どんな思いを込めたお店ですか?

江口 だんごを買うだけでは滞在時間は短いですから、そこでゆっくり時間を楽しんでいただくことを考えました。

外の田んぼや里山を眺められる甘味喫茶を開き、お客様には和めると喜んでいただいています。倉庫を改装した空間では菓子づくり体験もできるようにしました。お菓子はお祝いごとに使われることが多いですし、お菓子を作って思い出作りもできます。一升餅のように、お子さんを囲んで微笑ましい風景も生まれます。

そういう思い出をお菓子は作れるのですから、ただものを売るだけではなく、新潟らしい、うちらしいもの、ここにしかないからわざわざ来てくださる、そんな店舗にしていこうと、現在まで店づくりを行なっています。

幻の餅米「里宮大正餅」を5年かけて復活させ「笹だんご」に使用。
幻の餅米「里宮大正餅」を5年かけて復活させ「笹だんご」に使用。

―幻の餅米の復活にも努力を?

江口 「里宮大正餅」(りきゅうたいしょうもち)という餅米を使った「笹だんご」を作りました。

以前、父が母と結婚した年に、農家である母の実家で食べた草餅が実においしかったそうなんです。プロが作るよりおいしいというので、何で作られているのか調べたところ、昭和30年代に途絶えたと思われる餅米「大正餅」(編集部注 現在同社での名称は里宮大正餅)の存在がわかりました。

ただ、その当時作っている農家はなく、ようやくたどり着いた農家さんも、品種が混ざった種籾しか持っておられないとのことで、お願いして品種が混ざったまま栽培していただいたんです。すると、収穫時期や稲の長さの特徴から、どれがその品種か特定でき、実際に収穫して食べるととんでもなくおいしかったんですよ。

採算が合わないため、栽培が途絶えたようなのですが、このおいしい餅米を知ってもらうために、大切に育てて「里宮大正餅笹だんご」として商品化し、一般の方にもそのおいしさと栽培の大変さを知ってほしいと考えました。

田植え会員を募集したところ、大勢の方が集まって来られ、それだけ価値があるものなのだと再確認しました。

昔ながらの後蒸し製法により、笹の香りがだんごになじむ。
昔ながらの後蒸し製法により、笹の香りがだんごになじむ。
復元した餅米で最初にだんごを作った時、「こんなにおいしいものがあるのか」と社長自身も驚いたという。弾力、香り、味わい、知っているようで知らなかったおいしさ。
復活させた餅米で最初にだんごを作った時、「こんなにおいしいものがあるのか」と社長自身も驚いたという。
弾力、香り、味わい、知っているようで知らなかったおいしさ。

―そんな貴重な餅米を使った笹だんごは笹もよもぎも地元で?

江口 はい、里宮大正餅笹だんごは幻の餅米100%、あんこはだんごに負けないよう北海道の上質の小豆を使っていますが、笹もよもぎも地元のものです。かつては家族総出で作った郷土菓子ですから、地元の素材を使いたいんです。笹だんごの価格を下げるためによその土地のものを使われるお店もあるようですが、私たちは昔からある良いものを残していきたいと思っています。

―高級感があります。

江口 価格が高くなっても、ここぞという時に食べたくなる、納得いただけるものにしたいと思います。また笹舟に浮かべたような個包装にしているのも、うちの特徴です。

―長岡赤飯についても教えてください。醤油味とは珍しいですね。

江口 ええ、全国的には味付けは塩で、ささげや小豆の渋汁でほんのり赤く色づけをするかと思いますが、長岡は醤油を使っていて茶色なんです。新潟市は醤油おこわと言いますから、赤飯と言って醤油なのは長岡を中心とした周辺だけなのではないでしょうか。

―長岡ではこれが普通なんですね。

江口 これで育ったので、スタンダードだと思っていて、ピンクの赤飯は変わってるなあと(笑)。東京にもないですから、修行をするまで通常の赤飯の作り方を知りませんでした。東京にいると郷土の味が食べたくなって、その1つがこの赤飯でした。

長岡以外では赤飯はお祭りやお祝いの時に食べますが、長岡の赤飯は日常的なものでスーパーにも並ぶほどです。全国的にも珍しく、これは看板商品になるなと、もともとあった商品をギフト用にし、パッケージを考え、「長岡赤飯」と名付け、急速冷凍の設備も整えて商品化しました。

栗やぎんなん、金時豆や小豆、ささげなど豆をかえながらトッピングするのもおすすめ。
栗やぎんなん、金時豆や小豆、ささげなど豆をかえながらトッピングするのもおすすめ。
冷凍で届く「長岡赤飯」。電子レンジで加熱するだけ。パッケージ表面に小さな穴があり蒸気が出るようになっているので、ふかしたてに近い状態に。
冷凍で届く「長岡赤飯」。電子レンジで加熱するだけ。
パッケージ表面に小さな穴があり蒸気が出るようになっているので、ふかしたてに近い状態に。

―今後の展望をお聞かせください。

江口 お菓子を売るだけではなくて、土地の風習を含めた環境の中で生まれた商品を、地域の味を守りながら、次の時代に残していきたいと思っています。

長岡は雪が多く、4メートルほども積もる豪雪地帯もあります。いまスノーフード長岡ブランド協議会として、寒造りの酒や、雪室の貯蔵技術や雪解け水、雪国の知恵でおいしく保存できる食べ物など、雪のおかげでおいしい新潟の食べ物を知っていただく活動も行なっています。

雪国らしさや雪国ゆえの良いこと、古民家ならここにしかないもの、新潟にしかない魅力を磨いて、お菓子にのせて全国に広めていきたいですね。

―雪国新潟にさらに興味が湧いてきました。本日はありがとうございました。

「里宮大正餅 笹だんご」(5個入)

「里宮大正餅 笹だんご」(5個入)
価格:¥1,944(税込)送料別
店名:江口だんご本店
電話:0120-27-4105(9:00~18:00 元日は除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.eguchidango.jp/SHOP/A201.html
オンラインショップ:https://www.eguchidango.jp

長岡赤飯(4個入)

「長岡赤飯」(4個入)
価格:¥2,030(税込)送料別
店名:江口だんご本店
電話:0120-27-4105(9:00~18:00 元日は除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.eguchidango.jp/SHOP/A017.html
オンラインショップ:https://www.eguchidango.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
江口太郎(株式会社江口だんご 代表取締役社長)

1969年新潟県生まれ。東京・赤坂、大分での菓子修行を終え、1992(平成4)年、家業である1902(明治35)年創業の株式会社江口だんごに入社。新しい商品の開発や人材の育成をしながら、2005(平成17)年に長年の夢であった幻米「大正餅」の復活と新潟県の古民家再生店舗のオープンを実現。餅菓子製造・販売・甘味喫茶・菓子作り体験教室等を運営しながら現在に至る。

<文・撮影/大喜多明子 MC/鯨井綾乃 画像協力/江口だんご>

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