
1本で煮物の味もピタリと決まる、鹿児島生まれの醤油「母ゆずり濃口」
2025/06/12
全国を旅すると、調味料の味わいも地方によって全く異なることに驚かされます。今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、南国・鹿児島で醸造されている濃口醤油。いわゆる“甘い醤油”で、九州以外の土地の方には馴染みがなく、「どのように使うのだろう?」と思われるかもしれませんが、実は料理の幅をグンと広げてくれる調味料です。その魅力について、販売元である有限会社かねよみそしょうゆの工場長である池 成治氏に取材陣がお話を伺いました。

有限会社 かねよみそしょうゆ 工場長の池 成治氏
―工場長は1998年にご入社とのこと。御社の歴史についてお話いただけますか?
池 弊社は明治45年、1912年に創業した会社です。初代は漁師でしたが、当時は西洋料理や牛鍋屋が広まり始めた時期。魚の売れ行きに陰りが見えてきました。ある日、奥様が醤油で煮付けた魚を食卓に出してくれて、それをお子さんたちが大喜びで食べていたことから、初代は魚と一緒に手作りの味噌、醤油を販売することを思いつきます。
しかし“手前味噌”という言葉があるように、当時は味噌を自分で作る文化があったため、最初は見向きもされなかったそうです。それでも諦めず、奥様が魚の煮付けにたっぷりと砂糖を使っておられる様子を見て、甘い醤油、さらに甘い味噌作りを研究し、お客さまに一目置かれるようになりました。
その後2代目になるとちょうど高度成長期の時期で、スーパーマーケットも多く生まれるようになり、「母ゆずり」の醤油、「麦味噌やまぶき」のプロモーションにも力を入れ、広く知られるようになりました。現在では、親子3世代にわたって受け継がれ「家庭の味」として親しまれています。

鹿児島市内にある「有限会社かねよみそしょうゆ」と、醸造元の「株式会社横山味噌醤油醸造店」。
―鹿児島では「甘み」が好意的に受け取られたのですね。
池 そもそも温暖な地域は甘みを好み、寒いところは穀物を貯蔵するために塩の力を借りるので塩味が強い傾向にあります。3代目はよく、「東京は東日本の南の端、食文化的にいけば、“塩辛い東北”の一番端だ」と言うのですが。その考えを借りると、鹿児島は日本の南端ではなく“甘い東南アジア”の一番北。甘い味付けが好まれる土地です。またサトウキビが手に入りやすいことも影響していると思います。こうした独特の食文化を、他の地域の方に楽しんでもらいたい、と強く考えているのが3代目で、通信販売にも力を入れるようになりました。
―オンラインショップはいつ始められたのですか。
池 2000年前後です。お手紙でやり取りする通信販売も行っていましたし、もちろん量販店などへの卸とも並行してやってきました。
―それでは今回の商品についてもご紹介ください。まずは「母ゆずり濃口 新鮮ボトル」から。
池 こちらは初代が、「子供にたくさん魚を食べてもらうにはどうしたらいいだろう」という思いから考案した醤油です。鹿児島では、約18ヵ月をかけて大豆の旨みを抽出する、「天然醸造生揚(てんねじょうぞうきあげ)」と旨味成分をブレンドして醤油を作るのが一般的なのですが、弊社では麦の香ばしい「香り」「甘み」を引き出したアミノ酸液を自社で作ってブレンドしています。これは全国的に見てもかなり特殊だと思います。

子の成長を願う親目線で造られた「母ゆずり濃口 新鮮ボトル」。
―濃口醤油はどんな時に取り入れたら良いのでしょうか。
池 まずは魚の煮付けです。濃口醤油を使うと、砂糖やみりんを入れなくても味が決まります。お肉との相性も良く、すき焼きの割下も、こちらにザラメをちょっと加えるだけで完成します。わさびと合わせてステーキをいただいてもおいしいです。「濃口醤油」というと、「甘い」と最初は敬遠されがちなのですが、使っていただくと、「これだけで味が決まるのでレパートリーが増えた」というお話もよく伺います。

「母ゆずり濃口」を使うと「魚の煮付けの味が決まる!」と、評判。

すき焼きの割下にも「母ゆずり濃口」を取り入れてみて。
―こちらの商品は200gですが、他にもサイズ展開があるのですか?
池 他に500ml、1L、1.8Lがあり、全部で4サイズ展開です。通販サイトでは、500mlのものが紙パックになっています。200mlは卓上で使いやすいのでボトルに、500mlはゴミの分別を意識して紙パックにしました。
―次に「塩分55%カット 旨だし醤油 新鮮ボトル」についてもご紹介ください。
池 弊社の醤油はもともと塩分が低めなのですが、それでも少し味がきつく感じられる方がいらっしゃるということで、より塩分をカットした醤油作りに取り組みました。「塩分控えめの醤油は旨みが少ない」というご意見もありましたので、こちらには「鹿児島産かつお節」と「宮崎産椎茸」の出汁もたっぷりブレンドして、塩分を抑えながらも旨味十分な醤油に仕上げています。一滴ずつ注ぐことができるので、かけすぎが防げるのも魅力です。また長く“新鮮でおいしい”醤油を楽しんでいただけます。

