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幻の酒米で醸す、近江の銘酒。ふくよかな甘み広がる「清酒 特別純米 生原酒 渡船」

2025/05/19

今回編集長アッキーが出合ったのは、滋賀県草津市の歴史ある酒蔵 太田酒造の代表銘柄「道灌(どうかん)」。なかでも「清酒 特別純米 生原酒 渡船(わたりぶね)」は、一時は生産が途絶え”幻の酒米”となっていた「滋賀渡船六号」を100%使用した銘酒です。その味わいの魅力とは?酒蔵の歴史や酒造りにかける思いとは?代表取締役社長の太田精一郎氏にスタッフがお話を伺いました。

太田酒造株式会社 代表取締役社長の太田精一郎氏

太田酒造株式会社 代表取締役社長の太田精一郎氏

御社の歴史をお聞かせください。

太田 我々の先祖は、室町末期の武将・太田道灌なんです。関東管領職・扇谷上杉家の家宰(筆頭家老)として活躍した人物で、江戸城を築いたことでも知られています。道灌から数えて6代目の子孫が、公務の傍ら、密かに諸藩・大名の動静を探る「隠し目付」として近江国・草津に移り住み、明治維新後の1874(明治7)年に酒造りを始めたのが太田酒造の起源です。

―「日本一小さな総合酒類メーカー」を自称されていますね。

太田 清酒が本業なんですけれども、先々代、つまり私の祖父がほかの酒類の製造免許も取ってくれていたおかげで、総合的なアルコールメーカーとして、ワイン、リキュール、ブランデー、焼酎など、さまざまな酒の製造ができています。

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滋賀県草津市の「不盡蔵」、兵庫県東灘区の「千代田蔵」、
滋賀県栗東市の「栗東ワイナリー」の三拠点で、さまざまな酒の製造を行っている。

会社を経営する上で、大切にしていることは何ですか?

太田 ものづくりは一人ではできない、ということです。何をつくるにしても原材料があって、それを育む人や豊かな土壌があるということが非常に大事ですよね。そういった要素すべてに感謝しながら経営しています。

―ワインは、ブドウの栽培から自社で行われているとか。

太田 そうなんです。1944(昭和19)年頃、食料増産のために久邇宮家の御料林の一部、三十町歩を払い下げていただいて開墾したのが始まりです。軍からの命令で、食糧となる作物のほかに、潜水艦などの音波探知機に必要な「酒石酸」が多く含まれるブドウも栽培していたんです。すぐに敗戦を迎えたので、軍のお役に立つことはなかったんですけどね。

戦後、祖父はそのときに植えたブドウを活用しようと、まだワインを飲むことが一般的ではなかった時期に、ワイン事業を始めました。食べ物に非常に飢えた時代でしたので、米を使って酒を作ることに対して罪悪感を持っていたのかもしれません。

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自社のブドウ園では、除草剤などは一切不使用。
有機肥料のみで栽培したブドウを使って、
搾汁、発酵、熟成、貯蔵、瓶詰めに至るまで一貫したワイン造りを行う。

―代表銘柄「道灌(どうかん)」は、酒造りを始めた当初からある銘柄だそうですね。今回は、そのなかでも「清酒 特別純米 生原酒 渡船(わたりぶね)」について詳しくお伺いしたいです。

太田 「清酒 特別純米 生原酒 渡船」は、酒米「滋賀渡船六号」を原料米とした純米生原酒です。この酒米は大粒米と言って、酒米の中では等級的にも非常に良い米なんですよ。戦前、“酒米の王様”とも言える位置にあったのが、岡山県発祥の「雄町(おまち)」と兵庫県の「山田錦」、そして滋賀県生まれの「渡船」でしたが、これらの酒米は戦時中の食糧難の時代に贅沢品とされ、一時は栽培が途絶えていました。

終戦後、雄町や山田錦は早期に復活しましたが、渡船は長らく市場から姿を消したままとなっていました。しかし、あるとき偶然、滋賀県内で渡船の種籾が見つかり、今から15年ほど前に栽培が再開されたんです。滋賀県だけの酒米として復活したこの米は、現在我々を含む県内約10軒の酒蔵で使用されています。

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幻の酒米を復刻した滋賀渡船六号を100%使用!
濃醇でやや甘口、米の旨みとほどよい酸がバランスよく調和した「清酒 特別純米 生原酒 渡船」。

味わいの特徴は?

太田 米の旨味を感じていただきたいという思いがありますので、辛口が好まれる市場の中で、あえて甘口に仕上げています。滋賀渡船六号は非常に柔らかく溶けやすいので、味も出やすいんですよ。その特性をいかして米の甘みを引き出し、酸味もバランスよく出しています。

ーどんな嗜好の方におすすめですか?

太田 蔵にお越しになるお客様にお好みを聞くと、大体10人中9人の方が「辛口が好き」と言われるんですが、そういう方にこそあえてすすめたくなるお酒の一つです。「甘いですけれど、この旨味と飲み応えを感じてください」とお伝えすると、10人のうち7〜8人が「ああ、おいしいな」「なるほど」と言って、購入してくださいます。

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冷酒のほか、温燗で飲むのもおすすめ。「日中の暑さが落ち着き、
少し涼しくなった夜更けに温燗で楽しむのも一つの飲み方です」と、太田社長。

最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

太田 清酒造りの伝統を守りながら、時代や環境の変化に合わせて進化していく「不易流行」が大切だと考えています。たとえば、少子高齢化による人口減少という課題。働き手の不足もそうですし、人口が減るということは消費も減っていくわけです。「健康が何より大事」と叫ばれる現代において、アルコールは昔のように作れば売れる時代ではないですし、体のことを考えるとどんどん飲んでもらったら良い、というわけでもありません。

また、主原料は自然相手の農産物ですから、昨今の地球規模での気候変動にも大きな影響を受けています。とくに今年や去年は、米どころである近江平野でも酒米が不足する事態となりましたし、自社のブドウ園でも100%健全なブドウを収穫することが難しくなってきています。

これまでは原材料も人手も何とかなってきましたが、今後は大変だと思います。時代に即した新しいものを追求していかなければならない。少量でもきちんと良い酒を造って、それが適量に消費され、そこから利益が得られる――近江商人の経営哲学のひとつに“売り手よし、買い手よし、世間よし”という「三方よし」の精神がありますが、我々売り手もお客様も満足でき、社会にも貢献できる商売をうまく成り立たせていく必要があると考えています。

―本日は貴重なお話をありがとうございました!

「清酒 特別純米 生原酒 渡船」(720ml、1800ml)
価格:720ml ¥1,870(税込)、1800ml ¥3,410(税込)
店名:太田酒造オンラインショップ 道灌
電話:0120-008-474
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.ohta-shuzou.co.jp/?pid=155162948
オンラインショップ:https://shop.ohta-shuzou.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

太田精一郎(太田酒造株式会社 代表取締役社長)
1959年11月4日生まれ。1982年4月太田酒造株式会社入社。2011年代表取締役社長に就任。

<文/野村枝里奈 MC/藤井ちあき 画像協力/太田酒造>

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