第8回 株式会社大麦工房ロア 社長 浅沼誠司さん

大麦は地球を救う!?
地元産の大麦を使ったダクワーズ

 

生活習慣病予防が期待されている大麦を、注目される前から商品化している「大麦工房ロア」。栃木県のローカルなケーキ屋さんが、大麦を使ったお菓子を開発するに至った経緯と大麦にかける思いを社長の浅沼誠司さんにお聞きしました。

 

――― 貴社の主力商品、大麦ダクワーズという商品の開発した時の背景をおうかがいします。

 

 

浅沼誠司社長(以下、浅沼):開発したのが1997年11月なので、ちょうど20年前になります。当時、弊社は足利市内でケーキ屋を3店舗ほど経営していました。裏の工場で作った生のケーキをお店で売るというシンプルなケーキ屋さんでしたが、もっと日持ちがして地元の土産物になるようなお菓子を開発したいと思うようになりました。
その頃の足利市から東京へ向かう電車の窓から見える5月頃の大麦畑がきれいだったんですよ。大麦は小麦に比べると非常にマイナーな素材です。当時の私も、電車の風景を見てこれは何だろうと思いました。調べてみて、あの畑が大麦畑で、栃木県は日本一の大麦の生産地だと知りました。そこで大麦でお菓子を開発できないかなと考えたのが、この大麦ダクワーズのはじまりです。

 

――― 大麦のお菓子を商品化するにあたって大変だったことは何でしょうか?

浅沼:まず、原料が手に入りません。小麦粉や砂糖、バターと違って大麦は一般に流通していませんでした。今はネット販売がありますが、20年前はスーパーに行っても大麦の粉なんて売ってなくて、問屋に聞いても入手方法がわかりませんでした。ですので、材料の粉は自分たちで作らなければならなかったんです。大麦を栽培する農家の人にお願いして大麦を分けていただいて、それを自分たちで殻をむいて粉にするところから始めました。今も大麦ダクワーズの原料づくりは自分たちで行っています。これが一番のハードルでした。

 

次のハードルがお菓子の加工でした。小麦とは違い、大麦の粉では簡単にはお菓子はつくれないんですね。一般的なマドレーヌやカステラやフィナンシェをつくってみましたが、小麦にあるグルテンが大麦にはないので膨らまないのです。今では製造できるお菓子も、当時は単純に材料を小麦から大麦に切り替えただけでしたので、全部失敗しました。実は、最初から大麦でダクワーズをつくりたかった訳ではなく、様々なお菓子を試して一番おいしかったのがダクワーズだったんですね。

むしろ、ダクワーズは小麦のものよりおいしく仕上がりました。グルテンがない方がダクワーズのさくっとした食感が生きるので、それが大麦にぴったりと合いました。

 

――― 大麦でつくったお菓子は、最初からお客様に受け入れられましたか?

 

浅沼:全然売れないですよ。今でこそスーパーでも大麦という言葉が当たり前に表示されていますが、当時は大麦って何? 小麦とどう違うの? と言われ、「おおばく」と読む人がたくさんいました。大麦がマイナーな素材の上に、ダクワーズもマイナーなお菓子なので。とてもおいしいのに、10年くらいは全く売れませんでした。

足利市は非常に小さい町なので、もっと広いマーケットに売っていかなければ、と思いました。栃木県内では日光など観光客が多く訪れる場所に営業に行きまして、観光ホテルや道の駅、サービスエリアといったところに商品を置いてもらいました。口コミが広がったり新聞に載ったりして本当に少しずつ売れるようになりました。それが2004年から2006年頃の話です。

 

――― その頃は大麦の健康に良い成分は、注目されていなかったのでしょうか?

 

浅沼:日本ではまだそんなに広まっていませんでしたが、2006年頃から大麦が糖尿病や心疾患などに有効だということが、アメリカ食品医薬品局で正式に認められ始めました。
元々大麦は体に良さそうというイメージがあったところに、欧米からエビデンスが届いたという形ですね。

 

――― 貴社の大麦ダクワーズに使用されている麦焦がし(はったい粉)が従来のものとは違うそうですが、どういった点が異なるのですか?

 

浅沼:大麦には二条大麦と六条大麦がありますが、麦焦がしはほとんどが六条大麦で作られています。しかし、当社の場合は、地元のものを使うということを前提にしていますので、栃木県の二条大麦を使っています。二条大麦を使うとビールと同じでキレがいいといいますか香ばしいといいますか、そこは大きいですね。

 

――― 大麦の種類が違うことによって苦労された点があれば教えてください。

 

浅沼:二条大麦は六条大麦より殻が固くてむきづらいのですが、それをどうむくのかが非常に難しかったです。麦焦がしは、皮をむいた後で焙煎して粉にするのですが、皮のむき方で風味が大きく変わります。皮がたくさん残っていると焦げ臭くなってしまい、むき過ぎると香ばしさが出ません。

――― 大麦商品に関して、今後の展開をおうかがいします。

 

浅沼:20年以上大麦という素材に関わってきて、大麦は非常に可能性をもった食材だと実感しています。大麦を食生活に取り入れることで糖尿病や心臓疾患のリスクを低減したり出来ます。大麦の中に含まれる水溶性食物繊維が糖尿病のリスクを低減させるのですが、水溶性食物繊維の量が通常の大麦よりも2、3倍高いスーパー大麦を農家さんやJAと契約しながら、契約栽培しています。当社でも農業生産法人を作ってどんどん植えていこうと思っているんですね。
そういった活動を広げ、最終的に世界の小麦市場の20%くらいを大麦に変えられるようにしていきたいと考えています。当社の経営理念は「大麦は地球を救う」です。大麦で世界の食を変える先頭の企業になるということが究極の目標です。

 

浅沼さんのおすすめ

ココ・ファーム・ワイナリーの「風のエチュード」

http://cocowineshop.com/

 

「地元足利市にある社会福祉法人のこころみ学園が運営しているワイナリーです。『風のエチュード』は値段がそんなに高くないのですが、キリッとしていておいしいです。地元の酒屋に置いてあるので、よく買って飲んでいます」

浅沼誠司さん

栃木県足利市出身。
早稲田大学卒業後、北海道の六花亭製菓にて修行。
母が始めたケーキ店を継ぎ、
地元栃木の大麦を使ったお菓子「大麦ダクワーズ」を開発。

株式会社大麦工房ロア
http://www.oomugi.jp/

1986年創業
1997年に栃木県産大麦を使った「大麦ダクワーズ」を開発

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