京都で今も作られているさまざまな伝統工芸品。平安時代に唐の国から伝わり独自の発展を遂げた唐紙もその1つで、和紙に美しい伝統文様が摺られた「京からかみ」は現在も和室の内装などに用いられています。「京からかみ」の製作に長年取り組み、新しい技法による「漆からかみ」や照明器具、体験キットなどの商品開発も手掛けているのが、和の内装材料専門商社、株式会社丸二です。今回編集長アッキーこと坂口明子が気になった4代目である代表取締役社長の西村和紀氏に、商品へのこだわりや開発エピソードなどを伺いました。
繊細で美しい伝統文様がきらめく「京からかみ」を楽しむ 照明器具「KARA-IRO」&体験キット「キラレ kira-let’s」
2023/02/06
株式会社丸二 代表取締役社長の西村和紀氏
―会社の沿革について教えてください。
西村 当社は、もとは明治35年(1902年)に「西村高禄堂」という名で創業した表具師で、寺院や絵師などの依頼で屏風や掛け軸、額装などを手掛けていました。その後、昭和21年(1946年)に祖父が社名を「丸二商店」に改め、内装材料商に事業転換。これが現在の丸二の前身です。現在は、和室の内装材料や表具材料の卸や施工・表装、「京からかみ」の製作販売などを行っています。伝統工芸品である「京からかみ」は、祖父が力を注いで取り組んでいたものです。
西村社長の祖父であり初代の西村正雄氏。
「京からかみ」の伝承・技術者の育成などの功績により叙勲されている。
―いろいろな種類がある「京からかみ」の文様は、昔から受け継がれているものですか?
西村 唐紙は日本に伝わって以来、時代により担う階層が変わり、それと共に公家好み、寺社好み、武家好み、茶方好み、町家好みといった文様が生まれていきました。唐紙の文様には、当時使っていた人々や時代背景などが今でも意味合いとして残っています。当社では、(1)昔から使われてきた版木を使う、(2)昔ながらの原材料を使う、(3)先人たちから受け継いできた技術を活かしていく。この3つをコンセプトに唐紙を作っています。
公家や貴族から、神社仏閣、武家、町方衆と、用いる人に合わせた文様が生みだされた唐紙は、
主に襖や障子、屏風に用いられてきた。光の加減で浮かび上がる文様が美しい。
―今回ご紹介の「キラレ kira-let’s」。開発されたきっかけは?
西村 唐紙摺りをお気軽に試していただけるように必要なものをコンパクトにまとめました。唐紙のことをご理解いただくには実際に体験していただくのが1番かと思います。お湯で溶いてすぐに使える雲母と布海苔の成分が入った「キラ粉」もセットしています。
自宅で手軽に唐紙摺りができる体験キット「キラレ」(版木の文様は紗綾型)。
セットのキラ粉に、好きな色の水彩絵の具を混ぜて楽しむこともできる。
―「KARA-IRO」についてはいかがですか?
西村 これは唐紙を襖紙や壁紙に使う以外にも何か室内のインテリアとして広げていけないか、と考えて開発しました。照明器具では行灯も作っていましたが、洋室にも合うようなランプシェードを作りたいと思いました。
普通の和紙ではたるんで形状維持できないのですが、樹脂フィルムを和紙でサンドした張りがあり破れにくい素材を使用し、ふくらみのある柔らかい表情を保てるのが特徴です。1枚の帯状の和紙を結わうように組み立てます。ふんわりとした形を作りつつ、和紙のあたたかみと重なった部分の光の通り方や、空間に適した文様を選定することには苦労しました。
光によってさまざまな表情が楽しめる唐紙のペンダントライト「KARA-IRO」(文様は雀型)。
京都商工会議所の新販路開拓事業のプロジェクトとして、デザイナーと共同で開発された。
和の空間はもちろん、モダンな洋室にも。
―どんな空間にもすごく合いそうですね。では今後の展望を教えてください。
西村 唐紙はさりげない表情が出せるのが1番の味わいです。襖紙として存在するのが最も美しく、和室でこそ生きると思うものの、残念ながら和室は減ってきています。そのため当社では壁紙などいろいろな使い方を提案していますが、見せ方を変えていく必要があるし、唐紙が長く使われ続けるために、技術改良や素材開発もしていかなくてはならないと思っています。
その取り組みの1つとして版木をイメージして作った木製のレリーフを機械で彫り、パネルや天井装飾にご提案しています。伝統と革新のバランスをうまくとりながら広い視野で素材開発をしていくことが、今後唐紙をより広く認知していただくことにつながるのではと思います。
天井に使われた版木のレリーフ。
-本日は貴重なお話をありがとうございました!
「キラレ kira-let’s 紗綾型」(セット内容:版木1枚・調合顔料キラ粉・刷毛・ゴムパッド・無地ハガキ6枚入り/外箱サイズ:160×160×20mm/版木サイズ:150×100×10mm/重量:約170g)
価格:¥4,950(税込)送料無料
店名:京からかみ丸二
電話:075-361-1324(9:00~18:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.maruni-kyoto.co.jp/item-detail/780635
オンラインショップ: https://shop.maruni-kyoto.co.jp/
「KARA-IRO 雀型」(セット内容:シェード・コード付き器具・LED電球・フランジ・リベット・ロッドキャップ/完成後シェードサイズ:約Φ480×H320mm/重量:約560g/外箱サイズ:W210×D280×H140mm)
価格:¥30,800(税込)送料無料
店名:京からかみ丸二
電話:075-361-1324(9:00~18:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.maruni-kyoto.co.jp/item-detail/330340
オンラインショップ: https://shop.maruni-kyoto.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
西村和紀(株式会社丸二 代表取締役社長)
1968年1月7日生まれ。同志社大学卒業後、株式会社INAX入社。京からかみの伝承・発展に尽力した祖父の逝去を機に株式会社丸二に入社。2008年代表取締役社長に就任。
祖父の手作りの唐紙パネルを倉庫で発見した日から、唐紙の無限の可能性に目覚める。日々、現代のライフスタイルにあった唐紙の魅せ方を追究している。
<文・撮影/山本真由美 MC/橋本小波 画像協力/丸二>