ヘルシー思考の方だけでなく、幅広い方に愛されている「塩分55%カット 旨だし醤油 新鮮ボトル」。
―減塩醤油と言うと、血圧が高めの方、水分制限がある方に求められているのでしょうか。
池 そう思われがちですが、こちらは甘みもあるのでお子さまにも好評で、幅広い方に楽しんでいただいています。刺身や漬物、豆腐や納豆、フライなど、いろいろな料理に合わせて味わってください。ちなみに私は先日、鍋をいただく時にポン酢が切れたので、この醤油と酢を合わせてみたところ、非常においしいタレができることを発見しました。野菜炒めや焼きうどんに使っていただいて、ブラックペッパーなどを合わせるのも好きです。

刺身や冷奴にも合う。
―いつ発売されたのですか?
池 去年末でしょうか。ベースができてからも試行錯誤を重ねましたので、発売までには2〜3年を要しました。ようやく完成して、これは我々にとっても嬉しい反応だったのですが、透析をする病院や薬局などでも好評で、すでに何店舗かで取り扱っていただいています。
―本当に幅広い方におすすめできる醤油ですね。
池 ありがとうございます。また、弊社の醤油でもう1点ご紹介させていただきたいのが、「肉と魚に合う黒糖しょうゆ」です。こちらは最近、キャンパーの間で話題となっている商品です。キャンプ雑誌のイベントに出展した際にご紹介したのですが、出展をきっかけにアウトドア専門店でも販売していただけることになりました。アウトドア調味料は消費期限が長いものが好まれるということで、うまくはまったようです。

アウトドアシーンで活躍している「肉と魚に合う黒糖しょうゆ」。

そのまま焼肉のタレにも使える。
―広報活動も積極的に行われていますね。
池 そうですね。SNSの中でも特にインスタグラムに力を入れていまして、インフルエンサーさん、アンバサダーさんにご協力いただきながらレシピをご紹介しています。ターゲットとしては30代から40代の女性で、コンセプトは「1ランク上のお料理」です。リール動画は、弊社の事務所に併設しているキッチンスタジオで撮影しています。

インスタグラムには、同社の商品を使ったレシピが多数掲載されている。
―今後の展望についてもお聞かせください。
池 インターネットが当たり前になり、弊社の商品も今や海外の方から購入いただけるようにもなりました。弊社としては、地元の味を守りながら、新しい地域の方にもお届けしたいという思いがありますので、今後もSNSや展示会での活動も精力的に行っていきたいと考えています。
以前は別の地域に「母ゆずり濃口」を持って行っても、「こんなの甘くて使えない」と言われたものでしたが、最近は甘い醤油に対する考え方も変わってきています。現在では、ステーキ・鉄板焼き・焼肉店など、沢山のご指名をいただくようになりました。
戦後、日本には6,000社の味噌醤油屋がありましたが、今や2,000社を切るほどまでに減少しています。だからこそ、弊社はこれまで以上に地域性をしっかりと押し出しながら、たくさんの方に「おいしい」と言っていただける味噌・醤油を作り続けたいと考えています。

「伝統技法」と「製造思想」をもとに造られている醤油「母ゆずり」。濃口のほか、淡口も製造している。
―貴重なお話をありがとうございました。

「母ゆずり濃口 新鮮ボトル」(200ml)
価格:¥367(税込)※送料別
店名:有限会社 かねよみそしょうゆ オンラインストア
電話:フリーダイヤル 099-268-0151(09:00~17:00 日曜、祝日、第2・第4土曜日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kaneyo-soy.com/c/all/gd531
オンラインショップ:https://kaneyo-soy.com

「塩分55%カット 旨だし醤油 新鮮ボトル」(200ml)
価格:¥428(税込)※送料別
店名:有限会社 かねよみそしょうゆ オンラインストア
電話:フリーダイヤル 099-268-0151(09:00~17:00 日曜、祝日、第2・第4土曜日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kaneyo-soy.com/c/all/gd546
オンラインショップ:https://kaneyo-soy.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
池 成治(有限会社 かねよみそしょうゆ 工場長)
1966年1月15日鹿児島県生まれ。1998年4月に「かねよみそしょうゆ」の製造部門である「株式会社 横山味噌醤油醸造店」入社。3年の修行を経て工場長に就任。
創業より110年受け継がれる伝統技法を守り、味噌醤油の可能性を追求しながら、時代のニーズに合った商品開発に日々取り組んでいる。
<文/鹿田吏子 MC/田中香花 画像協力/かねよみそしょうゆ>