今回編集長アッキーが注目したのは、九州の海の幸「月日貝（つきひがい）」です。鹿児島の吹上浜周辺でしか獲れない珍しい貝で、見た目はホタテ、味わいや舌触りはホタテ以上！リーズナブルな価格で味わえるのも大きな魅力です。この隠れた美味を届けてくれるのは、九州の特産品を中心に扱う株式会社錦屋商事。代表取締役の那須英文氏に取材スタッフがお話を伺いました。

株式会社錦屋商事 代表取締役の那須英文氏

ーまずは御社の事業についてお聞かせください。

那須　1965年に椎茸の乾物屋として創業しましたが、私の代で量販店への卸売業に転換いたしました。乾物屋では今後食べていけないだろうと考えてのことです。現在は九州を中心に各地の特産品やローカルブランドの食品などを販売。自社のECサイト「にじデパート」も運営しています。九州だけでもお取引先様は1,000社以上、全国では2,000社近くあるかもしれません。メーカー数も商品数も、日々増えていっています。

自社のECショップ「にじデパート」で扱う商品は食料品のほか、生活雑貨や工芸品など、その数なんと約4万点！
ギフトにぴったりの商品も多数ラインナップされている。

ーそれほどまでの規模に拡大できた理由は？

那須　はじめは劣勢だったのですが、それをひっくり返すことができる場所を探したことでしょうか。もとが乾物屋ですから流通のルートも持っておらず、大手が卸している全国規模のナショナルブランドを扱うこともできません。しかし逆に言うと、県内だけで流通するローカルブランドの商品は、大手が扱うことはほとんどありません。ローカル品に関しては、私どもは九州全域をカバーしていますから、そこに活路を見出したのです。

ショップ内に読みものページを設け、“つくり手の想い”も発信。
Instagram（@niji_department）では、商品を使った料理レシピも公開している。

ーECショップ「にじデパート」をはじめたきっかけは？

那須　卸しの会社ですから、以前は大型通販サイト様へのネット卸売という形でしかECとの接点を持っていませんでした。地方にある“いいもの”を発信していくにあたって、売上ももちろん大事なのですが、卸しだけだと、売れ筋商品しか扱えないというもどかしさがありました。ほかにもいいものがあるのに販売する機会を与えられないという思いを抱えながらやっていたんです。そこで、自分たちでいいものを伝え広めていくショップを立ち上げれば、小売業者の意向に関わらず、自分たちの思いやメーカー様の思い、そして売りたい商品を世に出していけるのではないかと考えて「にじデパート」をスタートさせました。

「月日貝（つきひがい）」は、ホタテと同じイタヤガイ科の二枚貝。
漁獲量が少なく、産地以外に流通することはほとんどないそう。

ー数ある商品のなかでも「月日貝」がおすすめだとうかがいました。どんな商品なのでしょうか？

那須　鹿児島で海産物を扱う丸山海産様の商品です。月日貝は、ホタテのような見た目で、味はホタテに負けないくらいおいしい。もっと世に出てもいい食材だと思っています。以前は西日本に広く生息していたのですが、今は鹿児島の吹上浜あたりに一部生息しているだけ。非常に珍しいのに、価格はリーズナブルなんです。名前の由来も面白くて、月のような淡黄白色の面と、太陽のような赤褐色の面を持つことから月日貝と呼ばれています。

社長おすすめの食べ方は、“バター醤油焼き”。「シンプルに調理すると月日貝本来のおいしさが引き立ちます」。

―今後のビジョンについてお聞かせください。

那須　以前はオールジャパンを目指してやってきました。でも今は「オール九州」をもっとしっかりやろうと方向転換しています。オール九州に注力することで私どもの立ち位置もしっかり固め、「九州のことならうちに任せてください」と言えるようになりたいのです。何か欲しいものがあったらすぐに答えを出せる環境を作りたいです。

また、食だけではなく、九州の文化とは何かということも考えていて。私どもが選び抜いた九州のブランドや文化を発信していくことができれば、メーカー様と一緒に新しい可能性を広げることができると思うんです。まだまだ力不足ですが、地方の魅力を全国、そして世界へと発信していくために、これからも努力を続けていきたいと思います。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました！

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞

那須英文（株式会社錦屋商事 代表取締役）
1956年宮崎県生まれ。明治大学卒業後、流通業界を経て1982年に錦屋商事へ入社。1988年に株式会社へ改組し、2003年に食品卸売業へ変革。2004年に代表取締役社長就任、2014年にEC事業へ参入。変化に対応できる柔軟な組織と多様な業務を推進し、地域とともに成長する企業を目指す。

＜文／野村枝里奈　MC／藤井ちあき　画像協力／錦屋商事＞