
観光地だからこその地元愛でお客様をハッピーに。宮城松島の老舗酒店「むとう屋」の「萩の鶴 Mグリーン」
2025/06/23
今回、アッキーこと坂口明子編集長が注目したのは、宮城松島の日本酒「萩の鶴 Mグリーン」。観光客の多い土地柄、宮城のお酒を専門的に扱い、また未成年の方にも楽しんでもらえる商品の開発にも力を入れている老舗酒店「むとう屋」のオリジナルです。街を牽引する活気あるお店づくりや商品について、株式会社むとう屋 代表取締役社長の佐々木憲作氏に取材陣がお話を伺いました。
―御社の歩みについて、教えてください。
佐々木 創業は1946年、宮城県松島にある老舗酒店です。創業当時は大手日本酒メーカーやビールの販売がメインでしたが、「松島は観光客が多い。だからこそ、宮城の日本酒の良さを皆に知ってもらいたい!」という想いから、現在は日本酒は宮城のもののみを取り扱い、地元産のワインや焼酎も扱っています。
2011年の東日本大震災では店舗や倉庫が甚大な被害を受けました。その後も地震や台風による被害、新型コロナウイルス感染症による観光業や飲食業への影響など数多くの困難が続きましたが、その度に力を合わせて何とか乗り越えてきました。

宮城県松島の本店。日本酒は宮城の地酒のみ。
ワイン、焼酎も地場産を中心に扱っている。
他に、東北の玄関口・仙台駅にも店舗がある。
―佐々木社長ご就任の経緯をお聞かせください。
佐々木 もともと父からいずれは継ぐように言われていたので、大学卒業後3年くらい他社で働いてから戻るつもりでした。ただ、仕事も人間関係も非常に良かったものですから、10年ほど会社に在籍して、さすがに戻ってこいと言われたのが、2010年です。それからは、お米からできる日本酒に面白さを感じ、お客様が喜んでくれることが嬉しくて、それらが積み重なって今があります。代表になって2年目です。
―店舗には「角打ちスペース」があるとか?
佐々木 2021年にオープンした「むとう屋仙台駅店」の角打ちスペースが人気だったので、いわば逆輸入する形で本店にも導入しました。宮城の日本酒は、上品で淡麗辛口。口当たりやわらかい軽快な飲み口と、香りがやわらかく前面に出ることがない穏やかなものが多いのが特徴。日本酒初心者の方にも胸を張っておすすめすることができます。角打ちスペースでは、日本酒やノンアルコールの飲み物を1杯からお試しいただけます。

地酒やシェイクを楽しめる角打ちスペース。
松島のグルメをいろいろと堪能しながら、気軽に立ち寄れるスペースとして開設したそう。
そのため、あえて「お通し」などもなし。
―その角打ちスペースで、シェイクが飲めると聞きました。
佐々木 酒屋というのは、当たり前ですが、基本的には二十歳以上の成人の方しか対象になりません。だから若い方が来ても、あまり興味がないですし、滞在時間も短いんです。そこで、ノンアルコール商品を出したいと考えました。と言っても、日本酒に関わるものにしたい。せっかくだから酒粕を使うことにしました。
コロナ禍に試作を始めたのですが、アイスは冬には売れなくなってしまうし、シェイクなら!と閃きました。色々なアイスメーカーのものと酒粕を組み合わせて、これはと思うものを従業員と共有して、「いいんじゃない」となったものを販売しています。酒粕は大吟醸のものを使っていますから、香りがとても良いです。また、発酵食品とクリームの組み合わせなのでチーズのような風味があり、ヨーグルトやチーズに馴染んでいる若い世代の人にも受け入れやすかったようです。日本酒の感じも少しありますから、大人になったら、日本酒を飲んでほしいという願いもあります。酒屋に高校生がたくさん来てくれて、シュールな感じでしたが、すごく嬉しかったです。

「酒屋の85しぇいく」。ノンアルコールなので、
小さい子どもからアルコールが苦手な方まで、誰でも楽しむことができる。
酒粕の香りが芳醇で濃厚だと口コミでも話題。
―地元をPRしたいという思いもあるのですね。
佐々木 地元のものを使ったクラフト商品でアピールしたいと考えています。松島は観光のイメージですが、農家もあるんです。それで、開発したのが青梅サイダーといちごサイダーです。ノンアルコール商品で、店舗に来る高校生に試飲してもらって評判の良いものを商品化しました。やはり日本酒と混ぜてもおいしいサイダーです。

松島町の雫石梅農園の青梅でつくった梅サイダー。
梅の香りさわやかでほとばしる甘酸っぱさ、後味スッキリ。
生産者の人とタッグを組んで作ったサイダー。日本酒を割っても美味。

宮城県山元町のブランド苺“もういっこ”で作ったいちごサイダー。
完全な天然果汁の色にこだわり、着色料無添加。
にごり酒を割るのがおすすめだそう。
―今回、ご紹介いただく「萩の鶴 Mグリーン」について教えてください。
佐々木 日本酒というのは、食事と合わせるのがテーマなのですが、たまには日本酒が主役でもいいよね、ということで、日本酒だけで楽しむお酒がコンセプトです。香りがよく、酸味がしっかりあり、白ワインに近いようなお酒です。日本酒よりワインが好みだという方にも楽しんでいただけると思いますし、洋食のメニューにも会います。発酵食品と一緒にお楽しみいただきたいです。

宮城県栗原市にある「萩の鶴酒造」が「むとう屋」のために作ったオリジナル商品。
フルーティーで爽やかな酸味、そして甘みがあり、じっくりと味わいたい日本酒。
デザートワインのように食前、食後にいただいても。
―今後の展望について、お聞かせください。
佐々木 まず、お客様をハッピーにすることが目標。ただ、お客様=買ってくれる人、ではないと思います。日本酒を一緒に楽しんでくれる人をハッピーにしたいですね。また、働いている人も、働かされていると思って欲しくないと考えていて、自分で考えることが大事だと思っています。何かをやった時に、ミスという考え方はなくて、それをたたき台にしてそこから動いていけばいいと思っています。
のれんを守っていかなければいけないという思いはありますが、中身がないとダメ。昔ながらを守ることも大事ですが、いろいろやってみて広がっていくのだと思います。現在は、輸出も行っていますが、色々な国で宮城のものを楽しんでもらえたら嬉しいです。そのために商売をやっているというのが私の立ち位置なのだと思っています。

地元を愛し愛されていることが、社員の皆さんの雰囲気からも感じられる。
SNSをチェックすると、最新のお酒の情報などもたくさん発信されている。
―老舗として、長く地元に貢献されてきたからこそできる商品なのだと感じました。貴重なお話をありがとうございました!

「萩の鶴 Mグリーン」
価格:¥2,200(税込)
店名:むとう屋
電話:022-354-3155(9:00~18:00 水・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.e-mutouya.jp/SHOP/hagino4.html
オンラインショップ:https://www.e-mutouya.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐々木憲作(株式会社むとう屋 代表取締役)
1979年宮城県生まれ。2000年に株式会社伊藤園に入社し、10年の修業を経て2009年に株式会社むとう屋入社。2023年に同社代表取締役に就任。宮城の地酒の良さを知ってもらう活動注力している。座右の銘は「刻石流水」。
<文/尾崎真佐子 MC/藤井ちあき 画像協力/むとう屋>